スタンダード神防衛!イゼット大釜で赤単に勝つ方法

平山 怜

はじめに

平山怜

こんにちは。Hareruya Prosの平山(@sannbaix3)です。

9月15日の『第31期スタンダード神決定戦』で勝利し、無事防衛できました。今回はその参加レポートを書こうと思います。

神決定戦とは?

神決定戦』とは、晴れる屋が主催している大会です。『挑戦者決定戦』というトーナメントを行い、優勝者が「挑戦者」となり、現タイトルホルダーの「神」と戦います。そこでの勝利者が次の神になるというシステムです。

前回の『挑戦者決定戦』で優勝し、神決定戦で勝利した私がスタンダードの現神というわけですね。

神には、以下の特典が与えられます。

■特典

・神決定戦での対局料10万円

・次の神決定戦までの間、晴れる屋での大会参加費無料

これを神決定戦のたびに受け取ることができます。

つまり、一度神になれば1戦勝つだけで10万円もらえるようになります。これは負けるわけにはいかないっすね〜。

神決定戦はスタンダード、パイオニア、モダン、レガシー、ヴィンテージ、パウパー、統率者戦、リミテッドの8つのフォーマットで行われています。競技の入口としても目標としてもちょうど良い大会なので、まだ参加したことがない方は、ぜひお気に入りのフォーマットで参加してみてください。

環境理解

まずは使用するデッキを決めます。神決定戦の神側のデッキ選択は少し特殊で、誰と当たるか分からないオープンな大会と違い、挑戦者決定戦の優勝者としか対戦しません。

なので、デッキを幅広く対応する必要はなく、ある程度優勝者のデッキを予想して、それにあわせて決めることができます。ということで、まずは優勝しそうなデッキを予想するところからはじめます。

アメリカのオーランドで開催された『スポットライト・シリーズ』の結果を確認したところ……

▲トップ8

▲有志によるデッキごとの勝率まとめ

健全すぎる……。

大きくわけて、以下の3つのデッキに分けられそうです。

イゼット大釜

デッキリストページ

プロフトの映像記憶迷える黒魔道士、ビビアガサの魂の大釜

評判どおり、現環境最強デッキ。アーキタイプ別勝率でも赤単以外全対面有利です。

赤単

デッキリストページ

焼き切る非行士剃刀族の棘頭新星のヘルカイト

スポットライトでは驚異の全対面有利(負け越しているのは自分より少し重い赤単)。イゼット大釜に対するメタデッキとして現れたにも関わらず、イゼット大釜以外にも有利になっており、ただ強いデッキの可能性があります。

オルゾフピクシーなど、イゼット大釜に勝てなくて環境から消えたデッキに不利な可能性はありつつも、非常に優秀な成績を納めています。

そのほかのデッキ

悪夢滅ぼし、魁渡マラング川の執政ティムールの戦告者

上2つの少なくともどちらかに勝てないです。もしかしたら、まだ未開拓なデッキがイケてる可能性はあるかもしれませんが、レアケースです。『挑戦者決定戦』で優勝する可能性は低いでしょう。

勝ち上がってくるデッキは、おおむね「イゼット大釜」か「赤単」のどちらかになることが予想されます。自分のデッキについても同様で、イゼット大釜か赤単を使えば大きく外すことはなさそうです。

最強デッキ、イゼット大釜

2つのデッキを考えるうえで、焦点は「イゼット大釜」対「赤単」になります。

赤単はイゼット大釜に対するメタデッキとして現れたのだから、赤単有利。つまり、赤単を使えということでは?と思うかもしれません。もちろん、そう思っている時代が僕にもありました。

アガサの魂の大釜迷える黒魔道士、ビビ

しかし、イゼット大釜の100点の動きに対して、赤単側は基本的に無力です。《削剥》を構え続けることがデッキの構成上難しいため、どうしても手札のそろったイゼット大釜の動きに対応しきれません。

塔の点火

また、直近のイゼット大釜は《塔の点火》をメインに採用しない構成が流行していたことも、赤単にとってかなりの追い風でした。《塔の点火》は間違いなくイゼット大釜が赤単相手に欲しいカードであり、メイン戦の赤単の優位を担保している大きな要因です。赤単が流行した今、イゼット大釜は再び《塔の点火》を採用するようになるでしょう。

冬夜の物語量子の謎かけ屋

そうなると、赤単の優位性は大きく揺らぎます。また、『神決定戦』がリスト公開制であることも、イゼット大釜に対して有利に働くポイントです。

イゼット大釜は少ない枚数でゲームに勝つことができるコンボを内蔵しており、《冬夜の物語》《量子の謎かけ屋》のようなリソース回復手段も豊富に取りそろえています。《塔の点火》を採用したリストであればこれは非常に重要で、赤単相手はマリガンで《塔の点火》を探しにいくことがメイン戦から肯定されます。

『挑戦者決定戦』自体はリスト公開制ではないですが、決勝トーナメントになれば相手のデッキタイプくらいはわかっている状態になるので、優勝者を考慮するならこの部分は大きいと思います。

赤単のデッキ構成に不安定な部分もあり、最終的には「イゼット大釜」対「赤単」はイゼット大釜が有利になるという結論になりました。『挑戦者決定戦』も《塔の点火》をメインから採用した、赤単に勝てるイゼット大釜が優勝すると予想します。

(参考:『神決定戦』と同タイミングで開催された『Standard Showcase Challenge』優勝のkanisterのイゼット大釜。メインから《塔の点火》大量で赤単を意識した構成)

デッキリストページ

こういった構成には赤単では勝てないと予想しているので、必然的にイゼット大釜と赤単のどちらかを選ぶ場合は、自分もイゼット大釜を使用することになります。

開拓、可能性を求めて

一応1つくらい別のデッキも使ってみるかと思い、興味のあったデッキを試してみることに。

デッキリストページ

「イゼット大釜に勝てるフェアなデッキなど存在しない」と思っていたのでコンボデッキを探し、なかでもバントコーナは《アガサの魂の大釜》に干渉されない墓地を使わないコンボデッキとして注目しました。

救助のけだもの、コーナ全知セリーマ号

見てのとおり、《救助のけだもの、コーナ》をタップして《全知》を出すデッキです。《セリーマ号》が絡めば以下のルートで確実にコンボが決まります。

■コンボルート

全知セリーマ号

戦場に《全知》、手札に《セリーマ号》がある状態。

シヴァのドミナント、ジル

《セリーマ号》《シヴァのドミナント、ジル》を加える。

《シヴァのドミナント、ジル》《セリーマ号》を戻す。

③デッキの《シヴァのドミナント、ジル》がなくなるまで①②を繰り返す。

陽気なルシ、ヴァニラマラング川の執政

《セリーマ号》《陽気なルシ、ヴァニラ》を加える。

《陽気なルシ、ヴァニラ》を唱え、《マラング川の執政》が切削されれば《マラング川の執政》を加える(⑦に)。それ以外なら《シヴァのドミナント、ジル》を加える(⑥に)。

《シヴァのドミナント、ジル》《陽気なルシ、ヴァニラ》を手札に戻し、⑤に戻る。

《マラング川の執政》《セリーマ号》《シヴァのドミナント、ジル》を戻す。

落星の学者、ロクサーヌ

《セリーマ号》《落星の学者、ロクサーヌ》を加える。

《落星の学者、ロクサーヌ》をプレイする。《シヴァのドミナント、ジル》《マラング川の執政》を戻したあと、《マラング川の執政》を再プレイして《落星の学者、ロクサーヌ》《シヴァのドミナント、ジル》を手札に戻す。

《シヴァのドミナント、ジル》《マラング川の執政》を戻し、勝つまで⑨⑩を繰り返す。

陽気なルシ、ヴァニラシヴァのドミナント、ジルマラング川の執政

《陽気なルシ、ヴァニラ》は対象を取らない回収のため、《アガサの魂の大釜》では直接妨害できません。《シヴァのドミナント、ジル》を3枚入れれば、1枚追放されても2枚目と3枚目でループできます。《マラング川の執政》は落ちたらすぐ拾うので《アガサの魂の大釜》で選べるタイミングがありません。

墓地を経由しますが、《アガサの魂の大釜》での妨害はできないコンボというわけです。

最速4ターン目に決まるコンボとなかなかの速度で、《全知》さえ引けていれば幅広い手札でコンボが決まるため、デッキにはそれなりの自力があります。

しかし、最終的にこのデッキは断念します。

問題点1:マナベースが弱すぎる

繁殖池

現スタンダードのバント(緑白青)カラーはショックランドが《繁殖池》しかないため、マナベースが弱いです。特にこのデッキは《セリーマ号》が入ってるので白を中心としたマナベースにしたいのに、白絡みのショックランドがないのはあまりに致命的です。

問題点2:デッキ構成を悩んでいた

セリーマ号救助のけだもの、コーナ吹きさらしの要塞、アダージア

《救助のけだもの、コーナ》《セリーマ号》でサーチでき、《救助のけだもの、コーナ》のタップは《セリーマ号》がなくても《吹きさらしの要塞、アダージア》で行えます。デッキの強みはこのように《全知》以外のカードの代用が効くことで、ドローソースを唱える必要性が薄いことです。

全知

しかし、どうしても《全知》の代用が効きません。

ミストムーアの大主星間航路の助言

サイドボードに採用しているサブプランの《ミストムーアの大主》をメインから採用し、《救助のけだもの、コーナ》で出すカードを増やすアプローチも考えましたが、イゼット大釜に《ミストムーアの大主》がまったく有効ではなくダメでした。

また、イゼット大釜相手には《星間航路の助言》のようなドローソースではなく妨害をプレイしたいのですが、それだと《全知》が探せず、デッキの安定性を担保できませんでした。

問題点3:挑戦者決定戦から本番まで1週間ある

除霊用掃除機

突然このデッキに当たったら、何をしてくるかわからず戸惑うこともあるでしょう。たとえば、MTGアリーナでプレイしているときは、まったく効かない《除霊用掃除機》をサイドインされることも頻繁にありました。

しかし、今回は『挑戦者決定戦』終了後、使用リストが公開されたうえで『神決定戦』まで1週間あります。その間に挑戦者もたっぷりと練習ができるので、マイナーデッキ特有の初見殺し的要素はメリットにならないです。

回していて面白いデッキだったのでずっと遊んでいましたが、気づいたらリスト提出期限前日になっていたので、あきらめて鉄板デッキを選択することにしました。

提出リスト

最終的に提出したリストはこちら。

デッキリストページ

メインをミラーに寄せて、赤単は大量のサイドカードで対処、余ったサイド枠をコントロールやコンボ用のカードで埋めています。基本的にはよくあるリストなので、このリストの要点だけ解説します。

《轟音の滝》0枚、《始まりの町》2枚

轟音の滝始まりの町

対イゼット大釜、赤単ともにマナカーブどおりに動くことが重要だと考えています。

無効塔の点火

特に後手のとき、イゼット大釜相手は1ターン目の《無効》が、赤単相手は1ターン目の《塔の点火》が先手後手を入れ替える重要な役割を持っています。そのため、極力両方を1ターン目から唱えられるマナベースを目指しました。そのために確定タップインの《轟音の滝》や、色マナのだせない《魂石の聖域》を抜いて1ターン目の色カウント確保を優先しています。

メイン《塔の点火》1枚

塔の点火

前述したとおり、赤単相手に非常に有効でイゼット大釜ミラーでは微妙な1枚です。イゼット大釜が優勝すると予想していたこと、赤単はリスト公開制ならサイドからの対応でも十分だと判断したので、赤単用に調整されたイゼット大釜のリストと反して枚数を抑えています。

蒸気核の学者迷える黒魔道士、ビビ光砕く者、テルサ

1〜2枚程度であれば、ミラーでも《略奪するアオザメ》《蒸気核の学者》に当たるためそこまで足を引っ張りませんが、3マナ域のクリーチャー枚数がミラーでは重要と考え、そちらに枠を譲り最終的には1枚にしました。

普通の大会やMTGアリーナのランクマッチなら、赤単をより意識して《塔の点火》をメインに増やすと思います。

デッキの回し方や対面のプレイ練習などは相手が決まってからやればいいので、リストを決めて挑戦者が決まるまでは気絶します。

『挑戦者決定戦』で勝ち上がったのは

挑戦者決定戦』の優勝は、斉藤 萬里さんの赤単でした。

デッキリストページ

斉藤さんはなんと15歳の若手プレイヤーだそうです。普段から学生コミュニティでマジックを遊んでいるそうで、マジックの未来が明るくて嬉しいですね。

強欲の計略ティムールの戦告者

準優勝は《強欲の計略》コントロール、トップ4には《ティムールの戦告者》コンボなどがおり、イゼット大釜は0人でした。イゼット大釜が勝つという予想は大きく外れています。あまり思いどおりにはいかないものですなぁ。

事前準備

対戦相手が決まったのでゲームプランやサイドインアウトを決める練習をします。練習はいつもどおりMSD(※1)内で行いました。付き合ってくれた増田さん(※2)と熊谷さん(※3)に感謝。

(※1:正式名称「常勝集団MSD」。平山くんが普段つるんでいるマジックを嗜むおじさんの集い。何かと比べるわけではないが、平均年齢は余裕の30オーバー)

(※2:増田 勝仁。神決定戦当日の解説。晴れる屋にもたまに記事を寄稿している。Xで「増田 解説」で検索すると褒めてるポストがたくさんでてきて妬ましい)

(※3:熊谷 陸なぜかオーランドのスポットライトに参加していた。フィーチャーマッチ解説のリード・デュークに日本屈指のプレイヤーだと褒められていて妬ましい)

事前の考察と被っている点もありますが、ゲームの要点は以下の通りだと思います。

メイン戦

剃刀族の棘頭

要点1:《剃刀族の棘頭》が相手のデッキで一番強いカードです。メインには確定除去が少なく、対処が困難なため、複数枚引かれたゲームのだいたいは負けます。

雇われ爪焼き切る非行士熾火心の挑戦者

逆に、それ以外のクリーチャーは、こちらが盤面を展開できていれば無視できるものばかりです。《心火の英雄》《多様な鼠》ほどのスピード感もなければ、《巨怪の怒り》もないので一度《プロフトの映像記憶》などを用いて盤面で上回ればすぐ殴れなくなります。

噴出の稲妻稲妻の一撃抹消する稲妻焦熱の射撃

要点2:火力呪文が散っているため、赤単側が連続してタフネス4以上のクリーチャーの対処をするのは難しいです。インスタントの除去は3点までしか出ないので、《プロフトの映像記憶》《アガサの魂の大釜》を用いてうまくかわし、4点以上の火力呪文の枯渇を目指します。

逸失への恐怖

要点3:《逸失への恐怖》はタフネスが高く、赤単側にとって対処しづらいカードです。「昂揚」時の追加コンバットもダメージレースに勝つうえで非常に優秀で、《逸失への恐怖》をなるべく盤面に残すことを意識したいです。

要点4:動きにそれほど干渉してこない以上、勝つのに必要なカードは少なく、マリガンはあまり影響しないです。

略奪するアオザメ新星のヘルカイト

要点5:先手後手の差は当然大きいです。先手であれば《略奪するアオザメ》絡みのビートダウンで十分盤面を固めることができますが、後手だと間に合わないことが多いです。

特に後手の《略奪するアオザメ》は2ターン目に《プロフトの映像記憶》《逸失への恐怖》を出さない限り、先手3ターン目の《新星のヘルカイト》で除去されてしまい、損することになります。後手は《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》を頑張ってそろえたいです。

結論

略奪するアオザメプロフトの映像記憶迷える黒魔道士、ビビアガサの魂の大釜

メイン戦は積極的にマリガンし、《略奪するアオザメ》《プロフトの映像記憶》が絡んだビートor《迷える黒魔道士、ビビ》+《アガサの魂の大釜》のコンボで、デッキパワーによる圧倒を目指す。

サイド後

塔の点火声も出せない焦熱の射撃舷側砲の一斉射撃

要点1:除去が増えるので、《剃刀族の棘頭》に対処しやすくなり、カード1枚に負けることが減ります。また、複数枚除去を引いていれば1マナクリーチャーに除去を当てる余裕もできるため、先手のマナカーブのいい動きに押し切られることも減ります。

魔道士封じのトカゲ

唯一《魔道士封じのトカゲ》は火力呪文に耐えるタフネスをしていますが、クリーチャー中心の動きをすれば無痛なので無視できます。

量子の謎かけ屋

要点2:除去呪文が増えたことで、交換を繰り返して《量子の謎かけ屋》を出すゲームプランが成立します。これは除去を増やしたことによる影響として、メイン戦との一番大きな違いです。

リソース回復はもちろん、4/6というサイズが非常に優秀《新星のヘルカイト》ですらブロックでき、《焦熱の射撃》も耐えます。このプランを目指せるので、サイド後は無理にコンボを狙う必要がなくなります。

叫ぶ宿敵歪んだ忠義

要点3:メイン戦はクリーチャーを過度に大きくする裏目はせいぜい《叫ぶ宿敵》との接触くらいです。サイド後は《歪んだ忠義》があるのでその前提が変わります。

プロフトの映像記憶蒸気核の学者

たとえば、《プロフトの映像記憶》でクリーチャーを選ぶとき、メイン戦は飛行持ちの《蒸気核の学者》を大きくするのが無難なことが多いのですが、サイド後はほかに飛行クリーチャーがいないときにリスクになります。

サイズの大きいクリーチャーを作る場合は、基本的にそれを《歪んだ忠義》されてもブロックできる場合のみにします。ドローソースをあえて戦闘後メインフェイズに使用することで、《プロフトの映像記憶》で大きくしすぎることを回避するのもありです。

これらを踏まえて、サイドチェンジは以下を想定します。

vs. 赤単(先手)

Out

洪水の大口へ 洪水の大口へ 洪水の大口へ 激しき乗りこなし
冬夜の物語 冬夜の物語 アガサの魂の大釜 迷える黒魔道士、ビビ

In

塔の点火 塔の点火 塔の点火 量子の謎かけ屋
声も出せない 声も出せない 舷側砲の一斉射撃 抹消する稲妻

後手の場合は、先手のサイドチェンジから《略奪するアオザメ》2枚を抜いて《洪水の大口へ》2枚をメインに戻します。

サイドから投入するカードはわかりやすいです。抜くカードは主に以下の理由です。

コンボをそろえる必要性が減るため、被るリスクを考えて《迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》を1枚ずつ。

《冬夜の物語》は唱える暇があまりなく、リソース源は《量子の謎かけ屋》でよいので減らします。

・後手のほうがライフに余裕がないので、テンポをとることができ、最後の《歪んだ忠義》の押し込みに有効な《洪水の大口へ》を少し残します。代わりに減らすのは《新星のヘルカイト》で除去されるリスクが高くなる《略奪するアオザメ》です。

メインは不利〜五分、サイド後は有利になると予想します。メインを1本取れればおおむねいけそうだなという感想です。

試合振り返り

当日の試合は晴れる屋のYouTubeチャンネルにて配信されました。見た目どおりのゲームが多かったですが、試合の振り返りをしたいと思います。

まだご覧になっていない方はぜひ。同配信のヴィンテージ神決定戦』で友人の横川くん(※4)が優勝したので、暇ならそちらもあわせてどうぞ。

(※4:横川 裕太。MSDの仲間。前日の『ヴィンテージ挑戦者決定戦』の勝利者インタビューがやけに長かったが、本人は勝って気持ちよかったので気にしていない)

1ゲーム目

冬夜の物語迷える黒魔道士、ビビアガサの魂の大釜

マリガンして土地3枚、《略奪するアオザメ》2枚、《冬夜の物語》の手札をキープします。《冬夜の物語》を唱えたら《迷える黒魔道士、ビビ》+《アガサの魂の大釜》がそろったので、そのままこのデッキの強さを見せつけて勝利です。

(最後のターン、ターンを返しても絶対勝っていたので点数計算せず適当に攻撃しましたが、最後の手札の《洪水の大口へ》も唱えていれば《迷える黒魔道士、ビビ》のパワーが上がり、そのターン中に勝てていました)

2ゲーム目

アガサの魂の大釜迷える黒魔道士、ビビ蒸気核の学者

1マリガンして、土地2枚、《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》《蒸気核の学者》とそれ以外のような手札がきます。「そろいすぎてるな……これは風が吹いているか……」と思いながらキープします。

略奪するアオザメ新星のヘルカイト

後手1ターン目のドローは《略奪するアオザメ》。この手札であれば2ターン目に《アガサの魂の大釜》を唱えるので、3ターン目の《新星のヘルカイト》に除去されてしまいます。しかし、その場合は相手は3ターン目にタップアウトするので、こちらの《蒸気核の学者》から《迷える黒魔道士、ビビ》を捨てる動きに対処できません。

逆に除去を構えられた場合は、《略奪するアオザメ》を出しておくことで、+1/+1カウンターの置かれたクリーチャーを2体用意しておくことができます。完璧なゲームプランです。

3枚目の土地がなく、《蒸気核の学者》を唱えられないことを除けば、ですが。

メイン戦は1-1。2本目の初手をキープしたときの高揚感を考えると残念な結果ですが、当初の目論見どおりなのでよしとします。

3ゲーム目

逸失への恐怖プロフトの映像記憶塔の点火

1マリガンして、《逸失への恐怖》《プロフトの映像記憶》《塔の点火》でキープします。《プロフトの映像記憶》を引いた先手なら《雇われ爪》はすぐに殴れなくなるので、《塔の点火》はとっておきます。

《逸失への恐怖》《稲妻の一撃》で対処されないように《プロフトの映像記憶》から唱え、《剃刀族の棘頭》でタップアウトした隙に《塔の点火》で処理しつつ《逸失への恐怖》を3/4にする理想的な立ち回りができました。

斉藤さんが《抹消する稲妻》《焦熱の射撃》を引いていなかったのもあり、対処されませんでした。斉藤さんがクリーチャーを出すためにまたタップアウトした返しに、追加の3/4の《逸失への恐怖》を作ります。

蒸気核の学者

盤面がほぼ固まったかなり有利なところで《蒸気核の学者》をドローします。喜んでプレイし、《アガサの魂の大釜》を捨てて「昂揚」を達成

昂揚中なので《逸失への恐怖》で攻撃したいです。なので《プロフトの映像記憶》《逸失への恐怖》対象に使うことは確定でしょう。そこまでは斉藤さんも通します。問題はどう攻撃するかです。

逸失への恐怖略奪するアオザメ

当時の私の選択は《逸失への恐怖》《略奪するアオザメ》で攻撃し、攻撃した《逸失への恐怖》をアンタップしました。相手が何もなかったときの最大値を考えるなら一番良いプレイです。

削剥稲妻の一撃

しかし、実際は火力呪文2枚の合わせ技で対象に取った《逸失への恐怖》を除去されてしまい、追加コンバットに入ることができませんでした。

《プロフトの映像記憶》の誘発を一回分損しています。これだと斉藤さんが次のドローで《抹消する稲妻》または《焦熱の射撃》を引くと《逸失への恐怖》が両方対処されてしまい、(大きい《略奪するアオザメ》がいるためまだ有利とはいえ)《プロフトの映像記憶》+追加コンバットの優位が崩されてしまいます。

《逸失への恐怖》《略奪するアオザメ》を対象にとっていれば、《略奪するアオザメ》に除去が使われても次のターンに《逸失への恐怖》が同時に処理されることはありません。

逸失への恐怖

追加コンバットの2体目の《逸失への恐怖》への《プロフトの映像記憶》誘発に対応して、火力呪文を2枚使われるパターンでも、5/6の《逸失への恐怖》が盤面に残るため、次のターンに《焦熱の射撃》を引かれても《逸失への恐怖》は残ります。確実に次の自分のターンに《逸失への恐怖》を残せたわけです。

ちなみに、今回は大きい《略奪するアオザメ》がいたため問題ありませんでしたが、似た状況でちょうどいいクリーチャーが自分の場にいない場合は、《逸失への恐怖》で相手のクリーチャーを対象にとるのがオススメです。今回の盤面だと《魔道士封じのトカゲ》を対象にとるのがよいと思います。

結果的には斉藤さんが次のドローで有効なカードを引けなかったため、そのまま勝利します。

4ゲーム目

略奪するアオザメ塔の点火逸失への恐怖
量子の謎かけ屋迷える黒魔道士、ビビ

土地2枚、《略奪するアオザメ》《塔の点火》《逸失への恐怖》《量子の謎かけ屋》《迷える黒魔道士、ビビ》のようなハンドをキープします。いい手札ですね。

斉藤さんは1ターン目にクリーチャーを出さずにパス。

噴出の稲妻剃刀族の棘頭

《噴出の稲妻》も次のターンの《剃刀族の棘頭》も匂うターンですが、3枚目の土地が確定しておらず、《略奪するアオザメ》をとっておいても出すタイミングがなさそうですし、《剃刀族の棘頭》も1ターン目にクリーチャーがでなかったので3ターン目に除去すれば問題ないと判断し、《略奪するアオザメ》を唱えます。

魔道士封じのトカゲ

結果的には《噴出の稲妻》はなく、返しのターン、手札的に比較的どうでもいい《魔道士封じのトカゲ》がでてきたため、無視して自分の展開を進めます。

量子の謎かけ屋冬夜の物語

そこからのドローでほどよく除去を集めることができたため、除去連打→《量子の謎かけ屋》+「調和」の《冬夜の物語》でリソース回復&「昂揚」達成を目指します。

アガサの魂の大釜迷える黒魔道士、ビビ

実際は《量子の謎かけ屋》のドローで《アガサの魂の大釜》を引いたので、《逸失への恐怖》で捨てていた《迷える黒魔道士、ビビ》とあわせて、そのターン中に新たな宇宙を創造し勝利しました。

結果は3-1で勝利。手札のそろい方が良かったのはあるものの、イゼット大釜の圧倒的なデッキパワーを感じる試合でした。無事防衛です。やったぜ。

おわり

『神決定戦』の振り返りは以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。

しばらく参加予定の競技イベントがないので、やることを募集しています。

ではまた。

平山 怜(X)

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平山 怜 プロツアー『ドミナリア』への出場を皮切りに若くして競技シーンへと飛び込む。 一線を画すプレイスキルと高いマジックIQにより、『The Finals 2019』『プレイヤーズツアー・オンライン3』で準優勝、『チャンピオンズカップファイナル サイクル1』では念願の優勝を果たすとともにマジック最高峰の舞台・世界選手権への出場を決める。また、晴れる屋が行う『神決定戦』では、ユーモア溢れるワードセンスと忌憚のない解説が人気。 平山 怜の記事はこちら