はじめに
みなさん、こんにちは。
今週末は『第11期パウパー神挑戦者決定戦』が開催されます。大規模なパウパーのテーブルトップイベントなのでぜひお見逃しなく。
さて、今回の連載ではMagic Onlineで開催された『Pauper Showcase Challenge』と『Pauper Showcase Qualifier』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Pauper Showcase Challenge』 -安定のジャンド-
開催日:202X年月日
優勝 ジャンドワイルドファイア
準優勝 The Spy
3位 エルフ
4位 青単フェアリー
5位 ジャンドワイルドファイア
6位 呪禁オーラ
7位 マッドネスバーン
8位 マッドネスバーン
参加者292名という大変長丁場なイベントを制したのは、パウパーの定番デッキであるジャンドワイルドファイアでした。
ほかには、パウパーでも活躍するコンボデッキのThe Spyや、青単フェアリー、エルフ、呪禁オーラ、バーンなどさまざまなデッキが見られました。
ジャンドワイルドファイア
『モダンホライゾン3』から《のたうつ蛹》が登場して以来、上位でよく見られるようになったデッキです。
優秀な除去にアクセス可能で、《刷新された使い魔》と《のたうつ蛹》というパウパーでも最強クラスのクリーチャーや、《クラーク族のシャーマン》《毒素の分析》のコンボ、《浄化の野火》と橋のシナジーなどがそろっており、不利なマッチアップが少なく安定しているため、現パウパーベストデッキのひとつとされています。
先週末の『Showcase Qualifier』でも優勝していたことから、今週末のパウパー神でも間違いなく見かけるデッキになりそうです。
《血の泉》や《胆液の水源》など親和でも採用されているカードが複数見られますが、対応力の高さとコモンとは思えないほどのスペックである《のたうつ蛹》が使えることから、現在はジャンドのほうが人気があります。
☆注目ポイント
《浄化の野火》を破壊不能の《鉱滓造の橋》に撃つことで、キャントリップつきの《不屈の自然》のように機能します。これにより、ドローしつつマナ加速できるので《のたうつ蛹》のような強力な4マナ域に安定して繋げることができます。
《のたうつ蛹》は、唱えたときに出る落とし子・トークンを1体生け贄にするだけで《稲妻》の圏外になるなど耐久性に優れています。落とし子・トークンはチャンプブロッカーとしても機能し、《腸抜きの洞察》や《熱狂的な献上》でドローに変換することも可能です。
《刷新された使い魔》は「親和(アーティファクト)」を持ち、デッキ内の複数のカードとシナジーのあるカードで、《のたうつ蛹》と並んで現環境で最高のクリーチャーの1体になります。回避能力持ちでハンデス能力があるのでコンボデッキにも刺さり、アドバンテージも取れるので消耗戦においても優秀です。
《クラーク族のシャーマン》はパウパーを代表する全体除去のひとつで、《毒素の分析》で接死を付与することでタフネスの高いクリーチャーにも対処できます。また《毒素の分析》から手掛かり・トークンが生成されるので、《クラーク族のシャーマン》の起動コストにそのまま充てることが可能です。
優秀な全体除去に加えて、《喪心》や《紅蓮破》にアクセスできるところもジャンドの特徴です。墓地対策の《虚無の呪文爆弾》もメインから採用されており、青単テラーやドレッジなど墓地を使うデッキに対しても上手く立ち回れます。
マッドネスバーン
《血管の施し》や《吸血鬼の口づけ》など黒い火力の入ったブラッドバーンもありますが、今回入賞したバージョンは赤単色でした。
《信仰無き物あさり》《目標の強奪》《街道筋の強奪》といったルーティングスペルと、「マッドネス」火力の《癇しゃく》や、3枚目のカードを引くことで墓地から戻る《こそこそサクサク》のシナジーを活用したバーンデッキです。アドバンテージを損することなくカードを使えるため、ロングゲームにも強い構成になっています。
☆注目ポイント
色が合っていないにもかかわらず採用されている《こそこそサクサク》は、血・トークンや《信仰無き物あさり》などで簡単に墓地から復活する信頼性の高いクロックで、このデッキの主力クリーチャーになります。
《ヴォルダーレンの美食家》はダメージを与えつつ血・トークンを生成することができ、このデッキにとって必要なことの多くをこなしてくれます。
《目標の強奪》で《癇しゃく》を捨てると実質5点火力として機能します。《こそこそサクサク》とも相性が良く、このデッキでは有用なルーティングスペルになります。
《街道筋の強奪》はあらかじめ「計画」しておくことで、狙ったターンに引いたカードをより有効に使うことができます。
青単テラーやハイタイドといった、青ベースのデッキ全般に有効な《紅蓮破》《赤霊破》にアクセスできることも、赤いデッキを使うメリットのひとつです。
エルフのように小型クリーチャーを並べてくるデッキに有効な《火の中へ投げ捨てる》や、親和に有効な《ゴリラのシャーマン》など、単色でありながら現環境の主要なデッキと互角以上に渡り合うツールを持ち合わせています。
『Pauper Showcase Qualifier』 -青いデッキが複数入賞-
開催日:2025年8月15日
優勝 ジャンドワイルドファイア
準優勝 ハイタイド
3位 バーン
4位 青単フェアリー
5位 青単テラー
6位 青単テラー
7位 カルニブラック
8位 ディミーアフェアリー
先週末にMOで開催された『Showcase Challenge』のプレイオフ入賞者と、直前予選で5-0したプレイヤーのみが参戦できるイベントで、優勝者にはMOCS本戦とプロツアーへの参加権が与えられます。
今大会の上位は、定番の青単テラー、フェアリー、ハイタイドといった青ベースのデッキが中心で、優勝したのは『Showcase Challenge』でも優勝していたジャンドワイルドファイアでした。
ハイタイド
《満潮》の禁止解除後に結果を残し続けているハイタイドですが、今大会では惜しくも優勝こそ逃したものの準優勝と好成績を残しました。
《満潮》を2枚以上プレイした状態で《精神のくぐつ》や《見えざる糸》といった土地をアンタップできるカードでマナを増やし、各種ドロースペルをチェインさせていきます。最終的な勝ち手段は主に《思考の流れ》で、大量のマナから「複製」で相手をライブラリーアウトさせます。
☆注目ポイント
《精神のくぐつ》は《留まらぬ発想》や《深遠の覗き見》《霧中の到達》といった「秘儀」スペルと連繋することで、コンボの途中で島をアンタップしつつ必要なスペルを補充することができ、スムーズにコンボを繋げることができます。《満潮》後に十分な土地をアンタップできるスペルがあれば、《洞察力の花弁》で無限マナを生成してループさせることも可能です。
コンボを通すために相手の妨害を対策することはマストになります。相手のエンド時に《万の眠り》でマナをタップアウトさせることで、安全にコンボターンに移行できます。また、カウンターなどからコンボを守るために《交錯の混乱》や《払拭》がサイドに採られています。
《交錯の混乱》は「変成」持ちなので、《精神のくぐつ》などキーカードをサーチする手段にもなるため、メインから採用したリストも散見されます。
青単テラー
青単テラーは、パウパーの青ベースのコントロールデッキの中でも、現環境のトップメタの一角を担っています。
《留意》や《思考掃き》といった墓地を肥やしつつドローできるカードで手札を充実させつつ、《謎めいた海蛇》《トレイリアの恐怖》の早期プレイを目指します。《秘密を掘り下げる者》と合わせて圧をかけつつカウンターでバックアップすることで、クロックパーミッションのように振る舞うこともできます。
☆注目ポイント
《ロリアンの発見》は墓地を肥やしつつ土地をサーチできるため、デッキ内の土地をぎりぎりまで切り詰められるようになり、マナフラッドの防止に一役買っています。ドローとしても使えるので、マナが余る中盤以降は、すぐにサイクリングせずに手札に置いておくことも重要になってきます。
《謎めいた海蛇》や《トレイリアの恐怖》は強力なクリーチャーですが、回避能力がないので確実に攻撃を通すために使えるのが《死者の眠り》です。「脱出」で何度も唱えることができ、《のたうつ蛹》のような厄介な脅威も対処することができます。
サイドの《はらわた撃ち》は、このデッキにとって相性の悪いデッキであるエルフをはじめとしたクリーチャーデッキとのマッチアップで活躍します。
現環境のパウパーは赤いデッキが強い環境なため、《青霊破》や《水流破》は優秀な妨害として機能します。そして、親和をはじめとしたアーティファクト、エンチャントを多用するデッキも多いので《無効》もマストとなります。
総括
MOで開催された大型イベントの結果を見てきましたが、ジャンドワイルドファイアのようなミッドレンジから、マッドネスバーン、エルフといったアグロ、ハイタイド、The Spyなどのコンボデッキなどさまざまなデッキが見られました。
試験的に禁止解除されたハイタイドについては、特にトーナメントの進行に支障をきたしそうなプレイパターンについて論争が交わされているようです。しかし、まだ環境を支配するほどには至っておらず、明確に不利なデッキも存在しているので、このデッキが環境に存在することは問題ないという意見も散見されます。
USA Pauper Express vol.3は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。良いパウパーライフを!