決勝: タカハマ ノリマサ(赤緑エルドラージ) vs. 依田 大地(親和)

晴れる屋

By Akihisa Tomikawa

前回の関西帝王戦スタンダードから約一ヶ月。関西のMTGプレイヤーの中でも『帝王戦』の認知度は上がり、受付には推定100名ほどのプレイヤーが集まったものの、残念ながら会場の都合で81名での開催となった。

そんな81名のうち決勝戦に残ったのは2人。予選ラウンド7位通過のタカハマ ノリマサ (赤緑エルドラージ) と、8位通過の依田 大地 (親和) だ。

握手

2人は予選ラウンドで一度対戦しており、その際は依田の繰り出す《鋼の監視者》とサイドボードの《熱烈の神ハゾレト》でタカハマが成す術なく敗北している。

2つのデッキは分類上ビートダウンに属するがそのスピードに大きな差があり、親和が2マナ域を主力とし最速で3ターンキルを達成するデッキなのに対し、赤緑エルドラージの主力は3~4マナ。《エルドラージの寺院》《貴族の教主》のサポートがあるものの、親和に対しては1~2ターンほど遅れることが多い。

タカハマがその速度差をどう埋めるかが勝負のキモになる。

Game 1

あっさりとキープを宣言したタカハマとは対照的に、ワンマリガン後の手札を見て熟考する依田。その手札は、

ダークスティールの城塞オパールのモックス大霊堂のスカージ電結の荒廃者鋼の監視者刻まれた勇者

というもの。主力である2マナ域のカードは多いが、《オパールのモックス》があるとはいえその2マナを1ターン目には捻出することができない。しかし後手でのダブルマリガンを嫌いキープと宣言。最初のドローとなる可能性があるデッキトップは……待望の《メムナイト》0マナのアーティファクトを得たことにより、手札を3枚使いつつ予選ラウンドでもタカハマを葬った《鋼の監視者》でロケットスタート!

タカハマ ノリマサ

タカハマ ノリマサ

しかしその起動はタカハマの狙いすました《稲妻》により防がれる。さらにタカハマは《エルドラージの寺院》でエルドラージへの布石を打ちながら《漁る軟泥》をキャスト。

依田は放置しておけば膨れ上がる可能性のある生物と手札を交互に見るも、干渉できずに《大霊堂のスカージ》《バネ葉の太鼓》と並べ3マナを揃え、相手が2体目の《漁る軟泥》を出して墓地の《鋼の監視者》を追放しながら3/3でアタックした返しに、《刻まれた勇者》を送り出す。

依田 大地

依田 大地

「金属術」が達成されているため『プロテクション (すべての色)』を持ち、もはや《漁る軟泥》のサイズがいくら増えようが関係ない。ロケットスタートこそ防がれたものの、タカハマも《燃え柳の木立ち》を1つコントロールするのみで色マナが足りず、窮屈そうに動いている。このまま次のターンに《電結の荒廃者》を並べることで、予選ラウンドのように有利にゲームが進められるはず!依田は《大霊堂のスカージ》で空中から1点のライフを削りエンドを宣言する。

対し、ターンを受けたタカハマは盤面と手札を見比べながら長考を始める。しかし《エルドラージの寺院》の加護を受け唱えられたクリーチャーを見て、依田はプランの崩壊を悟ることとなった。

エルドラージの寸借者

現れたのは《エルドラージの寸借者》

TOP8プレイヤーインタビューでもタカハマのデッキのMVPカードとして挙げられていたエルドラージであり、唱えたときに「クリーチャー1体を対象とする。あなたは(1)(◇)を支払ってもよい。そうしたなら、ターン終了時まで、そのクリーチャーのコントロールを得る。それをアンタップする。ターン終了時まで、それは速攻を得る。」という能力を持つ。

そして欠色。「このカードは無色である。」を表すこの能力。無色とは『色を持たない』ことである。つまり、《刻まれた勇者》プロテクション (すべての色) はこのエルドラージの前では無力。ブロッカーがいなくなった依田のライフが、2体の《漁る軟泥》《エルドラージの寸借者》、そして自身の《刻まれた勇者》により10点削られ、《大霊堂のスカージ》で少しずつ稼いでいた貯金も果て、ライフレースの天秤は一気に傾くこととなる。

盤面

だが依田とて決勝まで9戦を戦い抜いてきたプレイヤー。驚きはしたのものの混乱することなく、帰ってきた《刻まれた勇者》に加えて2体目の《刻まれた勇者》を並べ、落ち着いて迎え撃つ姿勢でエンド。

ここですっかり攻め手に回ったタカハマが渾身の《血編み髪のエルフ》をキャストするものの、「続唱」でめくれたのは《四肢切断》《大霊堂のスカージ》を落として《漁る軟泥》を育てるのみ。

タカハマの場にはさらなる無色クリーチャーの《作り変えるもの》が追加されるが、依田の場にも《電結の荒廃者》《ちらつき蛾の生息地》に加え《メムナイト》《信号の邪魔者》などが並び、決戦の時を待つ。

とはいえ、一撃で倒しきらなければ返しに倒されてしまう。現在のタカハマのライフは19、序盤戦の優位を逃し、中盤戦の要である《刻まれた勇者》が無効化された親和は、空中戦からの《頭蓋囲い》を狙うしかない。

盤面を構築しきったビートダウン同士、まるでリミテッドのようにドローゴーが続くが、2体目の《作り変えるもの》が戦場に追加され、ターンが帰ってきたときタカハマが動く。《電結の荒廃者》からのダメージを計算し、意を決してエルドラージ3体でアタック。

依田はしばらく考えるものの、返しのターンに望みをつなぐためその攻撃を全て受ける。

稲妻

そしてその望みを、ゲーム開始時と同じく《稲妻》が奪い去ったのだった。

タカハマ 1-0 依田

プロツアー『ゲートウォッチの誓い』以降、急激に勢力を増したエルドラージ軍団。彼ら無色のクリーチャーに対抗するため、親和の使い手たちはメインボードから《刻まれた勇者》を減らしサイズに勝る《エーテリウムの達人》や飛行戦力の《光り物集めの鶴》を入れることで優位を保ってきた。

他方で今回の依田のデッキは《精神を刻む者、ジェイス》《血編み髪のエルフ》解禁により増加するであろうフェアデッキ対策として《刻まれた勇者》をメインに4枚とっており、環境の大多数のデッキに有利がつく形だが、隙をついたエルドラージにやられた格好となった。

サイドボードは《メムナイト》《刻まれた勇者》を抜いて対処が難しい飛行クリーチャーと《熱烈の神ハゾレト》を増量する。

Game 2

先攻の依田はまたしても悩むものの7枚でキープ。タカハマは即座にマリガンを宣言して6枚の状態でキープ。依田の手札は、

ダークスティールの城塞バネ葉の太鼓バネ葉の太鼓鋼の監視者信号の邪魔者信号の邪魔者光り物集めの鶴

1ターン目に全てのカードを展開することはできないが、相手の主力が出てくるはずの3ターン目には横に広がった戦線を構築できるというもの。しかも1ゲーム目と違い《貴族の教主》を出しマナを寝かせたタカハマを尻目に、引いたカードは《頭蓋囲い》

頭蓋囲い

これを受けて本来は《鋼の監視者》を出すはずだったプランを変更し、《信号の邪魔者》2体を展開、次のターンの大ダメージを狙う。

だが、このプラン変更はタカハマにとって最大の好機となる。ワンマリガンして整えた手札から唱えるカードは《仕組まれた爆薬》、「X=1」!即起動によりタカハマの《貴族の教主》は死亡するが、依田の盤面はそれどころではない。2ターンかけて並べた《信号の邪魔者》×2と《バネ葉の太鼓》を全て失い、《ダークスティールの城塞》を残すのみとなる。

爆薬

なんとか再構築しようと《バネ葉の太鼓》とトップした《羽ばたき飛行機械》を並べるものの、次のドローも《羽ばたき飛行機械》。さらに遅れた登場となった《鋼の監視者》を待っていたのは、《血編み髪のエルフ》から痛恨の《古えの遺恨》!!

古えの遺恨

望みを託したドローから現れたのはまたも《羽ばたき飛行機械》。もはや依田は腹をくくり《頭蓋囲い》を出してエンドを宣言するが、無情にもタカハマが唱えたのは2ターン連続《血編み髪のエルフ》!!これには依田も笑いながら「血編み強いー」と漏らしてしまう。

血編み

「続唱」から《古きものの活性》を唱え、選んだ《燃え柳の木立ち》《古えの遺恨》を準備し万全の状態のタカハマに対し、《光り物集めの鶴》がめくった4枚は……

大霊堂のスカージ溶接の壺鋼の監視者感電破

タカハマが繰り出した3枚目の《血編み髪のエルフ》を攻撃させると同時に、依田は誕生した帝王を称えたのだった。

タカハマ 2-0 依田

終了後、緊張の糸が切れたように深く息を吐くタカハマを友人たちが祝う。

そんな中、熱戦を繰り広げたタカハマはポツリと「そういえばこれで帝王か」と思いだしたようにつぶやいた。

タカハマ ノリマサ

関西帝王戦モダン、優勝はタカハマ ノリマサ!おめでとう!

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