By Hiroshi Okubo
今回で2回目の開催となる「マジック・インターハイ」。マジックの未来を担う若きプレイヤーたちの晴れ舞台となるこの大会で、全11チームの頂点を決める戦いが幕を開けようとしていた。さっそく、決勝で戦う2つのチームをご紹介していこう。
東京は新宿区早稲田に本拠地を持つ言わずと知れた名門校、早稲田大学。キャンパスが晴れる屋のある高田馬場とほど近いこともあり、彼ら以上にマジックのプレイ環境が充実している大学生はそういないことだろう。地の利を活かした戦いぶりは今大会でも一際目立っており、早稲田大学のチームがトップ4に3チームも進出している。
層の厚さとプレイヤーの練度、その両方が満たされているのはマジックにおけるマンモス校ならではと言える。中でも、見事決勝へと駒を進めた中山 怜に社本 拓巳、中村 豪志の3名は試合を前にしても悠然と佇み、卓を挟んで座るライバル校に対してもリラックスした様子で接していた。その余裕の仮面を剥がすことができるとしたら、
相対するのは世田谷区駒澤に本拠地を持つ駒澤大学のチームだ。早稲田大学の強豪たちに囲まれる四面楚歌の中でも、深谷 知史、中後 椋介、益田 諭の3人は、個々人の的確なプレイングと綿密な情報共有を武器に圧倒的なパフォーマンスを発揮し、この決勝の舞台へと駒を進めていた。
駒澤大学といえば駅伝のトップメタ・ユニバーシティとしても有名であり、走力でチームに貢献する駅伝と、ゲームでチームに貢献するマジックのチーム戦の共通点は非常に多い。というより、もはや駅伝とチームマジックはほとんど同じものと言っても過言ではない。すなわち彼らは、いわば“チームマジックのスペシャリスト集団”と言えるのだ。完璧な三段論法に裏打ちされた最強のチームマジック集団、彼らの行く手を阻むことができる者はいるのか?
早稲田大学の中山、社本、中村。そして駒澤大学の深谷、中後、益田。彼らが固く握手を交わすと、マジック・インターハイ2018決勝戦の火蓋が切って落とされた。
A卓: 深谷 知史(駒澤大学) vs. 中山 怜(早稲田大学)
まずはA卓の中山と深谷の試合を見ていこう。先攻はスイスラウンド上位の駒澤大学・深谷からだ。「赤黒アグロ」と「ケルドレッド」の赤アグロデッキ対決において、この先攻は値千金と言っても差し支えないだろう。
《ボーマットの急使》、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》と軽快に動き出す深谷に対し、中山は序盤を除去に費やすこととなる。《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》に《稲妻の一撃》を放ち、《ボーマットの急使》には《損魂魔道士》を見合わせる。
だが、深谷はどこ吹く風とばかりに《損魂魔道士》と2枚目の《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》を追加し、盤面をクリーチャーで埋め尽くしていく。これらに対しても《ショック》と《魔術師の稲妻》で対応した中山だったが、ついにその手札から除去が尽きてしまう。
深谷は手を緩めない。《屑鉄場のたかり屋》をプレイしたのち、中山が《地揺すりのケンラ》で反撃してくるのを受けて《ゴブリンの鎖回し》で応戦。テンポよく盤面を築きながら中山に楽をさせない。
《ゴブリンの鎖回し》はその戦場に出た際の誘発型能力はもちろんだが、何より地上クロックを牽制する3/3先制攻撃というボディが厄介だ。中山は小考しつつ、この厄介な《ゴブリンの鎖回し》に対してテンポ損を承知で《撃砕確約》を絡めて打ち取ることを選んだ。
攻める深谷に守る中山という構図は第1ターンから依然として変わらない。とはいえ問題なのは、攻め手である深谷が第1ターンにプレイした《ボーマットの急使》の貯金は十分だということだ。《ゴブリンの鎖回し》が打ち取られてしまったのを受けて、手札が尽きた深谷はすぐさま《ボーマットの急使》で4ドローを得て、3枚目となる《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》と《ボーマットの急使》を戦線に追加していく。
容赦ない怒涛の攻撃に中山はもはや万策尽きた様子。苦し紛れの《苦悩火》で深谷のクロックを減らすが、この除去もゲームの趨勢に影響を及ぼすには至らず――。
深谷 1-0 中山
第1ゲームを取られてしまった中山だったが、チームメイトの助言を受けつつ念入りにサイドボーディングを行い、第2ゲームでは「ケルドレッド」の爆発力を活かしきってゲームカウントを1-1に戻す。勝負の行方は第3ゲームへと委ねられることとなったのだが……ここは、ひとまず他の卓の試合の様子に目を移すとしよう。
C卓: 益田 諭(駒澤大学) vs. 中村 豪志(早稲田大学)
深谷と中山が第1ゲームから大熱戦を演じている間に、C卓では第3ゲームが開始されようとしていた。ここで繰り広げられていたのは益田の「青単ストーム」と中村の「緑単ガルタ」の対決だ。
互いに対戦相手の動きに干渉する手段をほとんど持たないデッキ同士の対決ということもあり、中村が第1ゲームを暴力的なクリーチャーの軍勢でもぎ取ると、益田が《練達飛行機械職人、サイ》による理不尽なまでの飛行機械ラッシュでゲームカウントをイーブンに戻し、早くも第3ゲームへと移行していた。
先攻の中村は力強くキープを宣言すると、第1ターンに《ラノワールのエルフ》、第2ターンに《打ち壊すブロントドン》をプレイして益田へと急襲する。
このロケットスタートを見守ることしかできない益田は《魔術遠眼鏡》で《打ち壊すブロントドン》の起動型能力こそ無効化するが、続くターンに中村は《蔦草牝馬》を追加。《ラノワールのエルフ》によって1ターン速く展開される脅威の数々に益田は頭を抱えることとなる。
ライフを守るべく、ブロッカーとして《練達飛行機械職人、サイ》をプレイした益田。だが、中村の猛攻はまったく止まる様子を見せない。まずは《打ち壊すブロントドン》をレッドゾーンに送り込み、案の定《練達飛行機械職人、サイ》がブロックしてくると《顕在的防御》で打ち取る。さらに《マーフォークの枝渡り》を追加し、盤面のクリーチャーの合計値が十分以上に増えていることを確認したのち2マナで《原初の飢え、ガルタ》を叩きつける!
わずか4ターンの間に手札のカードをほとんど使い切る圧倒的な「緑単ガルタ」の驚異的なブン回り。もはや打つ手のない益田は、マッチの行方をチームメイトへと託すことを選んだ。
益田 1-2 中村
B卓: 中後 椋介(駒澤大学) vs. 社本 拓巳(早稲田大学)
チームメイト・益田の敗北を受け、任せろと息を巻くのは「緑単ガルタ」操る駒澤大学の中後だ。「ターボフォグ」を扱う社本に対して若干不利なマッチアップだが、社本が《自然に仕える者、ニッサ》の「-6」能力を使い忘れる判断ミスなどに救われて先勝を得た。
続く第2ゲームは互いにマリガンし、6枚となった手札をキープして開始される。先攻の社本が社本が《アズカンタの探索》を設置してターンを終え、返す中後が《立て直しのケンラ》をプレイする、比較的穏やかなスタートとなったが、第3ターンに動くことができなかった社本に「緑単ガルタ」が牙を剥く。
中後は《打ち壊すブロントドン》と《鉄葉のチャンピオン》を並べ立て、社本に迫る。「緑単ガルタ」の最も恐ろしい点はこの加速度的に増大していくクロックだ。社本は《花粉のもや》で時間を稼ぐが、その手札には《濃霧》系カードも残っていない。中後は2枚目の《鉄葉のチャンピオン》を追加し、社本のライフを奪っていく。
「ターボフォグ」はマナが伸びるまでまな板の上の鯉に等しく無防備で、中後の苛烈な攻めに対抗するには《花粉のもや》や《根の罠》で時間を稼ぐ必要がある。だが、社本とて引いていない呪文を唱えることはできない。
ラストターン、社本は自らの《アズカンタの探索》に《真面目な捧げ物》をプレイしてなんとかライフを繋ごうと足掻くも、中後の《顕在的防御》によってピタリとライフを削られてしまい、中後へ勝利を明け渡すこととなった。
中後 2-0 社本
A卓: 深谷 知史(駒澤大学) vs. 中山 怜(早稲田大学)
中後と社本のマッチに決着がついたのと時を同じくして、深谷と中山の第3ゲームも佳境へ差し掛かっていた。
深谷はこのマッチアップにおいて1枚でゲームに勝利できる切り札、《熱烈の神ハゾレト》をコントロールしているものの、やや土地が詰まり気味だったこともありその手札はまだ3枚となかなか使い切ることができない。
対する中山は《地揺すりのケンラ》や《ヴィーアシーノの紅蓮術師》といったクリーチャーで軽快に深谷のライフを削り、そのライフが1桁まで減ったところで深谷に申し訳なさそうに笑いかけ、おもむろに手札をテーブルに広げる。
そこにあったのは3枚の3点火力。3度の落雷が深谷を焦がし、このマッチの最後の試合が終わった。
深谷 1-2 中山
マジック・インターハイ2018、優勝は早稲田大学の中村 豪志、中山 怜、社本 拓巳!
おめでとう!!