1stドラフト全勝インタビュー: ハビエル・ドミンゲス -勝利に必要な明確な方針-

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 初日のドラフトを終えたプレイヤーが続々と席を立つ。

 彼らの表情は様々だ。3-0した者は笑顔を見せてくれるし、0-3した者は悔しさを噛み締めてモダンラウンドへ気持ちを切り替えていく。

 それらを眺めていると、笑顔で小さくガッツポーズをしながら、彼が近づいてきた。

Javier1

 ハビエル・ドミンゲスだ。

 母国スペインでの開催で意気込む彼が見せた笑顔。その勝利を支えたドラフトのデッキについて伺ってみよう。

■ スペイン出身、ハビエル・ドミンゲスにインタビュー!

――「まずは1stドラフト全勝、おめでとう!」

ハビエル「ありがとう! ひとまず良い滑り出しができたよ」

――「早速だけど、デッキを見せてもらえる?」

ハビエル「もちろんだ。今回は、黒緑タッチ白を使用したんだ」

ハビエル「まず1パック目は《束縛の司教》から《渇望の時》とピックして、白黒の吸血鬼を目指そうと思ったんだ。《薄暮軍団の盲信者》も流れてきたからね。ただ、4手目くらいから白の流れが弱くなり、《むら気な長剣歯》《弱者狩り》が流れてきて緑が空いている、と判断したんだ。黒のカードは流れてくるから、白黒という方針を辞めて黒緑に変えたんだ」

束縛の司教渇望の時むら気な長剣歯

――「最終的には白をタッチして、初手の《束縛の司教》も入ったんだね」

放棄された聖域穢れた果樹園

ハビエル《放棄された聖域》《穢れた果樹園》がピックできたのが大きかったね。特に《放棄された聖域》が2枚になってくれたことで、白をタッチしても問題がなくなった。この3枚の土地がなかったら、デッキはかなり弱くなっていただろうね」

――「なるほど。一応聞いておくけど、2パック目の初手は何だったの?」

貪欲なチュパカブラ

ハビエル「もちろん《貪欲なチュパカブラ》だ。このカードは、神話アンコモンだよ。このデッキのMVPさ」

――「たしかに強力なカードだよね」

ハビエル「強力だね。《復活》で再利用できるし、《従者の献身》でライフを削りきってくれたこともある。とにかく強いカードだね。《復活》《翡翠細工の職工》などを回収することもできて便利な1枚だった。あと、《渇望の時》は2マナの呪文としては破格の能力を持つ、頼りになる呪文だよ」

■ 明確な方針を持つことの重要性

――「強力なデッキを組み上げて見事に3-0したわけだけど、ドラフトで勝つためのアドバイスを貰える?」

Javier2

ハビエル「まずは明確な方針を持つ、ということだね。アグレッシブに攻めるのか、それともロングゲームを制するのか。ピックする段階で方針を決めたら、その方針通りにプレイするんだ」

――「なるほど。方針を決める、というのはなかなか難しいよね」

ハビエル「1パック目の初手から方針を決めろ、と言われても不可能さ。まずは数多い選択肢を用意して、少しずつ絞っていく。ピックを進めていくうちに『今回は最速で攻めるのではなく、クリーチャーの力を活かして勝利しよう』という方針を立てたら、その方針に従ってピックを進めていくんだ。カードの評価はデッキに依って上下することがある。《貪欲なチュパカブラ》のようにただ強い、というものもあるけれど、『高速で攻める場合は評価が高い。コントロール気味に構えるなら低い』なんていうカードも多いからね」

――「その辺りは、やはり経験が重要だね」

Javier3

ハビエル「そうだね。経験と、あとは情報収集さ。俺の場合は結果を残したデッキを眺めて、理想形を探るようにしている。もちろん実際のプレイも重要なんだが、中途半端なデッキでは中途半端なプレイしかできないからね。特にプロツアーの場合は『しっかりとしたデッキを組めている』という状態がスタートラインで、戦闘は皆上手い。まずはスタートラインに立つためにも、環境の理想形を学ぶのは重要だと思うよ」

おまけ -チュパカブラとハビエル-

 インタビューを終えて写真撮影をしようとしたところ、ハビエルがちょっとした豆知識を教えてくれた。

ハビエル「そういえば、チュパカブラはスペイン語って知ってる?

――「え!? そうなの!?」

ハビエル「そうなんだよ。”チュパ”は『吸う』、”カブラ”は『ヤギ』で、『ヤギの血を吸う』って意味なんだ。南米のUMAなんだけどね(編注:※Wikipedia参照)」

――「知らなかったよ。スペインのプロツアーで、スペイン出身の君が使ったわけだね」

ハビエル「2パック目を開けて見つけたときは驚いたよ。『ああ、こんなこともあるんだな』とね」

――「じゃあ、一緒に写真に写っておく?」

ハビエル「(カードを持って少し悩み)……そうするか」

Javier4

 明日の2ndドラフトでも、彼の元に《貪欲なチュパカブラ》が舞い降りることを願おう。