はじめに
こんにちは、Hareruya Prosの平山(@sannbaix3)です。

先日、日本で初めての『マジック・スポットライト・シリーズ』が開催されました。私はアゾリウス全知を使用し、成績は11-3-1で39位と、目標だったプロツアー権利こそ獲得できなかったものの、Foilプロモ(《ミッドガルの傭兵、クラウド》)はなんとか獲得できました!
このスポットライト・シリーズだけでなく、『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』発売以降はさまざまなイベントが続き、マジックが最高に盛り上がっています!
今回はマジックのビッグウェーブの源泉である「FINAL FANTASY」コラボカードのみを使用した、『FINAL FANTASY』限定構築戦について考察しようと思います!
『FINAL FANTASY』限定構築戦とは?
『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』に収録されたカードのみを使用できるルールです。似たフォーマットに『マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2025』で採用された『ファウンデーションズ』を使用できるルールもありますが、今回は『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』のみ使用可能なルールについて取り上げます。
公式記事「初心者歓迎、FFファンのための日本独自イベント!6月27日~7月24日は「『FINAL FANTASY』限定構築戦」を楽しもう」より引用
基本土地カード(《平地》《島》《沼》《山》《森》《荒地》)を除き、3文字略号が「FIN(メインセット)」「FCA(FINAL FANTASY・継承史カード)」のカードのみ採用可能。同名の過去セットのカードを使用することはできません
同名のカードは通常の構築フォーマットと同じ4枚まで、ただし「FCA(FINAL FANTASY・継承史カード)」は各カードにつきそれぞれ1枚まで採用可能
1枚だけとはいえ、《敏捷なこそ泥、ラガバン》のようなモダン級カードも収録されている継承史カードまで使用できます。基本土地以外は、再録カードでも「FINAL FANTASY」版でなければ使用できない点は注意が必要です。
どこで遊べる?
各店舗で開催される『FINAL FANTASY』限定構築戦は、イベント後のじゃんけん大会でプレイマットが手に入る、お得なイベントのようです。
また、晴れる屋トーナメントセンター東京では7月19日(土)に『神討伐戦(しんとうばつせん)』が開催予定です。
コレクター・ブースターなど豪華賞品に加え、優勝者は7月21日(月)に「市川翔一・プロデューサーとのエキシビションマッチ」に招待されるようです。さらに、『THE LAST SUN 2025』の参加権利も得られるので、競技マジックへの第一歩になるかも?
『FINAL FANTASY』限定構築戦 環境考察
まず、使用できるカードプールから、この環境の考察を行ってみたいと思います。
使えるカードが『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』リミテッドとまったく同じであるため、この環境のリミテッドをある程度やっていれば、知らないカードはないはずです。「このカード、『ファウンデーションズ』で再録されてたんだ〜」みたいなことは起きません。
マナベース
《始まりの町》を除くと、確定タップインの2色ランドしか存在せず、マナベースは非常に弱いです。バリューランドは、出来事土地サイクル・《冒険者の宿》・《聖府首都、エデン》くらいで、遅いデッキのみが恩恵を受けられます。
《魂石の聖域》のようなミシュラランドもないためアグロデッキも単色にするメリットが薄く、さらに単色だと多くのデッキはカードが足りなくなるので、基本的に2色以上になることが予想されます。
均等2色のデッキの場合、土地を24枚だとすると、基本形は《始まりの町》4枚+基本土地10枚ずつになると思います。これだと各色カウントは14枚、これは《輝かしい聖戦士、エーデリン》のような軽いカードであっても、ダブルシンボルがネックとなり安定して出すことが難しいくらいの量です。
これをもとに、《始まりの町》4枚+基本土地、シンボルの濃さに合わせて出したい色の基本土地を増量したり、タップインランドを投入する形が一般的になります。
3色以上のデッキは大量の2色タップインランドが入ることになるため、中速以降のデッキ以外では厳しいです。派手なアクションでタップインの後れを取り戻せる、ランプやコンボのようなデッキでのみ許されるはずです。
クリーチャー
セットが伝説のクリーチャーを中心にしている性質上、レア以上のカードは重いカードに多いです。アグロデッキは低マナ域を埋める際にどうしてもコモンを入れざるをえない場合が多く、よくできたリミテッドデッキとそこまで差がでないかもしれません。
反面ミッドレンジ以降のデッキは、ふんだんに高レアリティのカードを使用できるため、カードパワーが高くなりやすいです。このことから、多くのデッキは中速以降のデッキになると予想されます。
また、《過激な淑女、シャントット》のようなカードはリミテッドのときほど活躍は見せないでしょう。《山チョコボで冒険》を唱えることは、通常のリミテッドであれば問題はなく、これで《過激な淑女、シャントット》を誘発させる動きはFF環境のリミテッド屈指の強力な動きです。
しかし、《サッズ・カッツロイ》や《バハムートのドミナント、ディオン》のような一流品をいくらでも使える世界では、《山チョコボで冒険》はいくらなんでも見劣りします。3マナ以上のコモンとのシナジーを重視する戦略は、どうしてもレアリティの暴力に負けがちです。
除去
《燃え上がるニブルヘイム》《古代魔法「アルテマ」》のような全体除去を除くと、除去はだいたい低レアリティなので、リミテッドと大きく変わりません。《雷魔法》《稲妻》といった2種の1マナ除去に加え、《メテオストライク》のある赤は軽い除去が優秀です。
反面、黒は《破滅の刃》互換が収録されておらず、重い《オーバーキル》に頼らざるを得ないため、少し使いづらさが目立ちます。青の《睡眠魔法「スリプル」》、白の《バトルメニュー》は有効な対象が限られているもののハイスペックです。
《雷魔法》《稲妻》で除去できないクリーチャーは、除去するのに多くのマナが必要なため、出したターンには除去されづらいです。つまり、《軍団のまとめ役、ウィノータ》や《スピラの希望、ユウナ》のような出たターンに対処されなければ絶大な効果を発揮するクリーチャーの通りが非常によく、わかりやすく強力な戦略となっています。
継承史カード ピックアップ
インパクトの大きい継承史カードをいくつか紹介します。制限カードとはいえ、『モダンホライゾン』出身カードやレガシー以下でしか使えないカードも含まれるので、カードパワーはピカイチです。
《ジタン・トライバル》/《敏捷なこそ泥、ラガバン》
モダンを破壊した猿。普通に書いてあることがおかしいので弱いわけありません。特に赤は《雷魔法》があるため攻撃も通しやすく、先攻1ターン目に出てきた《敏捷なこそ泥、ラガバン》は、たびたび実質的な1ターンキルを決めるでしょう。
《快速飛空艇シュトラール》/《密輸人の回転翼機》
当時のスタンダード、パイオニア禁止カード。無色なので、ほぼすべてのアグロデッキに入るでしょう。ミシュラランドがなく、アグロデッキはフラッドが受かりづらいので、ルーティング能力はかなり役に立ちます。
《救済者、セフィロス》/《偉大なる統一者、アトラクサ》
言わずと知れた最強のフィニッシャー。ランプ戦略の柱になるでしょう。
《巨神タイタン》/《原始のタイタン》
ランプデッキで《召喚:バハムート》などにつなげてよし、チョコボの上陸を誘発させるのもよし。《冒険者の宿》や、環境唯一のクリーチャー(機体)になる土地である《SeeDの学び舎、バラムガーデン》も持って来られるので、意外と土地の選択肢はあります。
《永遠の闇》/《暗黒の儀式》
モダンですら使えない強力なマナ加速です。2ターン目に《ジェノムの魔術師、クジャ》や《幻のガード、ジェクト》を唱えられればおおむねゲームに勝てます。
《ティナ・ブランフォード》/《最高工匠卿、ウルザ》&《世界を支配せんとする者、皇帝》/《スランの医師、ヨーグモス》
ともに『モダンホライゾン』出身なだけあり、強さは一級品です。ただし、上手く機能させるためのカードがどちらも少なく、デッキを作るのは難しそうです。
《バッツ・クラウザー》/《軍団のまとめ役、ウィノータ》
パイオニア禁止のパワーカードです。レアの伝説のクリーチャーには人間・クリーチャーが多く、効果で出せるクリーチャーは強力なものが多いです。《親衛隊長、ギルガメッシュ》などがいい例ですね。
また、序盤を支える「ジョブ選択」持ちの装備品から出てくるトークンは非人間であるため、能力を誘発させやすく、変に寄せなくても自然にこの色のデッキであれば入れられます。
《神凪の祝福》/《アクローマの意志》
統率者がナントカと書いてありますが無視してください。自分のクリーチャーすべてに二段攻撃・警戒・飛行を与えます。和訳すると「相手は死ぬ」です。
サイドカード
『ファウンデーションズ』ありのルールと違い、《強迫》や《魂標ランタン》のような有効なサイドカードがほとんどありません。サイドカードらしいカードはせいぜい《炎魔法》くらいです。
継承史カードには《花の絨毯》や《自然の要求》のようなカードもあるので、これらは一応色があっていたら採用するといいでしょう。除去のような、相手次第ではまとめて抜きたいカードを抜ききれるよう、能動的なカードを採用するのもありです。
サンプルデッキ
最後に私が作ったデッキをいくつか紹介します。面白い動きをする、この環境ならではのデッキだと思います。
赤白バッツ(ウィノータ)
まずはこのフォーマットの特徴である継承史カードをふんだんに取り入れたデッキを考えました。それぞれ1枚ずつしか入っていないとはいえ、これだけあればどれかは引けるでしょう。
特に《軍団のまとめ役、ウィノータ》《アクローマの意志》は、《バハムートのドミナント、ディオン》ですらかわいく見えるほどの破壊力を持っていて、このデッキの中核です。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》から《帰還した王、ケンリス》やダメージを増やす《シーンドライブ、ライトニング》《粗野な牧人、ブルース・タール》を出す動きは、数年前のスタンダードやパイオニアのナヤウィノータを思い出します。
《軍団のまとめ役、ウィノータ》用の非人間クリーチャーは装備品ギミックを採用しています。《ブルメシアの竜騎士、フライヤ》→《「侍」の刀》は実質《ラノワールのエルフ》→《グルールの呪文砕き》で、これも過去のスタンダードで通用した強力な動きです。装備品に加え《バハムートのドミナント、ディオン》の変身もあるので、アグロデッキながらマナフラッドには耐性があります。
除去も軽いクリーチャーには《雷魔法》、大きいクリーチャーには《バトルメニュー》と無駄がなく、バランスのいいデッキです。唯一の心残りはマナベースですが、《輝かしい聖戦士、エーデリン》を除くとダブルシンボルはないので比較的事故は少ないとは思います。
赤緑白ユウナ
このセットで最も派手なカードである《召喚:ナイツオブラウンド》《召喚:バハムート》を使いたくて作ったデッキです。《スピラの希望、ユウナ》と強力な神話レアの召喚獣に焦点を当てました。
赤白バッツと違い、継承史カードはほぼ採用していませんが、代わりに通常セットのレアと神話レアをふんだんにつかっています。
基本的には《召喚:ナイツオブラウンド》《召喚:バハムート》を墓地におくり、それを《スピラの希望、ユウナ》で場に戻すことを目指します。環境にまともな墓地対策がないのもあり、回ったこのデッキを止めるのは困難です。
墓地肥やしの手段として、《町の歓迎者》に加え、赤を入れることで手札から捨てる手段を採用しています。手札に重いカードがたまらなくなるので、安定感がウリです。
《幻獣との交わり》は、墓地肥やし手段になりつつ、墓地からリソースを獲得する手段にもなります。基本的に手札から唱えるとリソースが減るので、ほかの手段で手札から捨ててから唱えるのが理想です。
《召喚:幻獣マディン》の第Ⅱ章のマナ生成能力は、手札から重い召喚獣を唱えるために使えるので、《スピラの希望、ユウナ》が引けないときは無闇にこれらは捨てず、手札から直接唱えるのを狙ってもいいかもしれません。
継承史カードにあまり頼っていないので、ほぼそのまま『ファウンデーションズ』ありのルールでも使用可能です。その場合は《スピラの希望、ユウナ》で出せる万能除去の《払拭の光》をいれるのがおすすめです。
5色街ランプ
「街」ギミックを活かしたランプデッキです。街ランプは、強力なフィニッシャー、序盤を支えるカード、大量の街を要求し、リミテッドで完璧な街ランプを組むのは難易度が高いです。
ですので、構築でその完成形を目指してみました。ドラフトと違い、街を拾うピック手順を気にする必要がないため、気分よく土地を街まみれにすることができます。
《コヨコヨのUFO?》か《地平線への到達》で土地を伸ばし、スケールで相手を圧倒しましょう。
この構成なら《世界をめぐる旅》はほぼ2マナ4ドローですし、《異邦の詩人》もよく5ターン目からトークンを作り出します。《コヨコヨのUFO?》と《異邦の詩人》のパンプ能力は、すぐにすごい値になるはずです。
序盤がスカスカなため、盤面リセット手段として《召喚:リヴァイアサン》を採用しています。マナベースに負担はかかりますが、《古代魔法「アルテマ」》あたりを採用するのもありかもしれません。
速いデッキ相手はサイドで重点的に意識しています。この環境の《タルモゴイフ》(自称)の《ガードスコーピオン》や、《炎魔法》で序盤を持ちこたえましょう。
おわり
スタンダードなどのメジャーなフォーマットと違い、全然情報が出回っていないので、いくらでも探求の余地があります。上で紹介したリストも、まだまだ荒削りでまだまだ手を加えられるはずです。
最近マジックを始めた方でもカードを集めやすいフォーマットですので、この機会に遊んでみてください。最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
平山 怜(X)
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