はじめに
こんにちは。Hareruya Prosの平山(@sannbaix3)です。
今回は11月22日-23日に開催された『チャンピオンズカップファイナル シーズン4ラウンド1』に参加してきたので、そのレポートになります。
これまでの『チャンピオンズカップファイナル』
早いもので、『チャンピオンズカップファイナル』(地域CS)も実に10回目です。私が優勝した初回の開催からすでに3年も経っています。時が経つのは早いですね。いい機会なので、この大会での過去の自分の戦績を振り返ってみます。
| シーズン | フォーマット | 使用デッキ | 戦績 |
|---|---|---|---|
| 1-1 | パイオニア | ラクドスミッドレンジ | 12-1-2(優勝) |
| 1-2 | スタンダード | ジャンドリアニメイト | 4-3 |
| 1-3 | パイオニア | 不参加 | – |
| 2-1 | パイオニア | 《地質鑑定士》コンボ | 4-3 |
| 2-2 | モダン | リビングエンド | 8-4 |
| 2-3 | スタンダード | アゾリウスコントロール | 12-3(準優勝) |
| 3-1 | パイオニア | ラクドスミッドレンジ | 8-4 |
| 3-2 | モダン | ティムールブリーチ | 8-4 |
| 3-3 | スタンダード | アゾリウスアーティファクト | 4-3 |
合計で60勝25敗、勝率にして70.59%です。勝率はかなり高いほうだと思います。流石俺……
ただし、アベレージは高いものの、満足のいく結果が伴っているかと言われるとそうではありません。地域CSでは基本的に9勝3敗以上でプロツアーの権利が手に入ります。これが基本的には第一の目標になるわけですが、達成できたのは2回しかありません。
8勝4敗のどれか1つくらい上振れてくれと思うものの、2回決勝にいけている時点で運はいいだろという話でもあります。
振り返ってみると、使用デッキと成績について、それなりの相関が見つけられました。
初日落ちした3回のデッキは、単純にデッキが弱かったり(ジャンドリアニメイト)、相性差が露骨に出たり(《地質鑑定士》コンボ)、ブレの激しいデッキだったり(アゾリウスアーティファクト)。もちろん選択するに至ったそのデッキのそれぞれの良さはありましたが、基本的には明確な欠点を持つTier2以下のデッキです。
それに対して、いわゆる環境トップのデッキを順当に使った回は、毎回8勝4敗以上の成績を出せています。変なデッキを使ってリスクをとってエッジを出しに行くより、ブレの少ないTier1を使用したほうがあっている、ということなのでしょう。
以上のことから、メタゲームの予想などはしつつも、今後の地域CSでは、なるべくメタゲーム全体に対して安定して立ち回れる環境トップのデッキを使用する方針で望みます。
たとえば、今回のモダンでいえば、多少メタゲーム上立ち位置が良いと予想しても妨害に弱いネオブランドは使わない、といった具合です。
モダンは良い環境?
『モダンホライゾン3』がリリースされ、モダンは激変しました。発売以降、モダン環境は複数の禁止改定を挟んでも一強のデッキに支配された、“壊れている”環境が続いていました。
しかし、《死の国からの脱出》が禁止になって以降、モダンはようやく多様性を取り戻しました。地域CSの数週間前に開催されたプロツアー『久遠の終端』のトップ8には7種類のデッキが入賞し、唯一の被りかつ優勝した青単ベルチャーはその後は全然活躍できていません。
活躍するデッキが増えたのは事実です。とはいえ、モダンは”良い”環境になったのでしょうか?デッキが増えたことは確かに喜ばしいことですが、競技的な目線で考えると良くない点が2つあります。
1つ目は、デッキが増えることによってマッチアップのばらつきが出ることです。多くのデッキが存在すると、その分すべての相性をカバーすることは難しくなります。そうなると、どうしても相性じゃんけんで決まってしまうマッチが増えてしまいます。
2つ目は、強くて安定しているデッキが規制された結果、残った多くのデッキは安定性に難があるものが多いことです。
もし、エスパー御霊が毎回《思考囲い》からコンボを決められるなら、禁止になったデッキたちと遜色ないパワーがあります。しかし、現実には安定感の面でエスパー御霊はナドゥコンボなどには大きく劣り、何もできずに死んでいく手札がたびたびきます。
現モダンは、こういった再現性のなさで勝率を下げているデッキが多くあり、自分でまわすと「思ってたのと違う……」となりがちです。
練習中も当たり運や引き運に大きく左右されました。8-2した次の日に同じデッキで1-7するようなことは日常茶飯事で、練習メンバーの情緒もジェットコースターでした(※1)。
(※1:主に熊谷 陸。過去に弱いころのティムールブリーチにはまり、デッキを没収されてエネルギーデッキを渡された経験がある。今回は救いを求めて10年前のモダンのプロツアー動画に頻繁に逃避したため、YouTubeを禁止された)
デッキ選択
一応いろいろなデッキを試し、現代モダンをしっかり堪能したあと、候補は最初の方針通り以下の2デッキに絞られました。
候補1:ジェスカイブリンク
プロツアー終了後に一気に一番手となったデッキ。《量子の謎かけ屋》+《火の怒りのタイタン、フレージ》の、モダンのフェア2大巨頭を組み合わせた正統派ミッドレンジデッキです。
平山調べだとモダンで今一番強いカードは《火の怒りのタイタン、フレージ》、次点が《量子の謎かけ屋》であり、力と力の組み合わせは最強というわけです。事前にアメリカで行われた地域CSでは、幅広い対面に五分以上になっており、もっとも最初の方針に合致したデッキです。
受けるデッキは、幅広いモダン環境ではどういった初手をキープすればいいか分からないため、メインを落としやすいですが、地域CSはリスト公開の大会のためその心配もありません。
候補2:ボロスエネルギー
『モダンホライゾン』リリース以降のモダンでトップに居続けるデッキです。ジェスカイブリンクほど受けは強くないものの、意識してない対面でも《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《ゴブリンの砲撃》などを押しつければ粉砕できますし、《血染めの月》による絡め手もあります。
デッキの選択理由
最終的にはジェスカイブリンクを選択。
当日のメタゲームは、多い順で以下のように予想しました。
・ジェスカイブリンク
・ボロスエネルギー、イゼット果敢、親和
・御霊、ドメインズー、アミュレットタイタン
フェアデッキの比率がかなり高いので、ここで勝つことが最重要です。
そして、そのなかで一番優位性があると思ったのがジェスカイブリンクです。世間の評価では、ボロスエネルギー対ジェスカイブリンクはボロスエネルギーが有利だといわれています。
しかし、それはジェスカイブリンクがミラーを意識した結果、デッキを歪めていることが原因で、しっかりボロスエネルギーを意識すればジェスカイブリンク側が有利だと結論づけました。
《神秘の論争》《記憶への放逐》などを採用できることから親和やドメインズーにも対応しやすく、幅広いデッキに五分、なんならちょっと有利くらいのデッキであると判断。
使用リスト
というわけで登録したのがこちら。
よくあるデッキですし、一緒に練習した増田さんがデッキガイドを書くと張りきっていたので、細かいガイドは書かずに、自分のリストの特徴だけ説明します。
《栄光の闘技場》 3枚
通常のリストより1枚多いです。《火の怒りのタイタン、フレージ》との相性はもちろん、《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《量子の謎かけ屋》に速攻をつけるだけでも強いです。
特に《フレージ》ミラーでは、《栄光の闘技場》を引いている側だけ相手の《フレージ》を後出しの《フレージ》で倒せるので、このカードの有無は勝敗に直結します。マナベースを多少破壊してでも、引く確率を上げるリターンに充分見合っていると判断しました。
《島》 0枚
《栄光の闘技場》を増やす代わりに《島》を抜きました。《島》は《血染めの月》ように欲しいように思えて、《空の怒り》《火の怒りのタイタン、フレージ》の存在から、持ってくる基本土地の優先度は《平地》→2枚目の《平地》→《島》です。つまり、持ってくる余裕はどうせありません。
《湿地の干潟》(追加の《平地》フェッチ) 1枚
上の通り、《平地》を持ってくる優先度が最も高いです。そのため、アクセス率を上げるために《平地》用のフェッチを、4枚目の《沸騰する小湖》のかわりに採用しました。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》《溌剌の牧羊犬、フィリア》 3枚
低マナ域でありながら、低マナアクションが必須の後手時に、低マナ域としてのキープ基準が満たせないこと、被っても単体では動きづらいことから1枚ずつ減らしました。特に《敏捷なこそ泥、ラガバン》に関してはサイドアウトするマッチアップが多く、4枚入ってるとサイドが合わなくなりやすいです。
《電気放出》 4枚
ミラーを意識した除去です。ミラーでは《敏捷なこそ泥、ラガバン》の「疾駆」や、こちらのエンド時に出てくる《溌剌の牧羊犬、フィリア》に即座に対応する必要があるため、インスタントである点は《虹色の終焉》より優れています。
また、枚数を多めに採用することで、1枚目で《敏捷なこそ泥、ラガバン》を倒せば、2枚目で余ったエネルギーを使って《ドラコの末裔》を倒す、といった機会も増えます。
《鏡割りの寓話》 4枚
こちらもフェアなマッチを意識した採用です。よくあるリストでは2枚程度のものを4枚採用しています。ミラーマッチでは《大梟の小夜曲》をかわしながら展開でき、ボロスエネルギー相手は《血染めの月》にも耐性がつきます。
《黒曜石の焦がし口》 0枚
多くのリストでサイドに3枚程度採用されています。しかし、メタゲームの予想ではエルドラージ系は少なく、いたとしても《黒曜石の焦がし口》を採用したジェスカイブリンクに勝てないと判断しました。
この枠を空けることにより、ほかのデッキ相手にサイドカードの枚数を確保できるようになりました。空いた枠に《真昼の決闘》《空の怒り》《神秘の論争》などを3枚採用でき、親和やイゼット果敢をしっかり対策できています。
大会当日
メタゲームブレイクダウン
イゼット果敢が予想より少なく、逆にアミュレットタイタンが予想より多かったです。
アミュレットタイタンは、独自の知識やテクニックを多く要求するデッキです。過去の日本の地域CSでは、常にマジックオンラインやほかの地域に比べて、アミュレットタイタンの数はそこまで多くありませんでした。
日本人はもともとフェアデッキを好む人が多い傾向にあり、どうせ今回もたいした数はいないと思っていたので意外でしたね。難しいデッキではあるものの、同じProsのkanister(Piotr Glogowski)が配信やデッキガイドで情報提供しているため勉強しやすいからでしょうか?
- 2025/08/05
- アミュレットタイタンにおける《風景の変容》の使い方
- Piotr Glogowski
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- アミュレットタイタンにおける《事件現場の分析者》の使い方
- Piotr Glogowski
対戦結果
| ラウンド | 対戦デッキ | 戦績 |
|---|---|---|
| R1 | グリクシスミッドレンジ | 2-0 |
| R2 | ドメインズー | 2-1 |
| R3 | ジェスカイブリンク | 2-1 |
| R4 | ボロスエネルギー | 2-1 |
| R5 | エスパー御霊 | 1-2 |
| R6 | アミュレットタイタン | 2-1 |
| R7 | エルドラージアグロ | 2-1 |
| R8 | イゼット果敢 | 2-1 |
| R9 | 親和 | 1-2 |
| R10 | ボロスエネルギー | 2-1 |
| R11 | 繁殖鱗コンボ | 0-2 |
| R12 | ボロスエネルギー | 0-2 |
| R13 | イゼット親和 | 2-0 |
初日7-1、2日目2-3で合計9-4で26位、また1勝足らず……。初日1敗の好成績だったので、2日目は勝ち越しさえできればプロツアー権利がとれたので、悔しいです。
先手だったおかげでエネルギー相手のメイン戦を《敏捷なこそ泥、ラガバン》で取れたり、後手1ターン目に《三なる宝球》をプレイされたゲームを勝ったり運が良いゲームもありつつ、相手がいい動きをすれば負けるエスパー御霊や親和には両方落としてしまいました。
繫殖鱗コンボは、本来であればジェスカイブリンク側が大きく有利なマッチアップです。コンボプラン自体は大量の除去で無視可能、《約束された終末、エムラクール》プランも《黒曜石の焦がし口》の土地破壊で干渉可能です。
《日を浴びる繁殖鱗》側は変わらずどうでもいいものの、私の構築は《黒曜石の焦がし口》を抜いているので《約束された終末、エムラクール》プランに弱くなっていました。構築をフェアデッキに寄せた裏目ですね。
結果は伴いませんでしたが、デッキ選択に後悔はありません。繁殖鱗に負けてしまったものの、土地破壊を減らすアプローチは間違っていないと思います。
実際、私たちMSD(普段から集まっているただの仲良しグループ。正式名称「常勝集団MSD」)では構築に多少の差があれど合計8人が使用し、63.8%(60-34)と非常に高いアベレージを出せました。これは今までの地域CSのなかでも、井川さんが優勝したリビングエンドを使用した回に並ぶよい成績です。そのなかで、ヴィンテージ神でもある横川君がプロツアー権利を獲得しました。おめでとう。
今回の反省点は、いつもよりプレイ中のミスが多かったことです。ジェスカイブリンクは特にゲームが長引き、集中力が切れてしまうゲームが多かったですね。
要因を考えたところ、睡眠不足だったことが考えられます。東京在住なので、関東近郊だと宿をとらずに済むものの、会場への移動時間が1時間以上かかります。2日目は朝9時開始なので、朝に弱い私には厳しい時間です(※3)。次回以降は、首都圏開催でも宿をとることを誓いました。
(※3:初日6勝2敗したのに2日目を寝坊した人もいるらしい。名を増田 勝仁)
おわりに
というわけで、今回もプロツアー権利には届きませんでした。とはいえ、手応えはあるので回数を重ねればいけるとは思っています。来年は打席を増やすために、海外の『スポットライト・シリーズ』や『プロツアー』の隣でやっているプロツアー予選も1回くらいは出てみたいですね(出るとは言っていない)。
競技大会は終わりましたが、今年はあと『Asia Eternal Weekend 2025』(レガシー)と『THE LAST SUN』(スタンダード&レガシー)に参加します。久しぶりのレガシーなので楽しみです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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