エピローグ

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 プロツアー『破滅の刻』は、ブラジルのパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ選手の優勝で幕を閉じた。

 2度目のプロツアー優勝。12度目のプロツアートップ8。そして、初めてのプレイヤー・オブ・ザ・イヤー獲得。彼の戦績が輝きを増した瞬間である。

 彼を囲む仲間たちが、その輝きを彩る。

 その中でも、一際輝く笑顔。決勝で敗れたサミュエル・パーディーが誰よりも先に彼を祝福したことを、筆者は忘れないであろう。

 デッキリストを眺めれば、トップ8は赤色に染まっている。優勝したパウロが使用し、この大会を埋め尽くした赤単の強烈な印象に寄って、今この瞬間から、スタンダードは大きく変化を始めていることだろう。

 変化、といえば、今シーズンは様々な変化があった。振り返ってみればローテーションの変更と禁止改定による環境の変化があり、チームシリーズもスタートした。未来に目を向ければ、新たにブロンズ・レベルが制定され、プロ・レベルの決定方法も変わっていく。

 マジック:ザ・ギャザリングには様々な変化が日々起きている。制度も、メタゲームも。スタンダードのトップメタが赤単となり、皆が意識してデッキを調整する。トップ8を始めとする成績上位者のリストを世界中のプレイヤーが眺め、自身のデッキに調整を加え、明日の大会へ、週末のFNMへと向かうだろう。

 千年の都、京都での出来事が、世界へ。

 そして、この地に集ったプロプレイヤーたちも、それぞれの国へ。安息の地、新たな戦いの場へ。

 国籍も、思想も、老若男女も問わずに楽しめることが、このゲームの魅力である。競技人口は非常に多く、“マジックは世界中で、あらゆる人によってプレイされている”と言っても、何ら過言ではないだろう。

 だからこそ。

 わずかな者のみが権利を持つプロツアーに出場することは、紛れもない名誉なのだ。

 出場することが”夢”であり、その夢を叶えて狭き門を潜った先に待つのは、世界最高峰の過酷な戦いだ。

 トロフィーを掲げる者。あと一歩で手が届かなかった者。彼らが打ち倒した者。足早に会場を去った者。

 大会の結果とともに勝者として名を刻める者は、ごくわずかだ。溢れかえる祝福の拍手と、慰めの言葉が飛び交う場所。夢を叶えた者の影に、夢のまま散った者がいる場所。それが、プロツアーである。

 その場を、離れる刻がやってきた。荷物をまとめて、会場を立ち去る。

 日差しが雲に遮られ、少々和らいだ暑さの中。ふと立ち止まって見上げると、平安神宮の大鳥居が聳え立っていた。

 古来より、鳥居は“神域と俗界を隔てる門”の役割を果たし、この門より向こうが神聖な場所であることを示してきた。

 或る者は当然のように、また或る者は辛うじて、再び狭き門を潜るであろう。しかしそれは、アモンケットの人々が夢見た、”来世での栄光”を獲得するためではない。

より高く飛翔するため。

己の名を勝者として歴史に刻むため。

彼らは再び、この門を潜るのだ。

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