はじめに
みなさん、こんにちは。
来月には『BIG MAGIC Open Vol.14』が開催されますね。国内の大規模なレガシーのテーブルトップイベントなので楽しみです。
今回の連載では『Legacy Showcase Challenge』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Legacy Showcase Challenge』 -ディミーアリアニメイトが複数-
開催日:2025年7月5日
優勝 ディミーアリアニメイト
準優勝 イゼットテンポ
3位 多色ゼニス
4位 ディミーアリアニメイト
5位 ディミーアテンポ
6位 土地単
7位 デス&タックス
8位 ディミーアリアニメイト
禁止改定直後に開催された『Legacy Showcase Challenge』。このイベントのトップ8には、シーズン終了後に開催される『Showcase Qualifier』への参加権が与えられます。
参加者250名を超える今大会では、やはりディミーアリアニメイトが最も人気のあったデッキでした。
プレイオフには、イゼットテンポ、土地単、デス&タックス、多色ゼニスなどが勝ち残っていましたが、トップメタのディミーアリアニメイトがプレイオフに3名、最終的な優勝もディミーアとなりました。
イゼットテンポ
現在のイゼットテンポは、伝統的な《秘密を掘り下げる者》を採用し《探索するドルイド》をタッチしたバージョンや、《コーリ鋼の短刀》を採用したバージョンなどが活躍しています。
《コーリ鋼の短刀》を採用したバージョンは単体除去が中心の多くのフェアデッキに強く、《バロウゴイフ》を対策することができれば、ディミーア系のデッキとも互角以上に渡り合えます。そのため、現在のようにコンボが少なめの環境では、《コーリ鋼の短刀》採用型が有力な選択肢になります。
☆注目ポイント
《コーリ鋼の短刀》を軸にしたこのバージョンは、《知りたがりの学徒、タミヨウ》や《秘密を掘り下げる者》が不採用で《濁浪の執政》も2枚とクリーチャーは必要最低限にまで絞られています。マナが余っていれば、《濁浪の執政》に《コーリ鋼の短刀》を装備させて速攻を付与することもできます。
最近ではめずらしい《もみ消し》が採用されています。自分のターンに複数のスペルをプレイして《コーリ鋼の短刀》を誘発させたいこのバージョンでは相性があまりいいとは言えないものの、土地を切り詰めているディミーアリアニメイトのフェッチランドの起動を妨害することでマナを縛ることができます。
このデッキの天敵である《バロウゴイフ》は3マナと少し重いので、《もみ消し》と《不毛の大地》で土地を縛りつつ《目くらまし》で対処していくことになります。フェッチランドの妨害以外にも《偉大なる統一者、アトラクサ》の能力を打ち消したり、The Spyなどコンボデッキに対しても有効なフレキシブルなスペルになります。
《コーリ鋼の短刀》を誘発させるために《定業》も採用されているなど、ほかのテンポデッキよりもドロースペルが多めです。また、《バロウゴイフ》対策には追加の除去として《邪悪な熱気》が選択されています。
多色ゼニス
多色デッキのエキスパートであるStryfoは、オリジナルの多色ゼニスで入賞していました。環境を問わず多色ミッドレンジやコントロールを使用し、結果を残し続けているStryfoは、愛用デッキを使い続けるアーキタイプスペシャリストの希望です。
キャントリップ、優秀な除去、打ち消しとそろっており、《緑の太陽の頂点》で緑のクリーチャーを状況に応じてサーチしてくることもできます。《自然の秩序》で《偉大なる統一者、アトラクサ》をサーチして圧倒的なアドバンテージ差をつけることも可能です。
☆注目ポイント
《脱皮の世話人》はフェッチランドが使えるレガシーでは優秀なマナクリーチャーになります。切削能力もあるため《自然の怒りのタイタン、ウーロ》ともシナジーがあります。
『タルキール:龍嵐録』のカードの《キシュラの掠め飛び》は、《鋭い目の管理者》や《脱皮の世話人》など墓地を追放するカードと組み合わせることで、毎ターンドローすることができます。
サイドにも《緑の太陽の頂点》でサーチできるクリーチャーが複数採用されています。《溜め込み屋のアウフ》はサーチ可能な《無のロッド》で、カーンフォージなどアーティファクトデッキとのマッチアップで使えます。
《飢餓の潮流、グリスト》はサーチ可能な除去兼アドバンテージ源として、フェアデッキとのマッチアップで活躍します。追加の《自然の秩序》のサーチ先として採用されている《終わらぬ歌、ウレニ》は、白い除去が中心のコントロールやデス&タックス相手で対処されにくいフィニッシャーになります。
デス&タックス
環境にコンボデッキが少なく、リアニメイトやイゼットテンポが多い今大会は、優秀な除去や墓地対策が使えるデス&タックスにとって勝ちやすいフィールドでした。
デス&タックスと表記されていますが、《スレイベンの守護者、サリア》は不採用で《ベイルマークの大主》《溌剌の牧羊犬、フィリア》など、レガシー版のオルゾフブリンクといったところです。《思考囲い》が使えるのでコンボに対する耐性も上がっています。
☆注目ポイント
ディミーアリアニメイトがトップメタの現環境なので、対策となる《封じ込める僧侶》《骨の皇帝》《獅子の飾緒》に加えて《フェアリーの忌み者》もメインから採用されています。これらはすべて《護衛募集員》でサーチ可能です。特に《封じ込める僧侶》は、スニークショーや《緑の太陽の頂点》デッキにも有効です。
モダンのオルゾフブリンクと同様に、序盤から《ベイルマークの大主》を「兆候」でプレイし、《ちらつき鬼火》や《溌剌の牧羊犬、フィリア》でブリンクしながらテンポアドバンテージとカードアドバンテージを同時に稼ぐことができます。
モダン以上に特殊地形の多いレガシーでは、《白蘭の幻影》は軽い土地破壊として機能し、ブリンクで再利用する動きも強くメインから採用されています。
『Legacy Challenge 32』 -環境のトップメタに強いデッキ-
開催日:2025年7月12日
優勝 カーンフォージ
準優勝 土地単
3位 グリクシステンポ
4位 ディミーアリアニメイト
5位 イゼットテンポ
6位 《煙霧の連鎖》コンボ
7位 土地単
8位 クレイドルコントロール
北米の『Eternal Weekend』をひかえているからか、参加者72名と最近の『Legacy Challenge』のなかでも一番規模が大きかったイベントでした。
ディミーアリアニメイトはカーンフォージなど厳しいマッチアップが多く、プレイオフまで残ったのはわずか1名で準決勝で敗退していました。入賞していた各デッキもメイン、サイドともに複数の墓地対策が用意されているなど対策が徹底していたようです。
カーンフォージ
トップメタのディミーアリアニメイトに強いデッキで、最近特に高い勝率を出しているのがカーンフォージです。マナ加速を利用して《一つの指輪》やデッキ名にもなっている《神秘の炉》など、強力な無色スペルを早い段階から展開して圧倒します。
1枚でも通れば勝てるほどの強力なスペルが多いのでマリガンにも強く、今後このデッキが流行るなら《無のロッド》や《溜め込み屋のアウフ》 といったアーティファクトの起動を封じるカードや、《記憶への放逐》を用意しておく必要がありそうです。特に《記憶への放逐》は1マナでこのデッキのほとんどのスペルを打ち消すことができ、《ウルザの物語》のⅢ章の誘発も止めることができます。
☆注目ポイント
『モダンホライゾン3』から《まばゆい肉掻き》と《コジレックの命令》が登場して以来、勝ち手段の幅が広がりました。大量に出るマナを利用したこのコンボは、それだけでもゲームに勝つのに十分ですが、これらは単体でも十分に強力なカードで、《まばゆい肉掻き》は戦闘以外のダメージ源になります。
《コジレックの命令》は柔軟性のあるスペルであり、ディミーアリアニメイトのコンボ、フェアのどちらの戦略にも対応できるので、このデッキがリアニメイトに強い理由のひとつになります。
《コジレックの命令》以外にも、《ウルザの物語》からサーチ可能でドローに変換できる《魂標ランタン》や、《大いなる創造者、カーン》のサーチ能力によってメイン戦でも使える《トーモッドの墓所》、そしてサイドにフル搭載された《虚空の力線》と墓地対策が徹底しています。
《次元の結節点》+《ウルザの塔》で4マナが出るので、マナアーティファクトに頼ることなく《神秘の炉》など強力なカードをプレイすることができます。《Candelabra of Tawnos》+《通電式キー》でもマナが大量に出るので、先ほど挙げた《まばゆい肉掻き》+《コジレックの命令》のコンボで勝つことも可能です。
『タルキール:龍嵐録』から登場した《嵐の目、ウギン》は、新たなフィニッシャー兼アドバンテージ源として定着しています。《水蓮の花びら》など軽いマナアーティファクトを多用するこのデッキでは、複数回能力を誘発させることも容易です。
総括
プレイパターンが問題視されていたThe Spyでしたが、トップメタのディミーアリアニメイトと相性が悪いことと、各デッキが複数の墓地対策をメイン、サイドともに採用していることから最近は落ち着いてきています。
《虚空の力線》や《フェアリーの忌み者》といった墓地対策はどんなデッキでも採用できる墓地対策になりますが、ディミーアリアニメイト側も《オークの弓使い》や《バロウゴイフ》といったクリーチャーを増量してよりフェアに寄せることで対応可能です。
テンポデッキの中では《コーリ鋼の短刀》が高い勝率を出しています。ディミーアのカードパワーに押されがちだと思われていましたが、トークンが並び速攻でライフを削ることができるため、単体除去が中心のリアニメイトに対しても《バロウゴイフ》さえ何とかできれば押し切ることができます。
コンボデッキが振るわないなか、ディミーアリアニメイトに強いカーンフォージは結果を残し続けています。今後は《記憶への放逐》や《無のロッド》をサイドボードに用意するなど対策する必要が出てきそうです。
USA Legacy Express vol.258は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!