By Hiroshi Okubo
第9期フロンティア神挑戦者決定戦の第5ラウンドまでが終わり、上位のプレイヤーは着実に絞られてきていた。中にはプロプレイヤーの姿も見られ、普段はカジュアルにフロンティアを楽しんでいるプレイヤーたちも、今日ばかりは気合十分で勝利を目指して奮闘している。
そんな中、Hareruya Prosのゴールドレベル・プロであるジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniを下し、5-0と無敗で勝ち抜いていたプレイヤーがいた……。
そう、野生のモダン神こと松田 幸雄(東京)である。
これまでにも「ゾンビ新体操」や「黒単フレンズ」、「黒単ジャパニーズトラディショナルスナック」といった数々の迷名作を世に送り出してきた彼は、今日も会場でほとんど類を見ないデッキを使用していた。
その得物は信頼と実績の「青黒コントロール」だ。多色化が容易で様々な選択肢のあるフロンティア環境にあって、敢えてシンプルに2色でまとめ上げた独特のコントロールデッキを操る松田。はたしてなぜ彼はそのデッキを手に取ったのか? さっそく話を伺った。
松田 幸雄
--「青黒コントロールとは渋いチョイスですね。ずばり、なぜこのデッキを使用しようと考えたのでしょうか?」
松田「ラブリーでアメージング」
--「なるほど。マジックの歴史の中でも屈指のドロー呪文である《時を越えた探索》や《宝船の巡航》といったアドバンテージカードを多数採用できる上、2色でまとめることによって色拘束などの事故要因が減るんですね」
--「特に『破滅の刻』から《巧みな軍略》が加入した影響が大きく、さながら《思考掃き》のように墓地を肥やしながら《思案》のように『探査』呪文を探すことができ、実質的に『探査』呪文はカードパワーがより底上げされたということですか。ただでさえパワフルなこれらの呪文がさらに凶悪さを増したと考えるとゾッとしますね」
松田「《奔流の機械巨人》はファビュラスな姉」
--「《奔流の機械巨人》は5/6というサイズから攻防にわたって活躍する非常に強力なクリーチャーで、瞬速もコントロールデッキとしては非常に嬉しい能力ですね。スタンダードとは比べ物にならないほどの強烈なアドバンテージを稼ぎながら戦場に現れるのはまさしくファビュラスですね」
松田「プレシャスな再販もある」
--「さらに《時を越えた探索》を疑似『フラッシュバック』するシナジーも健在で、前述した《巧みな軍略》もあるためこの2枚をプレイするのは非常に容易であるということですか……」
松田「《最後の望み、リリアナ》はしっかり者の妹」
--「フロンティア環境はウィニー戦略を取っているデッキが多く、《最後の望み、リリアナ》の『+1』能力は除去のように機能する上、『-2』能力はライブラリーを掘りながら《奔流の機械巨人》を手札に加えることもできる……能力の全てがデッキと環境に噛み合っていますし、たしかにしっかりした堅実なプレインズウォーカーと言えそうです。性格的には姉っぽいですけど」
松田「《漂う死、シルムガル》はグッドルッキングガイ」
--「このデッキが唯一苦手としている『魂込めビートダウン』に対して3/6 飛行 呪禁というアトラクティヴなボディが優秀なうえ、コントロールデッキでは対処に手を焼くことが多い《搭載歩行機械》や《ピア・ナラーとキラン・ナラー》がばら撒いた《飛行機械》トークンを一掃することもできるわけですか。1枚挿しではありますが、これだけドロー呪文が充実していれば探すのも容易ですね」
松田「特に《致命的な一押し》はピュアでピースフルでヘブンリーな1枚」
--「もちろん除去呪文も充実しており、9枚のフェッチランドと組み合わせた《致命的な一押し》はモダンやレガシーさながらの威力であると。今回の『第9期フロンティア神挑戦者決定戦』に向けて事前にBIGMAGIC秋葉原店さんで開催された「SWITCH杯」に参加し、そこで現在のフロンティア環境にはアグロデッキが多いという知見を得たことからこのカードを4枚採用するに至ったわけですか」
--「逆に他のデッキも《致命的な一押し》をプレイしてくるだろうと読んで、このデッキでは《ヴリンの神童、ジェイス》は不採用になっているんですね。今回もインタビューのご協力ありがとうございました! この後も頑張ってください!」
松田 幸雄が組み上げたファビュラスでアメージングなブルーブラックコントロールは、この後も見事なパフォーマンスを発揮して見事に予選ラウンドを抜けていた……
……と、この記事はスイスラウンド中にここまで執筆していたのだが、松田 幸雄はこの後めちゃくちゃ優勝した。
うっかりいつものノリでネタ記事にしてしまったが、仮想敵をアグロデッキに定め、「霊気池の驚異」や「サヒーリコンボ」とも五分以上に戦えるコントロールデッキを構築した松田のセンスは疑うべくもない。
《奔流の機械巨人》と《最後の望み、リリアナ》の姉妹(?)のバックアップを受け、レガシーでさえ禁止を受けた《時を越えた探索》と《宝船の巡航》の圧倒的なカードパワーを余すことなく味わい尽くせるこのデッキ。パワフルなゲームが好きな方はぜひ組んでみてはいかがだろうか?
そして松田 幸雄!優勝おめでとう!!
5 《島》 5 《沼》 4 《窪み渓谷》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 1 《溢れかえる岸辺》 2 《陰鬱な僻地》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地 (26)- 4 《奔流の機械巨人》 1 《漂う死、シルムガル》 -クリーチャー (5)- |
4 《致命的な一押し》 4 《闇の掌握》 4 《巧みな軍略》 1 《検閲》 1 《否認》 2 《不許可》 2 《本質の摘出》 2 《衰滅》 1 《虚空の粉砕》 1 《不帰+回帰》 4 《時を越えた探索》 1 《宝船の巡航》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文 (29)- |
4 《才気ある霊基体》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《集団的蛮行》 1 《終止符のスフィンクス》 1 《儀礼的拒否》 1 《払拭》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《鞭打つ触手》 -サイドボード (15)- |
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