はじめに
こんにちは、Hareruya Prosの松浦(@ura_frst)です。

今回はアメリカ・ラスベガスで行われたプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』に参加してきたので、その大会レポートと優勝した行弘さん(@death_snow)も使用した赤単のデッキ解説をしていきます。
プロツアー前の自分のステータスはというと、5勝しなければプロツアーの権利が途絶えるという状況でした。
世界選手権に参加するのに必要な精算マッチポイントのためにも、なるべく多くの勝利が欲しいところではありますが、あまり先のことを考えすぎてもよくないので、まずは初日突破をイメージしながら練習することに。なので、構築よりもドラフトに今回は力を入れて練習していました。
プロツアーに向けた準備
スタンダード練習
今回はほぼ「赤単」を使用するつもりで準備していました。
最近の赤単は、トップメタのイゼット果敢に対して強いということで、メインから《魔道士封じのトカゲ》を採用するのが主流になっています。
最初はイゼット果敢以外のデッキに対して弱体化していると思っていたのですが、実際に使ってみると、《切り崩し》や《一時的封鎖》で1点も与えることなく除去されてしまうほかの1-2マナ域に比べて、最低でも1点は与えられますし、トカゲであることで《雇われ爪》の能力が誘発したり、《岩面村》の対象にできるなど、ギリギリ許せるぐらいの使用感でした。
とはいえ、対イゼット果敢以外では基本的にサイドアウトします。
イゼット果敢も『地域チャンピオンシップ』で使ったりはしていたのですが、プレイが難しいことと、《迷える黒魔道士、ビビ》など新カードの登場によりデッキ構築も難しく、使用を断念しようと思っていました。
なので、早い段階から赤単を使用することに決めて、最後の数日まではドラフト練習に専念して直前に細部を詰めることを決めました。
ドラフト練習
今回も森山ジャパンのメンバーや、Magic Online(以下、MO)のシングルエリミネーションドラフトで練習しました。
まず最初は、いろいろな色の組み合わせを試しました。
赤白・黒赤・白黒はわかりやすく攻めていく方向でピックすれば悪いデッキになることは少ないですし、青赤は人気ではあるものの、しっかりと組めたときの爆発力はとても高いです。
白青と青黒は、どちらも《ガードスコーピオン》で地上を固めながら、《オートタレット・ルーク》の飛行と能力で手札を有効牌に変えていく戦略が有効で、練習でもうまくいっていました。
最終的に、緑を使った組み合わせだけはどれもいい感触を得られず、黒緑・赤緑・緑白、緑青(町多色)の4つの組み合わせだけは、本番ではやらないことだけを決めて準備完了です。
強レアである《サッズ・カッツロイ》や《古代の災厄、ジェノバ》などはタッチでも充分使えるので、それらのカードを引いた場合は《ワールドマップ》を取ってタッチすることを決めました。
プロツアー本番
初日
ドラフトラウンド
初手は《威名のソルジャー、セフィロス》と《サイファー・アルマシー》の2択でした。どちらもとても強力で文句なしのカードですが、パックに黒いカードが複数あって被りそうだったのもあり、《サイファー・アルマシー》を取りました。
2手目は《親衛隊長、ギルガメッシュ》、3手目で《アクローマの意志》という初手級のレアを連続でピックできました。自然な流れでボロス装備品に流れ込み、2パック目の中盤ぐらいで《のばらの義士、フリオニール》が流れてきたりでいい感じのデッキに仕上がりました。
1回戦でサイモン・ニールセン選手の《燃え上がるニブルヘイム》、《サイファー・アルマシー》2枚のデッキにズタボロにされて、2回戦は土地事故で一瞬で負け、3回戦はなんとか勝利して1-2でドラフトラウンドを終えました。2-1は狙えるデッキだと思ったので、残念ではありました。
2回戦の負け方がついてなさすぎたので、今日はダメな日かも……と正直諦めかけた瞬間もあったのですが、3回戦はずっと3マナで止まっていて、ピンチのところでギリギリ4枚目の土地を引いたりして勝つことができたのでまだやれる!と自分を鼓舞して切り替えて構築ラウンドに臨みました。
スタンダードラウンド
■対戦成績
イゼット果敢 〇
ディミーアミッドレンジ 〇
赤単 ×
ジャンドルーツ 〇
ナヤユウナ ×
赤単ミラーマッチでは後手をまくることができずに敗北。ナヤユウナ相手は最後に《ボイラービルジの大主》を連打されてライフがなくなってしまい負けました。結果的に4勝4敗ではありましたが、なんとか初日を抜けることができました。
今回の最低目標として、5勝すると次回のプロツアーの権利が確定する状態だったので、初日を抜けられたことに感謝しつつ、次回以降のためにも2日目は1勝でも多く重ねることが目標です。
2日目
ドラフトラウンド
初手は《簒奪者、アーデン》でした。《ナマズオ族の商人》など宝物・トークンが出るカードを意識して取りつつ、《魔列車》《グ・ラハ・ティア》の白黒の王道パターンといってもいい組み合わせも完成。
あとは《陽気な義賊、ジタン》や《予想外のお願い》などのコントロールを奪うカードが取れれば嬉しかったのですが回ってこず……除去が少ないので少し厳しい試合も予想されますが、《魔列車》が暴れてくれることを祈ります。
1回戦の対戦相手は、森山ジャパンのチームメイトである井上さんだったのですが、3本目で次のターン負けそうな状況から土地をトップして、《簒奪者、アーデン》が《ドワーフの王、ジオット》を釣って10点ゲインしたりの激戦の末、引き分けてしまいました。2回戦は全然回らず負け、3回戦はなんとか回って勝利。
1勝1敗1分けでドラフトを終え、次回のプロツアーの権利は確定して一安心。あとは赤単をぶん回すだけです!
スタンダードラウンド
■対戦成績
イゼット果敢 ×
アゾリウス全知 ×
相手が来なかった 〇
アゾリウス全知 ×
イゼット果敢 〇
相性の良いイゼット果敢に負けてしまい、少し軽視していた全知コンボにも全敗でトータル7勝8敗1分けと微妙な結果に終わってしまいました。
🏆In an incredible EIGHTH career Top 8, Ken Yukuhiro finally takes home the trophy as the Champion of Pro Tour Magic: the Gathering – FINAL FANTASY!🏆
— PlayMTG (@PlayMTG) June 22, 2025
Congratulations, Ken! pic.twitter.com/NiQoFKHxrc
PT優勝!!!マツウラレッド最強!!!
— 行弘 賢/YUKUHIRO KEN (@death_snow) June 22, 2025
個人的には残念なプロツアーとなってしまいましたが、嬉しいことに僕と同じ75枚を使用した行弘さんが優勝!感動的な場面に立ち会えたことと、その影の立役者になれたことは誇りに思います。
赤単デッキガイド
ここからは簡単なデッキの解説と、この大会を終えて感じた変更点やサイドボーディングなどを解説していきます。
ほかのプロツアー参加者の赤単とのリストで大きな違いは、5点火力の種類と《僧院の速槍》の有無だと思います。
対イゼット果敢の負け筋である《ドレイクの孵卵者》や《迷える黒魔道士、ビビ》を、《魔女跡追いの激情》だとすぐに倒せないことも多く、1番多いと予想されるイゼット果敢に対して弱いカードは採用できないと判断して、最終的に0枚になりました。
赤単ミラーや押している状況では、《双つ口の嵐孵り》より《魔女跡追いの激情》のほうが強いことが多いですが、イゼット果敢に効果的でないなら採用に値しません。
また、《魔女跡追いの激情》が抜けたことによって《僧院の速槍》も役割を失い解雇。1マナ域のクリーチャーが8枚だけなのは不安だったので、1枚は残そうかと思ったのですが、果敢があまり誘発せず、《岩面村》の対象にもならないので弱いということで抜けていきました。
《僧院の速槍》の代わりに採用するカードを行弘さんと相談した結果、採用することにしたのが《ドレイクの孵卵者》や《迷える黒魔道士、ビビ》を対処可能で、トップしたときに火力としても使える《稲妻の一撃》でした。
プロツアー決勝戦の2本目では、2ターン目に出てきた《ドレイクの孵卵者》をこれで対処していて個人的にアツかったです。
《自爆》は出発の前日にテストしてみて、引いた試合はほぼ全て決定打になる大活躍で、1枚は絶対に採用することに決めました。あれだけ活躍するなら2枚でもいいかと思いますが、増やしすぎると逆に撃ちきれず敗因になるので、1枚ぐらいがちょうどいいかもしれません。
今回の反省は、「全知コンボ」を甘く見ていたことです。墓地対策カードを引きすぎても攻め手が続かず、《跳ねる春、ベーザ》などのカードから耐えきられて最終的に負けてしまう展開を嫌って墓地対策を2枚に押さえました。
しかし、1枚は引いていないと最速でコンボを決められる恐れがあり、ゲーム中に1枚は絶対に引く必要があります。
《噴出の稲妻》や《塔の点火》で《アブエロの覚醒》で釣られた《全知》には対処できますが、2枚目の《全知》や打ち消しで防がれてしまいますし、1マナ構えないといけない時点で攻めもひかえめになってしまいます。
ここは完全に構築のミスで、サイドに3-4枚目の《魂標ランタン》を採用するべきでした。サイドの《魔道士封じのトカゲ》をメインにスライドしたり、数を減らしている版図ランプ対策の《陽背骨のオオヤマネコ》を減らすなどして枠をあけるのがよさそうです。
また、赤単ミラーでは1マナの除去が多ければ多いほど序盤の戦いで有利になるので《塔の点火》の4枚目を採用したいです。メインの《光砕く者、テルサ》《稲妻の一撃》あたりを減らしてサイドの《魔道士封じのトカゲ》をメインに入れ、枠をあけるしかないでしょう。
最新リスト&サイドボーディングガイド
上記の反省をふまえて、現時点で今週末の『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』で使用しようとしているリストがこちらになります。
ここからは、このデッキのサイドボーディングや戦い方について触れていきます。
イゼット果敢

vs. イゼット果敢(《ドレイクの孵卵者》入り)

vs. イゼット果敢(《精鋭射手団の目立ちたがり》など超アグレッシブ型)
イゼット果敢に対しての立ち回りで大切なのはいたってシンプルで、とにかく攻めること。
1回守りに回ってしまうと、基本的に攻めに転じることが難しくなってしまうので、ブロッカーは死なない程度に最小限にして攻めまくりましょう。攻めておくとトップで《自爆》などのカードを引いて勝つ可能性も上がっていきます。
従来の負けパターンである先手《ドレイクの孵卵者》や《迷える黒魔道士、ビビ》にも対応しやすい構築になっていますし、自信をもって有利といえるマッチアップです。
最近はあまり見なくなっている《精鋭射手団の目立ちたがり》入りの超高速イゼットには、逆に《魔道士封じのトカゲ》で蓋をしようとしても飛行で大ダメージを食らってしまうので、あまり有効ではありません。その辺は臨機応変に、対戦相手の出してきたカードを見て対応するのが大事になってきそうです。
赤単

vs. 赤単
あまり言いたくないですが、どうしてもミラーマッチは先手が有利で運ゲーと言っておきます。数回負けたからと言って気を落とさないでください。次はきっと勝てます!
しっかりと動けるハンドをキープ、ダメなハンドはマリガン。シンプルですが、これが大事です。あとは、「決勝ラウンドの行弘さんの試合」という最高の教科書があるので、すべて観てみることをオススメします。
アゾリウス全知

vs. アゾリウス全知
意外と《魔道士封じのトカゲ》が機能するマッチ。行弘さんがトップ8を決めた試合は必見です。
3マナのクリーチャーは《一時的封鎖》されず、対処しにくいはずなので価値が高いです。相手が《跳ねる春、ベーザ》などを大量に入れて全力でコンボを決めに来ない雰囲気を感じたら、3本目は《石術の連射》をサイドインするのもアリです。
ディミーアミッドレンジ

vs. ディミーアミッドレンジ
(※《真紅の鼓動の事件》をサイドインするのは確定で、相手のリストによって《塔の点火》《石術の連射》《メテオストライク》《陽背骨のオオヤマネコ》を選んで入れます)
ディミーアに関しては、抜くカードは基本変わらないので入れるカードを考えていきます。《大洞窟のコウモリ》や《ティシャーナの潮縛り》などタフネスの低いクリーチャーが多ければ《塔の点火》を大量に入れますし、《群青の獣縛り》がいっぱい入っていれば《石術の連射》は悪くないです。
《分派の説教者》や《黙示録、シェオルドレッド》などガッチリしたクリーチャー群は少し厳しいですが、《陽背骨のオオヤマネコ》で回復を阻止しながら相討ちを狙ったり、《双つ口の嵐孵り》は「前兆」でデッキに戻るので再び引くことも期待できます。
版図ランプ

vs. 版図ランプ
とにかく自分の《叫ぶ宿敵》に火力を撃ち込むことを意識してください。回復されないようにすれば大体負けません。2枚持っていなければ、3ターン目に《叫ぶ宿敵》を出してアタックではなく、4ターン目に《叫ぶ宿敵》+火力と動きましょう。
《陽背骨のオオヤマネコ》を減らしているので少し不安ではありますが、基本的に《叫ぶ宿敵》+火力で勝つことが多かったので変わらず戦えるのではないかと思います。
おわりに
次回のプロツアーは、アメリカ・アトランタでモダン+『久遠の終端』ドラフトで行われます。モダンは久しぶりですが、しっかり準備して臨みたいです。

今回と前回の成績を参照して、次回は7勝以上しないとプロツアーの参加が途絶えてしまいますし、トップ8もしくは11勝レベルの好成績を残さないと、2年連続で参加できている世界選手権にも参加できなそうなので、次回のプロツアーは正念場になりそうです。
『スポットライト・シリーズ』が終わり次第、『ジャパンオープン2025』に向けて「FINAL FANTASY」限定構築の配信をしたりしていく予定なので、配信もよろしくお願いします!
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