はじめに
みなさん、こんにちは。
今週末にはアメリカ・アトランタでプロツアー『久遠の終端』がモダンで開催されます。世界のトッププレイヤーがどのようなデッキを持ち込むのか要注目です。
さて、今回は『第31期モダン神決定戦』の入賞デッキを見ながら現在のモダンを解析していきたいと思います。
『第31期モダン神決定戦』-モダンでもリアニメイトが大活躍-
開催日:2025年9月15日
優勝 エスパー御霊
準優勝 ドメインズー
3位 イゼット果敢
4位 マルドゥエネルギー
5位 青単トロン
6位 エルドラージトロン
7位 ボロスエネルギー
8位 ピナクル親和
人気の構築フォーマットなこともあり、参加者166名で開催された『第31期モダン神決定戦』。
メタゲームブレイクダウンによれば、エスパーブリンクが最も人気のあったデッキで、次点でエルドラージトロン、ピナクル親和と続いており『久遠の終端』が環境に大きな影響を与えていたことが確認できました。
エルドラージトロンは《量子の謎かけ屋》を使ったデッキと親和の両方に強いため、多くのデッキが《記憶への放逐》を採用しているとはいえ、現在のモダンでいい立ち位置にあります。
エスパー御霊
《偉大なる統一者、アトラクサ》や《グリセルブランド》といった伝説のクリーチャーを墓地に落として《御霊の復讐》でリアニメイトする強力なコンボデッキで、今大会のプレイオフでもその強さを見せてくれました。
リアニメイトプランだけでなく、《超能力蛙》《孤独》《否定の力》、そして『久遠の終端』から登場した《量子の謎かけ屋》を駆使することでミッドレンジとしても振る舞うことができます。戦略の幅の広さがこのデッキの魅力です。
☆注目ポイント
「ワープ」した《量子の謎かけ屋》を《儚い存在》でブリンクすることで、ドローしつつ4/6飛行を戦場に残すことができます。このカードのおかげで消耗戦にも強くなり、リアニメイトプランを対策されてもミッドレンジプランが実行しやすくなりました。《量子の謎かけ屋》は間違いなく今週末に開催されるプロツアーでも活躍するカードと予想されます。
《孤独》+《儚い存在》は一度に複数のクリーチャーを追放しつつ3/2絆魂が残るので、ドメインズーやイゼット果敢、ボロスエネルギーなどクリーチャーデッキ全般に刺さります。
デッキの性質上マリガンも多くなりますが、クリーチャーデッキとのマッチアップなら《孤独》と《儚い存在》が手札にあればコンボまでの時間を稼ぐことができ、《偉大なる統一者、アトラクサ》をリアニメイトできればアドバンテージを一気に取り返せます。
《不吉な儀式の僧侶》は追加のリアニメイトスペルとして機能するクリーチャーで、「蘇生」持ちなので中盤以降余ったマナの使い道にもなります。
サイドの《記憶への放逐》は青いデッキでは必ず採用されているといってもいいスペルで、エルドラージトロンだけでなくドメインズーの《ドラコの末裔》《力線の束縛》も対策できるフレキシブルなスペルです。
ボロスエネルギー
現環境のトップメタの一角を担うデッキのボロスエネルギーも高い勝率を維持しています。主力である《オセロットの群れ》《火の怒りのタイタン、フレージ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《魂の導き手》の4種類のカードの内、3枚はカードパワーの高い『モダンホライゾン3』の神話レアなためデッキパワーの高さも納得です。
個々のカードの質も高く、序盤から終盤までゲーム全体を通して安定した強さを見せます。しかし、環境のトップメタとはいえ無敵というわけではなく、青単ベルチャーやエスパー御霊などコンボデッキには苦戦を強いられます。
☆注目ポイント
一般的なリストでは3枚の採用が多い《栄光の闘技場》ですが、ナカミチ氏のリストは4枚の採用になっています。《火の怒りのタイタン、フレージ》との相性は抜群で、この土地を使って「脱出」させれば速攻を付与させることができ、勝負の流れを一変させることができます。
アドバンテージ源として《鏡割りの寓話》と《歴戦の紅蓮術士》の両方を散らしたリストをよく見かけますが、《歴戦の紅蓮術士》のみの採用になっています。《歴戦の紅蓮術士》は手札が空のときにあると嬉しいカードで、トークン生成能力は《魂の導き手》ともシナジーがあります。
カウンターやハンデスが使えないボロスエネルギーはコンボデッキを苦手としますが、サイドボードの選択肢が豊富なため、サイド後に多くのデッキとの相性を改善させることができます。
《封じ込める僧侶》は、エスパー御霊をはじめとしたさまざまな墓地デッキの対策手段として機能しつつ、《霊気の薬瓶》《儚い存在》《召喚の調べ》などにも効きます。
《空の怒り》はミラーマッチや親和など、多くのクリーチャーデッキ相手にリセットボタンとして機能します。また、ボロスエネルギーは2色デッキなので多色デッキやビッグマナ対策として《血染めの月》を有効に使うことができます。
ルール変更によって、《血染めの月》が《ウルザの物語》対策としては機能しなくなったため、別の対策を用意する必要があります。《白蘭の幻影》は《ウルザの物語》を割ることができ、青単ベルチャー相手には土地を割ることでコンボターンを遅らせることが可能です。
ドメインズー
かつてのドメインズーは《野生のナカティル》や《部族の炎》などでライフを攻める多色のアグロデッキでしたが、現代では《ドラコの末裔》+《ギルドパクトの力線》コンボを搭載したカードパワーの高いデッキになっています。
多色デッキなことを活かしてカウンターや墓地対策など、妨害の選択肢が豊富なこともこのデッキの魅力で、ほかのアグロデッキよりもコンボデッキとの相性が若干良くなっています。
☆注目ポイント
一般的なリストでは《頑固な否認》がメインから採用されていますが、タカヤ氏のリストはクリーチャーが場にいない状態でもコンボに対する妨害として機能する《呪文貫き》が優先されています。
メインから採用されている《門衛のスラル》は、最近多い《量子の謎かけ屋》をはじめとした戦場に出たときの能力を持つクリーチャーを対策する手段です。瞬速持ちなので奇襲性があり、コストも軽いので使いやすいクリーチャーになります。
アーティファクトデッキ対策の《鳴り渡る龍哮の征服者》や《溶融》、エルドラージ対策の《記憶への放逐》、リアニメイト対策の《封じ込める僧侶》など、サイドの選択肢が豊富なところもこのデッキの魅力です。
ピナクル親和
親和は『久遠の終端』から登場した《ピナクルの特使》によって大幅に強化されました。「ワープ」で1ターン目からプレイでき、0マナアーティファクトをプレイするたびにトークンで場を埋め尽くすことができます。
《ウルザの物語》と《河童の砲手》はフェアデッキにとって効率的に対処するのが難しく、ボロスエネルギーにも強いデッキになります。コンボに対しては不利ですが、ベルチャーなど遅いコンボ相手には特にサイド後は良い勝負ができます。
☆注目ポイント
《河童の砲手》は「護法」により単体除去で処理されづらく、このデッキに対して有効なサイドカードである《溶融》や《空の怒り》の効果を薄めることができます。
《影槍》を装備できれば、アグロデッキとのダメージレースが大きく有利になります。《影槍》は《ウルザの物語》でサーチでき、構築物・トークンもこのデッキならすぐにフィニッシャー級のサイズになります。《オパールのモックス》や《バネ葉の太鼓》といったマナ加速が絡めば、2ターン目から構築物・トークンを生成しはじめられます。
このデッキは《ピナクルの特使》と《オパールのモックス》による爆発的なスタートを切ることが重要です。《思考の監視者》や《物読み》で手札を補充できるため、《ピナクルの特使》や軽いアーティファクトを求めて積極的にマリガンすることが推奨されます。
基本的に親和はフェアデッキに強く、コンボには弱くなりますが、サイドには《記憶への放逐》《血染めの月》《否定の力》などがあるため、アミュレットタイタン、ルビーストーム、ベルチャーといったデッキは対処しやすいマッチアップになります。
総括
昨夏のナドゥ一強だった環境と異なり、現環境は複数のアーキタイプが結果を残している良環境です。ボロスエネルギーが人気、勝率とともに安定しているため、プロツアーでも多くなることが予想されます。
また、安定した成績を残し続けている青単ベルチャーも、ボロスエネルギーに強いためコンボデッキの中でも多くの使用者がいそうです。
『久遠の終端』が環境に与えた影響は大きく、特にエスパーブリンクやエスパー御霊を強化した《量子の謎かけ屋》はプロツアーでも注目のカードの1枚になるかもしれません。
USA Modern Express vol.140は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!