メタゲームブレークダウン雑感

晴れる屋

By Atsushi Ito

 初日のスタンダードラウンドも折り返しとなる6回戦目の途中、スタンダードのメタゲームブレークダウン (リンク先は英語)が公開された。

 はたして『破滅の刻』はスタンダードにどのような影響をもたらしたのか?早速、参加者463名のデッキ選択を見ていこう。

赤単: 115人/24.8%


D00mwake「赤単」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

13 《山》
4 《ラムナプの遺跡》
4 《陽焼けした砂漠》

-土地 (21)-

4 《ボーマットの急使》
4 《ファルケンラスの過食者》
3 《村の伝書士》
4 《地揺すりのケンラ》
3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》
4 《アン一門の壊し屋》
2 《無謀な奇襲隊》
3 《熱烈の神ハゾレト》

-クリーチャー (27)-
4 《ショック》
4 《焼夷流》
4 《焼き尽くす熱情》

-呪文 (12)-
4 《削剥》
3 《チャンドラの敗北》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《栄光をもたらすもの》
2 《猛火の斉射》
1 《屍肉あさりの地》

-サイドボード (15)-
hareruya

ボーマットの急使地揺すりのケンラ熱烈の神ハゾレト

 なんとフィールドの約4分の1が赤単を選択するという、実に意外な結果となった。

 《地揺すりのケンラ》が加入したことにより、1マナから3マナまでを速攻クリーチャーで固め、さらに《熱烈の神ハゾレト》で後詰めもバッチリという、方向性の一貫したカード群による洗練されたマナカーブで構成されている。

ラムナプの遺跡陽焼けした砂漠

 また《ラムナプの遺跡》《陽焼けした砂漠》を実用レベルに押し上げ、ライフ一桁まで押し込んだなら相手を「砂漠死」させることもできる。

 ただ、参加者たちからは開始前から「赤単が強すぎる」という声を漏れ聞いていたところではあり、プロツアーに出場するレベルのプレイヤーならば「赤単を使うか、赤単を倒すか」という2択と向き合ってきたはずである。

 このままトップ8も赤く染まってしまうのか、それとも「赤単メタ」のデッキが2日目の主役となるのか。2日目のブレークダウンにも注目だ。

黒単ゾンビ: 53人/11.4%


Glenn DiGirolamo「黒単ゾンビ」
SCG Atlanta Standard Classic(6位)

14 《沼》
4 《栄光の砂漠》
4 《イフニルの死界》
2 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地(24)-

4 《墓所破り》
4 《戦慄の放浪者》
4 《戦墓の巨人》
3 《金属ミミック》
4 《無情な死者》
4 《呪われた者の王》

-クリーチャー(23)-
4 《闇の救済》
2 《致命的な一押し》
3 《闇の掌握》
4 《リリアナの支配》

-呪文(13)-
3 《屑鉄場のたかり屋》
3 《精神背信》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
2 《不帰+回帰》
2 《霊気圏の収集艇》
1 《致命的な一押し》
1 《闇の掌握》
1 《最後の望み、リリアナ》

-サイドボード(15)-
hareruya

戦慄の放浪者無情な死者戦墓の巨人

 フィールドの2番手となったのは、前回のプロツアー『アモンケット』でも頂点に立った黒単ゾンビ。

 『破滅の刻』から加入したのは《イフニルの死界》くらいで、《アムムトの永遠衆》に関しては採用を見送った形も多そうだ。

 《致命的な一押し》《闇の救済》で赤単の「1+1」の動きにナチュラルに対抗できるほか、天敵の《ゲトの裏切り者、カリタス》も無理なく採用できる点が強みである。

黒緑アグロ: 45人/9.7%


RemiFortier「黒緑アグロ」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

6 《森》
4 《沼》
4 《霊気拠点》
4 《花盛りの湿地》
3 《風切る泥沼》

-土地(21)-

4 《歩行バリスタ》
4 《緑地帯の暴れ者》
4 《光袖会の収集者》
4 《牙長獣の仔》
4 《巻きつき蛇》
2 《ピーマの改革派、リシュカー》
3 《新緑の機械巨人》

-クリーチャー(25)-
4 《霊気との調和》
4 《致命的な一押し》
3 《闇の掌握》
1 《顕在的防御》
2 《霊気圏の収集艇》

-呪文(14)-
4 《大災厄》
2 《豪華の王、ゴンティ》
2 《造反者の解放》
2 《不帰+回帰》
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《不屈の追跡者》
1 《顕在的防御》
1 《闇の掌握》

-サイドボード(15)-
hareruya

巻きつき蛇ピーマの改革派、リシュカー新緑の機械巨人

 3番手は前環境からお馴染みの黒緑アグロ。『破滅の刻』からの新戦力があるわけではないが、人気を集めている。

 その背景には、スタンダードのメタゲームの多様化があると考えられる。赤単のような超速攻アグロ、マルドゥ機体のようなミッドレンジ寄りのアグロ、ティムールエネルギーのようなミッドレンジ、《王神の贈り物》のようなコンボ、青赤コントロールのようなコントロール。これほどまでに速度とコンセプトが多様化した環境では、攻撃的ミッドレンジで速度面での出遅れをケアしつつプレイング面での選択肢を残すことが魅力的なポジションに見えるからだ。

マルドゥ機体: 33人/7.1%


Zachary Plott「マルドゥ機体」
SCG Atlanta Team Open(7位)

5 《平地》
3 《山》
3 《泥濘の峡谷》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》
4 《産業の塔》
1 《鋭い突端》
1 《乱脈な気孔》

-土地(25)-

4 《模範的な造り手》
4 《スレイベンの検査官》
4 《屑鉄場のたかり屋》
3 《経験豊富な操縦者》
2 《異端聖戦士、サリア》
2 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー(19)-
3 《削剥》
4 《無許可の分解》
4 《キランの真意号》
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《先駆ける者、ナヒリ》

-呪文(16)-
3 《精神背信》
2 《リリアナの誓い》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《栄光をもたらすもの》
1 《石の宣告》
1 《苦渋の破棄》
1 《苦い真理》
1 《罪人への急襲》
1 《燻蒸》
1 《先駆ける者、ナヒリ》
1 《死の宿敵、ソリン》

-サイドボード(15)-
hareruya

模範的な造り手キランの真意号ゼンディカーの同盟者、ギデオン

 4番手はこちらも前環境から権勢を維持しているマルドゥ機体。だが、相性面で厳しい黒単ゾンビがトップメタの一角を占めているとなると、ポジション的には少し厳しいか。

 3色デッキゆえのマナベースへの負担に加え、《キランの真意号》《屑鉄場のたかり屋》が後手2ターン目の初動としては若干頼りないこともあり、高速化した現環境においては、成績が先手の回数とアグロデッキとのマッチアップ回数に左右されそうだ。

青赤コントロール: 29人/6.3%


Thumbski「青赤コントロール」
Competitive Standard Constructed League(5-0)

9 《島》
4 《山》
4 《霊気拠点》
4 《尖塔断の運河》
4 《さまよう噴気孔》

-土地(25)-

4 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー(4)-
3 《マグマのしぶき》
4 《検閲》
4 《蓄霊稲妻》
3 《削剥》
2 《本質の散乱》
2 《否認》
1 《明日からの引き寄せ》
3 《至高の意志》
2 《不許可》
1 《焼けつく双陽》
4 《天才の片鱗》
2 《破滅の刻》

-呪文(31)-
3 《氷の中の存在》
2 《竜使いののけ者》
2 《ジェイスの敗北》
2 《否認》
2 《虚空の粉砕》
1 《マグマのしぶき》
1 《削剥》
1 《本質の散乱》
1 《焼けつく双陽》

-サイドボード(15)-
hareruya

削剥破滅の刻奔流の機械巨人

 《キランの真意号》も落とせる《削剥》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も落とせる《破滅の刻》、さらにドローの偏りによる裏目を減らせる《至高の意志》を獲得したことで、当初は環境の最強デッキとして君臨するかと目されていたが、代表的なアグロが機体から赤単へとシフトしたことにより、カラーリングの都合上ライフコントロールができないために意外と苦戦を強いられることとなった。

 それでも使用者が30人近くいるのは赤単とのマッチアップをある程度割り切っての選択と思われるが、蓋を開けてみればフィールドの4分の1を赤単が占めていたのであり、今回のプロツアーでは厳しい戦いを迫られそうだ。

赤緑ランプ: 24人/5.2%


Andrew Hollingsworth「赤緑ランプ」
SCG Atlanta Team Open(4位)

7 《森》
3 《山》
4 《隠れた茂み》
2 《燃えがらの林間地》
1 《獲物道》
4 《見捨てられた神々の神殿》
3 《ウギンの聖域》
1 《溺墓の寺院》

-土地(25)-

3 《歩行バリスタ》
3 《世界を壊すもの》
4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー(10)-
4 《削剥》
4 《砂の下から》
3 《コジレックの帰還》
2 《自然の繋がり》
4 《約束の刻》
2 《破滅の刻》
3 《ニッサの誓い》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》

-呪文(25)-
4 《難題の予見者》
3 《不屈の追跡者》
2 《マグマのしぶき》
2 《塵への崩壊》
1 《コジレックの帰還》
1 《破滅の刻》
1 《捲土+重来》
1 《炎呼び、チャンドラ》

-サイドボード(15)-
hareruya

砂の下から約束の刻絶え間ない飢餓、ウラモグ

 他のデッキと異なる独自のポジションを持ち、メタゲーム上のダークホース的存在となったのが赤緑ランプだ。

 1~2マナ域は除去に任せ、《砂の下から》から《約束の刻》へと繋げると、2枚の《見捨てられた神々の神殿》が一気に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》プレイ可能なマナ域へと導く。

 中盤戦かというタイミングで突如として降臨する《絶え間ない飢餓、ウラモグ》のスケールは圧倒的であり、中途半端な速度のデッキすべてに対して絶望をもたらすこのコンセプトは、アグロの海さえ乗り切れるなら2日目の活躍にもチャンスがありそうだ。

スタンダードは再び群雄割拠の時代へ

 《地揺すりのケンラ》《ラムナプの遺跡》、サイドボードの《削剥》。『破滅の刻』によって最も強化されたデッキである赤単が現在のスタンダードのメタゲームを支配していることはどうやら間違いなさそうだ。

 だが、赤単は《霊気池の驚異》とは異なり、ライフコントロールや丁寧な除去で対抗できなくもない相手である。すなわち、存在と速度感が意識されればフィールドは赤単を基準としたデッキばかりになり、環境も徐々に適応していくことだろう。

 だから、プロツアーが定義したこのメタゲームに対してどのようなアプローチを見せるかはあなた次第だ。ぜひともこの最大に広いカードプールのスタンダード環境の攻略を、自分なりのアイデアで楽しんでみて欲しい。

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