決勝:中村 公哉(イゼットドレイク) vs. 土井 佑太(ボロストークン)
晴れる屋メディアチーム
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By Tsutomu Date
現スタンダード年内最後をかざる大会となった「第5期スタンダード東海王決定戦」、年が明けると間もなく『ラヴニカの献身』が発売され新しい世界へと移り変わる。
通常、環境末期の大会は特定のデッキタイプに偏る傾向があるが、多色セット『ラヴニカのギルド』環境はセットに含まれる5種のギルドに加え、青単アグロや赤単アグロのような単色デッキ、さらにはジェスカイコントロールのような多色デッキも幅を利かせている。まさに群雄割拠と呼ぶにふさわしい良環境と言えるだろう。
スイスラウンドを5勝0敗1分の不敗で文句なしのトップ通過した中村 公哉。三重在住で地元の『トレカライフ鈴鹿』、『カードボックス津』での活動のほか、晴れる屋名古屋店の大会にも精力的に参加している。普段はリミテッドをプレイしており、今回は急遽用意したイゼットドレイクで「スタンダード東海王」の座へ迫っている。
対する土井 佑太は4勝1敗1分の7位でスイスラウンドを通過。地元愛知のプレイヤーで、スタンダードを得意とする。晴れる屋名古屋店の大会にも多く参加しており「環境名人戦 In 名古屋」優勝、「Hareruya Hopes選考会スタンダード予選」優勝ほか、これまでいくつもの勝利を勝ち取ってきた。特に東海王の座には強い意欲を見せており、いくつか試した中で一番しっくりきたボロストークンを手に王座を目指す!
先手はイゼットの中村。オープンハンドを確認した後、お茶を一口飲んでから力強くキープを宣言。対する土井も落ち着いた表情でキープを宣言する。
《島》をプレイしてターンを返す中村に対し、土井は《平地》から《追われる証人》。
中村は《選択》を挟み、3ターン目に《奇怪なドレイク》、4ターン目に《弾けるドレイク》を続けて展開するが《溶岩コイル》、《議事会の裁き》で対処され《追われる証人》がじわじわと中村のライフを削っていく。
しかし、クロックが1点と遅いため盤面を戻す時間はまだある。着実にアドバンテージが取れる《弾けるドレイク》のおかげで追加の《弾けるドレイク》を展開。これに土井は《ベナリア史》で応えるものの、ここで攻撃は止まる苦しい状況。
中村は《発見+発散》で手札を整え、さらに3体目の《弾けるドレイク》を戦線に加える。点での突破が難しい土井、《ベナリア史》で騎士トークンを並べ、《暴君への敵対者、アジャニ》の「+1」能力でトークンを強化、攻撃の準備を整える。
さらに《奇怪なドレイク》を盤面に加える中村に対し、土井はここが大一番とばかりに《ベナリア史》のⅢ章の能力と《暴君への敵対者、アジャニ》の「+1」能力で6/5になった騎士トークン2体でアタック。
苦し気な表情を浮かべる中村。墓地のインスタント・ソーサリーは4枚のため、《奇怪なドレイク》と《弾けるドレイク》のダブルブロックで1体打ち取り、6点はスルー。土井は戦闘後に2枚目の《ベナリア史》を唱えるが、中村が温存していた2枚の《呪文貫き》で打ち消される。
そして、中村は帰ってきたターンに《パルン、ニヴ=ミゼット》をプレイ!手札に回答を持たなかった土井に対し、中村は攻撃に転じる。
《航路の作成》で誘発した《パルン、ニヴ=ミゼット》のダメージを土井へ飛ばしながら、パワー6の《奇怪なドレイク》《弾けるドレイク》2体の攻撃で《暴君への敵対者、アジャニ》を落としつつ、土井へも6点のダメージを与える。
盤面をしばし見つめ、次ターンは支えきれないと判断した土井は投了を選択した。
中村 1-0 土井
重めのカードやドロー強化をアウトし、序盤を耐えるためのカードを追加してアグロの速度に対抗する中村に対し、黒緑系への対策である《トカートリの儀仗兵》とコントロール対策の《神聖な訪問》を中心に減らし、ドレイクへの回答と速度・サイズのあるクリーチャーを加える土井。 双方のプランは吉と出るか凶とでるか!?
先手の土井は迷わずキープを宣言、一方中村は「土地ゼロは迷わなくていいですね」と言いつつ即マリガン、確認した6枚のハンドは悩みつつキープ。
待望の先手の土井、アグロデッキの本領を発揮したいところだが、1、2ターン目は《山》をプレイするのみでエンド。ファーストアクションは3ターン目に3枚目(!)の《山》から《軍勢の戦親分》。中村は2ターン目に《ゴブリンの扇動者》をプレイしており、まるでゴブリンデッキ同士の対戦を思わせる。トークン同士が相打ちになりターンを終える。
サイドボードのカードで土井の攻勢を抑える中村も万全というわけではなく、3ターン目に《発見+発散》をプレイし《軍勢の戦親分》への回答を探すが、トップに答えはなく《島》を置きターンを終了する。返すターン、戦闘開始時に登場したゴブリントークンと《軍勢の戦親分》のアタックで4点のダメージを受ける。
攻勢を続けたい土井だが、続く中村のターンに《標の稲妻》で《軍勢の戦親分》は処理されてしまう。4枚目の土地も《山》で追加戦力を出せない状況では場に残った2/2のゴブリントークンに望みをかけるのみ。顔には苦笑いが広がってしまう。
このままマナスクリューで終わってしまうかと思われた土井だが、続く5ターン目には待望の白マナ《聖なる鋳造所》を引き当てる!戦闘前にキャストした《英雄的援軍》は《呪文貫き》されてしまうが、手札に溜まった白いカードで盤面の構築をはかる。
返すターンに中村の場に登場した《弾けるドレイク》は《溶岩コイル》で処理し、《追われる証人》を戦線に加える。《ゴブリンの扇動者》のトークンと相打ちになってもクロックが残るが、できればもっと重いスペルを使いたいところだ。
この盤面に対して、ゴブリントークンで一見不利なアタックを行う中村、スルーされると《航路の作成》でアドバンテージを稼ぎつつ、《奇怪なドレイク》をプレイし盤面を自陣に傾ける。しかし、土井も《不可解な終焉》で答え兵士トークン、ゴブリントークンで攻撃を継続していく。
中村も2体目の《ゴブリンの扇動者》でブロッカーを用意しつつ、《アズカンタの探索》を場に出しドローの質を高める。お互いに盤面のカードパワーが低い状況では十分勝利につながるアドバンテージだ!
返す土井のターン、中村は《軍勢の切先、タージク》を戦闘前の《ショック》で対処し、2/2のゴブリントークンはダブルブロックで打ち取る。1/1トークンのアタックは通り残りライフは4。追加戦力の《黎明をもたらす者ライラ》も墓地からの《標の稲妻》で除去し盤面をコントロールするが、その間にもトークンのアタックが通り残りライフは3まで落ち込んでしまう。
ついに《アズカンタの探索》が変身し、能力を起動し始める。あとは、盤面のクロックに対処すれば勝利はおのずと中村に飛び込んでくる。さらに十分なパワーをもった《奇怪なドレイク》を場にだし回答を迫る。
土井に残された時間は少ない。《不可解な終焉》で《奇怪なドレイク》を処理し、《アダントの先兵》を場に出す。破壊不能を付与できる《アダントの先兵》は赤いスペルでは対処できない。ブロッカーとなる追加のドレイクはいるのか?
《発見+発散》で回答を探す中村、追加の《奇怪なドレイク》を見つけ勝利が近付いてきたと思いきや、そこで土井がトップデックしたのは《軍勢の切先、タージク》!!
《アダントの先兵》と合わせてのアタックで見事に中村のライフを削り切った。
中村 1-1 土井
Game2とほぼ変わらない中村に対し、土井は後手でクロックがかかりづらく、盤面が止められてしまった後の一押しとして《苦悩火》を投入する。
再び先手となった中村は《蒸気孔》をタップイン、2ターン目に《硫黄の滝》を置き《航路の作成》スタート。対して土井は1ターン目《軍団の上陸》、2ターン目《アダントの先兵》と理想的な立ち上がり。3ターン目《奇怪なドレイク》で守りを固めたい中村だが、土井は《不可解な終焉》でブロックを許さず、攻撃の手を緩めない。
中村は2体目の《奇怪なドレイク》をプレイしつつ赤1マナを残しターンを終了。土井のコンバット前にプレイされた《軍勢の戦親分》は予定調和と即座に《ショック》。《アダントの先兵》とヴァンパイアトークンがアタックし《奇怪なドレイク》でトークンをブロック、盤面を整えていく。
《奇怪なドレイク》と《アダントの先兵》が睨みあう盤面になるかと思いきや、中村は《奇怪なドレイク》(3/4)でアタックし、続けて《弾けるドレイク》を追加、ダメージレースを挑む構え。土井もターンが訪れると即座にブロッカーとして立ち塞がる《弾けるドレイク》を《議事会の裁き》で除去し、《アダントの先兵》で攻撃して中村のライフは9へと落ち込む。
ここで中村がプレイしたのはサイドカードの《ゴブリンの扇動者》! 2マナで1/1のゴブリン2体はカードパワーは高くないが、ダメージレース中は《アダントの先兵》に対する回答としてはこの上ない価値を持つ。ドレイクのアタックとトークンでのブロックで土井のライフが大きく落ち込んでいく。
さらに《発見+発散》で手札を整えつつ墓地を肥やし《奇怪なドレイク》のパワーを上げる中村。すでにパワーは7まで上がっており、アタックで土井のライフは一気に6点に。
本来はエンドカードとして入れた《苦悩火》だが眼前のクロックを処理しなければ敗北は必至。土井は中村の場に1枚だけ起きている《島》へ何度か目を向けるが、他に取れる手段もなく、祈るように《奇怪なドレイク》へX=6の《苦悩火》をキャスト。
中村の手から《潜水》が公開されると、土井はうなずき投了を宣言した。
中村 2-1 土井
中村「白系アグロの《アダントの先兵》には手を焼きますが、《幻惑の旋律》ではなくて《ゴブリンの扇動者》を採用しました。《幻惑の旋律》は4マナと遅く、それよりも2ターン目から展開できる《ゴブリンの扇動者》の方が《アダントの先兵》には有効です。4点を2回払ってくれるならダメージレースでも勝てますしね。 ほかにも《疫病造り師》や《最古再誕》を使うデッキに対しても有効で、受けが広いです」
リミテッドで培われたダメージレースを制する技術と、サイドボードのカード選択が中村を東海王の座へと導いた、と言えるだろう。
「第5期スタンダード東海王決定戦」見事東海王の座を手に入れたのは中村 公哉!!おめでとう!!