By Hiroshi Okubo
新旧のミスターPWC同士が、PWCCのバブルマッチで激突する。第5ラウンドからそんな熱い場面、渡辺 雄也と深谷 祐太のマッチをお届けしよう。
もはや世界を股にかけるトッププロである渡辺 雄也についての説明は不要だろうが、PWCにおける渡辺 雄也伝説について興味がある方はぜひこちらをご覧いただきたい。そもそもミスターPWCという概念を生み出した男、それが渡辺 雄也だ。
相対するは昨年度に続き今年度もミスターPWCの名を襲名した最も新しいミスターPWC・深谷 祐太。昨年のインタビューでは「PWCは生活の一部」と言い切り、PWCで行われたPPTQの決勝戦で「抜けると(PWCに)出られなくなってしまうからトスしたい」と発言したこともあるそうな。今年もPWC(ほぼ)皆勤賞、ブッチギリの1位でミスターPWCの座に就いている。
渡辺「最近は(PWCに)出たいと思っても出れないんですよね」
深谷「PPTQばっかりですもんね。昔はGPTとかもやってたけど、今はもうないし」
試合前の談笑を抜き取ると、この試合がバブルマッチであるということ以上に、PWCCという年に1回のお祭りが純粋に楽しくて仕方ないといった様子の2人。世代は違えどミスターPWCの名をその背に負う彼らの対戦、その行方を追っていこう。
Game 1
先攻の渡辺は静かに土地を並べるのみでゲームを進行していくのに対し、深谷は第2ターンに《アズカンタの探索》を設置。ドローの質を高めつつ、渡辺の《天才の片鱗》に《至高の意志》を合わせる滑り出しを見せるが、この打ち消しは渡辺の思惑のうちだ。
タップアウトを誘って《スカラベの神》を通す。返す深谷は《蠍の神》をプレイ。渡辺も思わず二度見し、「神違いだったかw」と漏らす。
渡辺の青黒コントロールに対して深谷のグリクシスコントロール。コントロールミラーだ。お互いに神と《ヴラスカの侮辱》を交換し合い、渡辺が《奔流の機械巨人》でカードアドバンテージを得ると、深谷も《大災厄》で渡辺の手札から脅威を取り除きつつ、《削剥》で《奔流の機械巨人》を除去。
渡辺が二の矢を継いだ《歩行バリスタ》は即座に除去され、深谷の《アズカンタの探索》は変身するや否や《廃墟の地》で除去され、互いに睨み合う展開が続く。
が、深谷がプレイした《反逆の先導者、チャンドラ》が戦場に降り立つと渡辺はやや苦い表情を浮かべる。クロックを用意して《反逆の先導者、チャンドラ》への対抗策を講じるも、深谷は素早くこれらを除去。ズルズルと差が開き始める。さらに深谷は《反逆の先導者、チャンドラ》の隣に《王神、ニコル・ボーラス》を並べる!
絶望的な状況に追いやられる渡辺だったが、トップデッキした《死の権威、リリアナ》が《奔流の機械巨人》を釣り上げ、《ヴラスカの侮辱》で《王神、ニコル・ボーラス》を除去。さらに「永遠」で呼び戻した《機知の勇者》で《反逆の先導者、チャンドラ》の忠誠値を4つ減らし、付けられた差を少しずつ取り戻していく。
PWを巡る攻防が互いの《ヴラスカの侮辱》とコンバットによって決着すると、いよいよゲームは最終局面へと向かった。渡辺が笑みを浮かべながら、複雑さを増していく戦場を見渡す。戦場で最大サイズのクリーチャーは渡辺の擁する《奔流の機械巨人》で、さらに《光袖会の収集者》と《豪華の王、ゴンティ》によってアドバンテージも得ている。だが、深谷も負けじと《スカラベの神》で応戦しており、4/4の《歩行バリスタ》を従えている状況。ライフにさほど差はないこの状況で、ゲームは膠着状態に陥った。
しかし、その膠着を先に打破したのは渡辺だった。引き込んだ《奔流の機械巨人》で《致命的な一押し》をフラッシュバックし、深谷のブロッカーを排除。戦場の膠着は一気に崩れ去り、渡辺が攻撃を開始する。その打点は総計16点。いかにここまでほとんどライフを失っていないとはいえ、到底看過できる打点ではない。深谷は決死のブロックで残りライフを3まで失いながら何とか望みを繋ごうとするが……
渡辺「『X=3』です」
渡辺には終局図が見えていた。第2メインにプレイした《歩行バリスタ》が、20ターン以上に渡る攻防の幕を引いた。
Game 2
深谷が《強迫》、《大災厄》とプレイしていき、渡辺の手札から打ち消し呪文を奪っていくスタート。リアクションスペルを抜き取られた渡辺は積極的に動かざるを得ず、1/1で《歩行バリスタ》をプレイし、4ターン目には《豪華の王、ゴンティ》でアドバンテージの拡充を図る。
対する深谷が《反逆の先導者、チャンドラ》をプレイし、赤2マナを得て《削剥》で《豪華の王、ゴンティ》を除去すると、渡辺も負けじと《豪華の王、ゴンティ》で奪った《ヴラスカの侮辱》で《反逆の先導者、チャンドラ》を追放。返す深谷も2枚目の《削剥》で《歩行バリスタ》を除去し、お互い一歩も譲らない。
だが、今回は深谷が押している。序盤に打ち消し呪文をディスカードさせた甲斐あって、深谷がプレイした《スカラベの神》がすんなりと通り、これによって渡辺の墓地にある《豪華の王、ゴンティ》をリアニメイト。ここにきて一気にカードアドバンテージの差が開き、渡辺も苦い表情を浮かべる。かつ、深谷が先のターンに設置していた《没収の曲杖》が渋い仕事をしており、渡辺はせっかく引いた《奔流の機械巨人》を以てしてもこの《スカラベの神》を打ち崩すことができずにいた。
こうしている間に深谷は渡辺の墓地から奪った《豪華の王、ゴンティ》でクロックを刻み、渡辺の《豪華の王、ゴンティ》でさらに渡辺から奪った《ヴラスカの侮辱》で渡邉の《奔流の機械巨人》を除去。このままゲームが決まってしまいそうだった。
……のだが。無情にも、このマッチだけで軽く見積もっても30ターン以上はゲームをプレイしているであろう2人には時間の猶予がなかった。この後渡辺も《暗記+記憶》で《スカラベの神》を除去し、戦場の状況を”絶望的な不利”から”やや不利”な状態まで持って行ったのだが、残念ながらすでにエクストラターンに突入しているこの2人の戦いの続きは今回は見られなかった。
渡辺 1-0 深谷