6年ぶりに、日本選手権が帰ってくる。
かつて大礒 正嗣や中村 修平、森 勝洋といったプレイヤーたちも戴冠し、日本全国から集まった強豪マジックプレイヤーたちの頂点を決めるための大会でありながらも、日本代表として世界と戦うための登竜門でもあったこの象徴的なイベントが、最後の開催となった2011年以来6年の時を経た2017年、2週間後に迫った9月9・10日に、再び開催される運びとなったのだ。
となれば、この男が立ち上がらないはずはない。
BIGs・石田 龍一郎。当時画期的な構成と評された超オールイン構成の《鍛えられた鋼》デッキ (参照) を乗りこなし、2011年、空白期間前最後の日本選手権王者の座に戴冠。殿堂プレイヤー・三原 槙仁とともに、その年の世界選手権の国別対抗戦では見事日本チームを優勝に導いた。
そう、つまり石田は言わば日本選手権のディフェンディングチャンピオンなのだ。なればこそ、石田はこの第9期スタンダード神挑戦者決定戦を、2週間後の本番の前に控えた絶好の練習の機会と捉え、はるばる静岡から遠征してきた。
石田「終電がなくなっちゃうんですよね……」
そう語りつつも、石田の声に悲壮感は欠片も見えない。望外とはいえトップ8に入った以上は、さらに上を目指したくなるのが強者の性というものなのだろう。日本一というタイトルを防衛する前の前哨戦として、「神」への挑戦権をまずは獲得しにいく。
対するはスイスラウンドを8-1で駆け抜けた小泉 祐真。Magic Onlineを主戦場にしつつ、今回のデッキである《スカラベの神》入りのティムールエネルギーをChannel Fireballのウェブサイトから原型を拾ってきたというトップ8プロフィールからは、確かな情報収集能力とメタゲームへの高い意識が見てとれる。
そんな小泉と石田との対戦はしかし、意外な角度で水が差されることとなった。
ジャッジから告げられる、リスト不備によるゲームロス。
石田、ここにきて手痛い失態。
小泉 1-0 石田
Game 2
気を取り直して石田の先攻、お互いワンマリガンから石田の《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》に小泉が《削剥》を当てる立ち上がり。
後続の《屑鉄場のたかり屋》に対して小泉は《霊気圏の収集艇》。石田は《地揺すりのケンラ》でダメージレースを挑み、小泉が搭乗要員として召喚した《導路の召使い》に迷わず《致命的な一押し》を打ち込む。
対する小泉はなおも《つむじ風の巨匠》を送り出し、再び《霊気圏の収集艇》をレッドゾーンに向かわせてライフの均衡を保とうとするのだが、ここで石田が引き込んでいた《削剥》でうまく対処。さらに返すターン、《アン一門の壊し屋》を「督励」してフルアタックを敢行すると、小泉のライフは7点まで追い込まれる。
だが小泉もさるもの、《逆毛ハイドラ》を送り出すと、これで石田のクロックはすべて封じられた格好。長期戦ではカードパワーに勝る小泉の側に分があるため、石田はこの状況を打開する「何か」を引き込まなければならない。
そして。そういう場面できっちり「何か」を引くのが石田という男なのだ。
ドローを確認した石田は、あまりにも強いドローに自分でも驚いたのか、「トップで解決!」と自嘲しつつも、しかしこれが勝負と言わんばかりにそのカード、《熱烈の神ハゾレト》を戦場へと送り出す。
これを受けて何とか《つむじ風の巨匠》の飛行機械トークンでブロックしつつ、《逆毛ハイドラ》で殴り返してダメージレースで勝とうとする小泉だったが、トークンの生成でエネルギーを使い果たしたところに舞い降りた《反逆の先導者、チャンドラ》が《逆毛ハイドラ》を打ち落とすと、《熱烈の神ハゾレト》に対抗する術のない小泉はカードを畳むほかなかった。
小泉 1-1 石田
Game 3
先手2ターン目に《牙長獣の仔》を送り出した小泉だったが、青マナが事故っており《ならず者の精製屋》につなげられない。この隙に石田は《地揺すりのケンラ》 《戦慄の放浪者》《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 と展開し、ようやく小泉が《ならず者の精製屋》を送り出せた返しで《アン一門の壊し屋》を「督励」で走らせる猛攻を見せる。
小泉はさらなる《ならず者の精製屋》と《導路の召使い》で守りを固めようとするが、石田は構わず2体目の《アン一門の壊し屋》を「督励」で走らせ、強引に戦線を突破しにいく。
それでも小泉は、《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」能力からの《削剥》で1体目の《アン一門の壊し屋》を処理し、《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》に対して《牙長獣の仔》が待ち構えて、次のターンが来ればいよいよさあ反撃という布陣を整えることに成功する。
だが、返すターンに石田が引き込んだ3枚目の《アン一門の壊し屋》は、小泉の心を折るには十分すぎるものだった。
小泉 1-2 石田
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