はじめに
みなさんこんにちは。
今週末には新セットの『久遠の終端』がリリースされ、来月には日本国内で開催されるテーブルトップのモダンのイベントのBMOチームモダンが開催されます。新環境ではどんなデッキが活躍するのでしょうか。
さて、今回の連載ではModern Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Modern Challenge 32』 -現代のモダンに迫る死の影-
開催日:2025年7月11日
優勝 グリクシスシャドウ
準優勝 ボロスエネルギー
3位 ネオブランド
4位 レン&オムナス
5位 繁殖鱗コンボ
6位 ボロスエネルギー
7位 ライブラリーアウト
8位 ホロウワン
今大会の優勝は、なんと現代向けに調整されたグリクシスシャドウでした。
トップメタのボロスエネルギーが安定した成績を残し続けているなか、繁殖鱗コンボ、ライブラリーアウト、レン&オムナス、ネオブランド、ホロウワンなど様々なアーキタイプが結果を残しています。
グリクシスシャドウ
かつてはモダンのトップメタの一角を担っていた《死の影》デッキは、カードパワーのインフレに着いていけずに衰退していったデッキの一つです。しかし、今大会では現代の強力なカードを複数採用し、アップデートしたバージョンが優勝をおさめました。
モダンではフェッチランド、ショックランド、《思考囲い》といったライフを能動的に減らす手段が複数存在するため早い段階から驚異的なサイズの《死の影》を展開することができます。相手の除去は《頑固な否認》でカウンターしていき、ブロッカーは《致命的な一押し》や《稲妻》で除去していきます。軽い除去、アドバンテージ源の《表現の反復》、軽い回避能力持ちのクロックでドローの質も向上させる《ドラゴンの怒りの媒介者》と一通り揃っているのでテンポ、ミッドレンジとしても優秀です。
☆注目ポイント
復権の兆しを見せているグリクシスシャドウが現代の強力なカードを加えたことによってどのような進化を遂げたのか見ていきたいと思います。まずは昨年リリースされ、モダンの環境を激変させた強力なセットの『モダンホライゾン3』から。
《超能力蛙》は説明するまでもなく青黒のデッキなら使わない理由を探すのが難しいぐらい強力なクリーチャーです。ドローができ、飛行も得ることができ、フィニッシャーにもなります。《ネザーゴイフ》は《ドラゴンの怒りの媒介者》や《ミシュラのガラクタ》を使ったこのデッキでは速い段階からフィニッシャー級のサイズに強化されます。
《記憶への放逐》はアーティファクトデッキやエルドラージだけでなく、このデッキにとって対処が困難な《ドラコの末裔》 や、天敵である《孤独》の出たとき能力などもカウンターできるので、サイドにフルで採用されています。
『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』のカードも採用されています。《暗黒騎士、セシル》はFF4の主人公でダメージを与える度にその数値分だけライフロスする『あんこく』は同作品で自身のHPを引き換えに敵にダメージを与えるコマンドのあんこくをリスペクトしたものになっています。
本来はデメリットであるはずのライフロスも《死の影》とのシナジーからメリットになります。死の影デッキはフェッチランドやショックランドによってライフを減らせるので、《暗黒騎士、セシル》を変身させることも容易です。《覚醒のパラディン、セシル》に変身後は絆魂持ちになってしまうので《死の影》との相性は悪くなる点には注意です。しかし、《覚醒のパラディン、セシル》は単体でも十分に強力なクリーチャーでパワーが4なので《頑固な否認》の獰猛も達成しやすくなります。
『Modern Challenge 64』 -非コンボデッキ多数-
開催日:2025年7月20日
優勝 イゼット果敢
準優勝 親和
3位 ドメインズー
4位 ディミーアマークタイド
5位 エルドラージ
6位 ジェスカイコントロール
7位 ボロスエネルギー
8位 ドメインズー
イゼット果敢が優勝、準優勝は親和、そのほかはドメインズー、ディミーアマークタイド、ボロスエネルギーなど非コンボデッキが中心でした。
ディミーアマークタイド
モダンの青黒軸のデッキには《忌まわしき眼魔》を採用したバリエーションが存在しますが、《忌まわしき眼魔》は墓地に依存することもあり、現環境でボロスエネルギーに次いで人気があるオルゾフ/エスパーブリンクとの相性が悪いため、古典的な《濁浪の執政》をフィニッシャーとしたバージョンのほうがいい立ち位置にあります。
このバージョンで墓地を使った勝ち手段は《濁浪の執政》3枚のみ。《忌まわしき眼魔》を採用したバージョンと比べると相手の墓地対策にも耐性があり、2マナでプレイできるフィニッシャーなので3マナの《忌まわしき眼魔》と比較して、カウンターのためにマナを立てやすくなります。オルゾフ/エスパーブリンクとのマッチアップ以外では頼れるフィニッシャーです。
☆注目ポイント
《緻密》はオルゾフ/エスパーブリンクやアミュレット・タイタンに強く、除去やカウンターを多用するこのデッキならゲームも長引きやすいので普通にプレイすることもできます。《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術とも相性がいいクリーチャーになります。
《シェオルドレッドの勅令》はドメインズーの《ドラコの末裔》など単体除去に耐性のある脅威に対処することができます。
《悪夢滅ぼし、魁渡》は忍術でクリーチャーをバウンスできるのでデッキ内の様々なクリーチャーを再利用できます。忍術で戦場に出るのでカウンターが効かず、クリーチャーである自分のターンには呪禁があり、相手のターンではプレインズウォーカーなので対処されにくく、オルゾフ/エスパーブリンクなどフェアデッキに強いカードになります。
1マナの優秀なカウンターが複数採用されています。《呪文嵌め》は説明するまでもなくボロスエネルギー、オルゾフ/エスパーブリンク、ベルチャー、ルビーストームなどモダンでは2マナスペルを軸にしたデッキが多いため、万能なカウンターです。
《厳しい説教》もボロスエネルギーやオルゾフ/エスパーブリンクの脅威の多くを僅か1マナでカウンターすることができます。《記憶への放逐》はエルドラージ、繁殖鱗コンボ、ベルチャーなど様々なデッキに有効です。
これらのスペルや定番の《致命的な一押し》、《思考囲い》、《定業》など優秀な1マナのソーサリー、インスタントを多用するこのデッキでは《瞬唱の魔道士》を強く使うことができます。《悪夢滅ぼし、魁渡》とも相性がいいクリーチャーの一体になります。
『Modern Challenge 32』 -フェアデッキが強い環境-
開催日:2025年7月20日
優勝 ボロスエネルギー
準優勝 オルゾフブリンク
3位 繁殖鱗コンボ
4位 ジェスカイコントロール
5位 繁殖鱗コンボ
6位 親和
7位 エスパーブリンク
8位 エスパーブリンク
トップメタのボロスエネルギーが優勝、その次に人気があるオルゾフ/エスパーブリンクもプレイオフに3名と安定した成績を残していました。
ジェスカイコントロール
ジェスカイコントロール自体は古くからモダンに存在するアーキタイプですが、その構成は時代によって変化を見せています。使いまわせる強力なフィニッシャー兼除去《火の怒りのタイタン、フレージ》と《虚構漂い》や《食糧補充》といったアドバンテージ源、そして 《孤独》や《否定の力》といったピッチでプレイできるスペルを中心にしたのが現代版のジェスカイコントロールです。
スイーパー(全体除去)を多めに積んだミッドレンジスタイルで、ボロスエネルギーなどアグロデッキに強い構成です。優秀なカウンターのおかげでコンボと戦うことができる一方、エルドラージなどビッグマナ系は苦手なマッチアップになります。
☆注目ポイント
タップアウトしても《否定の力》などのピッチスペルを構えることができ、戦場の脅威は自分の《虚構漂い》や《火の怒りのタイタン、フレージ》を場に残しつつ《空の怒り》で流せます。
《火の怒りのタイタン、フレージ》は『モダンホライゾン3』で登場して以来、トップメタのボロスエネルギーをはじめとした様々なデッキで採用されている強力なカードの1枚です。普通にプレイしたあとに「脱出」させれば、相手のクロックを除去しつつ6点のライフを得ます。こうなるとアグロデッキはライフを削り切ることが難しくなります。「脱出」能力のおかげで、追放系の除去を持たないフェアデッキ全般に強いクリーチャーです。
《空の怒り》も『モダンホライゾン3』から登場した強力なスイーパーで、X=1でも《知りたがりの学徒、タミヨウ》や手掛かりトークン、《ウルザの物語》、《魂の導き手》、《オセロットの群れ》、トークンなどを流すことができます。カウンターを構えるためのマナも残しやすく、マナが余っている場合はXを余分に支払って余分なエネルギーカウンターを得るという使い方も可能です。
また、コンボデッキやエルドラージを対策するために、メインから《記憶への放逐》が採用されています。
このデッキのアドバンテージ源の一つである《虚構漂い》は、プレイされたときにドローする能力が誘発するので《激しい叱責》と組み合わせることで想起でプレイしてもカードをドローしつつ、本体を場にキープすることができます。
《火の怒りのタイタン、フレージ》も、戦場に出たときの能力が誘発しなくなる代わりに、普通に唱えても戦場に定着させることができます。相手のエンド時に《激しい叱責》を設置して3ターン目に《虚構漂い》か《火の怒りのタイタン、フレージ》という動きがこのデッキの強い動きの一つになります。
『Modern Challenge 』 -モダン版のリアニメイトが優勝-
トップメタのボロスエネルギーがプレイオフの半数を占めるなか、優勝はモダンのリアニメイトデッキ御霊シュート。準優勝のバントコントロールも印象的でした。
バントコントロール
準優勝したのはオリジナル色の強いバントコントロール。《永遠の証人》を《儚い存在》でブリンクして使いまわし《オアリムの詠唱》で相手をロックしていくコントロールデッキです。
ドロースペル、除去、スイーパーと一通りそろっているため、ボロスエネルギーをはじめとしたクリーチャーデッキに強い構成で、ストームなどのコンボデッキも《オアリムの詠唱》によって妨害することができます。
☆注目ポイント
《永遠の証人》や《孤独》、《稲妻罠の教練者》といったクリーチャーを《儚い存在》でブリンクしてアドバンテージを稼いでいきます。《稲妻罠の教練者》は除去、《空の怒り》、《時を解す者、テフェリー》から《儚い存在》や《オアリムの詠唱》といったキースペルまで引き込むことができる優秀なクリーチャーで、このデッキを含めた多くの青いコントロールで採用されています。
《語りの調律》は僅か1マナでドローを進めつつエネルギーを得ることができ、これのおかげで《空の怒り》をより軽いコストでプレイすることができるようになります。1ターン目に《語りの調律》、2ターン目に《空の怒り》をプレイすることで相手が展開した1マナ域の脅威や《ウルザの物語》やそれによって生成された構築物トークンを流せます。
《永遠の証人》、《儚い存在》、《オアリムの詠唱》が揃えば毎ターン《永遠の証人》をブリンクさせて《オアリムの詠唱》を使いまわせるようになります。インスタント以外唱えられず攻撃もできないソフトロック状態にでき、《時を解す者、テフェリー》が場にあれば相手を完全にロックすることができます。
総括
トップメタのボロスエネルギーを中心に、ブリンク、ベルチャー、繁殖鱗コンボ、アミュレット・タイタンといったコンボデッキも複数結果を残しておりそのコンボに強い青黒のデッキも上位でよく見られるようになりました。
モダンらしく毎回様々なデッキが活躍する、群雄割拠の環境なのでプレイしていて一番楽しい時期といえます。
USA Modern Express Vol.137は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!