準決勝: 木原 惇希(東京) vs. 小田 光一(埼玉)

晴れる屋

By Atsushi Ito

 メインに《意思の激突》《否認》4積みという、神・松本 友樹を倒すために作られた衝撃のダークジェスカイを組み上げたフロンティア神決定戦から一週間。初代スタンダード神にして現フロンティア神、デッキビルダーとして知られる木原 惇希が、今度はモダンで新たなデッキを持ち込んできた。

 「カウンターカンパニー」から《集合した中隊》を抜き、代わりに1マナ軽い《異界の進化》を搭載することで、コンボスピードの向上と、サイド後には1枚差しのユーティリティカードによってコンボとは異なるゲームプランをとることを可能にしたこのデッキは、これまで速度の割に低い干渉力からいまいちトップメタになりきれなかった《献身のドルイド》《療治の侍臣》コンボの新たな可能性を切り拓くものと言える。

 だが、対戦相手の小田もオリジナリティでは負けていない。「バリューカンパニー」とも呼ばれる、《クルフィックスの狩猟者》《迷える探求者、梓》《ラムナプの採掘者》といったフェッチランドや《幽霊街》とシナジーがある3マナ域のクリーチャーたちを《集合した中隊》で呼び出すタイプのデッキをベースにしつつ、そこに大胆にも《献身のドルイド》《療治の侍臣》コンボを組み込んだのだ。

献身のドルイド療治の侍臣

 奇しくもドルイドコンボ同士の対決となったこの準決勝。相手より早くコンボを決めて決勝戦に駒を進めるのははたしてどちらになるのか。

Game 1

 先手の木原が《極楽鳥》スタートに対し小田が《森》から《貴族の教主》を送り出すと、小田のデッキを知らない木原は「……何だろうなぁ?」と思案顔。だがメインボードはやれることが限られている木原は2枚目の土地こそ置けないものの、続けて《献身のドルイド》をプレイしてターンを返す。

小田「プレッシャーが半端ない……」

 ドルイドコンボの同型戦は互いに干渉手段が少ないため、基本的に先に《献身のドルイド》を出した方が圧倒的に有利となる。この時点で木原の戦場には《献身のドルイド》のアンタップ分も含めて4マナがあり、素引きの《療治の侍臣》はケアできないにしても、土地を引かれて《召喚の調べ》「X=2」からコンボを決められる可能性もある。無抵抗でターンを返してコンボを決められたら目も当てられない小田はやむなく《歩行バリスタ》「X=1」で《極楽鳥》を打ち落とすのだが、土地を引き込んだ木原はなおも《献身のドルイド》《極楽鳥》と展開する。

 もはや応手がない小田はやむなく《献身のドルイド》を出しての「お祈り」状態でターンを返すのだが、それを見た木原が「まさかのミラー」と呟きつつメインで《召喚の調べ》「X=2」から《療治の侍臣》をサーチすると無限マナコンボが成立。さらに手札から《薄暮見の徴募兵》を公開し、《歩行バリスタ》が小田のライフを一瞬にして刈り取った。

木原 1-0 小田

Game 2

 後手の木原がマリガン。1ターン目は《貴族の教主》の鏡打ちだが、2ターン目に《極楽鳥》からの《献身のドルイド》という動きで小田が一歩先んじる。一方の木原もコンボに対する抵抗手段こそないものの、2枚目の《貴族の教主》を出しつつとある土地を置いて小田にプレッシャーをかける。

山賊の頭の間

 《山賊の頭の間》《献身のドルイド》に速攻を持たせることができるこの土地があれば、何もない場からでもコンボが成立しうることになる。

 これに対し、返す小田は選択を迫られる。《集合した中隊》《療治の侍臣》を探しにいくか、《歩行バリスタ》をプレイするか。小田の選択は後者だった。「X=3」でプレイし、《貴族の教主》2体を薙ぎ払う。さらに《山賊の頭の間》《幽霊街》で破壊し、返しのターンのコンボ成立を許さない。

 それでも木原は《献身のドルイド》をプレイしてターンを返す。小田は再び《集合した中隊》をプレイするかどうかの選択となるが、ここでもギャンブルはせずに一貫して防御の構え。4マナ払って《歩行バリスタ》を成長させ、「賛美」アタックを敢行しつつ木原の《献身のドルイド》への受けとする。

 だが返すターン、木原が仕掛ける。プレイ《療治の侍臣》。これはスタックで《歩行バリスタ》が自壊しながらも《献身のドルイド》を除去する。しかし木原の攻め手はこれだけにとどまらなかった。前のターンに置いていた《ドライアドの東屋》を生け贄に《異界の進化》《献身のドルイド》をサーチし、《療治の侍臣》と揃った状態でターンを返す。

小田 光一

小田 光一

 こうなっては受けきれない小田は自らもコンボを決めるべく勝負に打ってでる。《集合した中隊》。6枚の中に《療治の侍臣》は……あった!《不屈の追跡者》とセットで出て、無限マナコンボが成立する。

 しかし《歩行バリスタ》を使いきってしまった現状、無限マナだけでは勝利することができない。第2の勝ち手段にたどり着くべく、小田は有り余る(緑)マナから2枚目の《集合した中隊》をプレイするのだが、めくれたのは2体目の《不屈の追跡者》。土地がないため手がかり・トークンを生成することもできず、無限のマナがありながらもそのままターンを返さざるをえない。

 かくして木原にターンが戻ってきた。《献身のドルイド》《療治の侍臣》を場に揃えた木原に。だが実は木原も無限マナコンボを揃えるのに手いっぱいでフィニッシャーを引けていなかった。アンタップ、アップキープ、通常ドロー。引けない。置いてあった《地平線の梢》起動、引けない。「紛争」した《改革派の結集者》《地平線の梢》を戻して起動、引けない。セット2枚目の《地平線の梢》から起動……引けない!!!

木原「4枚も引いて引けんかね!」

 かくして試合はお互い無限マナ状態でありながらターンをパスし合うという、モダンにあるまじき異常なゲームとなった。だがこうなると小田の戦場にいる2体の《不屈の追跡者》が強い。返しのドローで《聖遺の騎士》を引き込んだ小田は、このターンこそ再びパスせざるをえないものの、次のターンの4ドローを確定させる。

木原「頼む!……アカンかー」

 そして追い込まれた格好の木原が続くドローでもフィニッシャーにたどり着けずターンを返したところで、《聖遺の騎士》からフェッチサーチして起動→手がかり・トークン4枚で4ドロー→セットフェッチから起動→手がかり・トークン4枚でこのターン追加8ドローを実現した小田が《召喚の調べ》にたどり着き、サーチした《不屈の神ロナス》によって強化された小田のクリーチャーたちが無限マナ状態の木原を無限パワー+トランプルで一撃のもとに介錯したのだった。

木原 1-1 小田

Game 3

 再び先手をとった木原のオープニングハンドがまた、悩ましいものだった。

樹木茂る山麓森貴族の教主自然との融和
異界の進化呪文滑り永遠の証人

 ドルイドコンボは《山賊の頭の間》を介さない限り、コンボ成立の1ターン前に《献身のドルイド》を設置する必要がある。そして同型戦においては先出しが有利とはいえ相手も同じ条件である以上、「先手2ターン目の《献身のドルイド》設置」は是が非でも達成したい命題であった。だがこのオープニングハンドに《献身のドルイド》の姿はなく、《自然との融和》の5枚頼みか、もしくは《異界の進化》で無理矢理設置するしかないという、要件充足度の低い7枚。

 それでも木原はキープすることを選択した。《貴族の教主》ゴー、対する小田も7枚キープで《吹きさらしの荒野》ゴー。ということは妨害キープか、もしくはほぼ《献身のドルイド》を持っている。

 木原の2ターン目のドローは《貴族の教主》《自然との融和》で、不確実だが《献身のドルイド》さえ見つかればほぼ必勝のプランか。《異界の進化》《献身のドルイド》だけ先に出して次のターンのドローに賭けるか。

木原 惇希

木原 惇希

 そして木原は選択した。《自然との融和》、ライブラリートップを5枚見る。……《献身のドルイド》は、いない。やむなく2枚目の《貴族の教主》でターンを返すと、小田の2ターン目はやはり《献身のドルイド》

 対し、返すターンの木原のドロー、《自然との融和》で見えなかった6枚目のライブラリートップが《献身のドルイド》だった。3ターン目、《呪文滑り》《献身のドルイド》を送り出してターンを終え、「小田のコンボパーツが揃っていない」という一縷の望みにかける。

 だが3枚目の土地を置いた小田は《献身のドルイド》をアンタップして5マナから《召喚の調べ》「X=2」で《療治の侍臣》をサーチすると、さらに手札から2枚目の《召喚の調べ》を公開したのだった。

木原 1-2 小田

木原「また準決勝で負けたー!!」

 木原は以前にも第5期モダン神挑戦者決定戦準決勝で敗退している。これまで木原はスタンダード、フロンティア、モダン、はたまたグランプリ・京都2017ではリミテッドと、フォーマットを問わない活躍で地力の高さを見せつけてきた。

 今回は敗れてしまったものの、前人未到の「現役での2フォーマットの神兼任」を最初に達成するのは、木原かもしれない。

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