未開拓のスタンダード、辿り着いたひとつの解答 ~グリクシス・エネルギー~

Petr Sochurek

Translated by Kenji Tsumura

原文はこちら
(掲載日 2018/02/24)

みなさん、こんにちは。ペトルです。今日はスタンダードについてお話したいと思います。あと1回勝てばトップ8というところで敗れてしまったグランプリ・リヨン2018 (モダン) に関する記事を書こうかと思っていたのですが、《血編み髪のエルフ》、そして《精神を刻む者、ジェイス》解禁されたことでモダン環境は劇的に変化するはずなので、お届けしようと思っていた情報がみなさんにとってあまり重要ではないと気付いたからです。

血編み髪のエルフ精神を刻む者、ジェイス

スタンダードはダントツでお気に入りのフォーマットで、モダンのグランプリが差し迫っているというのにもかかわらず、僕はMagic Onlineで主にスタンダードをプレイしていました。僕がスタンダードを気に入っている理由のひとつにスタンダードを最も得意としていることが挙げられますが、誰だって勝つのは好きですよね。4枚の禁止カードが発行されてからというもの、スタンダード環境は新鮮かつ未開拓で、プレイするのが面白いのでとても楽しい時間を過ごしています。

というわけで、プロツアー『イクサランの相克』が終わったあと、僕は少しだけマジックを休憩することにしました。もちろん、マジックはほとんど毎日プレイしています。ただしいつもとは違って1日に数時間程度のものですし、普段のように “研鑽を積む” というよりかは単純に楽しむためにプレイしています。

以上の理由から、スタンダードには僕が試すことができていないデッキがまだまだたくさんありますが、現時点でプレイしたデッキの中で最も好きなものは「グリクシス・エネルギー」です。

こちらが最新のリストになります。

Magic Onlineのデッキリストをいくつか拝見したのですが、これといってときめくようなリストはありませんでした。「グリクシス・エネルギー」には《奔流の機械巨人》とたくさんの打ち消し呪文が入った “コントロール寄りのバージョン” と、 “タップアウト・バージョン” (毎ターンメインでマナを使い切る戦略) があるものの、僕の好みは後者です。《つむじ風の巨匠》は緑があった全盛期と比べると明確に弱体化してしまいましたが、「赤単」がスタンダードで最高のデッキである以上、僕にとってこれは “ほぼ自動的にデッキに入るカード” のようなものですね。

つむじ風の巨匠

Magic Onlineで見かけたデッキの問題点は、《つむじ風の巨匠》が「赤単」以外のマッチアップでインパクトが小さいことでした。他のミッドレンジデッキに負けないようにするためには、これを埋め合わせるだけの強力なカードを用意しなければいけないはずなのですが、そのような工夫を施したリストはひとつもなかったのです。やがて良いリストを探すのは諦め、自分で作ることにしました。もちろん最初から成功を収めることは難しいですし、それゆえに今現在のリストは最初に使っていたものと大きく形が異なります。

おそらく僕のリストは一般的な “テンプレリスト” とはかなり形が違うと思うので、各カード選択についてお話ししたいと思います。

メインボード

26枚の土地

僕が見かけたリストの多くは土地を25枚しか入れていませんでしたが、おそらくこれは大きな間違いです。《スカラベの神》《反逆の先導者、チャンドラ》、それに “サイクリングランド” を擁するこのデッキではマナフラッドはそれほど頻繁に起こるわけではありません。一方で土地が止まってしまうことは深刻な問題で、個人的には26枚目の土地をプレイしない理由がないと思います。それどころか、27枚目の土地すら検討に値すると考えています。

4 《マグマのしぶき》

マグマのしぶき

4

最初は《致命的な一押し》《マグマのしぶき》の両方が入っていたものの、すぐさま《マグマのしぶき》の方が明確に優れていると気が付きました。《屑鉄場のたかり屋》《地揺すりのケンラ》《再燃するフェニックス》《スカラベの神》といったカードの存在により “追放” 効果はとても重要です。クリーチャーを除去するにあたって《致命的な一押し》の方が勝っている局面は少ないですし、《マグマのしぶき》ならば《反逆の先導者、チャンドラ》の(赤)(赤)を生み出す能力からキャストすることもできます。

3 《反逆の先導者、チャンドラ》

反逆の先導者、チャンドラ

3

これに関しては十分にテストできていません。しかしながら、私見では《反逆の先導者、チャンドラ》は信じられないほどに強力なカードであり、それに見合うほどの数がプレイされていないカードだと思います。もちろん対「赤単」が顕著なように、《反逆の先導者、チャンドラ》が素晴らしいとは呼べないような攻撃的なデッキとのマッチアップはいくつか存在します。

ですがこのカードはそういったマッチアップにおいてさえ4マナの除去+数点のライフ回復として機能しますし、生き残った場合の見返りは非常に大きなものです。そして、《反逆の先導者、チャンドラ》が強いとされるマッチアップにおいては、このカードはこれ以上ないほどに強力です。ほぼどんな状況下であれ最低でも2対1交換ができ、もしも対戦相手が対処しそびれるようなことがあればそのままゲームを支配してしまいます。

数名のプレイヤーは、《反逆の先導者、チャンドラ》をメインボードに2枚、サイドボードに1枚にすることでこの問題をクリアしようと試みています。これは悪くないアイディアだと思いますが、《反逆の先導者、チャンドラ》のリターンの大きさを顧みるにメインボードに3枚入れておいて数枚をサイドアウトする方が良いでしょう。

4 《光袖会の収集者》

光袖会の収集者

4

このカードに関しては、それほど多くの説明が必要だとは思えません。デッキの中で最高のカード (特にサイドボード後) のひとつであり、デッキに《エネルギー》を組み込む大きな理由でもあります。

4 《蓄霊稲妻》

蓄霊稲妻

4

《光袖会の収集者》と同じですね。

2 《慮外な押収》

慮外な押収

2

《慮外な押収》は今現在の環境で眠ってしまっている偉大なカードです。僕が見たどのリストにもこのカードが採用されていなかったことにとても驚きましたし、なぜそうなってしまったのか理解できませんでした。確かに今は《エネルギー》を得るのが少しばかり大変ですが、それが特に必要だというわけではありません。

《慮外な押収》が生み出す4個の《エネルギー》だけで十分なことがほとんどですし、5マナ圏のクリーチャーを奪う追加の《エネルギー》ひとつを用意するのはそう難しいことではないです。そして現実的に考えて、それ以上の値が必要になることはほぼありません。《スカラベの神》《熱烈の神ハゾレト》《再燃するフェニックス》が存在する環境において《慮外な押収》は素晴らしいカードであり、間違いなく僕にとってのMVPです。サイドボードに3枚目を用意してもいいと思うくらいですね。

4 《ヴラスカの侮辱》

ヴラスカの侮辱

4

《慮外な押収》の項目で述べたのと同じ理由から《ヴラスカの侮辱》も素晴らしいカードだと思いますし、皆が3枚しかプレイしていない理由を理解しかねます。少しばかりマナコストは重いものの、それが大きな問題になりえるとは思いません。経験上、昨今のスタンダードでは正しい解答を持つことが重要であり、それが軽い必要はありません《奔流の機械巨人》と上手く噛み合う点も良きボーナスですね。

3 《スカラベの神》

スカラベの神

3

理由は図りかねますが、多くのリストでは2枚しか採用されていません。しかし《スカラベの神》は完全なるぶっ壊れカードで、アンタップを迎えられればそれだけで勝利してしまう展開が多々あります。環境には《ヴラスカの侮辱》《マグマのしぶき》といった “追放” 除去があるため、2枚目以降の《スカラベの神》がいついかなるときも使い道がないかと言えばそうではありません。

1 《奔流の機械巨人》

奔流の機械巨人

1

最初は2枚から始めましたし、いまだにそれが正解かもしれないと思うものの、僕は手札に《奔流の機械巨人》を抱えたまま唱えられない状況にあまりにも多く直面してしまいました (このデッキのように大量の “サイクリングランド” がある場合は特にそうなりやすいです) 。

したがって、2枚目はサイドボードに用意する方がいいだろうという結論に達しました。サイドボード後であれば各マッチアップ用の正しいカードが用意してあるので、自然とゲームが長引きやすくなります。それに加えてデッキ内の全てのカードが有効牌なので、仮に《奔流の機械巨人》を唱えるマナがなくとも、いずれはそれが唱えられるようになるまで他の呪文を使って耐えることができるでしょう。

4 《つむじ風の巨匠》

つむじ風の巨匠

4

「赤単」がこれほどまでにメタゲームの大部分を占めていなければ《つむじ風の巨匠》を使う必要はありませんが、実際に「赤単」は一大勢力ですし、それに《つむじ風の巨匠》はどんなマッチアップであれ悪くはないカードです。

「赤単」に対しては《渇望の時》のようなカードの方が優れているという議論もあるかもしれません。真意のほどは定かではありませんが、仮に対「赤単」で《つむじ風の巨匠》よりも《渇望の時》の方が勝っていると仮定しましょう。ですが《つむじ風の巨匠》はいついかなるときもそこそこのカードで序盤に必要な軽いアクションとして役立つのに対し、《渇望の時》はいくつかのマッチアップにおいて最低のカードなのです。

1 《天才の片鱗》

天才の片鱗

1

《エネルギー》関連カードの燃料供給役として、最初はもっと多くの《天才の片鱗》を採用していました。しかしそういったカードは必要ないことが分かりましたし、《天才の片鱗》では遅すぎる展開が多々ありました。そこで《天才の片鱗》の2枚を《豪華の王、ゴンティ》《反逆の先導者、チャンドラ》といった戦場に置いておけるカードに変更しました。

1 《アズカンタの探索》

アズカンタの探索

1

《アズカンタの探索》を1枚しか採用していないのは、2枚目を引いてしまった状況を十分に正当化することができなかったからです。とはいえ、十分に強力なカードですので1枚はプレイするべきだと思います。

1 《豪華の王、ゴンティ》

豪華の王、ゴンティ

1

緑のカードを失ってしまった《つむじ風の巨匠》の力不足を補うためのカードが必要でした。できれば戦場に置いておけるもので、なおかつそれほど重すぎないものを探したのですが、僕が見つけた中で最高のカードが《豪華の王、ゴンティ》でした。

2 《至高の意志》

至高の意志

2

僕はそれほど《至高の意志》が好きだというわけではないのですが、このデッキにはもう少し軽いアクションが必要だと感じました。ただ優秀な軽いカードの問題点は用途がとても限定的で、より多くの除去を採用してしまうと特定の戦略に対して明確に弱くなってしまいます。《至高の意志》は素晴らしいというわけではないものの、3ターン目のアクションであれば何であれ打ち消すことができますし、消耗戦においてとても強力なカードです。

サイドボード

2 《削剥》

削剥

2

《削剥》がとても優れているとは思いませんが、クリーチャーデッキに対してはサイドボード後に追加の除去呪文にアクセスできた方が良いでしょう (とりわけ後手のときはそうです) し、《削剥》は「マルドゥ機体」や「《王神の贈り物》」に対して最良のカードです。これらを加味すると、《削剥》はサイドボードのスロットを割くに値するでしょう。

3 《強迫》

強迫

3

本格的なコントロールデッキやコンボデッキ (現環境のコンボデッキの多くはミッドレンジ寄りでクリーチャーがたくさん採用されています) がそう多くはないため、事前に予想していたよりもサイドインする機会が少なかったです。とはいえ正しいマッチアップにおいては非常に強力ですし、サイドボードのスロットを割くだけの価値があると思います。

2 《否認》

否認

2

《強迫》と同じ理由で採用されています。《強迫》が3枚、《否認》が2枚というバランスにおそらく疑問を抱いていることでしょう。これらのカードは異なる状況において違った長所を持ちますが、全体的に少しだけ《強迫》が勝ると考えています。ただし環境に「《副陽の接近》」がいる以上、確定カウンターを2枚は採用しておくべきです。

1 《奔流の機械巨人》

奔流の機械巨人

1

サイドボードに《奔流の機械巨人》を採用している理由は、すでに上で述べた通りです。

1 《豪華の王、ゴンティ》

豪華の王、ゴンティ

1

《豪華の王、ゴンティ》はマナコストの軽い追加のアドバンテージ獲得手段であり、《殺戮の暴君》に対する疑似的な解答でもあります。《豪華の王、ゴンティ》以外の方法で《殺戮の暴君》を打ち倒すことは難しいですし、ほとんどの緑のデッキはサイドボードに《殺戮の暴君》を2枚採用しているので、しっかりと準備しておきましょう。

1 《天才の片鱗》

天才の片鱗

1

《天才の片鱗》は消耗戦で最高の1枚です。本当は4枚使いたかったくらいですが、ここまでに述べてきた理由もあいまって結局は数枚を《豪華の王、ゴンティ》に変更してデッキの弱点を補うことにしました。もしもスロットに余裕があったり、メタゲームが遅いデッキに傾くようであれば、追加の《天才の片鱗》の採用を検討しましょう。

3 《チャンドラの敗北》

チャンドラの敗北

3

「赤単」用です。特にサイドボード後は《栄光をもたらすもの》《反逆の先導者、チャンドラ》を殺せることが重要です。

1 《多面相の侍臣》

多面相の侍臣

1

これは《殺戮の暴君》対策ですが、最高のカードというわけではありませんし決して2枚目を引きたくはないです。これが《多面相の侍臣》を1枚しか採用していない理由ですが、1枚目はとても有効なので1枚は採用しておきましょう。

1 《宝物の地図》

宝物の地図

1

2枚目の《アズカンタの探索》の方が良い可能性は高いものの、《アズカンタの探索》を2枚とも引いてしまったゲームはとてもひどいありさまでした。何度か2枚以上の《宝物の地図》も試してみましたが、《宝物の入り江》のアドバンテージ獲得能力は先細りするものなので、《宝物の地図》ばかりではなく《天才の片鱗》《豪華の王、ゴンティ》など、他のアドバンテージ獲得手段と併用する方がいいでしょう。

とはいえ、カード自体は強力なので決して過小評価してしまわないように。


スタンダードにはまだまだたくさんの課題がありますが、これが現時点での僕の解答です。このデッキはとても強いと思いますし、プレイしていて楽しいデッキですので、ぜひみなさんも挑戦してみてください!

最後まで読んでくれてありがとう。

ペトル・ソフーレク

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