決勝: 嘉藤 裕樹(東京) vs. 伊藤 瑞基(東京)

晴れる屋

By Hiroshi Okubo

 予選ラウンド9回戦、そして決勝ラウンド2回戦。

 この計11回の戦いは、この日集まった309名によって繰り広げられてきたものだ。時計の針はトーナメント開始からおよそ半日(12時間)――午後10時ごろを指しており、長い長い戦いは猛者たちを2名まで篩にかけてきた。

 これから行われるのは決勝戦。309名の頂点に立ち、第10期レガシー神・有田 浩一朗への挑戦権を得る唯一のプレイヤーを選別するための戦いだ。

 そんな決勝のテーブルにやってきたプレイヤー、嘉藤 裕樹(東京)。

嘉藤 裕樹(東京)

嘉藤 裕樹(東京)

 過去にレガシー横綱選抜バトル第9期ヴィンテージ神挑戦者決定戦で上位入賞を果たしているなどエターナルフォーマットへの造詣の深さは他の追随を許さない、エターナルフォーマットの精鋭の1人だ。

 使用デッキはオリジナルの「BUGコントロール」であり、その構築センスとカード選択の妙は日頃のやり込みを感じさせる。ここまで勝ち進んできた勢いのままに決勝戦で勝利をもぎ取るか?

 相対するは伊藤 瑞基(東京)。

伊藤 瑞基(東京)

伊藤 瑞基(東京)

 アメニティドリーム大宮店の店長であり、日頃からマジックとともに生活している伊藤はスタンダードやモダンのイベントにも精力的に参加しているマジックフリークだ。

 そんな伊藤の得物は「白青奇跡」。玄人好みするこのデッキは、グリクシスデルバーのようなフェアなクリーチャーデッキが隆盛している現在のメタゲームでは非常に理に適った選択だったようだ。実際にここまでの決勝ラウンドでは冨澤 晋や高野 成樹といった強豪の操るグリクシスデルバーを相手にゲームカウント4-0という一方的な虐殺劇を演じており、その慧眼を裏付けている。

 どちらが勝ってもおかしくない第11期レガシー神挑戦者決定戦。2人が着席すると、間もなく決勝の幕が上がった。

嘉藤 裕樹(東京) vs. 伊藤 瑞基(東京)

嘉藤 裕樹(東京) vs. 伊藤 瑞基(東京)

Game 1

 伊藤がドロー呪文を連打して手札を整えていくのに対し、先攻の嘉藤は《悪意の大梟》《思考囲い》と積極的にアクションを続けていき、伊藤の《精神を刻む者、ジェイス》《剣を鍬に》《終末》《Tundra》《島》《溢れかえる岸辺》という手札から《精神を刻む者、ジェイス》を抜き去った。

精神を刻む者、ジェイス剣を鍬に終末
Tundra島溢れかえる岸辺

 伊藤が《アズカンタの探索》を設置すると嘉藤は《突然の衰微》で応じ、嘉藤が《トレストの使者、レオヴォルド》をプレイすれば伊藤は《議会の採決》で処理。両者一歩も譲らず、嘉藤の1/1の《悪意の大梟》だけが地道に時計の針を進めていく。

 だが、ここまでひたすらドロー呪文をプレイし続けてきた伊藤がいよいよ仕掛ける。まずはと《瞬唱の魔道士》をプレイして嘉藤の《意志の力》を引き出し、打ち消しがなくなった嘉藤の前に《精神を刻む者、ジェイス》をプレイする。

精神を刻む者、ジェイス

 ”神”が着地し、伊藤に凄まじい勢いでアドバンテージをもたらしていく。伊藤は嘉藤のクロックを丁寧に処理しつつ、毎ターン「0」能力を起動。いつしか手札はディスカード一歩手前というほどに増えていた。

 こうなってしまえば嘉藤の生殺与奪の権利は完全に伊藤が掌握したようなものだ。嘉藤が呪文を唱えれば溢れんばかりの手札から打ち消し呪文を公開して応じ、《精神を刻む者、ジェイス》の「+2」能力で嘉藤のドローを検閲し始める。

伊藤 瑞基(東京)

伊藤 瑞基(東京)

 《精神を刻む者、ジェイス》、無双。嘉藤が膝を屈するのは時間の問題だった。

嘉藤 0-1 伊藤

Game 2

 先ほどはなかなか後続を引かず、攻め手に欠けていた嘉藤だったが今度は《死儀礼のシャーマン》《トーラックへの賛歌》と最序盤から対処必須の凶悪スペルを連打。伊藤は除去と打ち消しを使わざるを得ず、手札を消耗させていく。

真の名の宿敵

 さらに嘉藤が第3ターンにプレイしたのは《真の名の宿敵》! 先の《トーラックへの賛歌》《意志の力》を消費させられている伊藤にこれを返す手立てはなく、ドロー呪文を駆使して解答である《終末》《議会の採決》を探しに行く。

 《渦まく知識》《先触れ》《予報》……次々にドロー呪文をプレイする伊藤だったが、なかなか《真の名の宿敵》を対処できない。この間にも嘉藤は3点クロックで伊藤に迫り、いつしかフェッチランドからのペイライフも相まって伊藤のライフは2まで落ち込んでいた。

悪意の大梟

 いよいよラストターンというところでなんとか《終末》に辿り着いた伊藤だったが、そのライフは風前の灯火。嘉藤がプレイした《悪意の大梟》さえ脅威となる状況で、その手に1点クロックを対処する手段は握られていなかった。

嘉藤 1-1 伊藤

Game 3

 後攻の伊藤が《思考囲い》で動き出す。

瞬唱の魔道士精神を刻む者、ジェイス精神を刻む者、ジェイス
意志の力剣を鍬に溢れかえる岸辺

 明かされた伊藤の手札からまずは軽めのアドバンテージ源となりそうな《瞬唱の魔道士》を抜き、続くターンに嘉藤が《トーラックへの賛歌》《意志の力》を誘い出すと、さらに2度目の《トーラックへの賛歌》を撃ち込む。伊藤から煙も出なくなったところで《真の名の宿敵》を着地させ、早くもBUGコントロールの強烈なマウンティングが始まる。

 伊藤も負けじと《渦まく知識》《終末》を見つけ出して《真の名の宿敵》へと差し向けるが、嘉藤はこれに《狼狽の嵐》で応じて盤面のクロックを維持。さらに《悪意の大梟》《ヴェールのリリアナ》を追加して伊藤の反撃の芽を叩き潰していく。

終末

 万事休すか。そう思われたが、伊藤がここでナチュラル「奇跡」で《終末》をプレイ。さらに《ヴェールのリリアナ》《議会の採決》で処理して一旦盤面をリセットすることに成功する。

 ここまでの激しい消耗戦によって2人の手札は0枚、残りライフは嘉藤14点に対して伊藤7点。互いにデッキトップにゲームの趨勢を委ねる形となった。

精神を刻む者、ジェイス

 先に解答に辿り着いたのは嘉藤だった。プレイしたのは《精神を刻む者、ジェイス》! 第1ゲーム同様、更地の盤面に降り立ったこの4マナのプレインズウォーカーは凄まじいスピードで嘉藤の手札を回復していく。

 どんどん差を付けられている伊藤は、嘉藤が毎ターン「0」能力で手札を整えていくのを見守ることしかできない。嘉藤はさらに《トレストの使者、レオヴォルド》《最後の望み、リリアナ》を追加。圧倒的な戦力差を突きつけ、伊藤を蹂躙していく。

嘉藤 裕樹(東京)

嘉藤 裕樹(東京)

 やがて伊藤は最後となるドローを見てそれをそっと机に置き――

伊藤「ありがとうございましたっ!」

 その右手を、この戦いの勝者へと差し出し、長かった戦いが終焉を迎えるのだった。


嘉藤 裕樹(東京)

 第11期レガシー神挑戦者決定戦、優勝は嘉藤 裕樹(東京)!!

 おめでとう!!

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