By Kazuki Watanabe
プロツアーでは、様々な喜びの場面に出会う。
その喜びの直前に訪れる、張り詰めるような緊張感。観戦する者も気持ちが先走り、居ても立ってもいられない状態になってしまうことが多い。
その先走る気持ちを押さえ込みながら、筆者はある一卓の戦いを見つめていた。そして……。
【ハレプロ】#PTHOU 最終戦を、#HareruyaPros オリヴィエ・ポラック=ロットマンが勝利し、来期のゴールドレベル確定!さらに『ワールド・マジック・カップ』でも、母国オーストリア代表のキャプテンに決定! Congratulations @polakrottmann ! pic.twitter.com/CRGiePmiAx
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) 2017年7月29日
見つめる先に居たのは、オリヴィエ・ポラック=ロットマン。彼は見事勝利を果たし、来期のゴールド・レベルを確定させ、さらにワールド・マジック・カップのオーストリア代表キャプテンとなった。
長いトーナメントを戦い抜いたオリヴィエに、少しの時間ではあるが話を伺った。
オーストリア代表キャプテン、オリヴィエにインタビュー!
--「ゴールド・レベル、そしてキャプテン就任、おめでとう!」
オリヴィエ「ありがとう、本当に嬉しいよ! 長く、苦しい戦いだった。何度もプロツアーに参加しているが、記憶に残る一戦だったよ」
--「一気に2つの栄光を勝ち取ったわけだからね。プロツアーの思い出を少し聞かせてもらえる?」
オリヴィエ「初めてプロツアーに出たのは、13年前だ。プロツアー・コロンバス04だね。当時はまだ高校生だったよ。それから20回以上プロツアーに出場しているが、こういった瞬間の喜びというのは何才になっても変わらないね。母国の代表になったわけだから」
--「ワールド・マジック・カップの代表、そしてキャプテンとして、少しオーストリアのマジック事情について教えてもらえるかな?」
オリヴィエ「日本の方はあまりご存知ないかもしれないが、オーストリアも日本に負けないくらいマジックが盛んなんだ。Benedikt Klauserや、Valentin Macklなんていう有名なプレイヤーも居るし、競技レベル、カジュアル問わず、マジックがプレイされている。皆が良いライバルであり、仲間なんだ」
--「そのオーストリア代表を率いる立場になったわけだね」
オリヴィエ「そうだね。母国の代表になるのは、これが3回目なんだ。世界の人たちにオーストリアの強さを見せられるようにしたいね」
オリヴィエの見つけた「勝利の秘訣」
--「世界を旅しながらマジックをプレイし、今回は日本で見事栄光を勝ち取ったわけだよね。旅をしながら勝利する秘訣のようなものがあったら教えてもらえる?」
オリヴィエ「今シーズンを戦っている中で、気付いたことがあるんだ。重要なのは、マジック以外の要素を疎かにしないことなのかもしれない、とね。仕事はもちろんだし、友人と過ごす楽しい時間や、一人で静かに過ごす時間といったすべてを大切にすること。これが秘訣かな」
--「なるほど。今シーズンに気付いた、ということだけど、何かきっかけはあったの?」
オリヴィエ「昨シーズンにプラチナ・レベルを目指していたときは、世界中のトーナメントに足を運んだ。それ自体は非常に楽しかったのだけど、マジック以外の時間を犠牲にしてしまったとも思ってね。もちろん、トーナメントでは勝ちたいし、またプラチナ・レベルを目指したいとも思うのだけど、そのためには生活のスタイルを大きく変える必要がある。今はその時ではないと思うから、今シーズンの過ごし方は少し穏やかだったよ」
--「そうだったんだ。今のマジックとの過ごし方はどんな感じなの?」
オリヴィエ「プロツアーやグランプリの10日前に現地入りして、それから練習を始めているよ。普段は仕事が忙しくて、練習ができないんだ。実はMagic Onlineもやっていないんだよ。だから、現地での直前練習だけ、というのが私のマジックとの付き合い方だよ」
--「トーナメントに合わせて練習する、という生活がこれからも続くわけだ」
オリヴィエ「そうだと思っているよ。もちろん、私にとってマジックは欠かせない存在だ。こうやって日本まで旅をして、友人たちに会いながら、勝利の喜びを噛みしめることができる。だからこそ、その限られた時間を思いっきり楽しむために、日々の生活を充実させていきたいと思うんだ」
--「それがベストな付き合い方なのかもしれないね」
オリヴィエ「少なくとも、今はそうだね。このプロツアーが終わったら、月曜日に日本を離れてオーストリアに帰国し、仕事をこなしながら、友人たちと過ごす日常が戻ってくるよ」
ちょうどここで、フィーチャーエリアが騒がしくなった。勝利を決め、トップ8入賞を果たした者を祝福する歓声のようである。
その光景を二人で眺めながら、「あの場所に残りたいと思う?」と筆者が問うと、彼は力強く「もちろんさ!」と答えた。
オリヴィエ「まだまだ私は戦い続ける。過ごし方が穏やかになっても、それは変わらない。そして、ワールド・マジック・カップは期待していて欲しい。仲間とともに、見事な戦いを披露してみせるよ」
オリヴィエの、そして彼が率いるオーストリア代表の活躍を願おう。