エピローグ

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 プロツアー取材は、世界中のプロプレイヤーと交流することができる貴重な機会だ。昨年のプロツアー『霊気紛争』からの一年、私はその恩恵に預かり、多くのプレイヤーと会話をした。そして同時に、勝利と敗北を見つめてきた

 今大会には、Hareruya ProsとHareruya Hopesを合わせて40名が参加した。ラウンドが終わって「勝ったよ!」「負けてしまった……」と声を掛けられ、スタンディングが更新されて結果を眺めながら各プレイヤーの勝敗を追いかける度に、それぞれの勝敗が心を締め付けてくる。

 この負担は想像以上のものだ。

 それが決勝ラウンドとなれば、尚更である。

 最終日、私はフィーチャーエリアに張り付いた。そして、準々決勝でハビエル・ドミンゲスが、準決勝でパスカル・フィーレンが敗れ去る姿を目の当たりにした。

 敗北が決まった瞬間の苦しさを飲み込み、本人たちに「お疲れ様」と伝える。「こんな苦しみを味わうくらいなら、プロツアーに来なければ良かった」と思う気持ちがあるのも事実である。

 しかし、

 目の前でプロツアーチャンピオンが誕生する瞬間を眺めてしまうと、そんな事実は何処かへと吹き飛んでいく。

■ We Are the Champions, My Friends

 勝利したルイスの元に駆け寄る。すると、祝福の言葉を述べる前に、彼は私を力強く抱きしめてきた。

 彼と初めて会ったのは、アルバカーキで開催されたプロツアー『イクサラン』の会場だった。そのときはゆっくりと会話をすることができなかったが、別れ際に「ビルバオで会おう!」と握手をしてくれたことを覚えている。

 そして今大会では、彼と様々な話ができた。トップ8入賞を果たしたあと、プロツアー優勝への思いも聞かせてもらった。

ルイス「俺が優勝するということは、Hareruya Latinを始めとする仲間、友人と一緒に栄光を掴むことになるんだ。ここまで決して一人では来られなかったからね。だからこそ勝ちたいんだよ、友のために……ああ、もちろん君もその一人さ!」

 そのときは、ある種のリップサービスのようなものだと受け止めていた。それと同時に「友人の一人になれたら、どれだけ素敵なことか」と思ったのも事実である。

 だからこそ、抱きしめながら彼の呟いた言葉が、私の胸を貫いた。

 「ありがとう、友よ(Thanks, my dear friend)!」

 私は「君がチャンピオンだ、おめでとう」と伝えてから、勇気を振り絞って“my friend”と付け加えておいた。

 おめでとう、ルイス・サルヴァット。


 さて、感動の余韻に浸りながら原稿を仕上げている内に、飛行機の時間が近づいてきた。

 プロツアーという最高の時間に別れを告げて、日常へ帰らねばならない。

 私は決して忘れないだろう。プロツアーチャンピオンの誕生に立ち会い、震える指でシャッターを切り、そして彼の友人となれた、今日この日を。

プロツアー『イクサランの相克』現地レポート

fin.