《死の影》デッキについてお答えしよう!

Immanuel Gerschenson

by Hidekazu Katou

原文はこちら
(掲載日 2018/12/28)

はじめに

宝船の巡航死の影

俺はモダンを本当に長い間愛してきた。モダンで一番最初に好きになったカードは《宝船の巡航》だった。発売から4か月ほどで禁止になってしまったけどね。それからしばらくして、俺はまたあるカードを愛することになる。《死の影》だ。

俺はさまざまなバージョンの《死の影》デッキを何年もかけて回してきたし、結果も出してきた。すでに《死の影》デッキについて断片的にではあるが解説することもあった。

しかし、それでもいまだにアドバイスを求められることがあるから、今回はみんなの質問からいくつかピックアップして答える記事にしていく。よく聞かれる質問をピックアップするため、Facebookの《死の影》グループにアンケートをとってみた。みんなが知りたがっていることは何なのか知りたかったからね。

☆質問コーナー ~教えて!イマニュエル先輩!~

では早速最初の質問に答えていこう。

質問その1 -デッキの型について-

――「君はプロツアー『イクサランの相克』で4色の《死の影》デッキを使ってたよね。そして最近になってこのデッキが結果を出し始めているけど、一体どのタイプの《死の影》デッキを使えば良いのか教えて!」

端的な答えとしては「今の環境であれば、俺はグリクシスカラーが好み」だ。

俺の考えを詳しく知りたい人もいるだろうから、もう少し説明を加えておこう。確かに俺はプロツアー『イクサランの相克』で4色のタイプを使い、結果も9-1と上々だった。なぜ4色のタイプにしたかというと、苦手としている青白系コントロールが環境にほとんどいないと予想していたから、そして5色人間やランタンコントロールとの相性が良いと考えていたからだ。

デッキの構成も、5色人間やランタンコントロールに勝てること、そのほか諸々のデッキに負けないようにすることを意識して作り上げた。実際俺がプロツアーで唯一負けたのは、コントロールとのマッチだ。

しかし、これはプロツアーがあった今年の2月の話だ。今は12月。もし今モダンの大会に出るのであれば、5色人間やランタンコントロールとは基本的に一度も当たらないと予想するだろう。

大祖始の遺産安らかなる眠り虚空の力線

今の環境で念頭に入れるべきなのは、コントロールデッキや、急速に数を増やした墓地対策のカードだ。4色のタイプは墓地対策のカードにとても脆い。

ウルヴェンワルド横断タルモゴイフ

《ウルヴェンワルド横断》《タルモゴイフ》を4枚ずつ採用しているから、8枚も墓地対策に弱いカードがあるんだ。しかもこの2枚は4色タイプの勝ちにつながるカードたちだから、易々と見過ごせることじゃない。

確かにグリクシスカラーのタイプも墓地は使う。でも、4色のタイプと違って8枚も腐るカードはないんだ。しかも、コントロールデッキと戦うのであればグリクシスカラーの方が戦いやすい。手札を整えられるカードが多いから、狙った勝ち筋を辿りやすいんだ。

とはいえ、どっちのタイプもとても強いから、グリクシスカラーが良いのか、4色が良いのかは、予想するメタだけで決定されると思う。ただし、この2つのデッキは、まったく別物だという認識は持っておいて欲しい。

質問その2 -キャントリップ呪文について-

さて、次は散々話題にされてきた質問だ。これには俺がユニークな回答を示そうと思う。その質問とは「キャントリップ呪文は《選択》《血清の幻視》《ミシュラのガラクタ》《信仰無き物あさり》があるけど、結局どれを使えば良いの?」というものだ。

《信仰無き物あさり》

信仰無き物あさり

まずはみんなが強いと思い込んでいるカード《信仰無き物あさり》から説明していこう。はっきり言ってしまえば、俺はグリクシスカラーで使う《信仰無き物あさり》は嫌いだ。確かにサイドボーディング前であれば、相手に有効なカードを探し当て、逆にいらないカードは捨ててしまえるという強みがあるし、それは俺も理解している。

でも1ターン目に唱えないといけない状況だとしたらどうだろうか?たとえば、キープすべき手札が初手に来て、1ターン目に《信仰無き物あさり》を唱えるとする。相手のデッキが何なのか100%の自信を持って判断できないため、何を捨てるかの判断がとても難しいんだ。

では逆に、相手のデッキ情報が豊富に揃う4ターン目まで待って唱えたらどうだろうか。おそらく手札には1枚か2枚しかカードがないだろう。つまり、《信仰無き物あさり》で手札を入れ替えるとしても、その状況下で一番良さそうなカードを1枚だけ残すことになる。「フラッシュバック」も3マナもかかるため、丸々1ターンかけるような動きになってしまい、そのターン中に別の呪文を唱えることもままならないだろう。

サイドボーディング後は、ゲーム全体を通して有効なカードが多いはずだ。とすれば、一体何を手札から捨てるんだろうか?確かに、《虚空の力線》をサイドインしたマッチでは、それを捨てたい状況もあるだろう。しかし、サイドボーディング後はプランが明確化されていて無駄なカードはないから、《虚空の力線》以外で捨てたいカードはない。

《ミシュラのガラクタ》

ミシュラのガラクタ

対して《ミシュラのガラクタ》は最高だ!このカードの使い方を解説し出したら、記事が丸々1つかけるだろう。でも、今回はそういう記事ではないから、簡潔に俺の考えを教えよう。

キャントリップ呪文やフェッチランドが多いデッキであれば、《ミシュラのガラクタ》はドローするカードを操作できる。たとえば《ミシュラのガラクタ》で確認した自分のライブラリートップのカードが不要なら、フェッチランドでライブラリーをシャッフルしてしまえば良いからだ。それだけではなく、《グルマグのアンコウ》の「探査」コストとして使いやすく、2ターン目に《グルマグのアンコウ》を出せる確率も高い。

《選択》《血清の幻視》

選択血清の幻視

そして残るは、《選択》《血清の幻視》はどっちが良いのかだ。《選択》はインスタントであり、《瞬唱の魔道士》と相性が良い。また、ゲーム終盤で特定のカードを探している場合でも《選択》の方が良い。逆に、これらの状況以外では《血清の幻視》に分がある。占術を考えるには、普通は数ターン先のゲームプランまで考える必要があるけどね。

質問その3 -サイドボーディングについて-

では次の質問へ移ろう。「サイドボーディングはどうやったら良い?」これも記事を1つ書けそうな質問だ。でも、今回はさわりの部分だけ解説しておこう。

思考掃き死の影ミシュラのガラクタ

まずは意外なところから教えよう。グリクシスカラーではみんなが考えもしなかったカードをサイドアウトするんだ!たとえば、《思考掃き》《死の影》《ミシュラのガラクタ》といったカードだな。

当たり前だけど、サイドボーディングは、みんながどんなカードをデッキに入れているかによる。大事なのは、その相手とのサイドボード後のゲームでは、自分がどういう立ち位置なのかを理解することだ。

みんながやってしまいがちな例で説明しよう。おそらくみんなが《死の影》デッキで5色人間と対戦する場合、サイドボーディング後はコントロールする側に回ろうとするんじゃないかな。俺からすれば、あまり良くないゲームプランだ。みんなが想像しているゲームプランは、相手のクリーチャーを除去して盤面を整理しつつ、どこかのタイミングで《死の影》を叩きつけて勝つ、といったところだろう。

霊気の薬瓶

じゃあ相手が《霊気の薬瓶》を出してきたらどうする?《死の影》デッキは1対1交換のカードが大半で、全体除去もせいぜいサイドボードに2枚ってところだろう。確かに《霊気の薬瓶》がなければ、1対1交換で間に合うだろうし、あるいは全体除去で対処できるだろう。でも《霊気の薬瓶》があったら、そんなに上手くいかない。

俺の考えでは、5色人間と戦うときの立ち位置は「前のめりなデッキ」だ。《ティムールの激闘》《通りの悪霊》も手札破壊呪文もすべてサイドアウトしない。手札破壊呪文で捨てさせるべきカードは、《ティムールの激闘》を使ったコンボを邪魔してくるカード、あるいは《反射魔道士》《オーリオックのチャンピオン》《カマキリの乗り手》《翻弄する魔道士》といった対処しづらいカードだ。

死の影ティムールの激闘

《死の影》《グルマグのアンコウ》をできるだけ早いタイミングで出し、攻撃していこう。相手もずっとチャンプブロックできるわけではないから、攻撃の手を止めるはずだ。そして除去呪文を使いながらやり過ごし、最終的には《ティムールの激闘》で勝つ、というプランになる。

《死の影》デッキは種類こそ多いものの、絶対的な正解、絶対的な間違いといったものがなくて良い。もし自分で気に入ったタイプがあって、しばらくしても気が変わらないようであれば、それを使い続けた方が良いだろう。

なぜこんな話をしたかというと、マグナス・ラント/Magnus Lanttoと俺は、デッキ選択というよりもカード選択や特定の相手との戦い方について考えるのが好きだからだ。ちょっと話は逸れてしまうけど、俺たち2人の勝率はとても均衡している(俺の勝率の方が1~2%高いことが多いけどね:P)。でもいまだにお互いの意見を尊重している。良い議論ができているっていう意味でもあるね。

質問その4 -デッキの回し方について-

次の質問は、マジックをやり続けている限り、いつまでも付きまとう問題だ。「デッキの回し方がわからない!教えて!先輩!」

汚染された三角州湿った墓思考囲い

これは難しい質問だな。こう呼んで良いのかはわからないが、まずは「基礎中の基礎」から解説しよう。初手が《思考囲い》《血清の幻視》、何らかのクリーチャー、《汚染された三角州》、その他3枚のカードだとしよう。この初手での最善の動きは、先手でも後手でも、まずは《汚染された三角州》から《湿った墓》をサーチしてきて、《思考囲い》を唱えることだ。このように動けば、相手が何のデッキを使っているかわかりやすくなるし、目下どんなカードと相対するのかを知ることができる。

この《思考囲い》で情報を得たことで、どんな変化が生まれるだろうか?それは、2ターン目の《血清の幻視》をより上手く使えるようになることだ。今必要となっているカードがわかったわけだから、占術の判断もしやすくなる、というわけだな。もし1ターン目に《思考囲い》ではなく《血清の幻視》を唱えていた場合はどうなっていただろうか。占術の判断はどうする?その考えの根拠は?きっと迷うはずだ。

教訓1: できれば、手札破壊呪文を唱えてからキャントリップ呪文を使うようにしよう。それがカードをもっとも効果的に使う方法だ。

次に題材としてとりあげる初手は、《通りの悪霊》《ミシュラのガラクタ》《血染めのぬかるみ》《湿った墓》《コジレックの審問》、その他2枚のカードだ。

通りの悪霊ミシュラのガラクタコジレックの審問
血染めのぬかるみ湿った墓

先手の場合

湿った墓コジレックの審問ミシュラのガラクタ

俺の考えでは、先手か後手かで2通りの動きが考えられる。じゃあ、まずは先手のケースを考えてみよう。まずは《湿った墓》をアンタップインし、《コジレックの審問》を唱える。それから《ミシュラのガラクタ》をプレイするけど、大体の場合、能力は起動しないままにしておく。(起動するかどうかは、初手のそのほか2枚のカードや、対戦相手のデッキに大きく影響される)《ミシュラのガラクタ》の能力を起動しないのは、フェッチランドと合わせて使うことで、最大限の効果を得る理想的な流れを期待しているからだ。

後手の場合

ミシュラのガラクタ通りの悪霊

では後手の場合はどうだろうか。後手なら相手のデッキの情報がある程度わかっているため、《ミシュラのガラクタ》で自分のライブラリートップを見たい場合もある。ライブラリートップのカードが欲しく、かつマッチアップの相性的に2点のライフを払っても良いのであれば、《通りの悪霊》「サイクリング」してドローしてしまおう。

逆に、ライブラリートップのカードが不要なカードであれば、《血染めのぬかるみ》から《血の墓所》をサーチしてきて、《コジレックの審問》を唱えよう。もし、後手でも相手のデッキの情報が不足していて、行動の指針が決められない、または自身の展開は後回しで妨害から入った方が良さそうだったら、先手のときと同じく《コジレックの審問》から唱えても良い。

教訓2: 慌てない。情報こそがカードを上手く使うコツだ。

質問その5 -最新のデッキリストについて-

そしていつの時代もよくある質問。「最新のデッキリストを教えて?」にお答えしよう。

おわりに

今回の記事は楽しんでもらえただろうか。簡単にではあったけど、できるだけ多くの疑問に答えられていると嬉しい。もし今回の記事で疑問が解消できなかった人は、気軽にコンタクトをとってほしい。全力でお答えしよう。

みなさん良いお年を。そして良い一年の始まりになることを願っているよ。

イマニュエル・ゲルシェンソン

この記事内で掲載されたカード

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Immanuel Gerschenson イマニュエルは構築戦を得意とするプレイヤーで、グランプリ・マドリード2014 (モダン)、そしてグランプリ・セビリア2015 (スタンダード) という2つの大会で頂点をつかみ取った、オーストリア屈指の実力派。 プロツアー『イクサランの相克』ではサイドに《遅延》を採用した独特のトラバース・シャドウを手に、構築ラウンドを9勝1敗で駆け抜け14位に入賞。さらにオーストリア選手権2018では準優勝に輝き、オーストリア代表の座を手にするとともに、ゴールドレベルを手中におさめた。 Immanuel Gerschensonの記事はこちら