Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2018/01/07)
はじめに
ここ数か月のスタンダード環境は、非常にバランスが取れています。ゴルガリミッドレンジが頭一つ抜けているような印象もありますが、今のスタンダードは大会で優勝できる実力のあるデッキがひしめいているのです。そのなかでも日の目を浴びてこなかったアーキタイプがあります。それはエスパーコントロールです。
私は根っからのコントロール好きなので、まだ『ラヴニカの献身』のカードリスト公開が始まったばかりですが、エスパーコントロールの可能性に目をつけています!大きな衝撃を世に与えた2つのカードがすでにあるので、今回の記事ではそれらを取り上げたいと思います。この2枚のカードはエスパーコントロールをTier1へと押し上げることでしょう。
今回のテーマは、なぜエスパーコントロールは今のスタンダードでは目立った活躍をしてこなかったのか、なぜ『ラヴニカの献身』でエスパーコントロールが活躍するようになると私が考えているのか、そして今の時点で公開されている新カードを使ってエスパーコントロールをどうやって構築していけば良いのか、という3点になります。
従来のエスパーコントロールの問題点
エスパーコントロールは《ドミナリアの英雄、テフェリー》や《ヴラスカの侮辱》といったカードはもちろん、《変遷の龍、クロミウム》のような強力なフィニッシャーを使える力がありながらも、今のスタンダードでは大きな活躍を見せてきませんでした。その大きな原因は、マナベースにあると私は考えています。
エスパーコントロールで使われる強力なカードは、マナ拘束が厳しく、マナベースに大きな負担をかけてしまいます。たとえば、《ドミナリアの英雄、テフェリー》は(白)(青)、《悪意ある妨害》など確定の打ち消し呪文は(青)(青)、《残骸の漂着》や《浄化の輝き》は(白)(白)、《ヴラスカの侮辱》は(黒)(黒)を要求するので、マナベースに無理が出てきてしまうのです。
しかし『ラヴニカの献身』が発売されれば、『ラヴニカのギルド』では登場しなかった5つのギルド、つまりアゾリウス、オルゾフ、グルール、シミック、ラクドスのカードが使えるようになるのです。ですから、エスパーコントロールに入る強力なカードも出てくるでしょうし(素晴らしい再録カードもありましたね!)、ショックランドも全種類揃うことになります。
『ラヴニカの献身』によって、今までのスタンダードにはなかった可能性が出てくるように思います。最も強力なマナベースが構築できますから、エスパーなどの3色のデッキが増えることでしょう。ショックランドに加え、《氷河の城砦》のようなチェックランドも10種類揃うので、3色のマナベースはこれ以上ないというほど素晴らしいものになるのです!
デッキリスト
現時点では、まずはこのような形のエスパーコントロールを試してみたいと考えています。
4 《湿った墓》
4 《神聖なる泉》
4 《神無き祭殿》
4 《水没した地下墓地》
4 《氷河の城砦》
4 《孤立した礼拝堂》
1 《探知の塔》
-土地 (27)- 1 《変遷の龍、クロミウム》
-クリーチャー (1)-
4 《活力回復》
2 《喪心》
1 《否認》
4 《吸収》
3 《屈辱》
3 《薬術師の眼識》
2 《ヴラスカの侮辱》
2 《残骸の漂着》
2 《浄化の輝き》
2 《アズカンタの探索》
1 《最古再誕》
1 《ウルザの後継、カーン》
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (32)-
強固なマナベースの代償
《神聖なる泉》と《神無き祭殿》が加わったことで、エスパーコントロールは十分な色マナソースが確保され、マナカーブ通りに呪文を唱えられる可能性が高まりました。私のリストでは、青マナソースは18、白マナソースは16、黒マナソースは16ありますから、十分に安定して各呪文を必要とされるターンに唱えることができるでしょう。しかし、デッキに12枚ものショックランドが採用されているため、土地のためにどれだけライフを支払うことになるのか、というのは大きな関心事になってきます。
ライフの損失を補う
確かにマナベースはライフに負担をかけることになりますが、ライフを回復できる《吸収》という度肝を抜く最高の再録をしてくれたウィザーズには感謝しなければなりません!《吸収》が初めて収録された『インベイジョン』がスタンダードで使えた頃、残念ながら私はマジックをプレイしていなかったので、今回このカードが使えることに本当にワクワクしています。《吸収》もさることながら、《活力回復》や《ヴラスカの侮辱》もあるため、土地から受けるダメージよりも多くのライフを回復できるのです。
更なる恩恵
マナベースに関してもうひとつ良いことがあり、それは《喪心》のようなカードを使えるようになったことです。以前までは、デッキのメインカラーが黒でない限り使えなかったカードですからね。《封じ込め》は白であり、《弧光のフェニックス》のような威を追放できる魅力がありましたが、状況を選ぶカードであり、《ビビアン・リード》のようなエンチャントを破壊できるカードで状況をひっくり返されてしまう脆さもありました。
そしてもう1枚、私が期待している再録カードが非常に強力な除去呪文である《屈辱》です!《屈辱》は私の古くからのお気に入りのカードであり、すぐにスタンダードに影響をもたらすでしょうし、今回私が取り上げたようなエスパーコントロールに居場所を見つけることは間違いないでしょう。
青黒のデッキには、エンチャントを上手く対処する手段がないという弱点があります。《屈辱》はクリーチャーだけではなく、エンチャントも対処できる、明確で柔軟性のある回答となります。今のスタンダードで使われているエンチャントには《アズカンタの探索》、《最古再誕》、《議事会の裁き》、《ベナリア史》、《実験の狂乱》、《イクサランの束縛》などがあり、そして《シミックの隆盛》も今後のスタンダードで使われる可能性があるエンチャントです。このようなエンチャントがある環境では、《屈辱》は間違いなく重要な再録となるでしょう。
新たなメカニズム「附則」
《スフィンクスの眼識》
新たなメカニズムである「附則」を持つカードで面白そうなものも何枚か公開されています。《スフィンクスの眼識》はエスパーコントロールや青白をベースにしたコントロールデッキに入る可能性がありますね。4マナで2ドローできるだけでもそれなりの性能ですが、そこにライフ回復の効果があるのですから間違いなく一考に値するカードです。
ただ、エスパーコントロールのようなデッキで《スフィンクスの眼識》のようなカードを採用するにはひとつだけ問題点があります。コントロールデッキは相手のターンに打ち消し呪文を構えておきたいので、基本的にインスタントタイミングで動きたいデッキなのです。インスタントタイミングで2ドローできるだけでも悪くはないですが、それならば《薬術師の眼識》を採用した方が良いでしょう。しかし、打ち消し呪文の採用枚数を抑え、《スフィンクスの眼識》のような「附則」のカードを上手く使ったタップアウトコントロールのようなデッキが増えてくる可能性もあると考えられます。
《有事の力》
「附則」を持ったカードはもう1枚公開されていますが、どうすれば悪用できるのか考えさせられるカードですね。そのカードとは《有事の力》です。初めてこのカードを見たとき、期待に胸を膨らませましたが、《スフィンクスの眼識》と同様に、自分のターンにあまりタップアウトしたくないという実情がありました。エスパーコントロールはカードアドバンテージを生み出せる呪文を多く採用しています。そのような伝統的なコントロールデッキでは、カードアドバンテージで相手を圧倒し、ゲームを完全にコントロールしようとするので、《有事の力》で相手に7枚もドローさせてしまう効果はデッキに噛み合っていません。
しかし、《有事の力》もタップアウトコントロールであれば活躍するかもしれませんね。エスパーコントロール、あるいはジェスカイコントロールも《有事の力》を「附則」で唱えたときに戦場に出して強いカードが何枚かあります。たとえば、《ドミナリアの英雄、テフェリー》、《最古再誕》、《パルン、ニヴ=ミゼット》、《原初の潮流、ネザール》などですね。まだまだ未公開のカードは多いですから、《有事の力》の存在を覚えておくと良いでしょう。もしかしたらもっと相性の良いカードが出てくるかもしれません。
さいごに
さて、『ラヴニカの献身』発売後にエスパーコントロールがどうなっていくのかを解説してきましたが、これはほんの一部に過ぎません。すべてのカードリストが出揃うころには、エスパーコントロールをさらに強化するような強力なカードも間違いなく登場することでしょう。現状公開されているカードだけでも、今後のスタンダードでどんなデッキが活躍していくか、その確かな展望が見えたことには価値があります。
また、ジェスカイコントロールがすぐに環境からいなくなることもないでしょう。《パルン、ニヴ=ミゼット》は環境で屈指のカードですからね。しかし、ジェスカイコントロールよりも、このエスパーコントロールの方がかつて私たちが目の当たりにしてきた古典的なコントロールデッキに近いと思います。打ち消し呪文、除去、マナベース、どれをとっても素晴らしいですね。
今後どんなカードが公開され、スタンダードがどうなっていくのか楽しみで仕方ありません(《スフィンクスの啓示》は再録されるでしょうか?)。今のスタンダード環境も健全ですが、『ラヴニカの献身』発売後はさらに素晴らしい環境になっていくとしか私には思えません!
ここまで読んでいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。