Translated by Takumi Yamasaki
(掲載日 2025/10/01)
はじめに
やあ、みなさん。
プロツアー『久遠の終端』がモダンで開催され、最も使用者の多いデッキはエスパー御霊であった。また、このデッキは「Team Handshake」の多くが選択したデッキでもある。
エスパー御霊はデッキとしてバランスが良く、地力もあり、それでいて大きな弱点も少ないので、あらゆるマッチアップで多彩な戦い方ができると評価されていた。そしてチームメイトのジョニー・ガットマン/Jonny Guttmanは、我々が調整したリストを使用して見事トップ8に入賞したのだ!
今回のデッキガイドが、少しでも君の助けになれば嬉しい!
エスパー御霊とは
このデッキで最も楽しく、かつ強力な動きなのが《偉大なる統一者、アトラクサ》を《御霊の復讐》で戦場に戻し、それを《儚い存在》でブリンクして定着させ、大量のカードを補充したあとに《孤独》や《否定の力》のようなピッチスペルで相手を妨害することだ。
エスパー御霊自体はかなり前から存在していたが、この夏になるまで支配的な戦略というわけではなかった。
『久遠の終端』で登場した《量子の謎かけ屋》は、エスパー御霊がまさに必要としていたものであり、デッキに安定性と粘り強さをもたらしてくれた。このカードは完璧にデッキと噛み合っている。
というのも、もともとエスパー御霊は《儚い存在》を採用しており、それが《量子の謎かけ屋》と非常に相性が良い。対象にできるカードが増えたことで、《儚い存在》は手札で腐る可能性が以前より大幅に減り、より信頼できるカードとなったのだ。
このデッキがかつて抱えていた大きな問題は、シナジーの合わないパーツを引いてしまい、それ単体では何の役にも立たないことだった。《量子の謎かけ屋》はこれを完全に解消するわけではないが、間違いなく問題を大幅に改善してくれた。
もう1つの弱点は《ファラジの考古学者》であったが、《量子の謎かけ屋》に置き換えることで質の低いカードが減り、デッキ全体のカードパワーが飛躍的に向上した。
エスパー御霊は以前から《孤独》や《否定の力》のようなピッチスペルを採用しており、また強力なシナジーのある手札を求めて積極的にマリガンを行う。その点でも《量子の謎かけ屋》は非常に優秀で、ドロー能力によりピッチコストを用意しやすくなったり、マリガンで失った手札を補充してくれるのだ。
最も重要な点は、《量子の謎かけ屋》が《超能力蛙》と非常に良く噛み合うことだ。《超能力蛙》は手札の枚数を自在に調整できるため、同一ターン中に何度も《量子の謎かけ屋》の能力でデッキを深く掘り進めたり、《超能力蛙》を巨大なサイズに育てることができる。もちろん《超能力蛙》の攻撃が通れば、さらにカードを引くことが可能だ。
また、《超能力蛙》と《量子の謎かけ屋》は墓地に依存しない強力な脅威であるため、墓地対策に対してもかなり強くなった。
フェアプランとリアニメイトプランが互いを補完し合う様子は、優雅で美しいとしか言いようがない。多くのマッチアップにおいて、どちらかのプランは明確に有効であるため、サイドボーディングではそのマッチアップに適したプランをより重視できる。
我々のリストはほかのチームのリストと大きくは変わらないが、メインデッキに採用した《呪文貫き》と《記憶への放逐》がとても役立ったということは強調したい。
1マナのインスタントはこのデッキにとって非常に便利である。というのも、フェッチランドで諜報ランドを持ってくることがバリューの高いエスパー御霊にとって、相手のターンにフェッチランドを構えるという動き自体が自然なのだ。
相手にとっては、こちらが単に諜報ランドを持ってくるのか、それとも軽い妨害呪文を構えているのかを判断することはできない。
多くのバージョンは非クリーチャー呪文を打ち消すために《否定の力》に依存している。そのため、特にインスタント・タイミングの動きに対して隙が多い。
たとえばミラーマッチでは、相手ターンに《御霊の復讐》を解決させるのはよくあることであり、それを打ち消すのは難しい。しかし、《呪文貫き》ならその動きを罰することができる。《コジレックの命令》もまた問題となるカードであり、《呪文貫き》はその場合でも多いに役立つ。
《記憶への放逐》のメイン採用は、1ゲーム目において最も苦しいマッチアップである青単ベルチャーやエルドラージトロンに対して非常に有効だ。
《儚い存在》の代わりとしても機能し、終了ステップでの《御霊の復讐》の遅延誘発を打ち消してリアニメイトしたクリーチャーを戦場に残したり、相手の《偉大なる統一者、アトラクサ》の誘発を打ち消すことで無力化したりもできる。
こういった妨害手段が有効でないマッチアップは、そもそもメインでは有利であることが多い。例を挙げると、ボロスエネルギーやイゼット果敢などだ。
プロツアーで使用したリストには非常に満足しており、大会後も1枚たりとも変更しなかった。これは私にとって極めて稀なことである。
マッチアップガイド
ボロスエネルギー

vs. ボロスエネルギー
ボロスエネルギーは比較的有利な相手である。ただし、相手がこちらに刺さるヘイトカードを多く採用している場合は別だ。サイド後のゲームではコンボに固執せず、コントロール寄りのプランを取ることになるだろう。特にサイドボードの全体除去は大きな助けになってくれる。
一番負け筋になりやすいカードは《血染めの月》だ。そのため、《否定の力》は3枚すべて残しておくのが望ましく、できる限り《血染めの月》に当てられるよう温存する。また《血染めの月》を警戒する以上、可能な範囲で基本土地をサーチすることも重要だ。《平地》ともう1枚の基本土地を確保できれば、《虹色の終焉》で対処できるようになる。
一部のボロスエネルギーは《外科的摘出》をサイドに採用している。なのでサイド後のゲームでは、《御霊の復讐》を相手ターンに唱えることで、《否定の力》で《外科的摘出》を弾けるようにすることが望ましい。
ミラーマッチ

vs. ミラーマッチ
ミラーマッチの1ゲーム目は、たいてい《御霊の復讐》を先に通したほうが勝つ。しかし、サイド後は展開が遅く泥仕合になりやすいため、ゲームが長引く傾向にある。
チームとしての結論は、墓地対策に弱くなりすぎないようコンボに固執せず、よりミッドレンジ寄りのプランに切り替えるというものだった。これはほかのプレイヤーにはあまり見られないアプローチである。
打ち消し、ハンデス、墓地対策がそろっている状況では、《御霊の復讐》を通すのが難しく、手札に複数抱えたまま《超能力蛙》や《量子の謎かけ屋》《時を解す者、テフェリー》、素出しされた《偉大なる統一者、アトラクサ》に押し切られる展開が多い。実際、サイド後のゲームでは《アトラクサ》を素出しする場面は頻繁に起こる。
またゲームが消耗戦になることで、《信仰の繕い》はアドバンテージを損する側面が強くなる。サイド後は、リソースを回復できる《量子の謎かけ屋》を安定して通すのも難しくなるからだ。《信仰の繕い》をサイドアウトすることが多くなり、その結果《御霊の復讐》プランの信頼性も下がってしまう。
こういった理由で、4枚目の《信仰の繕い》ではなく《染みついた耽溺》を採用することになった。これにより、複数のマッチアップでサイド後のゲームをより粘り強く戦えるようになったのだ。
青単ベルチャー

vs. 青単ベルチャー
メイン戦は不利である。相手のコンボは基本的にこちらより速く、干渉手段も足りていない。しかし、サイド後はエスパー御霊が有利だと感じている。なぜなら、微妙なカードを効率の良い妨害カードに差し替えられるからだ。
《虹色の終焉》はほとんどの場合、相手の土地が起きる前に《ゴブリンの放火砲》を対処するために使う。4マナのカードを追放するには、《繁殖池》を用意しなければならない点には注意しよう。また、《知りたがりの学徒、タミヨウ》を見た場合は、《虹色の終焉》を3枚すべて残すべきである。
サイド後は《儚い存在》を抜いても問題ない。《偉大なる統一者、アトラクサ》を定着させなくても、1発の7点アタックと4枚の有効なカードをアトラクサで引き入れるだけで十分勝てるからだ。《記憶への放逐》もサイドから4枚になるため、そのうち1枚で《偉大なる統一者、アトラクサ》を場に残すこともできる。これは《儚い存在》でブリンクするより劣る動きではあるが動きとしては申し分ない。
《記憶への放逐》の大事なポイントは、《睡蓮の花》の最後の時間カウンターが取り除かれた際、「待機」能力の唱える能力を打ち消せることだ。これにより《睡蓮の花》は追放された状態のままになるため、《現実の設計者、タメシ》で回収されることもなくなる。
エルドラージトロン

vs. エルドラージトロン
このマッチアップは厳しい。こちらにとって有効なカードが多く、特に《コジレックの命令》と《嵐の目、ウギン》は脅威的だ。《探検の地図》や《タリスマン》といったマナ加速を打ち消すよりも、《記憶への放逐》や《呪文貫き》はできる限りこれらの脅威のために残しておきたい。
サイド後は《記憶への放逐》をフル投入できるので格段に楽になるだろう。ロングゲームでは消耗戦でこちらが圧倒できるからだ。相手のデッキはそもそもアクション数が少なく、最初の脅威を数枚カウンターできればフラッドするといったランプデッキ特有の展開になることも珍しくない。
とはいえ、試合の勝敗は運に左右されやすく、相手が強力なカードを引きすぎて一方的に負けることもある。
イゼット親和

vs. イゼット親和
親和相手はコンボデッキであることを忘れて、完全にエスパーコントロールとして立ち回る。特に《トーモッドの墓所》を複数積んだ新型の親和に対してはこのプランが有効で、墓地対策を完全に空振りさせられる。
こちらのゲームプランは、相手のやりたいことを止め続け、最終的に《超能力蛙》《量子の謎かけ屋》《孤独》で勝つことだ。
最も警戒すべきカードは《河童の砲手》とサイド後の《血染めの月》で、これらを止めるためならあらゆる手段を尽くすべきである。《記憶への放逐》のベストな使い方のひとつは、《河童の砲手》の「護法」の誘発を打ち消すことだ。
よくあるのは、《孤独》を「想起」で出して《河童の砲手》を追放する際、《記憶への放逐》の「複製」で護法と《孤独》の想起を同時に打ち消す展開だ。その結果、こちらの《孤独》は戦場に残る。
さらに欲張って、これを相手のメイン・フェイズ開始時、《ウルザの物語》の誘発がスタックにあるときに行えば、追加でそれも打ち消せる。これこそがプロツアーの親和戦で勝利した方法だ!
《空の怒り》はおそらくこのマッチでの最強カードである。なので《神秘の論争》《呪文貫き》《思考囲い》で《金属の叱責》を突破できるような状況を作ろう。
まとめ
エスパー御霊はモダンにおける最高のデッキのひとつであり、今後もしばらくはそうあり続けるだろう。強力な能動的プランを持ち、環境に応じて柔軟に優秀なサイドカードを採用できるのが主な理由だ。
《量子の謎かけ屋》と《超能力蛙》の組み合わせにより墓地対策にも強く、相手が数枚サイドカードを追加するだけで対抗できるようなものではない。
現在のモダンは多様性に富んでおり、ゲーム展開もダイナミックでプレイヤーの技術が要求される。過去にこういったデッキを使っていたなら、ぜひエスパー御霊も試してもらいたい。大きく失敗することはまずなく、ほかのデッキに比べてマッチアップの相性差が少ないため、ほぼ確実に充実したマジックのゲームが楽しめるだろう。
最後に、チームメイトからのアドバイスを記す。「このデッキは壊れていると思ってマリガンせよ」ということだ。つまり、単に呪文が唱えられるからと土地4枚、スペル3枚のような手札をキープするのではなく、実際に強い動きができないならマリガンすべきだという意味である。
このデッキはマリガン耐性が非常に高く、最強の初手は手札の枚数に関係なく圧倒的な力を発揮する。《御霊の復讐》《量子の謎かけ屋》《超能力蛙》があれば、カード枚数の不利を容易に取り戻すことができ、言い換えるなら「量より質が重要」ということだ。
幸運を祈る。楽しんでプレイせよ!
マッティ・クイスマ (X)
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