Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/11/16)
はじめに
プロツアー『ラヴニカのギルド』も終わり、みなさんも新たなスタンダード環境を目の当たりにしたことと思います。トップ8は白赤アグロが支配する結果になりましたが、さまざまなデッキに可能性があり、多様性のあるスタンダード環境になりました。近年ではあまりなかった状況ですね。私はというと、もっとも可能性を感じた黒緑を使いました。残念ながら結果はふるわず、2日目に進出できませんでした。しかし、プロツアーのデッキ提出の前夜まで使うか迷ったデッキが実はあったのです。
今回はそのデッキ、《財力ある船乗り》入りのジェスカイコントロールについてお話ししましょう。プロツアーで使わなかった理由や今後このジェスカイコントロールがおすすめである理由について解説していきます。
ここまで練習・調整が難しいプロツアーは本当に久しぶりのことでした。あらゆるデッキが強そうに思えるため、いろいろなデッキを使いました。しかし、どのデッキを使っても環境で人気のデッキのどれかに負けてしまうのです。プロツアーに向けて主に調整を一緒にしたのは、ラファエル・レヴィ/Raphael Levy、ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezani、ケヴィン・ジョーンズ/Kevin Jonesであり、パーフェクトなジェスカイコントロールを作ろうとしました。試行錯誤を繰り返し、最終的には《財力ある船乗り》入りのものがベストであるという考えに至りました。
デッキリスト
今すぐ使うとすればこのようなリストになります。
2 《山》
1 《平地》
4 《聖なる鋳造所》
4 《蒸気孔》
4 《断崖の避難所》
4 《氷河の城砦》
4 《硫黄の滝》
-土地 (26)- 3 《財力ある船乗り》
3 《再燃するフェニックス》
-クリーチャー (6)-
4 《活力回復》
2 《溶岩コイル》
4 《轟音のクラリオン》
2 《イオン化》
1 《火による戦い》
3 《薬術師の眼識》
3 《残骸の漂着》
2 《発展+発破》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (28)-
2 《浄化の輝き》
2 《絶滅の星》
2 《封じ込め》
1 《黎明をもたらす者ライラ》
1 《パルン、ニヴ=ミゼット》
1 《原初の潮流、ネザール》
1 《神聖の発動》
1 《発展+発破》
1 《イクサランの束縛》
1 《ウルザの後継、カーン》
-サイドボード (15)-
《財力ある船乗り》はパッと見だと弱そうに見えるのですが、実際にはこのデッキではかなり優秀です。1/4というサイズであるため、《アダントの先兵》を筆頭とした環境のクリーチャーをブロックできますし、《轟音のクラリオン》で全体除去しつつも生き残るサイズで、それ以降もブロッカーとして活躍してくれます。
また、宝物トークンでマナ加速ができるため、4ターン目に《ドミナリアの英雄、テフェリー》を出したり、《発破》のXをより大きくして撃つことができます。それだけではなく、純粋なジェスカイコントロールはマナコストが(白)(白)・(青)(青)・(赤)(赤)のカードがあるため、宝物トークンは単純にマナベースを強化してくれるというメリットもあります。こうしてみてみると、《財力ある船乗り》がいかにジェスカイコントロールに必要なパーツだったかわかるかと思います。
最終的にジェスカイコントロールをプロツアーで使わなかった理由は、青赤ドレイクとの相性と、プロツアーのメタゲーム予想にありました。プロツアー前の予想として、白赤アグロが間違いなく一番多いであろうと思っていたのですが、それと同じぐらいの青赤ドレイクが多いだろうと予想していました。青赤ドレイクとの相性はかなり悪く、サイドボード後には《パルン、ニヴ=ミゼット》やこちらの回答に対する打ち消し呪文が入ってくるため、さらに相性は悪いのです。
蓋を開けてみれば、もっとも多かったのは22.2%の黒緑で、次点で19.4%の白赤アグロ、そして3番手が12.9%の青赤ドレイクであり、当初の予想とは違って1位と2位と大分差をつけられたメタになりました。今後のメタ予想ですが、白赤アグロを倒すために黒緑や赤単が増えると思います。ただ、それでもなお白赤は人気のデッキでい続けるでしょう。他方、青赤ドレイクは数を減らしていくと考えられるため、ジェスカイコントロールはいい立ち位置になると思われます。ここからは、環境に存在するデッキごとに戦い方・サイドボードの方法を解説していきます。
各種マッチアップとサイドボードガイド
黒緑ミッドレンジ
もっとも気をつけるべきカードは《真夜中の死神》です。序盤に出されてしまうと《轟音のクラリオン》の価値が大きく下がり、有効な対処方法があまりなくなってしまうのです。ですから、可能であれば《溶岩コイル》を《真夜中の死神》のために温存しましょう。また、《財力ある船乗り》は4/3の《翡翠光のレインジャー》や《殺戮の暴君》以外であればブロックできるという大きな役割を果たし、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を守ることもできます。
このマッチアップではゲームが長引く可能性があるため、キッカーで《火による戦い》を唱え、それを《発展+発破》でコピーして勝つこともあります。11マナで20点叩き込むのです!《再燃するフェニックス》は《ヴラスカの侮辱》ぐらいでしか簡単に除去できない、耐性のあるクリーチャーとして活躍してくれます。
また、《残骸の漂着》も黒緑に対してキーとなるカードです。なぜなら、黒緑は《愚蒙の記念像》や《採取+最終》でクリーチャーを墓地から回収する手段を豊富に揃えていて、《真夜中の死神》や《殺戮の暴君》といった厄介なクリーチャーを追放できることに大きな意味があるからです。黒緑に対するサイドボーディングは以下の通りです。
対 黒緑ミッドレンジ
白赤アグロ
白赤アグロで気をつけるべきカードは、《アダントの先兵》と《軍団の上陸》です。《アダントの先兵》はライフをどんどん削ってきますし、ジェスカイコントロールは1本目で《アダントの先兵》を抑える主な手段が《財力ある船乗り》と《残骸の漂着》ぐらいしかないからです。ジェスカイコントロールは《廃墟の地》を採用できるほどマナベースに余裕がないため、《軍団の上陸》が変身してしまうと、全体除去を撃ってもリソースを回復されてしまいます。ですから、3体以上で攻撃させないことが非常に重要です。
この対戦において《財力ある船乗り》の素晴らしい点は、相手にクリーチャーを展開させるように仕向けることで、全体除去の効果を大きく高めてくれることです。
白赤アグロは、《アダントの先兵》や《ベナリア史》が《轟音のクラリオン》に対して強いため、かなり粘り強いデッキです。そのため、できれば《ベナリア史》の騎士トークンが2体出てから全体除去を撃つようにしましょう。
《活力回復》のおかげで《ドミナリアの英雄、テフェリー》を着地させるまでゲームを長引かせることができます。《ドミナリアの英雄、テフェリー》は全体除去や単体除去を使って守り切りましょう。また、白赤アグロはメインデッキに《正義の模範、オレリア》を入れているタイプもあるため、余裕があると思ったら《火による戦い》を《正義の模範、オレリア》のために温存しておきましょう。白赤アグロに対するサイドボードは以下の通りです。
対 白赤アグロ
青赤ドレイク
青赤ドレイクはメインデッキに単体除去を入れていることが多いため、サイドボード後に比べれば1本目は大分楽です。ただ、サイドボード後は《潜水》や打ち消し呪文が入ってくることが多いため厳しくなります。《再燃するフェニックス》はこの対戦でも有効で、《弾けるドレイク》や《奇怪なドレイク》と相打ちしてくれます。相手はドレイクたちの攻撃を通すために、《溶岩コイル》・《残骸の漂着》に加えて《再燃するフェニックス》を乗り越える必要があるのです。
《轟音のクラリオン》は基本的に強くないマッチアップなのですが、ダメージレースをしている状況では、《再燃するフェニックス》に絆魂を与えることでダメージレースを有利にすることができます。序盤のドレイク数体をしっかり対処してから《ドミナリアの英雄、テフェリー》を着地させれば、大体勝ちだといえます。青赤ドレイクに対するサイドボードは以下の通りです。
対 青赤ドレイク
赤単
《活力回復》が本領を発揮するマッチアップですね。相手がバーンで勝つプランをとってきた場合には、実質2:1交換ができるカードです。大抵はゲームの序盤に撃っていいのですが、ライフがそこまで危険でない場合には、《発展+発破》でコピーするためにゲーム終盤まで《活力回復》を最低でも1枚は手札にとっておくことを選択肢に入れておきましょう。相手がスロースタートの場合でも、こちらの手札に他に唱えるべき除去や《財力ある船乗り》がある場合でも、この選択肢は常に考慮します。
《実験の狂乱》が着地してしまった場合は例外ですが、赤単に対して《活力回復》を何度か唱えられれば、負ける方がよっぽど難しいですね。赤単に対するサイドボードは以下の通りです。
対 赤単
他のデッキとの対戦と違って、赤単とのサイドボード後のゲームは劇的に変化するため、もう少しサイドボーディングについて説明しておきましょう。赤単はサイドボード後にデッキを太くするプランをとるため、小型のクリーチャーやバーン呪文を減らし、《宝物の地図》や《苦悩火》、そして(メインデッキにすでに4枚入っていなければ)《実験の狂乱》をありったけ入れてきます。そのため、相手の《苦悩火》を強化してしまう《残骸の漂着》は抜きます。
どうして《封じ込め》を入れないのか疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。それは、相手の《実験の狂乱》や《宝物の地図》をまとめて除去するために《浄化の輝き》の2つ目の能力を積極的に使いたいからです。《実験の狂乱》さえ残らなければ、このマッチアップは相当有利ですからね。
ジェスカイコントロール
最後はミラーマッチについて解説になります。1本目の焦点は、いかに先に《ドミナリアの英雄、テフェリー》を着地させるかと言っていいでしょう。追加の脅威として入れている《再燃するフェニックス》が頼りになります。相手のデッキに《弾けるドレイク》が入っている場合であれば、《再燃するフェニックス》はより一層頼りになりますね。
ジェスカイコントロールはカウンターを多く採用し、相手のターンに構えるタイプが多いのですが、私たちのリストは自分のターンから動いていくタイプです。ですから、脅威をどんどん唱え、相手にカウンターを使わせ、最終的に何かしらの脅威を通していくようにしましょう。このプランは、相手が打ち消し呪文を持っているフリをしているときにも有効に働きます。
《財力ある船乗り》が思いのほか相手のライフを削ってくれるので、耐えられなくなった相手に除去を使わせることができます。また一時的にではありますが、宝物トークンによってコントロールミラーで重要なマナが増えるというメリットもあります。
さきほどもご紹介した《火による戦い》と《発展+発破》のコンボもこのマッチアップで使えるのですが、相手も《発展+発破》でこちらの《火による戦い》をコピーできるので気をつけましょう。ジェスカイコントロールに対するサイドボードは以下の通りです。
対 ジェスカイコントロール
おわりに
さて今回の記事はいかがだったでしょうか。この記事を読んで、ぜひとも今の面白いスタンダードを楽しんでいただけたらと思います。
プロツアートップ8は白赤アグロが支配的でしたが、個人的には白赤アグロがベストデッキだとは思いません。むしろ、白赤アグロを使ってトップ8に入ったプレイヤーは、ドラフト部門で勝ちまくっていたので、トップ8に入ったのはそれが要因だと思っています。ですから、白赤アグロに限らず、さまざまなデッキに目を向け、スタンダードがどう進化していくのか見守りましょう。
私はというと、次のセット『ラヴニカの献身』でギルドランドが全種類揃うこと、まだまだ面白いカードが増えることが楽しみで仕方ありません!スタンダードの未来は間違いなく明るいことでしょう。みなさんが活躍できることを祈っています!ここまで読んでいただきありがとうございました!