インタビュー: ポンポコ宮本 ~憧憬の先、至高の舞台で~

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 誰にでも、初めてのプロツアーがある。プラチナ・プロにも、殿堂プレイヤーにも。

 その初めてのプロツアーで、今をときめくトッププロたちは、どれくらい勝ち星を重ねたのだろうか?

 「最初のプロツアーから好成績で、今まで続いている」という者もいるだろう。それと同時に「初めてのプロツアーは悔しい思いをした」という者もいるはずだ。

 ここに、初めてのプロツアーで「悔しい思い」を味わいながらも、明るく振り返り、「やっぱりプロツアーは凄い場所ですね」と答えてくれた者がいる。

ポンポコ宮本

 Hareruya Hopes、ポンポコ宮本。

 今回のプロツアーでは振るわず、残念ながら初日落ちとなってしまった。それでも、この男の明るさは変わらない。筆者が「初めてのプロツアーの感想」を問えば、

宮本「ようやく来たんだ、と。心が震えるような思いがしましたね。目標としていた場所、プロツアーに出場するんだ、と」

 幾ばくかの疲労の色を見せつつも、いつもどおりの明るい笑顔と声で宮本は答えてくれた。早速話を伺ってみよう。

宮本「憧れの舞台に」

宮本「これまで動画でしか見たことがなかったフィーチャーエリアが目の前にあって、周囲にはトップレベルのプロばかり。その憧れの舞台にやっと来たんだな、と思いましたね」

--「その舞台への切符を、グランプリ・静岡2017春で掴んだわけですよね。少しだけ、その時から今までを振り返っていただけますか?」

宮本「トップ8に入賞した喜びとともに、プロツアーへの切符が手に入って、あの時は本当に嬉しかったですね。ただ、晴れる屋での仕事や、各種大会に参加する日常があって、『プロツアーに出る!』という実感が少し遠ざかっていた部分もあるんですよ」

--「なるほど。それが再び湧いてきたのはいつごろですか?」

宮本「晴れる屋で『破滅の刻』の発売に向けた仕事をする内に、ですかね。じわじわと感動が戻ってきて、プレリリース、スタンダードの練習、そしてドラフト練習会に参加したことで完全にプロツアーモードになりましたね」

--「練習会に参加して、大きな変化があったそうですね」

宮本「ありましたね。トッププロに混ざってドラフトをすると、こんなにも違うものなのか、と。それだけでなく、練習会では戦闘の考え方や、プレイヤーとしての心構えまで直接教わることができました。そういった意味では、このプロツアーでもトップレベルのプロと戦い続けているわけですから、かなり変化があったと思います。特にプロツアーへの意識が変わりましたね」

--「憧れの舞台であったプロツアーが、どのように変わったのですか?」

真剣な表情で、プロツアーでの戦いへ挑む

真剣な表情で、プロツアーでの戦いへ挑む

宮本「これまで、やはりプロツアーというのは自分の”目標”であって、『出場してみたい』という思いが強かったんです。それが実際にこの場に来ると、『ここで勝ちたい、また出場したい』と変わりました。ゴールでもあり、スタートでもある、といった感じですね。自分の理想であるプロプレイヤーになるためには、やはりプロツアーで勝てるようにならないと」

宮本を支える力

--「なるほど。理想のプロプレイヤーというと、宮本さんはHareruya Hopesに加入した際のインタビューで、『みんなの目標になれるプレイヤーであり、身近な存在でありたい』と仰ってましたよね。それは今でも変わらないのですか?」

宮本「変わりませんね。寧ろ、その思いが強くなっている気がします。晴れる屋で店頭に立ってお客様と話をすると、様々な発見があったり、色々な言葉を貰います。『プロツアー頑張ってください』という言葉も貰いましたし……今日とても嬉しいことがあったんですよ。普段晴れる屋に来て声を掛けてくれる方が、わざわざ東京から応援に来てくれたんです

--「東京から!? 宮本さんに会いに来てくれたんですか?」

宮本「そう言ってくれました。『応援しに来ました!』と。もちろん、観光や、プロツアーを間近で見に来るついでだと思います。でも、そう言ってくれたことが本当に嬉しくて……。だからこそ、負けている姿を見せられない、悔しい、勝ちたい! と思いましたね」

--「なるほど……宮本さんが目指す姿に、近づいているわけですね」

宮本「もちろん、まだまだ実力も足りていませんし、この結果に満足しているわけではありません。ただ、ドラフトの考え方、構築のメタの読み方などは少しずつ向上できていると思うんです。これまでやってきたことを続けて、新しい意見は取り入れて、練習を積み重ねながら前に進んでいきたいですね」

--「宮本さんの練習、というと、やはり晴れる屋が主たる場所なのですよね?」

宮本「そうですね。私の場合、オンラインでの調整をやらずに、晴れる屋で仲間たちと意見交換をして、大会に出場することが調整のすべてなんです。それはこれからも変わらないので、大会に出たり、店頭でお客様と話したりしながら、ですね」


 ここで残念ながら時間となった。「あと少し、頑張ってください」と筆者が伝えると、

宮本「ありがとうございます! いやー、勝ちたい! 応援してくれる人のためにも!」

 そう言いながら、自分の座席へと向かっていった。

 宮本という男は、熱い男だ。それは今更説明するまでもなかろう。晴れる屋の店内で友人たちと真剣に意見交換をし、店頭に立てば明るい声で接客をする。マジックのことを問われれば、仕事の合間でも本気で考えて、答えを出してくれる。そういった普段の姿を見ている筆者は、それをこの会場の誰よりも知っていると自負している。

 そして、勝つときは勝つのだ。

 グランプリ・静岡2017春、スイスラウンドの終盤。「ここで勝てばトップ8ですね」と伝えたときも、彼は「勝ちたい!」と答えて、見事勝ってくれたのだから。

 だから、今回も。

 誰にでも、初めてのプロツアーがある。

 その初めてのプロツアーで、宮本は悔しい思いをしながら、さらなる一歩を踏み出そうとしている。

 いつか宮本がこの日を振り返り、「あの時は勝てなかったな―」と今と同じ笑顔で語る日が来るだろう。そして、初めてのプロツアーへ挑む者へ、「自分は全然勝てなかった。でもそれがきっかけで、前へと進むことができた。だから、緊張しなくて大丈夫!」と今と同じ熱意で語る日が、きっと来るはずだ。

 その日が来た時に、このインタビューがもう一度読まれることを信じて、筆を置く。

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