By Hiroshi Okubo
『イクサランの相克』環境名人戦も第1ラウンド開始時刻から現在までに12時間弱が経過し、すでに準決勝へと差し掛かっていた。スイスラウンド9回戦(スタンダード6ラウンド+ドラフト3ラウンド)に加えて決勝ラウンドを戦うこのイベントはプレイヤーたちから「マラソン」と称されるほどにタフなトーナメントだが、しかしこのフィーチャーテーブルに着いた2名はまだまだ闘志に燃えていた。
さて、 野暮な前書きもそこそこに、本カバレージでもさっそくこれからこの舞台で戦う2名のプレイヤーの紹介に移らせていただくとしよう。
岡本 亮(東京)。
普段は晴れる屋トーナメントセンターの店員として勤務している岡本。日常的にマジックと接していることはもちろん、休憩中や仕事終わりには同僚たちと熱心に意見交換を行い、マジック漬けの生活の中でその腕に磨きをかけてきたマジック・グルの1人だ。
この日手にしたデッキは「緑単ガルタ」。その名の通り緑のタフなクリーチャーで盤面を築き、《原初の飢え、ガルタ》を高速で叩きつけるデッキだ。岡本はこのデッキを選択した理由としてトップ8プロフィールで「赤単、赤緑に強いから」と述べているが、赤単や赤緑モンスターだけでなく準々決勝では「青赤王神」操るプロツアー殿堂顕彰者である三原 槙仁も下している。ジャイアントキリングを成し遂げた岡本はこの準決勝を勝ち上がり、「環境名人」の座を懸けた決勝へと駒を進めることになるか?
相対するは高尾 翔太(東京)。
高尾のデザインしたアグロデッキは、その壮絶なまでに研ぎ澄まされた切れ味から高尾ファンの間でたびたび「日本刀」と称されることがある。グランプリ・ミネアポリス2016で準優勝した際に使用していた「白赤人間」や、グランプリ・バルセロナ2017で11-4の好成績を収めた「黒赤エルドラージ」など、一撃に特化したそのシャープなデッキリストは見る者を魅了する。
もちろんこの日も高尾は日本刀、もとい「赤黒アグロ」を振るってここまで勝ち上がってきた。その得物はこの準決勝の舞台で次なる対戦相手である岡本へも届くのか?
両者フィーチャーテーブルに相並び、試合前の握手を交わす。環境名人の座まであと2戦、そのうちの1勝負を勝ち残るのはどちらだ!?
Game 1
先攻の高尾が《狂信的扇動者》、《屑鉄場のたかり屋》と理想的なスタートを切り、対する岡本は2ターン目に《キランの真意号》をプレイするのみでターンを終える。このやや緩慢な動きに、高尾の“日本刀”が牙を剥く。
岡本が第3ターンに《緑地帯の暴れ者》で《キランの真意号》に「搭乗」しようとしたところで、高尾が《削剥》を差し向ける! さらに続くターンには《熱烈の神ハゾレト》を叩きつけ、あまりにも鮮やかな完封勝利を見せつけた。
岡本 0-1 高尾
Game 2
第1ゲームは高尾のブン回りに後手後手に回ってしまった岡本だったが、第2ゲームではしっかりと2ターン目に《緑地帯の暴れ者》を着地させる。さらに《翡翠光のレインジャー》と続け、ライブラリートップに《原初の飢え、ガルタ》を残してターンを終える。
対する高尾は《屑鉄場のたかり屋》をプレイし、《原初の飢え、ガルタ》が見えたところで《翡翠光のレインジャー》を《削剥》。さらに《ボーマットの急使》をプレイしていち早くそのライフを詰め切らんと攻勢を仕掛けていく。
岡本が2枚目、3枚目と《翡翠光のレインジャー》を続けてプレイすると、高尾も《大災厄》と《マグマのしぶき》、《無許可の分解》で岡本の盤面にクリーチャーを残させない。その間に着実に《屑鉄場のたかり屋》と《ボーマットの急使》でクロックを刻んで岡本のライフは危険水域まで到達していく。
やがて岡本が手札に一生出てこなそうな《原初の飢え、ガルタ》を抱えたまま無念のターン終了を宣言したところで、高尾は4枚の土地をタップし、《地揺すりのケンラ》、《地揺すりのケンラ》と2枚続けてプレイし勝利をもぎ取った。
岡本 0-2 高尾