By Atsushi Ito
赤単5名。黒緑アグロ1名。ゾンビ1名。
意外といえば意外だが、初日終了時点である程度予想が付いていたトップ8デッキの面々。その中で、一つだけ異彩を放つデッキリストがあった。
「赤黒アグロ」。グランプリ・神戸2017で11位に入賞して参加権利を獲得した今回のプロツアー、初出場でいきなりトップ8に入賞した、モダン環境の《滋養の群れ》型“グリセルシュート”の制作者としても知られる藏田 真太郎に、このデッキの制作経緯やデッキのコンセプトについてインタビューを行った。
デッキの制作経緯と各カードの採用理由について
--「今回、この『赤黒アグロ』にはどういった経緯でたどり着いたんでしょうか?」
藏田「赤単がトップメタになることは予想がついたので、『最低限赤単に勝てるデッキを使いたい』と思って、『除去+《ゲトの裏切り者、カリタス》』とか、『面で守る』とか、『《単体騎手》ほかライフゲイン祭り』みたいな色々なデッキを10個か15個くらい作ってはぶつけていったんですが、どれも全然勝てなくて。で、赤単が段々とスペルのスロットが増えて12枚くらいになっていったので、モダンのバーンみたいな感じだから、《集団的蛮行》打てば勝てるんじゃね?という発想に至ったんです」
--「確かに除去は言わずもがな、ハンデスもドレインによるライフゲインも赤単に対して有効ですね」
藏田「そうなんです。で、ならドレッジか?ってことでドレッジに《集団的蛮行》を突っ込んで試してみたんですが、その程度では相性が改善しなくて。じゃあどうするか、ってことで、赤単に《集団的蛮行》を入れるのが一番強いという結論に至りました。赤単が強い、なら赤単に強い赤単を使おう。最強!ということで」
--「なるほど。ではそんな感じで赤単に《集団的蛮行》を入れるという基盤ができたとして、《アムムトの永遠衆》はどういった経緯で採用されたんでしょうか?」
藏田「ライフを詰めるデッキなら《アムムトの永遠衆》の方が強いだろうと思って積んでみたんですが、《アン一門の壊し屋》と比べるとどっちもどっちというか、どちらも強いところもあるが弱いところもあるんですよね。ただ《集団的蛮行》などでお互い消耗する盤面を想定した上でなら、《アムムトの永遠衆》の方が強いだろうということで採用しています」
--「《木端+微塵》も赤黒ならではのカードですよね」
藏田「この枠は赤単なら《集団的抵抗》の枠、つまり《ゲトの裏切り者、カリタス》対策の枠なので、赤黒なら『余波』も打てるし2マナで軽い方が良いよね、ということですね」
--「ほかは普通の赤単と同じ構成ですかね」
藏田「あとメインで違う点は、1マナ域を12枚から10枚に減らして《村の伝書士》みたいな前のめりなカードも抜いて《損魂魔道士》にして1歩受ける構成にしたので、《エルドラージの寸借者》にして一気に盤面を返せるようにしている、というくらいですね」
--「サイドボードは、《猛火の斉射》は少し採用が珍しいでしょうか」
藏田「ああ、サイドボードは13枚しかありませんでした。そのカードは一度もサイドインしてないので、まあキング・オブ・ゴミっていう感じでしたね(笑) 《チャンドラの敗北》にしていた方が6億倍くらい良かったです。ただ今回デッキがそもそも前日夜中くらいにできたので、サイドボードは結構適当でしたね……」
--「じゃああまり参考にしない方が良いんでしょうか?」
藏田「いや、まあ他のカードはよく機能してくれましたけどね。サイド後には地上は《熱烈の神ハゾレト》で止めて、《アクームの火の鳥》や《栄光をもたらすもの》などの飛行戦略や《反逆の先導者、チャンドラ》を採用してっていう、それはうまくハマってくれました。PV (Paulo Vitor damo da Rosa) とかもそういう感じじゃないですか?」
--「言われてみればそうですね。この75枚、今変えるとしたらどこか変えたい部分はありますか?」
藏田「《ボーマットの急使》があまり強くなかったので、《損魂魔道士》を4枚にして《ボーマットの急使》を2枚にして、サイドに《チャンドラの敗北》をとって《損魂魔道士》と合わせて《熱烈の神ハゾレト》を落とせるようにする、というくらいですかね。同型って結局細かいのがわぁぁーって交換されて、さあどっちが《熱烈の神ハゾレト》引けるか、っていうゲームになるんで」
プレイ面でのTipsその他について
--「今回のプロツアーでは《集団的蛮行》が赤単同型に刺さって勝ったっていう感じなんですかね」
藏田「そうですね《集団的蛮行》と、あとは《アムムトの永遠衆》が強かったです。というのも、赤単相手の《アムムトの永遠衆》は出す順番が《熱烈の神ハゾレト》より後なんですよね。最後の最後、相手のハンドが1枚か0枚になってから出す。準々決勝もそういう感じでプレイしました。使い方として3マナのクリーチャーとしてプレイするつもりではなくて、フィニッシャーですよね。最後ギリギリまで引っ張ってお互い手札1枚とかになって、こっちの1枚はお前の1枚では対処できないぜ、ってなって勝ちというのを目指すカードです。1枚だと落とせるカードがほぼない。逆に相手の手札の枚数が十分あると、1マナクリーチャーの展開+3点火力で死んでしまうので、そういう使い方はもったいないですね」
--「なるほど。メインのマナベース的にはどうなんでしょう?赤単と比べてタップインが気になるという懸念もありますが」
藏田「あまり気にならないですね。3マナのアクションが少ないので3ターン目はタップイン処理にあててもいいですし、《アムムトの永遠衆》も3ターン目に必ずしも出す必要はないので」
--「となると、藏田さんの考えではこのデッキは赤単のほぼ上位互換であると」
藏田「そう思ってますね。《アムムトの永遠衆》はもしかしたら4枚じゃなくてもいいのかもしれないけど、中盤ぽいっと出して相手にリソース使わせることもできますし、『困ったら《集団的蛮行》で捨てる』っていう『《意志の力》で切れる』みたいな考えもあります(笑)」
藏田「《集団的蛮行》の話が出たのでついでに、このカードは自分の《熱烈の神ハゾレト》用に手札の枚数を調整できる点もメリットです。4ターン目に《熱烈の神ハゾレト》出せそうなのに余計な土地やスペルがあるときには捨ててしまえばいいので。《熱烈の神ハゾレト》が1ターンでも早く殴れるかどうかがカギになる赤単同型のようなマッチアップでは見逃せないテクニックですね。あとは《木端+微塵》や《アクームの火の鳥》なども捨ててもいいですし」
--「赤単系列のデッキということで、黒単ゾンビとの相性はどうなんでしょうか?」
藏田「Pierre DagenとChristian Calcanoのゾンビとそれぞれ当たりましたが、別になんてことはない印象でした。メインは少しきついですが、サイド後はめっちゃ有利だと思います。《ゲトの裏切り者、カリタス》だけ除去ればあとは大したことないんで、地上だけ固めて飛行で一方的に殴って勝てますね。赤いカードは黒いカードと比べて殴りだすのが早いのが強みです。4マナに到達しちゃえば《反逆の先導者、チャンドラ》や《アクームの火の鳥》で一気にライフを詰めにいけます」
--「このプロツアーで当たって一番きつかったデッキは何でしょうか?」
藏田「唯一負けた高尾 (翔太) さんの赤黒機体ですね。同じ色で向こうがちょっとだけ重い構成で、《ピア・ナラー》と《無許可の分解》がかなりきつい感じでした。ただ他は《王神の贈り物》相手にメイン事故った以外は1本もゲームを落としてないので、デッキはかなり良かったです。今回、《集団的蛮行》に目を付けたのは僕だけなんじゃないかなと思いますが、それが当たりでしたね」
--「最後に、シルバー・レベルになられたということで、来シーズンの目標などお聞かせいただければ」
藏田「25周年のチームプロツアーには出たいなと思ってます。プロツアー全部周ろうみたいな、競技シーンどっぷりっていう感じではないので……むしろ結構PPTQとか出ていたんですが、出られなくなって『プロってみんなどうやってマジックしてるんだろう?』って思ってますw」
--「確かに……あ、それならとりあえずうちの神挑戦者決定戦とかにお越しいただけるとありがたいですねw」
藏田「そうですね、予定が合えば出てみたいですw」
--「ありがとうございました」
7 《山》 2 《沼》 4 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 4 《ラムナプの遺跡》 2 《イフニルの死界》 -土地 (23)- 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《ボーマットの急使》 2 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アムムトの永遠衆》 2 《エルドラージの寸借者》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (25)- |
4 《ショック》 3 《集団的蛮行》 2 《焼夷流》 3 《木端+微塵》 -呪文 (12)- |
3 《削剥》 2 《アクームの火の鳥》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《猛火の斉射》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《屍肉あさりの地》 1 《エルドラージの寸借者》 1 《熱烈の神ハゾレト》 -サイドボード (15)- |
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