by Kazuki Watanabe
プロツアー『破滅の刻』が開幕して早数時間、初日のドラフトラウンドが終了した。
”3ラウンドが終わった”、と書けばそれまでなのだが、その言葉の裏には”様々な表情”がある。試合中の真剣な表情はもちろん、休憩中に悔しさを露わにしているものもいれば、次の戦いに向けて闘志を燃やしているものもいる。
全勝するものがいれば、全敗するものがいるのも必定。プロツアー会場は、様々な表情で埋め尽くされている。
スタンダードラウンドが始まるまでのわずかな時間。会場を歩いていたところ、井川 良彦が明るい笑顔で「3-0しました!」と教えてくれた。
井川は先週のグランプリ・京都2017で見事シルバー・レベルを獲得し、このプロツアー『破滅の刻』への参加権利を得た。グランプリでも見事な成績を収めた井川に、「この環境で勝利するために必要なこと」を聞いてみよう!
1stドラフトで全勝! 井川 良彦にインタビュー
--「3-0おめでとうございます」
井川「ありがとうございます!」
--「まずお聞きしたいのですが、井川さんはドラフト練習会にも参加されていましたよね。そこから2週間で、何か大きな変化はありましたか?」
井川「大きな変化はないですね。あの時に掴んだものを、このプロツアーでそのまま活かしている、といった感じです」
--「なるほど。その中でも大きなもの、井川さんが考えるこの環境で重要なことは何だと思いますか?」
井川「これは私個人の感覚なのですが、守るデッキは弱いと思っています。練習会では攻めるデッキも守るデッキも試したのですが、やはり攻める方が良いな、と」
--「『この環境では攻守どちらでもできる』『なんでもやれる』といった声も聞こえましたが、そうではないわけですね」
井川「そうですね。レアが強ければ、それを活かして”なんでもできる”となるのかもしれませんが、そういったレアに出会える確率は低いですからね。コモンを活かす戦略を考える場合、やはり攻めるプランを選択したほうが強いと思います。レアを活用して緑多色を組むことももちろんできますが、そういった機会は本当に珍しいので、まずは”攻めて勝つデッキ”を目指すほうが良いと思います」
この環境で気をつけるべきこと
--「ありがとうございます。プロツアーが始まったとはいえ、この環境はまだまだ始まったばかりでドラフトに慣れていないプレイヤーも多いと思います。改めて、この環境のドラフトで勝つために気をつけるべきことを教えていただけますか?」
井川「そうですね……私が気を付けているのは、レア、アンコモン、そして2マナ域です。この3点に注目すると、この環境を楽しみながら、勝てるようになると思います」
--「レア、アンコモンを活かす、というのはよく言われることですが、2マナ域に注目する、という点も重要なのですね」
井川「かなり重要ですね。特に、2マナ域のクリーチャーが重要で、ドラフトで鍵となるのはやはりクリーチャーです。攻めるデッキを目指す場合は、より一層重要になります。例えば、《オケチラの報復者》や《火付け射手》のようなコモンを見たら、それを活かせるプランはないか? と考えることが重要です。そして、除去とクリーチャーで迷ったら、クリーチャーを取ることを優先することが多いですね。この環境では、クリーチャーの質の方が重要なので」
--「質の高いクリーチャーを集めて、サポートするスペルは最低限、と言ったところですか」
井川「そうですね。コンバットトリックの類は、10手目で流れてくるようなものでも十分ですね。まずはクリーチャーを確保して、流れてきた呪文をそこに加えてみると、うまくまとまると思います」
--「なるほど。さて、もうすぐ次のラウンドが始まります。ここからスタンダードですね」
井川「そうですね。スタンダードにはほとんど時間を掛けられていないんですよ。先週のグランプリ・京都2017に向けてひたすらリミテッドの練習をしていたので……もしかしたら、この会場で最も時間を使ってないかもしれません」
井川は少し笑いながら答えたが、その目には自信のなさは伺えない。そこに宿っているのは、プロツアーを楽しみたいという純粋な思いだ。
井川「今回使うのは、使っていて楽しいデッキで、“赤単をメタったデッキに強いデッキ”を用意しました。赤単との相性は五分だと思うのですが、この数日、rizer(石村 信太朗)とひたすら連絡を取り合いながら調整してきたので、どうにか結果を残したいですね」
いつもの明るい表情で、ペアリングの確認へ向かう井川。次の対戦相手はクリスティアン・カルカノのようだ。
明るい笑顔から、真剣な表情へ。この移り変わりを目の当たりにできるのも、プロツアーの大きな魅力である。
さて、このラウンドが終わった後に井川が見せてくれるのは、明るい笑顔か、それとも……?