USA Modern Express vol.136 -エネルギーの牙城を崩し、台頭する新たな有力デッキたち-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

先月末の禁止改定、モダンは大方の予想通りノーチェンジでした。現在は地域チャンピオンシップ予選のシーズン中ということもあり、配慮されたようですね。

さて、今回の連載ではMOで開催された大規模なイベントの『Modern Showcase Challenge』と『Modern RC Super Qualifier』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

『Modern Showcase Challenge』 -カエルが大活躍-

先月、MOで開催された大規模なモダンイベントのModern Showcase Challenge。

参加者300名を超える今大会で優勝したのはエスパー眼魔でした。環境は依然としてエネルギーがトップメタである一方、エスパーブリンク、ドメインズー、ベルチャー、エスパー御霊、ハンマータイムなど、さまざまなデッキが活躍しています。

今大会は禁止改定直前に行われていますが、この結果を見ればモダンがノーチェンジだったのも頷けるのではないでしょうか。

エスパー眼魔

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超能力蛙忌まわしき眼魔発掘

このデッキはリアニメイトプランによって速やかにゲームを終わらせることができるのが強みです。ボロスエネルギーやオルゾフ(エスパー)ブリンクなど、メインから複数の墓地対策を搭載しているデッキには弱い反面、カウンターとハンデスを駆使することでベルチャー、ルビーストーム、アミュレットタイタンといったコンボデッキ相手には有利に戦うことができます。

害獣駆除

エスパーバージョンは白を足したことによってマナ基盤の安定性が損なわれていますが、スイーパーの《害獣駆除》が使えることで、ボロスエネルギーなど横並べが強いデッキとのマッチアップに対応しています。

☆注目ポイント

呪文嵌め

《呪文嵌め》はモダンに存在するあらゆるデッキが仕掛けてくる序盤の脅威をわずか1マナで対処できる優秀なカウンターです。このデッキが特に苦手とするマッチアップはエルドラージランプですが、キーカードである《邪悪鳴らし》や各種タリスマンをカウンターすることでスローダウンさせられるなど、活躍の幅が広いスペルです。

思考掃き地底街の下水道

おなじくディミーアカラーのデッキ、マークタイドとの違いは《忌まわしき眼魔》《発掘》でリアニメイトするコンボプランが選べることです。

《思考掃き》や「諜報」ランドを利用することで、最速2ターン目から《忌まわしき眼魔》を展開するスピードがあります。

海の先駆け害獣駆除記憶への放逐

メインから採用された《海の先駆け》はアミュレットタイタンのような特殊地形を多用するデッキとのマッチアップで有効ですが、ルール変更により《ウルザの物語》対策としては機能しなくなりました

ただし、このエスパーバージョンならば《害獣駆除》が使えるため、《ウルザの物語》の構築物トークンもまとめて対処できます。不要なマッチアップではサイクリングできるため、腐りにくいのもポイントです。

サイドに4枚フル採用された《記憶への放逐》は、苦手なエルドラージランプをはじめ、繁殖鱗コンボ、ベルチャー、ドメインズーなど、さまざまなマッチアップで役に立つカードです。

ドメインズー

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スパーラの本部寺院の庭轟音の滝縄張り持ちのカヴードラコの末裔力線の束縛

ドメインズーは、ショックランド、トライランド、「諜報」ランドなど基本土地タイプを持った多色土地を活用し、《縄張り持ちのカヴー》《ドラコの末裔》《力線の束縛》といった「版図(ドメイン)」カードの強さを最大限に発揮するアグロデッキです。

頑固な否認ギルドパクトの力線

さすがに多色デッキだけあり、クリーチャー、除去、火力など優秀なカードに多数アクセスできるほか、カウンターまで採用できるためコンボとも渡り合うことが可能です。《ギルドパクトの力線》《ドラコの末裔》と強力なシナジーがありながら、このデッキの弱点であったマナ基盤の安定にも貢献しています。

鳴り渡る龍哮の征服者サッズのヒナチョコボ

最近のセットである『タルキール:龍嵐録』や『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』からも新戦力が加わり、常にメタゲームの上位で見られるデッキの一つになります。

☆注目ポイント

ギルドパクトの力線ドラコの末裔縄張り持ちのカヴー

ゲーム開始時に《ギルドパクトの力線》を置くことは最高のスタートです。

マナ基盤が安定し、《ドラコの末裔》は2マナでプレイできる上、「警戒」「呪禁」「絆魂」「先制攻撃」「トランプル」を付与できるようになり、《力線の束縛》も1マナでプレイすることができるようになります。

このデッキでは《縄張り持ちのカヴー》2マナ5/5というサイズになり、さらにメインから使える墓地対策としても機能します。さらには、ルーター能力によって《火の怒りのタイタン、フレージ》を墓地に落とせるなど、大活躍が期待できます。

頑固な否認部族の炎

パワー4以上のクリーチャーが主力のこのデッキでは《頑固な否認》は1マナの《否認》として機能するため、コンボデッキとのマッチアップで重宝します。

ちなみに、ドメインズーの定番火力スペルといえば《部族の炎》ですが、最近ではこれを不採用にして1マナ域のクリーチャーを多めに採用するリストが主流になりつつあります。

サッズのヒナチョコボステップのオオヤマネコ

新たな1マナ域として注目されているのが、《サッズのヒナチョコボ》です。1ターンに「上陸」を2回誘発させられるフェッチランドとは相性が抜群で、1ターン目に《チョコボ》をプレイし、2ターン目以降はフェッチランドをプレイするたびに2/3、4/5とフィニッシャー級のサイズにまで強化することができます。

過去には、《ステップのオオヤマネコ》のような上陸クリーチャーがドメインズーでも採用されていました。爆発力では《ステップのオオヤマネコ》が勝りますが《サッズのヒナチョコボ》は+1/+1カウンターで継続して強化されるため、中盤以降も頼れるクリーチャーとなります。

マルドゥエネルギー

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威名のソルジャー、セフィロス思考囲い

今大会では、新しく《威名のソルジャー、セフィロス》を採用したエネルギーデッキが入賞していました。

マルドゥバージョンはマナ基盤の安定を犠牲にしつつも、ハンデスによって苦手なコンボデッキとの相性を改善しています。

☆注目ポイント

威名のソルジャー、セフィロス血の芸術家

『FINAL FANTASY』シリーズでも、特に人気が高いナンバリングタイトルであるFF7のキャラクターである、セフィロス。「ゲームは未プレイでもセフィロスは知っている」という方は多いと思います。カードの《威名のソルジャー、セフィロス》《血の芸術家》の亜種です。

そして、クリーチャーが死亡するたびに相手のライフをドレインするだけでなく、場に出たときや攻撃に参加するたびに自軍のクリーチャーをドローに変換する能力も持ち合わせています。単なるシナジーカードだった《血の芸術家》と異なり、単体でも十分に強力なカードで、「どのデッキなら強く使えるのか」とプレビュー段階でも話題になっていたカードです。

オセロットの群れナカティルの最下層民、アジャニゴブリンの砲撃

トークンを生成するエネルギーデッキとは相性がよく、《オセロットの群れ》《勝利の楽士》が生成したトークンを《ゴブリンの砲撃》で生け贄にすることで、対戦相手のライフを一気に奪うことも可能です。

戦場に出たときの能力は能動的に《ナカティルの最下層民、アジャニ》を変身させる手段にもなるほか、《ゴブリンの砲撃》を駆使してセフィロス自身を変身させることも現実的で、ひとたび変身すればドレイン能力の勲章が付与され、攻撃時には自分のクリーチャーを好きなだけドローに変換することができます。

鳴り渡る龍哮の征服者オパールのモックス湖に潜む者、エムリーゴブリンの放火砲血の長の刃エルドラージ・落とし子トークン

《鳴り渡る龍哮の征服者》は、モダンのあらゆるデッキの定番サイドボードカードになってきました。《オパールのモックス》《湖に潜む者、エムリー》をはじめ、《ゴブリンの放火砲》《血の長の刃》など、エネルギーデッキが苦手とするコンボデッキの勝ち手段をシャットアウトします。

《石のような静寂》のような置き物と異なり、自身が飛行3/3のアタッカーでもあるので、攻撃的なエネルギーデッキのスタイルにも合っているカードです。

ハンマータイム

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巨像の鎚シガルダの助け純鋼の聖騎士

ハンマータイムは装備コストが重い《巨像の鎚》《シガルダの助け》《純鋼の聖騎士》の能力で踏み倒す高速コンボデッキです。

墨蛾の生息地オパールのモックスコーリ鋼の短刀

《墨蛾の生息地》との組み合わせでは一撃で勝負が決まるなど、爆発力があるデッキとして知られ、かつてはモダンの定番デッキの一つとしてトーナメントの上位でもよく見られました。

『モダンホライゾン3』リリース以降はカードパワーのインフレについていくのが難しく、《オパールのモックス》が解禁されたことが追い風になって復権するという予想もされましたが、ほかの《オパールのモックス》デッキが強すぎるあまり、思うような活躍はできませんでした。

しかし、今大会では『タルキール:龍嵐録』屈指のパワーカードである《コーリ鋼の短刀》を携え、ボロスカラーのハンマータイムが入賞しています。

☆注目ポイント

石鍛冶の神秘家鋼打ちの贈り物

入賞したリストで印象的だったのは、このデッキの定番カードである《石鍛冶の神秘家》が不採用なところです。サーチ手段としてより軽い《鋼打ちの贈り物》が優先されており、《コーリ鋼の短刀》のために1ターンに複数のスペルをプレイしやすくする工夫が見られます。

羽ばたき飛行機械ミシュラのガラクタオパールのモックス

0マナスペルを多く採用しているこのデッキでは、《コーリ鋼の短刀》を2ターン目に誘発させることも容易です。それ以降もトークンが生成され続けることで単体除去が中心のデッキにとって脅威となり、《巨像の鎚》を対策されたとしても、果敢を持ったモンク・クリーチャー・トークンたちによるビートダウンプランへとシフトすることができます。

鷹持ち、カサンドラレオニダスの槍

サイドボードの《鷹持ち、カサンドラ》は速攻持ちで、《レオニダスの槍》専用のサーチ能力を持っています。《レオニダスの槍》を装備すれば二段攻撃も付与できるため、《巨像の鎚》を装備させれば一撃でゲームを終わらせることができます。

オパールのモックス感電破摩耗+損耗

モダンで解禁されて以来、さまざまなデッキで活躍している《オパールのモックス》。「金属術」達成、構築物トークンの強化、《コーリ鋼の短刀》の誘発など、活躍する場面が多く、しっかりとハンマータイムの復権を助けているようです。ボロスカラーにすることで《感電破》《鞭打ち炎》《摩耗/損耗》なども使えるようになり、対応力が上がっています。

『Modern RC Super Qualifier』 -安定のミッドレンジ、エスパーブリンク-

こちらのイベントにも300名を超え、多くのプレイヤーが参加しました。今大会を制したのはMOの強豪プレイヤー、McWinSauceが使用したエスパーブリンクでした。

トップメタであるボロスエネルギーはプレイオフ進出がわずか1名と、一時期と比べると勝率は落ちているようです。そのほか、ジェスカイウィザード、《不屈の独創力》といったデッキが久々に入賞している点が印象的です。

エスパーブリンク

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超能力蛙記憶への放逐新たな夜明け、ケトラモーズ

オルゾフブリンクをベースに《超能力蛙》とサイドボードの《記憶への放逐》のために青をタッチしたエスパーバージョンですが、このタイプが現在ブリンクデッキの主流になっています。《新たな夜明け、ケトラモーズ》が登場して以来、モダンではボロスエネルギーに次いで高い勝率を出し続けているデッキです。

孤独儚い存在溌剌の牧羊犬、フィリア

《孤独》など出たとき能力を持つクリーチャーを《儚い存在》《溌剌の牧羊犬、フィリア》などのブリンク効果で使いまわし、アドバンテージを得る動きが強力です。

思考囲い致命的な一押しベイルマークの大主

ハンデスと優秀な除去が揃っているため、多くのフェアデッキに対して強いデッキでもあります。

2ターン目には相手のターン終了時に《溌剌の牧羊犬、フィリア》をプレイすることで、3ターン目に「兆候」でプレイした《ベイルマークの大主》《溌剌の牧羊犬、フィリア》のブリンク能力によってクリーチャー化させるといった動きが狙え、このデッキの理想的なムーブの一つとなります。

☆注目ポイント

超能力蛙新たな夜明け、ケトラモーズ記憶への放逐

青をタッチする最大のメリットは《超能力蛙》が使えることです。このデッキの主力である《新たな夜明け、ケトラモーズ》との組み合わせが強力で、「墓地のカードを3枚追放する」ことで飛行を得る能力によってドローを誘発させ、豊富な手札によって《超能力蛙》を一気に強化してゲームを決めることもできます。

また、環境屈指の汎用性を持つカウンター、《記憶への放逐》も使えるようになるため、このデッキが苦手としていたエルドラージとの相性が改善されました。

骨の皇帝大祖始の遺産

《骨の皇帝》はメインから《火の怒りのタイタン、フレージ》などを対処できる墓地対策として機能します。また、《骨の皇帝》の能力で自分の墓地からリアニメイトしたクリーチャーは、《儚い存在》《溌剌の牧羊犬、フィリア》などでブリンクすることにより、最終カウンターや「終了ステップに生け贄」の効果を帳消しにした上で戦場に留まらせることが可能です。

《大祖始の遺産》《新たな夜明け、ケトラモーズ》とのシナジーが強力で、合計4枚のカードをドローできるアドバンテージエンジンになります。

空の怒り機械の母、エリシュ・ノーン神秘の論争鳴り渡る龍哮の征服者真昼の決闘

トップメタのボロスエネルギー対策としてあ、メインからスイーパーの《空の怒り》が採用されています。

サイドの《機械の母、エリシュ・ノーン》はミラーマッチやアミュレットタイタンとの戦いで有効です。《神秘の論争》はベルチャーやディミーア系のデッキを咎めるカウンターで、《記憶への放逐》だけを警戒している相手に刺さります。

そのほか、《鳴り渡る龍哮の征服者》はこのデッキにも採用されており、さらには《真昼の決闘》までも採用するなど、苦手なコンボデッキ対策に多くのサイドボードの枠が割かれています。

総括

エネルギーデッキの一強と言われていたモダンですが、エスパーブリンク、イゼット果敢、繁殖鱗コンボなど新セットの影響で活躍する新しいデッキやカードも見られ、おおむね健全な環境のようです。

Modern Showcase Challengeは世界中の競技プレイヤーが競うハイレベルな大会ですが、優勝したエスパー眼魔は現環境のTier2に位置するデッキでした。プレイオフにはトップメタのエネルギーが残りつつも、エスパーブリンク、ベルチャー、ドメインズー、ハンマータイムなど、さまざまなデッキが入賞しています。

さらに、先週末のModern RC Super Qualifierでも決勝戦まで残ったのはエスパーブリンクとエルドラージであり、現環境のベストがエネルギーデッキであることは間違いないものの、決して死角がないデッキというわけでもなく、ほかのデッキが結果を残すチャンスは十二分にあることが確認できました。

USA Modern Express Vol.136は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら