平林 和哉『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』優勝インタビュー!命運を分けた《迷える黒魔道士、ビビ》

晴れる屋メディアチーム

歓喜の『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』

こんにちは。晴れる屋メディアチームです。

先日の『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』にて、「孤高のデッキビルダー」こと平林 和哉が優勝しました!晴れる屋ではマーケティング本部・副本部長 兼 IT推進部・部長でもあります。

メディアチームとしては参加者2,000名を超える名誉ある大会で、晴れる屋のスタッフが優勝したことも喜ばしいですが、晴れる屋とマジックを長年支え続けたベテランの平林が初のタイトルを手に入れたことがなによりも感慨深いです。

さて、せっかくなので今回は大会直後の平林に直撃インタビューを実施します!

人物紹介:平林 和哉

TC東京の立ち上げ当初から晴れる屋に関わってきた重鎮。10年前は晴れる屋で記事も書いていた。それらの記事はコアな人気を獲得しており、復帰も望まれる。豊富なマジックキャリアと屈指の理論派として知られるプレイスタイル、メタゲームに合わせた独自のデッキ構築術に定評があり「孤高のデッキビルダー」の異名を取る。先日、マジック歴29年目にして、ついに念願の初タイトルを獲得。15年ぶりのプロツアー出場を決めた。

平林 和哉のマジック人生

マジックとの出会い。競技にのめり込むまで

――マジック歴25年とのことですが、マジックをはじめるきっかけはなんでしたか?

平林:自分が16歳のとき、高校の通学路にあったゲームショップで「マジック:ザ・ギャザリング入門用セット」が並べられているのを見て、その表紙のイラストに惹きこまれたのがきっかけです。基本セットでいうと『第4版』のころですね。

平林:家が転勤族だったので、仲良くなった友達とマジックを長くつづけるということはなかったのですが、引っ越した先々のゲームショップでマジックをやっていました。

行弘 賢選手との師弟関係について

――先日のプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』を優勝した行弘選手とは師弟関係にあるとのことですが、2人はどのような仲なんでしょうか?

平林:行弘とは福岡時代、天神のとあるカードショップで出会いました。当時はドラフトばっかり遊んでいた思い出がありますね。実際には師弟関係というより、カードゲームコミュニティの先輩・後輩みたいな形のほうが近いかもしれません。もちろん自分のほうが先輩なので、いろいろと教えたことはあります。

――行弘選手に教えたことのなかで、具体的に覚えていることはありますか?

平林:リミテッドのコンバットの話ではあるのですが、とにかく「まずはフルパンすることから考えろ」ということは教えることができたんじゃないかと思っています。最初にフルパンできるかどうかを考えて、攻撃できないクリーチャーを引き算で消していくという考え方です。

平林:なぜこの考えを行弘に話したのかというと、「フルパンして、攻撃し過ぎたことで負けるミス」は誰でも気がつきやすいからです。一方で「フルパンしてれば勝てたのに」とか「慎重になったことによる負け」というミスはなかなか気がつくことができません。同じミスで負けるのなら、アタックしすぎて負けたほうがずっと成長に繋がるんです。あと、積極的にアタックしたほうが相手がブロックをミスる可能性も出てきますしね(笑)

マジックで勝つために考えていること

――マジックで勝つために常日頃から考えていることはありますか?

平林:平面的ではなく、立体的に俯瞰で考えるということは意識しています。自分の手札だけを見て結論を出さないということです。自分に「都合」があるように、対戦相手にも「都合」が絶対にあります。自分から見えてる状況だけでは攻撃しないほうがいい局面やプレイしないほうがいいカードも、「対戦相手の視点」まで考慮すると違う結論になることはあるんです。総合的に判断しながらプレイすることが大切だと考えています。

一度は競技マジックから退いた理由

――今回、古豪プレイヤーとして久しぶりに大会へ参加されたことが話題になりました。そもそも、なぜ競技マジックから遠ざかっていたのでしょうか?

平林:過去にはグランプリトップ8入賞やプロツアー出場など、いろんな経験をしてきました。競技マジックを続けることのしんどさというのも十分に体験してきたつもりです。そんななか、2010年にプロツアー権利獲得を目指し、各地の予選を5~6大会ほど回ったときに惨敗して、競技に対する気持ちが切れてしまった時期がありました。私生活も忙しく、このタイミングで競技マジックをお休みすることにしました。

平林:それまでの人生で競技マジックに打ち込み過ぎたあまり、一度離れてしまうと、なかなか復帰しづらいものがありました。晴れる屋との関わり自体はずっと続いていたので、マジックのことはずっと好きなままでしたが、競技に関しては中途半端に取り組む気になれませんでした。ただ、グランプリのような大型大会で優勝したことがないのは心残りだったんです。

――そんな状況で、今回、スポットライトに出場しようと思った理由はなんでしょうか?

平林:実際、直前まで出るかどうか決めていませんでした。スポットライトという、かつてのグランプリのような大型大会が復活したことでテンションが上がったということもありますが、まずはエントリーだけはしておこうと思ったんです。その後、プロツアーで行弘の活躍を目の当たりにしながら、スタンダードの試合をたくさん観戦したことで環境理解度が高まり、出場することに対してどんどん前向きになりました。

マジック・スポットライト優勝秘話

イゼット果敢を選択した理由

デッキリストページ

――今回、イゼット果敢を選択した理由はなんですか?

平林:紙の構築戦は本当に久しぶりでしたが、MTGアリーナではBO1でイゼット果敢を回していて、それなりに知見があるデッキだったからです。ほかのデッキと比べて、やっぱり「カードパワーが一段違うな」という印象でした。

「占星術師」の天球儀咆哮する焼炉+蒸気サウナ

平林:イゼット果敢といっても、いろいろなアプローチのデッキがあります。《「占星術師」の天球儀》を使うタイプや、《咆哮する焼炉/蒸気サウナ》を使い回すタイプなども一通り試しましたが、そんなに感触がよくなかったり。

平林:そんなとき、行弘が優勝したプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』も現地で応援しながら観戦していたのですが、5位に入賞したDavid Roodのイゼット果敢のリストが自分的にかなり好きな構成だったんです。スポットライトまで時間も少なかったので、そのデッキを丸コピすることに決めました。とはいえ、本番まで一度も回すことはできなかったので、ぶっつけ本番となりましたが。

――プロツアーといえば行弘選手がかなり強い勝ち方をしましたが、赤単を使うことは考えませんでしたか?

平林:もちろん考慮はしましたが、赤単は自分のプレイスタイルと合ってないということもあり、使うとしたらイゼット果敢かアゾリウス全知の2択でしたね。大会を楽しむためにも、自分に合っているデッキのほうがいいだろうな、と。

久しぶりの大会。ブランクは感じなかった?

――紙の大会、しかもスタンダードとなると数年ぶりの出場だとお伺いしました。ブランクは感じませんでしたか?

平林:久しぶりなので、やっぱり紙でマジックやるのはそれなりに大変だな、と感じることはありました。1回戦目の1本目でアゾリウス全知にボコボコにされたときは「こりゃ、アカンわ」と思いましたね。ただ、昔から練習をあまりせずに大会に出る、ということはあったんです。

平林:長年マジックを続けてきた経験が活き、大会中も少しずつカンを取り戻しながらブランクを埋めていくことができたと思います。対戦中は自分もミスをしたけれど、対戦相手もミスしていたし、デッキの強さでも負けているとは思わず、自分と周りのプレイヤーとの実力差というのはあまり感じませんでした。勝てないこともないぞ、と。

印象に残った決勝。命運を分けた《迷える黒魔道士、ビビ》

――大会を通じて、一番印象に残っているゲームを教えてください。

平林:やはり、勝てば優勝が決まるという決勝戦の2本目ですかね。このゲーム、「《エファラの分散》はある程度サイドアウトしているはず」と思ってしまい、序盤にカワウソでうかつなアタックをしてしまいました。

島エファラの分散乱動するドラゴンの嵐

平林:このゲーム、相手の動きが1-2ターン連続で《島》をプレイして、構えている状況。《乱動するドラゴンの嵐》すらプレイしてこないことから白マナがないのは明白で、だとしたら「なんでそんな手札をキープしたんだ」と考えるべき場面です。《エファラの分散》を頼りにキープした可能性が想像できます

一時的封鎖

平林:しかし、カワウソで殴ってしまったことで《エファラの分散》が刺さり、土地事故気味の相手に「諜報2」をする機会を与えてしまいました。そのあと連続で白マナを引き込まれ、クリティカルなタイミングで《一時的封鎖》をプレイされ、《コーリ鋼の短刀》を含む、こちらの盤面がリセットされます。この時点で「かなりきついゲーム」だと思っていました。

▲対戦相手が勘違いして《敬虔な命令》をプレイするシーン。

敬虔な命令

平林:しかし、思わぬアクシデントが発生しました。苦しい状況でプレイした2枚目の《コーリ鋼の短刀》に対し、相手が《敬虔な命令》を唱えてきたのです。このカードはアーティファクトを対象に取れないため、プレイは巻き戻すことになりますが、ひょんなことから「《敬虔な命令》を持っている」という情報を手に入れます。

《選択》で見えたもの。《迷える黒魔道士、ビビ》と、勝利への道筋。

選択迷える黒魔道士、ビビ

平林:そしてターニングポイントとなる5ターン目。《コーリ鋼の短刀》の誘発を目指して《選択》をプレイしたら《迷える黒魔道士、ビビ》を見つけ、手札に入れるかどうか迷いました。

平林:しかし、マッチアップ的にプレッシャーはかけ続けなければなりません。《敬虔な命令》は見えているものの、「迷ったら積極策」が自分の信条なので、《コーリ鋼の短刀》を誘発させるためだけに《迷える黒魔道士、ビビ》をプレイしました。

方程式の改変

平林:すると、相手は《迷える黒魔道士、ビビ》に対して打ち消しを使ってきました。このゲームを動画で振り返ると、どうやら対戦相手の視点では次のターンに6マナ目の土地を置いて《マラング川の執政》をプレイする未来が見えており、ここは《敬虔な命令》よりも打ち消しで対処したほうが得策だと判断したようです。お互いの思惑が重なった結果、こちらにとっていい感じの状況ができあがりました。

一時的封鎖この町は狭すぎる

平林:わりきって《迷える黒魔道士、ビビ》をプレイしたことが、結果的に最後の残りライフ12点を削る攻防へと繋がっていきます。ギリギリですが、いろいろと噛み合った結果「ほぼ負け」だと考えていたゲームで勝利を掴み取り、優勝することができました。

《一時的封鎖》をバウンスし、イゼット果敢のポテンシャルを爆発させる!

競技マジックで勝ちたい人へ

マジックと出会い、競技マジックに打ち込み、一時は競技から離れながらも、マジックとの縁を持ち続けたことで悲願の優勝までたどり着いた平林。

どんな人でも、大会に出ればチャンスはある」そう話す平林に、競技マジックで勝つために一番大切だと思うことを聞くと、こんな答えが返ってきました。

手練選択

平林:自分の好きなことを大事にする」ということですね。好きだから、そのデッキを使い続けることができるし、突き詰めることができる。今回、自分が使用したイゼット果敢も昔から大好きなカードである《手練》《選択》が採用されていて、このデッキならいくらでも回すことができると思いました。《手練》《選択》を撃ってるだけで気持ちよくなれるんです。

平林:逆に、たとえ最強デッキでも自分が好きになれないなら「武器になりにくい」と思います。上手い、下手はともかく、まずは好きなことを大事にしていくのが良いと思いますね。

この記事内で掲載されたカード

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