プロツアーで解き明かされるモダン環境!【USA Modern Express vol. 141】

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

先週末にはプロツアー『久遠の終端』がありましたね。参加者約300名のなかで優勝トロフィーを手にしたのは、Magic Onlineの強豪としても有名なマイケル・デベネデット=プラマー/Michael DeBenedetto-Plummer選手(Killah_SUV)でした。

今回の連載では、プロツアー『久遠の終端』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

プロツアー『久遠の終端』 -プロツアーでも群雄割拠な環境-

ゴブリンの放火砲時を解す者、テフェリー

プロツアーを見事制したのは、人気のコンボデッキである青単ベルチャーでした。準優勝はアゾリウスコントロールで、長い間モダンで活躍し続けているアーキタイプだったこともあり印象的でしたね。

メタゲームブレイクダウンを見ると、エスパー御霊が使用率トップでしたが環境を支配するほどではなく、トップ8は青単ベルチャー以外すべて異なるアーキタイプとなっています。

魂の導き手精力の護符

ボロスエネルギーは人気のアーキタイプでしたが、エスパー御霊・青単ベルチャー・エルドラージトロンといった相性が悪いデッキが多かったため厳しかったようです。一方、トップ8にも残っているアミュレットタイタンは、少数ながら高い勝率をだしていました。

青単ベルチャー

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使用率2位だった青単ベルチャーはボロスエネルギーと相性が良く、エスパー御霊との相性もほぼイーブンだったこともあり勝率が安定していました。

海門修復ゴブリンの放火砲睡蓮の花

土地をすべて「モードを持つ両面カード」であるスペルランドにすることで、《ゴブリンの放火砲》でワンショットキルを狙うことができ、《睡蓮の花》が絡めば4ターン目に勝つことも可能です。

☆注目ポイント

ファラジの考古学者稲妻罠の教練者拒絶の閃光

《ファラジの考古学者》《稲妻罠の教練者》はキーカードを回収しつつ、場に出たあとは《拒絶の閃光》のコストとしても利用できる便利なクリーチャーです。

現実の設計者、タメシ睡蓮の花

《現実の設計者、タメシ》《睡蓮の花》とのシナジーが非常に強力で、《睡蓮の花》から白マナを確保し、《現実の設計者、タメシ》の能力で土地を戻して《睡蓮の花》を墓地から再利用し続けることによって、大量のマナを生成することができます。十分なマナを確保できれば、《発明品の唸り》から《ゴブリンの放火砲》をサーチしてゲームを終わらせられます。

朦朧への没入海門修復水力発電の検体水浸しの教え

それ以外にも、打ち消されたり、破壊された《ゴブリンの放火砲》を戦場に戻すことができ、ついでに手札に戻した《朦朧への没入》《海門修復》などでアドバンテージを稼ぐことができるのが強力です。

厳しい説教撹乱する群れ否定の力ジュワー島の撹乱

カウンターが多めに採用されているため、相手の妨害を突破してコンボを決めると同時に、ほかのコンボデッキを抑止する能力にも長けています。また土地がすべてスペルランドということもあり、《否定の力》《撹乱する群れ》といったピッチコストに困ることもほぼありません。

知りたがりの学徒、タミヨウ知りたがりの学徒、タミヨウ求道者テゼレット

サイド後は、追加の勝ち手段として《知りたがりの学徒、タミヨウ》《求道者テゼレット》が投入されます。決勝戦のアゾリウスコントロールとのマッチアップでは、1ターン目にプレイされた《知りたがりの学徒、タミヨウ》がリソースを稼ぎ、最終的に[-7] 能力を起動して勝利へ導く活躍を見せました。

アゾリウスコントロール

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オアリムの詠唱等時の王笏

準優勝したフランシスコ・サンチェス/Francisco Sánchez選手のリストは、《オアリムの詠唱》《等時の王笏》という懐かしいロックコンボが採用されており、ほかのリストと異なるアプローチが施されていました。

現在のモダンはデッキの種類が多く、攻める手段も多彩なので捌ききるのが難しく、コントロールデッキは以前よりも立ち位置が良くないといわれています。

しかし、《オアリムの詠唱》を採用したコントロールは母数こそ少なかったものの、アゾリウスコントロールはエスパー御霊とエルドラージトロン以外のマッチアップでは高い勝率を出していました。

▲フランク・カーステン氏によるプロツアーの勝率まとめ

☆注目ポイント

オアリムの詠唱等時の王笏時を解す者、テフェリー

《オアリムの詠唱》はわずか1マナという軽さで、ルビーストームのコンボや「待機」明けの《睡蓮の花》を妨害したり、「キッカー」で攻撃を封じることもできます。またプレインズウォーカーなど、通したいスペルをプレイする前に唱えることで、打ち消しをかいくぐってスペルを強引に通すことが可能です。

《オアリムの詠唱》《等時の王笏》+《時を解す者、テフェリー》がそろえば相手をほぼ完全にロックすることができ、プロツアーの準決勝でもメイン2本をロック勝ちで決めていました。

覆いを割く者、ナーセット一日のやり直しガイアー岬の療養所

《覆いを割く者、ナーセット》は相手の追加ドローを封じつつ、アドバンテージを稼げる優秀なプレインズウォーカーです。《一日のやり直し》《ガイアー岬の療養所》とのコンボも搭載されており、圧倒的なアドバンテージ差をつけることができます。

星間航路の助言

『久遠の終端』から登場した《星間航路の助言》は、「キッカー」なしでも序盤に必要な土地を探すドロースペルとして使うことができ、土地が伸びたゲーム後半のこのカードは、あの《時を越えた探索》を彷彿とさせます。

ネオブランド

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アロサウルス乗り新生化グリセルブランド

モダンには多種多様なコンボデッキが存在しますが、そのなかでも最も速いコンボデッキがこのネオブランドです。最速で2ターン目に《アロサウルス乗り》をプレイし、《新生化》によって《グリセルブランド》《暴走暴君、ガルタ》といったフィニッシャーに変身させてゲームを決めます。

そのため、ボロスエネルギーなど妨害の少ないフェアデッキにとって脅威となります。

☆注目ポイント

暴走暴君、ガルタ歓楽の神、ゼナゴス

《暴走暴君、ガルタ》はこのデッキの主な勝ち手段になります。戦場に出たときの能力で《歓楽の神、ゼナゴス》を出せれば、速攻を付与しつつガルタのパワーを倍にして瞬殺することができます。ほかに《偉大なる統一者、アトラクサ》《グリセルブランド》が手札にあれば、コンボで使った手札を一気に補充することも可能です。

召喚士の契約否定の力夏の帳記憶への放逐

初手頼りのオールインコンボに見えますが、必要なクリーチャーは《召喚士の契約》によってサーチ可能で、《否定の契約》《夏の帳》《記憶への放逐》などで相手の妨害からコンボを守ることができるため意外と安定しています。《夏の帳》はカウンターだけでなくハンデスも防げるので、エスパー御霊やエスパーブリンクが多かった今大会ではメインから4枚の採用も納得です。

ギラプールの希望神秘の論争自然のままに自然の要求

カウンターの多いデッキに対しては、サイドから《ギラプールの希望》《神秘の論争》を4枚ずつ投入することでコンボを手厚くバックアップします。置物対策の《自然のままに》《自然の要求》は、《墓掘りの檻》《耳の痛い静寂》《減衰球》などに有効です。


エスパーブリンク

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日本勢からはホリウチ マコト選手が見事トップ4にまで勝ち残りました。エスパーブリンクは消耗戦に強く妨害手段が豊富なため、幅広いマッチアップで柔軟に対応することができます。

☆注目ポイント

孤独ちらつき鬼火儚い存在

ホリウチ選手のリストは、一般的なブリンクデッキに採用されている《孤独》《ちらつき鬼火》が不採用で、《儚い存在》も2枚だけの採用でした。

緻密否定の力記憶への放逐水力発電の検体

その代わりに、《緻密》《否定の力》《記憶への放逐》といった青い妨害カードがメインから多く採用されており、エスパー御霊やベルチャーなどのコンボデッキやビッグマナデッキとのマッチアップを想定した構成となっています。

スペルランドも《魔女の結界師》よりもピッチコストとして使える《水力発電の検体》が優先されています。

記憶への放逐量子の謎かけ屋

《記憶への放逐》は相手の妨害以外に《量子の謎かけ屋》ともシナジーがあり、「ワープ」の追放の誘発をカウンターすることで戦場にキープすることが可能です。

白蘭の幻影害獣駆除失脚

サイドの《白蘭の幻影》はブリンクとの組み合わせが強力で、ビッグマナ系やベルチャーなど特殊地形に依存した多くのデッキに刺さります。《孤独》が不採用な分、ボロスエネルギーやイゼット果敢などアグロデッキには不利なので、サイド後は《害獣駆除》《失脚》で対処します。

総括

量子の謎かけ屋

『久遠の終端』が環境に与えた影響は大きく、特に《量子の謎かけ屋》は高い採用率を出しており、プレイオフにもエスパーブリンクとエスパー御霊が入賞と今後もモダンを牽引するカードになりそうです。

群雄割拠な環境はプロツアーでも変わらず、トップ16に12種類のデッキが見られました。

USA Modern Express vol. 141は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!

この記事内で掲載されたカード

Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら