インタビュー: Youはどうしてこのチーム? ~木原/佐藤/村栄の”マーセナリーズ”~

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 「このチーム、面白い組み合わせだな」。

 会場を歩いていると、そんなチームに出会うことがある。

 例えば、彼らだ。

木原 惇希、佐藤 レイ、村栄 龍司

 木原 惇希、佐藤 レイ、村栄 龍司

 全員の実力は疑いようがない。このプロツアーでも、注目すべきチームの1つだ。それでも、この3名が並んでいるところを見ると、「一体どういう繋がりなのだろう?」と考えてしまう。

 ただ単に、権利を持った3名が集っただけ? いや、そうではない。

 彼らは“強い意志”の繋がりを持っている。お互いを信頼し、個々人の力を活かせる関係を築いている。

 早速、話を伺ってみよう。

チーム結成秘話

――「まずは、このチームの結成秘話からお聞かせ願えますか?」

対戦中

佐藤「前回のプロツアー『ドミナリア』で、『5敗で終わって次の権利が取れたら、みんなで一緒に出ようか』なんて話をしていたんです」

木原「してましたね。ちょうど上位卓で顔を合わせることも多くて」

村栄「他にも上位卓に日本人は居たのですが、最終的にはこうなりました」

佐藤「2人と組みたい! と思っていたんですよ。村栄さんは言うまでもなくモダンの、木原さんはレガシーのスペシャリストなので、これほど心強いチームメイトは居ないですからね。2人が権利を少し早めのラウンドで確定させて、『さあ、自分も続くぞ!』と思っていたら、僕だけ取れなかったんです。あと1勝すれば、ゴールド・レベルになって権利が取れたんですけどね……」

――「目前で逃してしまったわけですね」

佐藤「そうなんですよ。なので、プロツアーが6月の第1週だったのですが、2人に『6月中に2点取ってゴールドになるから、待っててくれ!』とお願いして、ラスベガスとシンガポールに遠征しました」

――「そして、見事に達成したわけですね」

佐藤「ええ、どうにか無事に」

木原「僕たちはほとんど心配してなかったんですよ。『ああ、佐藤さんなら2点くらい取るよね』と」

村栄「そうですね。慌てずに待ってた覚えがあります」

――「なるほど。これで不安なくプロツアー本番……と思ったら、今度は村栄さんが大変なことになったわけですね」

村栄「なりました。事情を説明すると長くなるのですが、添乗員さんの手違いとか色々なことがありまして。木曜の16:20に羽田を発つ飛行機に乗れなかったんですよ。そうしたら、振替の便は金曜日の19:45と言われてしまって……」

――「……ミネアポリスは5:45。初日が始まる数時間前ですね(注:日本とミネアポリスの時差は、マイナス14時間)」

村栄「絶対に他にもあるだろ! と思って他社の便を利用して、ミネアポリスに着いたのが金曜の6:00頃になりました。いや、本当にギリギリでしたよ」

佐藤「焦りました、本当に」

木原「ここまで来て、参加できない!? なんて話してましたね……」

準備は、”進捗確認”のみ

――「無事に到着して、本当に良かったですね……では、準備期間についてお伺いしたいのですが、デッキの選択について3人で意見交換はしたのですか?」

木原「ほとんどしなかったですよね?」

佐藤「しなかったですね。一応『このデッキを使おうと思います』っていう情報共有はありましたけど、それに対して意見を返すことはなくて、あくまでも”共有”だけ。言わば、“進捗確認”みたいなものです。『あ、そうなんだ。わかった』で終わりですね」

――「なるほど。それぞれの選択を信用したわけですね」

村栄「そうですね。仮に意見を求められても、特に何か言えるわけではないので」

――「そういえば、チーム戦ではプレイ中の相談も可能ですが、対戦中もほとんど意見交換をしていませんでしたよね?」

佐藤「相談は、たしかにほとんどしないですね。例えば、僕が横のモダンを見ても、村栄さんに与えられるアドバイスなんてほとんどないんですよ」

村栄「途中から見たところで、ほとんど分からないですからね。大切なのは、そこに至るまでのターンで得た情報なんです。『2ターン前、除去があったら唱えていただろうな』、『1ターン前に公開されたカードは……』っていう情報が重要で、それをすべて共有しようと思ったら、物凄い時間がかかってしまいますし、正確には伝えられないと思います」

佐藤「盤面だけなら判断できると思いますが、それは”点”でしかないんです。大切なのは”線”なんですよ。もちろん、まったく相談しないわけじゃないですけどね」

木原「相談したことで、余計に混乱してしまうこともありえますから」

佐藤「チーム構築線とは言っても、個人戦とほとんど変わりません。個人戦が3つあるだけです。そういう意味では、各々の結果で点数が決まっていくチームシリーズとまったく同じ構図ですよね。小さなチームシリーズをやっているような感覚ですね。相談が少ない分、それぞれが自分のやるべきことに集中できていると思います」

“優勝”という目標に向けて

――「では、そろそろお時間です。最後に『今大会の目標』をお聞かせ願えますか?」

木原さん

木原「あと1点でシルバーなのでそれが目標……と言いたいところなのですが、どんな大会でも、優勝が目標です。そのためには、目の前の戦いに集中して、一戦一戦を大事にしなければいけません。優勝という大きな目標に向けて、一歩ずつ進んでいきたいと思っています」

佐藤さん

佐藤「僕もまったく同じですね。目指すのならば、優勝のみ。優勝して、3人でプラチナ・レベルになれたら最高ですよね。僕個人はTop 4に入賞してプロポイントを15点取ればプラチナが確定するので、これを現実的な目標と言うべきかもしれません。とにかく、勝ち続けたいです。せっかく、こんな良いチームを作れたので、この機を逃さずに」

――「なるほど、ありがとうございます。では、村栄さんはいかがですか?」

村栄さん

村栄「僕の場合、目標設定ってほとんどしないんです。一度決めてしまうと、中途半端に逆算してしまうので。例えば『3敗が目標』と言ってしまうと、どこかで『あと何回負けて良い』なんてことを考えてしまうんですよ。負けても良い、って考えるのは良くないと思うので、僕も同じように『とにかく勝つこと』が目標です。2人はとにかく強いので、勝手に勝ってくれると思っています。信頼して、自分のプレイに集中し、2人を助けられたら良いですね」

――「みなさん『勝ちたい!』という強い気持ちは一緒なのですね。そしてその先には、優勝という結果が待っている、と」

佐藤「そうですね。強いプレイヤー、そしてチームは山ほどいますが、彼らとの間に絶望的な差が存在するとは思っていないんです。なので、どんな相手でも恐れずに。それぞれの力を出し切って、戦いたいと思います」


 一見、「どういう繋がりなのだろう?」と思う3人に共通する、「勝利への強い意志」

 「それぞれが自分のやるべきことに集中できる」という言葉は、お互いを信頼し、実力を認めている何よりの証拠であろう。迷ったときに、一緒に悩んでくれる存在は確かに重要だ。そして、「大丈夫、信頼してるから」と言い切って、背中を無言で押してくれる仲間は、それ以上に貴重である。

 彼らは、そんな仲間になったのだ。

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