Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2018/02/28)
ここ最近、モダンについて多くのことが語られてきた。大会毎に上位のデッキは目まぐるしく入れ替わるし、 “多様性” はこのゲームの名前そのものみたいなもんだな。不均質なメタゲームは多くのプレイヤーにとても好意的に受け取られている。俺自身は雑多なメタゲームがより楽しむために必要だとは考えちゃいないものの、それがモダン環境をダイナミックであり続ける助けとなっているのは間違いない。
そして、Wizards of the Coast社は2018年2月12日に大きな発表をしたよな。
モダン :
・《精神を刻む者、ジェイス》 解禁
・《血編み髪のエルフ》 解禁
これに関して現時点で明確に主張できることはない。これらのカードの解禁がモダン環境にとって良いことなのか悪いことなのかさえ分からないものの、環境を大きく様変わりさせてくれることは明白だ。新しいフォーマットを探求するのはとても面白いことだが、 “新たしいフォーマット” というのは特定のカードがフォーマットを激変させてしまった結果として一新された場合も含まれる。
今後の展望は?
《精神を刻む者、ジェイス》について
ここからはこれら2種の解放されたカードを使って、俺がどんなデッキから着手し始めようと考えているのかについて少しずつ触れていきたいと思う。まず初めに、《精神を刻む者、ジェイス》を最も上手く使えるデッキはなんだろうか?
《精神を刻む者、ジェイス》を探求するにあたって、俺が真っ先に試そうと思っているデッキは「グリクシス・コントロール」だ。その理由のひとつに《稲妻》が挙げられる。昔はモダンで最強の除去呪文と謳われた《稲妻》だが、ついに素晴らしいカムバックを果たすときがきた。《ジェイス》はコントロールデッキで使用する場合にのみ力を発揮するというわけではなく、対コントロールデッキ戦においても非常に有用なカードなんだ。そして、《稲妻》は対面の《ジェイス》を直接的に対処できる術となってくれる。
《稲妻》や《致命的な一押し》といった干渉手段、《コラガンの命令》に《謎めいた命令》といった融通の利くカードがあることから、「グリクシス・コントロール」は現在のモダンにおいて素晴らしいデッキだと思う。
《瞬唱の魔道士》はそれ単体でも優れたカードだが、《精神を刻む者、ジェイス》とも完璧に噛み合う1枚だ。こいつは除去呪文を再利用できるだけでなく、俺たちの《精神を刻む者、ジェイス》を守るためのクリーチャーまで与えてくれるんだからな。
もし実際に《ジェイス》+《瞬唱の魔道士》がモダンで最高のデッキになったとしても、俺は全く驚かないね。
1 《沼》
1 《山》
2 《湿った墓》
2 《蒸気孔》
1 《血の墓所》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
2 《忍び寄るタール坑》
1 《硫黄の滝》
4 《廃墟の地》
-土地 (26)- 4 《瞬唱の魔道士》
1 《ヴリンの神童、ジェイス》
-クリーチャー (5)-
4 《稲妻》
2 《致命的な一押し》
1 《呪文嵌め》
2 《論理の結び目》
1 《対抗突風》
1 《終止》
1 《戦慄掘り》
4 《コラガンの命令》
4 《謎めいた命令》
2 《アズカンタの探索》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文 (29)-
2 《払拭》
2 《集団的蛮行》
2 《神々の憤怒》
1 《イゼットの静電術師》
1 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》
1 《儀礼的拒否》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《対抗突風》
1 《滅び》
-サイドボード (15)-
《血編み髪のエルフ》について
《血編み髪のエルフ》は《精神を刻む者、ジェイス》と比べて少しカードパワーで劣るものの、そうはいってもいくつかのデッキで採用されるだろう。それが最も顕著なのは「ジャンド」で、《血編み髪のエルフ》はこのデッキの戦略に最適なカードだ。それにもともと《血編み髪のエルフ》が禁止されたのはこのアーキタイプが原因だったんだからな。
俺が思うに、彼女は「ジャンド」以外でもいくつものモダンのデッキで居場所を見つけられるだろう。ひとつめの合理的な選択は「赤緑土地破壊」だ。「ウルザトロン」や「タイタンシフト」に効率よく勝てることから、このデッキはMagic Onlineでそこそこの成果を上げている。ただこの禁止解禁前にこのデッキが抱えていた最大の欠点は、土地破壊が効果的でないデッキに対して十分に渡り合えるだけの力がないことだった。《血編み髪のエルフ》はこの問題を改善してくれるだろう。
それに自分だけの《なだれ乗り》が作れるなんて最高だよな!
1 《山》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《樹木茂る山麓》
4 《吹きさらしの荒野》
-土地 (22)- 4 《東屋のエルフ》
2 《極楽鳥》
3 《不屈の追跡者》
1 《クルフィックスの狩猟者》
4 《血編み髪のエルフ》
2 《嵐の息吹のドラゴン》
2 《業火のタイタン》
-クリーチャー (18)-
《血編み髪のエルフ》によって再考に値するデッキ
新カードはときに古来のアーキタイプを呼び覚ますことがあるが、この度の禁止改定後にもひとつのデッキが散見されるようになった。それが「トライバル・ズー」だ。
「トライバル・ズー」はたくさんのマナレシオに優れたクリーチャーを擁し、5色のマナベースをもってして《部族の炎》の力を最大化したアグロデッキだ。このデッキにとって《血編み髪のエルフ》の回帰は素晴らしいニュースだし、《血編み髪のエルフ》以外にも《カマキリの乗り手》が加わっている。「5色人間」以外のデッキで《カマキリの乗り手》を見るとは全くもって予想外だったが、「続唱」で3/3・飛行のクリーチャーを導くのはとても強力だし、すでに青絡みの土地を使っているんだから採用するための対価なんてないようなもんだ。
《血編み髪のエルフ》の3/2・速攻ってスペックもこのデッキにおいて素晴らしいものだし、したがってこのようなアーキタイプが “モダンにおける攻撃的な赤いデッキ” として「バーン」デッキと覇権争いをしても何ら驚きはないな。
1 《平地》
1 《寺院の庭》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《繁殖池》
1 《聖なる鋳造所》
1 《血の墓所》
1 《蒸気孔》
1 《神無き祭殿》
1 《神聖なる泉》
4 《樹木茂る山麓》
3 《吹きさらしの荒野》
3 《新緑の地下墓地》
2 《溢れかえる岸辺》
-土地 (22)- 4 《密林の猿人》
4 《壌土のライオン》
4 《野生のナカティル》
4 《タルモゴイフ》
4 《カマキリの乗り手》
4 《血編み髪のエルフ》
-クリーチャー (24)-
《精神を刻む者、ジェイス》と《血編み髪のエルフ》を一緒に使うことはできないの?
なになに、《精神を刻む者、ジェイス》と《血編み髪のエルフ》を一緒に使いたいだって?心配ないぜ!モダンにはどんなデッキだってあるんだからな。
「ティムール・ムーン」はモダンで2軍か3軍てところだったが、これら2種類のカードはこのデッキが必要としていたもの全てと言って差し支えないだろう。
《祖先の幻視》はエルフと青きプレインズウォーカーを繋ぎ合わせるカードだ。《ジェイス》は《祖先の幻視》をライブラリーのトップに積むことが可能で、すると《血編み髪のエルフ》の「続唱」で確実に《祖先の幻視》を導けるってわけさ。
安定性を向上させてくれることから、《イゼットの魔除け》と《予言により》の採用はとても賢明な判断だと思う。これらのカードのおかげで中盤戦以降の《祖先の幻視》も多少は扱いやすくなっている。
全体的にみて、《ジェイス》と《血編み髪のエルフ》はモダンのミッドレンジやコントロールデッキを強化してくれるだろう。両カードともに除去カードと併用する方が真価を発揮しやすいため、そういった除去などの干渉手段に強いデッキは今後のモダンで堅実な選択となるはずだ。
これらのカードに強い戦略は?
真っ向から《精神を刻む者、ジェイス》に立ち向かうことは困難だし、とりわけ《ジェイス》が提供するアドバンテージが膨大なものになるサイドボード後はそれが顕著だ。したがって、序盤に焦点を当てたアプローチは魅力的に思える。
プロツアー『イクサランの相克』で注目の的となった「赤黒《虚ろな者》」は、ミッドレンジ的なデッキを攻めるに最適なアーキタイプだろう。ここでは《復讐蔦》の入ったリストをご紹介しよう。墓地から舞い戻るカードを最大限に利用することで除去呪文に強くなるし、速攻クリーチャーは全てのプレインズウォーカーに対する最高の解答だ。
1 《沼》
3 《血の墓所》
3 《踏み鳴らされる地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《樹木茂る山麓》
1 《沸騰する小湖》
-土地 (18)- 4 《炎刃の達人》
4 《苛立たしい小悪魔》
4 《炎跡のフェニックス》
4 《復讐蔦》
4 《通りの悪霊》
4 《虚ろな者》
3 《グルマグのアンコウ》
-クリーチャー (27)-
総括
要するに、モダンはモダンのままってことさ。「バーン」、「《ぬめるボーグル》」に「ウルザトロン」といった息の長いデッキも依然として上位卓で見かけることになるだろうしな。
さあ、新しい環境を楽しもうぜ!
ハビエル・ドミンゲス