はじめに
みなさんこんにちは。
各地で『地域チャンピオンシップ』が行われており、日本国内でも11月22-23日に開催される『プレイヤーズコンベンション横浜2025』内で、『チャンピオンズカップ ファイナル』がモダンにて行われる予定です。
さて、今回はアメリカのテキサス州で開催された『Regional Championship – SCG CON Houston – Season 4 Round 1』の入賞デッキを見ていきたいと思います。
『Regional Championship – SCG CON Houston – Season 4 Round 1』 -謎かけ屋の時代-
開催日:2025年10月18日
優勝 ジェスカイブリンク
準優勝 ボロスエネルギー
3位 イゼット果敢
4位 アミュレットタイタン
5位 エスパー御霊
6位 ピナクル親和
7位 イゼット果敢
8位 ジェスカイブリンク
9位 アゾリウスコントロール
10位 ボロスエネルギー
11位 繁殖鱗コンボ
12位 イゼット果敢
13位 ボロスエネルギー
14位 イゼット果敢
15位 アミュレットタイタン
16位 ピナクル親和
ヒューストンで開催された地域チャンピオンシップには、1045名と非常に多くのプレイヤーが参加しました。そして、多くのプレイヤーが予想したように《量子の謎かけ屋》デッキとアミュレットタイタンが勝ち組となりました。
優勝したのは《量子の謎かけ屋》を軸としたジェスカイブリンクです。
ジェスカイブリンク
《量子の謎かけ屋》を採用したブリンク系デッキは今大会で最も人気を集めたアーキタイプです。
特にジェスカイ型は58%と最も高い勝率を残しました。基本構成はほかのブリンク系デッキと同様に《量子の謎かけ屋》を軸にしたミッドレンジコントロールですが、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を早い段階から展開し、アグレッシブなゲームプランを実行することも可能です。
さらには《火の怒りのタイタン、フレージ》や《鏡割りの寓話》、《黒曜石の焦がし口》といった強力な赤いカードを採用しながら、速攻を付与できる《栄光の闘技場》が使えることもジェスカイ型の特徴の1つで、より攻撃的な構成になっています。
☆注目ポイント
《敏捷なこそ泥、ラガバン》は特にベルチャーやアミュレットタイタンなど、コンボデッキに対して有効なクロックとして機能します。1ターン目に《敏捷なこそ泥、ラガバン》を展開し、2ターン目に攻撃が通れば宝物トークンによるマナ加速から《量子の謎かけ屋》+《儚い存在》というプレイングが可能となり、コンボデッキが本領を発揮する前に押しつぶすことができます。
戦場に定着させることこそできませんが、《火の怒りのタイタン、フレージ》を手札からプレイして生け贄にする前に《儚い存在》でブリンクさせることで、3点ダメージ+3点ゲインを2回誘発させるといった動きも強力です。《鏡割りの寓話》の第II章は、ルーティングで必要なカードを探しつつ、《火の怒りのタイタン、フレージ》の「脱出」に備えて墓地を肥やすことができます。
サイドにフル採用されている《黒曜石の焦がし口》は、このデッキが苦手とするエルドラージトロン対策として輝きます。これもブリンクさせて強いクリーチャーです。
そして、ジェスカイ型の一番の強みは、《記憶への放逐》を最も強く使えることです。
ベルチャーやエルドラージといった脅威をわずか1マナでカウンターでき、さらには非脱出の《火の怒りのタイタン、フレージ》やピッチで唱えた《孤独》の生け贄、《量子の謎かけ屋》のワープによる追放などを打ち消すことで、戦場に残す手段としても活用できます。
また、《溌剌の牧羊犬、フィリア》で対戦相手のクリーチャーを一時的に追放し、戦場に戻す誘発型能力を打ち消すことで除去としても使えるなど、現モダン環境を象徴する強カウンターとして定着しています。
《時を解す者、テフェリー》は相手のカウンターやインスタント・タイミングの妨害をシャットアウトするため、コントロールとのマッチアップで特に重要なカードです。いざとなれば[-3]能力で自分の《量子の謎かけ屋》や《孤独》といったクリーチャーをバウンスして再利用することもでき、アドバンテージを稼ぐことができます。
《空の怒り》はボロスエネルギー、ピナクル親和、イゼット果敢のようなアグロデッキ対策として有用で、《ウルザの物語》を採用したデッキ相手にも有効に働きます。
《神秘の論争》はミラーマッチに強い1枚で、《時を解す者、テフェリー》や《量子の謎かけ屋》をわずか1マナでカウンターできる優秀なカードです。
アミュレットタイタン
優勝こそ逃しましたが、今大会で2番目に人気のアーキタイプはプロツアーでも高い勝率を残したアミュレットタイタンでした。今大会でも勝率54%という好成績を収め、プレイオフにも進出しています。
モダンで長い間活躍しているアミュレットタイタンは勝つための手順が非常に複雑なコンボデッキです。バウンスランドと《精力の護符》を組み合わせて一気にマナ加速し、安定して3ターン目に《原始のタイタン》をプレイすることで始まる土地コンボは、現在でも効果的な戦略の一つになります。
デッキの基本的な部分は完成されていますが、ゲームに勝つためのプロセスは進化し続けています。最近では《事件現場の分析者》 で《変容する森林》を含めた土地をリアニメイトして、《変容する森林》を《事件現場の分析者》のコピーにすることでループさせる無限コンボが主流になっています。
- 2025/08/05
- アミュレットタイタンにおける《風景の変容》の使い方
- Piotr Glogowski
これらのコンボの詳しいプロセスに関しては、アミュレットタイタンを得意とするプロプレイヤー、Piotr Glogowski氏の記事が参考になります。
☆注目ポイント
追加の《精力の護符》としても機能する《洞窟探検》は、キャントリップしながらマナ加速もできる優秀なカードです。《苛立たしいガラクタ》は最近よく採用されるカードで、0マナスペルを多用するピナクル親和のようなアーティファクトデッキや、ブリンク系のデッキが使う《孤独》や《緻密》などがピッチで登場することを防ぎます。
ただし、自分の《召喚士の契約》もカウンターしてしまうため、使用する際は注意が必要です。
最近は墓地を肥やしつつ、手札に加えるカードを選択できる《邪悪鳴らし》が採用されたリストが主流になっていましたが、入賞したCollins Mullen選手はマナ加速を優先するため、《邪悪鳴らし》ではなく《探検》を採用しています。
《ウルザの物語》はこのデッキの追加の勝ち手段であり、《精力の護符》のサーチ手段としても機能するなど、大変フレキシブルな活躍が期待できる土地です。《原始のタイタン》が対策されてしまっても、構築物トークンで盤面に圧をかけられる点が優秀です。
サイドボードには《溜め込み屋のアウフ》が採用されていました。ピナクル親和、ベルチャー、繁殖鱗コンボといった複数のマッチアップに対して有効に働くカードです。
除去枠には《血染めの月》を張られてしまってもプレイすることができ、高タフネスのクリーチャーも除去できる《四肢切断》が選択されています。
《六番》と《食糧補充》はアドバンテージを稼げるカードで、フェアデッキとのロングゲームに備えることができます。
ピナクル親和
ピナクル親和は《オパールのモックス》を最大限に活用することができるデッキで、1ターン目から《ピナクルの特使》をワープでプレイし、0マナアーティファクト連打によってトークンを並べ、爆発的な高速展開を実現します。
フィニッシャーの《河童の砲手》も、動き次第では1ターン目に着地させることが可能です。
注目すべきは、今大会多くのデッキがサイドボードに《空の怒り》《石のような静寂》《溜め込み屋のアウフ》《溶融》といった親和対策のカードを積んでいたにも関わらず、53%という高勝率を出したことです。
コンボデッキが多いモダン環境で、速さで対抗できるデッキであり、カウンターも採用できるなど対応の幅が広く、今後も人気のアーキタイプになることが予想されます。
☆注目ポイント
『久遠の終端』で《ピナクルの特使》と《武器製造》が登場したことで、親和というアーキタイプはさらに爆発力が増しました。特に《武器製造》が生成する弾薬トークンは、十分に並んだところで《仕組まれた爆薬》を起動させれば一撃必殺の火力となります。
マナはかかるものの、《ギックスのかぎ爪》も弾薬トークンを能動的に生け贄にする手段として使え、継続してダメージを飛ばすエンジンとなります。
また、弾薬トークンが並べば対戦相手が気軽に《空の怒り》や《溶融》で流すことができなくなるなど、全体除去に対する抑止力にもなります。
また、コンボだけがピナクル親和の武器ではありません。《ウルザの物語》でサーチ可能な《影槍》も脅威で、構築物トークンに装備させ、攻撃するだけでダメージレースで優位に立ち、大抵のフェアデッキを潰すことができます。
サイドボードからは《血染めの月》が投入され、ベルチャーやアミュレットタイタンを沈めることも可能です。
各種カウンターも多めに採用され、サイドボード次第でフェアデッキにもコンボデッキにも強いプランを選べるデッキとなっており、さらにはブン回りにも期待できるとあって、非常に強度が高いデッキに仕上がっています。
ボロスエネルギー
かつてはモダンのトップメタであったボロスエネルギー。ベルチャーなどのコンボデッキに弱いことから最近は減少傾向にありました。しかし、デッキの安定性は高く、根強いファンがいるアーキタイプで、今大会でも準優勝という結果を残しています。
《魂の導き手》や《電気放出》といったエネルギーギミックが強力で、《ナカティルの最下層民、アジャニ》や《オセロットの群れ》などの横並べはモダンでも屈指の圧力となります。
《ゴブリンの砲撃》という飛び道具もあり、クリーチャー除去や本体への直接ダメージが狙えます。アグロデッキながら 《火の怒りのタイタン、フレージ》のおかげで消耗戦にも強くなっており、《栄光の闘技場》で速攻を付与しながら脱出すれば、最大12点ものダメージを叩き出すことが可能です。個々のカードパワーが高く、サイドボードの選択肢も豊富なため、苦手なコンボデッキが相手でも、サイド後は相性を改善できる可能性が残されています。
☆注目ポイント
苦手なコンボデッキ対策としてメインから《血染めの月》を採用したリストが主流になっています。1ターン目にプレイした《敏捷なこそ泥、ラガバン》の攻撃が通れば宝物トークンから2ターン目に《血染めの月》をプレイすることができ、アミュレットタイタンやベルチャーなど、特殊地形に頼りがちなコンボデッキにとっては脅威です。
サイドボードの選択肢が豊富なところもこのデッキの強みです。《石のような静寂》は《精力の護符》《ゴブリンの放火砲》《オパールのモックス》などを止めることができ、今のモダン環境にフィットしています。《黒曜石の焦がし口》は土地破壊しながら飛行4/4のクロックとして残るなど、ランプデッキとのマッチアップにおいて最も有用なサイドボードカードです。
《天界の粛清》は《火の怒りのタイタン、フレージ》、《ギルドパクトの力線》、《超能力蛙》、《ベイルマークの大主》など様々な脅威を対策できます。《苛立たしいガラクタ》も先述した通り、ピナクル親和やジェスカイブリンクといったデッキに対して刺さる良カードです。
総括
プロツアー後のモダン環境も多様性に富んでおり、どのアーキタイプにも大会で勝つチャンスがあるという印象です。なかでもアミュレットタイタンは複雑なデッキですが、多くのプレイヤーはその高いポテンシャルを認識しています。現環境でも最強クラスの速度と再現性を持ったコンボデッキでありながら、フェアプランも強いとあって、時間をかけて練習するだけの価値があるデッキと評価できるでしょう。
また、ピナクル親和からも目が離せません。1ターン目から《河童の砲手》をプレイできる爆発力に加え、サイド後はカウンターや妨害を増量して、あらゆるデッキを封じ込めるポテンシャルがあります。モダンではコンボデッキと互角以上に渡り合える数少ないフェアデッキということもあり、現環境のベストデッキの1つです。
ブリンク系デッキを巡っては、コンボが多い現環境ではエスパー型よりも《敏捷なこそ泥、ラガバン》で圧をかけられるジェスカイ型のほうが良い選択肢だと感じています。MOの大会でも高い勝率を維持しており、こちらも現環境のトップメタに位置するデッキと言えるでしょう。
USA Modern Express Vol.143は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!


















































