トップティア全滅!?
2025年6月30日の晩、スタンダードで新たに7枚のカードの禁止が発表されました。
マジック30年以上の歴史の中でもこれほどの枚数が一挙に禁止指定されるのは異例です。
どんなカードがどんな理由で禁止になったのか。これからどうなっていくのか見ていきましょう。
禁止カード
ここしばらくのスタンダードは1マナ2マナの呪文の応酬がメインになっています。今回禁止に指定されたカードも、7枚中5枚が2マナ以下でした。《この町は狭すぎる》も事実上2マナの呪文といえるでしょう。
《コーリ鋼の短刀》
スタンダードを定義づけているカードといえば、多くの人が《コーリ鋼の短刀》だと答えるでしょう。6月20~22日に開催された「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」には世界各地の厳しい予選を勝ち抜いたトップ選手たちが参加していましたが、そのうち42.3%ものプレイヤーが《コーリ鋼の短刀》を使用した「イゼット果敢」を選択しました。優勝こそしなかったものの、トップ8に4名が入賞します。
次いで6月28、29日に開催された「マジック・スポットライト:FINAL FANTASY」では使用率20.4%となりますが、トップ8には3名が入賞。果たして優勝したのはやはり「イゼット果敢」でした。
《コーリ鋼の短刀》の着地を許せば、ドロー呪文の連打によって毎ターントークンを増やされながら果敢が誘発していきます。着地後に除去を撃ったとしても基本的には不利な交換となります。クリーチャー・トークンを除去しても根本解決にならず、《コーリ鋼の短刀》本体を除去してもトークンが残ってしまいます。これに対応しつつ、自分のゲームを進めるのは困難です。
《コーリ鋼の短刀》はスタンダードのみならず、パイオニアやモダンなどでも使用されるほど強力で、スタンダードのカードパワーを越えているのは明らかです。
《巨怪の怒り》
《巨怪の怒り》は登場以来、赤単を始めとしたあらゆる赤系アグロデッキで採用。そのイラストから「熊パンチ」とも呼ばれ、恐れられていました。
そのターンの間だけサイズが上がるインスタントはスタンダードではあまり使われることがありませんでしたが、《巨怪の怒り》は過去の1マナのコンバットトリックと比較しても、+1/+1修正とトランプルはその後も残り続けるという点で、圧倒的に優れています。
「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」での優勝リスト。
解説はこちら
赤いデッキならまず間違いなく投入され、ほとんどコンボに近いような圧倒的なスピードでライフを削り切ります。環境に《巨怪の怒り》が存在するというだけで、これを意識してブロック指定せざるを得ず、手札になくとも赤マナを立てるだけでプレッシャーを与えることができました。
当然、イゼット果敢にも3~4枚搭載されました。速やかにゲームを終了させるだけでなく、《迷える黒魔道士、ビビ》のパワーを一気に上げて大量のマナを獲得することも可能です。
今年6月17日から6月30日までの晴れる屋での集計では、スタンダードで使用された枚数がもっとも多い呪文だったことからも、このカードの持つパワーがうかがい知れます。
《心火の英雄》
『ブルームバロウ』での登場以来、赤単のベストな1ターン目のアクションとして君臨。
《巨怪の怒り》とのシナジーはすさまじく、たった2マナで5点分の打点となります。除去されてもダメージを撃ち返すことができ、かつては《無感情の売剣》、現在では《自爆》で積極的に投げ飛ばすことも行われ、3ターンキルさえ可能にしていました。
この、もはや「コンボ」と呼ぶべき強力なシナジーに対抗するには、1~2ターン目にクリーチャーを積極的に除去するか、《一時的封鎖》でのリセットしかありませんでした。
《この町は狭すぎる》
《この町は狭すぎる》は《嵐追いの才能》と「パッケージ」となって多くのデッキで活用されました。
《この町は狭すぎる》で対戦相手の脅威を弾きながら、《嵐追いの才能》を手札に戻し、再利用します。さらに、カワウソ・トークンの果敢が誘発。マナが伸びた後は《嵐追いの才能》をレベル2に進め、墓地から《この町は狭すぎる》を回収してさらに再利用することができます。マナさえあれば好きなだけこのループを繰り返すことができたのです。
このパッケージははじめ青系のセルフバウンスデッキで活用されましたが、後にイゼット果敢でも採用されました。序盤の展開を小刻みに妨害しつつライフを脅かし、終盤の逆転の芽も簡単に摘んでしまう《この町は狭すぎる》はゲーム体験もあまりいいものではありませんでした。
《望み無き悪夢》
《養育するピクシー》や《この町は狭すぎる》を利用して《嵐追いの才能》の再利用を繰り返すデッキで同じように使いまわされていたのが《望み無き悪夢》です。
単体では大したことはありませんが、飛行クリーチャーを繰り出したり、こちらのカードをバウンスしながら再利用されたらどうでしょう?
《望み無き悪夢》は着実にライフを脅かしつつ手札を奪っていきます。こちらのゲームを進めるカードはおろか、飛行クリーチャーを除去するカードさえ失っていき、なぜか対戦相手の手札はほとんど減っていません。単純に強力、というだけでなく、繰り返し手札を捨てさせられ、選択肢を徐々に奪われていく様はゲーム体験としてあまり楽しいものではありませんでした。
《アブエロの覚醒》
4マナでアーティファクトやエンチャントを戦場に戻せる……ということで、始めは《ファイレクシアへの門》を戻すことが考えられていましたが、後に『ファウンデーションズ』で《全知》が再録されます。
《全知》をなんらかの手段で戦場に送り込むデッキがスタンダードに存在すること自体は問題ないものの、次第にリストが洗練されていき、序盤に引いても無駄になりにくいフィニッシュ手段を獲得した今となっては、安定性が高まりすぎてしまいました。 「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』」で2番目に多くの使用者を集めたのも「アゾリウス全知」であり、「マジック・スポットライト:FINAL FANTASY」でも準優勝しています。
これほど強力なコンボデッキの存在は「間に合わない」デッキを環境から押し出してしまいます。ほかにも《全知》を釣り上げるカードはあるものの、その中でももっとも速い《アブエロの覚醒》はスタンダードには過ぎたカードでした。
《アブエロの覚醒》禁止後も、ほかに墓地のエンチャントを戦場に戻すカードはいくつかあるものの、いずれも《アブエロの覚醒》よりは重く、スピードダウンを強いられることになります。アグロデッキやミッドレンジデッキに猶予ができ、程よい強さに落ち着くでしょうか。
《豆の木をのぼれ》
すでにモダンで禁止されている《豆の木をのぼれ》は遅いデッキのアドバンテージ源として最良の選択でした。
打ち消しや除去に弱かった重いカードに「1枚のカードで保障」をしてくれる《豆の木をのぼれ》は当然放置できない脅威です。しかし、すぐに置物除去を使ったとしても、すでに1枚引かれているため不利な交換になってしまいます。
さらに、現在のスタンダードにも、重いコストを持ちつつも、特定の条件下で軽く唱えられるカードがいくつもあります。こうしたカードの活用方法を考えることは「マジックらしい」楽しい要素であったはずですが、《豆の木をのぼれ》の存在がそれを「マジックらしくなく」していました。
今後もそうしたカードが登場するたびに、楽しいはずのカードをつまらなくする可能性があり、今後のカードデザインにも悪影響が出かねません。
今後のスタンダード
声明文によれば、スタンダードは1マナ2マナのカードの応酬よりも、もう少し重いカードが活躍するフォーマットのほうが楽しく、そうしたフォーマットになることを目指しているとのことです。
たしかに、ここのところ新しいカードでデッキを組んだとしても、「でも赤単に勝てないんでしょ」といった閉塞感を感じていた方も多いことでしょう。多数のカードが禁止になったとはいえ、多くのプレイヤーはこの禁止改定に理解を示しているようです。今回禁止になったカードは使用者でさえ「禁止にしたほうがいいのでは」と感じてしまうパワーを持っていました。
いわゆる「トップティア」のデッキのほとんどが影響を受けた禁止改定。その後はどうなっていくのでしょうか。
『久遠の終端』でのローテーション
【下記セットは2025年7月24日まで使用可能(予定)】
『機械兵団の進軍:決戦の後に』(MAT)
『機械兵団の進軍』(MOM)
『ファイレクシア:完全なる統一』(ONE)
『兄弟戦争』(BRO)
『団結のドミナリア』(DMU)
一か月もしないうちにローテーションによって上記のセットのカードがスタンダードを去ることになります。すばやくゲームを終えるデッキが弱体化したことで、告知にもあったように、3マナ以上のカードが活躍できるようになっていくでしょう。まだ活躍できていない『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』のカードにもチャンスが生まれることでしょう。
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それではみなさん、スタンダードのイベントでお会いしましょう!
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