Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2017/08/29)
みなさん、こんにちは!
来るスタンダードのグランプリに向け、本日はスタンダードにおける最良のアーキタイプについてお話ししたいと思います。各デッキの強みと弱みを比較することで、みなさんがデッキを選ぶ際や、対戦相手がプレイするであろうデッキに関する理解を深める助けになれば幸いです。私自身もまだデッキを決めかねていますが、同じ状況のみなさんにはきっとこの記事がお役に立つことでしょう。
ティムールエネルギー
4 《森》 2 《山》 1 《島》 3 《隠れた茂み》 4 《植物の聖域》 2 《尖塔断の運河》 1 《伐採地の滝》 1 《獲物道》 4 《霊気拠点》 -土地 (22)- 4 《導路の召使い》 4 《牙長獣の仔》 4 《つむじ風の巨匠》 4 《ならず者の精製屋》 1 《不屈の神ロナス》 4 《逆毛ハイドラ》 3 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー (24)- |
4 《霊気との調和》 2 《マグマのしぶき》 4 《蓄霊稲妻》 2 《削剥》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -呪文 (14)- |
4 《否認》 2 《不屈の追跡者》 2 《光輝の炎》 2 《慮外な押収》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《炎呼び、チャンドラ》 1 《削剥》 -サイドボード (15)- |
Genesisのチームメイトがグランプリ・デンバー2017で支配的なパフォーマンスを披露してからというもの、ティムールエネルギーは正当な理由のもと強く意識されています。
このデッキは強力なカードにいくつかの除去やマナ加速を持ち合わせており、これは成功するためにとても良いリストだと言えます。また、このデッキを1枚で倒せるほどのカードは存在しないため、ティムールエネルギーをメタることは非常に難しいです。
そして、もしも人々がこのデッキを打ち倒すようなデッキを使い始めたとしても、ティムールエネルギーはリストを変えて容易に対応できるので、特定のデッキに勝つことはそれほど難しいことではありません。ただし、全てのデッキに勝つことは不可能に近いですが。
長所
– 強力なカード
– 1枚のカードで負けない
– メタゲームに合わせて細部を調整できる
– 少ない練習量でもそこまでひどい目に合うことがない
短所
– 全てのプレイヤーはティムールエネルギーというデッキとその対処法を知っている
– 調整を加えない限り、対戦相手はあなたの持ち込んだデッキを完全に把握している
– 《王神の贈り物》デッキに対してとても相性が悪い
次なるグランプリにおいては、私はティムールエネルギーがベストな選択だとは考えていません。すでにお伝えしたように全員がこのデッキを意識していますし、倒そうとすればうまくいってしまうからです。
今現在のスタンダードは、パワーレベルの近い複数の素晴らしいデッキが混在しており非常に良い環境だと思います。したがって、メタゲームを正しく把握し、毎週デッキに変更を加えることが重要です。決して14日前に良かったデッキをそのまま使おうとしないでください。
とはいえ、少なくともティムールエネルギーに対してしっかりと戦えるデッキを持ち込むことをお勧めします。なぜならば多くのプレイヤーがティムールエネルギーを使用するでしょうし、このデッキはあちらこちらにいるでしょうからね。もしもティムールエネルギーを使うことに決めたのならば、いくつかの調整を加えてミラーマッチに備えておきましょう。
ミラーマッチで最良のカードのひとつが《不屈の神ロナス》でした。ミラーマッチで優位を確立するために、複数枚をプレイしてみてもいいでしょう。もうひとつミラーマッチでお気に入りのカードが《スカラベの神》です。
これは惜しくもトップ8は逃してしまったものの、グランプリ・デンバーでマイケル・ジェイコブ/Michael Jacob選手がプレイしていたカードです。ミラーマッチにおけるいくつかのゲームは非常に速く決着してしまうため、この神がどれほど優れているかは判断しかねますが、一度盤面を膠着させることができたのなら《この神》は最高のカードであり、即座に勝利をもたらしてくれることでしょう。
ジェスカイ《王神の贈り物》
4 《島》 3 《山》 4 《尖塔断の運河》 4 《感動的な眺望所》 4 《イプヌの細流》 4 《霊気拠点》 -土地 (23)- 4 《歩行バリスタ》 4 《傲慢な新生子》 4 《査問長官》 4 《機知の勇者》 4 《戦利品の魔道士》 4 《発明の天使》 2 《激変の機械巨人》 -クリーチャー (26)- |
4 《安堵の再会》 4 《来世への門》 1 《霊気圏の収集艇》 2 《王神の贈り物》 -呪文 (11)- |
3 《否認》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《霊廟の放浪者》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《払拭》 2 《チャンドラの敗北》 1 《激変の機械巨人》 -サイドボード (15)- |
グランプリ・デンバーで突如として多くのプロがプレイしたデッキで、トップ8に送り込むことはできなかったものの、15回戦終了時点で多くのプレイヤーを上位に輩出しています。このデッキは一貫性のあるコンボデッキで、数多くのカード選択、信じられないほどのぶん回りと相互作用を秘めています。
しかしながら、このデッキを正しくプレイすることはとても困難です。なぜならば、試合中にはいくつのも小さな分岐点があり、それら全てに正解する必要があるからです。
今現在、メインボードでこのデッキに対処できるカードは《削剥》くらいのもので、それは面倒ではあるものの容易に乗り越えることができます。なぜなら《王神の贈り物》を探すためのカードが大量に入っていますし、カードを引く手段も豊富だからです。問題となる可能性があるのは、人々がこのデッキを真剣に検討し、《屍肉あさりの地》や《没収の曲杖》といった対策カードを使用し始めることです。
このデッキを使用するにあたって最も重要なのは、対戦相手が《王神の贈り物》への対処法を大量に持っていた場合に備えて、良いサイドボードプランを用意しておくことです。そうすれば墓地に依存しないミッドレンジデッキへと変貌することができます。これは本当に重要な事柄なので、このデッキで成功したいのであれば必ずや習得しておきましょう。
より良いサイドボードが構築できるかどうかはわかりませんが、少なくとも《栄光をもたらすもの》より良いものを見つけるのは困難でしょう。その理由としては、《栄光をもたらすもの》は青いデッキがこのデッキに対して最もよく使うサイドボードカードであろう《否認》に引っかからない最高の脅威だからです。《反逆の先導者、チャンドラ》も悪くはないものの、おそらくそれよりも良いものが見つかると思います。《反逆の先導者、チャンドラ》の問題点は《否認》が刺さってしまうこと、そして速攻持ちのクリーチャーを筆頭としたいくつかのカードに弱いことです。
結論として、私はこのデッキが良い選択だと思います。ただし、このデッキはたくさんの練習を必要としますし、人々が《王神の贈り物》を真に良いデッキだと理解し準備を進めているだろうことを考慮すると、今後は厳しい戦いを強いられるでしょう。
長所
– ティムールエネルギーに対して相性が良い
– 対戦相手の脅威のほとんどを無視できる強力なコンボ
– 多くのドローサポートのおかげで安定している
短所
– 正しくプレイするのが難しい
– 対策カードの影響を受けやすい
ゾンビ
19 《沼》 4 《イフニルの死界》 1 《屍肉あさりの地》 1 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (25)- 4 《墓所破り》 4 《戦慄の放浪者》 4 《無情な死者》 4 《戦墓の巨人》 4 《呪われた者の王》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー (21)- |
3 《致命的な一押し》 3 《闇の掌握》 4 《闇の救済》 4 《リリアナの支配》 -呪文 (14)- |
3 《精神背信》 2 《没収》 2 《不帰+回帰》 2 《最後の望み、リリアナ》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《致命的な一押し》 1 《闇の掌握》 1 《殺害》 -サイドボード (15)- |
ゾンビは直線的かつ攻撃的なデッキで、素早いクロックと粘り強さを合わせ持つデッキです。しかし、このデッキにはふたつの問題があります。それは《領事の旗艦、スカイソブリン》と全体除去呪文です。対戦相手がそれなりのドローに恵まれている場合、これらのカードを打ち破ることは非常に困難です。
良い知らせとしては、人々がティムールエネルギーと《王神の贈り物》デッキを倒すべきデッキだと認識した場合に、上記カードがデッキから抜けるであろうということです。その状況はゾンビデッキにとってこれ以上ないほど完璧だと言えます。十分な備えがなければゾンビデッキに勝つことはできませんからね。
私は《ゲトの裏切り者、カリタス》をメインボードに入れるのが好みですが、これは環境の多くのデッキがクリーチャーベースであることに加え、《ゲトの裏切り者、カリタス》が単体で勝利をもたらしてくれるほどに強力なカードだからです。サイドボードには《王神の贈り物》対策に数枚の《没収》を採用していますが、それ以外は一般的なリストと変わりませんし、大きな変更を加える必要もないでしょう。
個人的にゾンビデッキの《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》は気に入っています。このカードは全体除去をものともしませんし、単体除去が多い場合にも同様です。そのため、サイドボードに《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》のための枠を割く予定です。
青白モニュメント
9 《平地》 3 《島》 4 《大草原の川》 4 《港町》 2 《シェフェトの砂丘》 3 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (25)- 4 《スレイベンの検査官》 4 《無私の霊魂》 4 《ハンウィアーの民兵隊長》 4 《呪文捕らえ》 3 《往時の主教》 4 《雲先案内人》 -クリーチャー (23)- |
1 《石の宣告》 1 《金属の叱責》 3 《黄昏+払暁》 3 《排斥》 4 《オケチラの碑》 -呪文 (12)- |
4 《領事の権限》 4 《否認》 3 《賞罰の天使》 2 《保護者、リンヴァーラ》 1 《石の宣告》 1 《黄昏+払暁》 -サイドボード (15)- |
おそらくこのデッキは予想していなかったことでしょう。では何が変わり、なぜこのデッキは良いデッキになったのでしょうか?明確な答えは私にも分かりませんが、私はここ数日このデッキを使ってかなりの勝ち星を重ねています。
私が思うにこのデッキを良いデッキたらしめている理由のひとつに、ラムナプ・レッドが減ったことで《削剥》をメインから4枚採用しているプレイヤーが十分な数いないことが挙げられると思います。不運な点としては、人々が《王神の贈り物》を意識してより多くの《削剥》やアーティファクト破壊を入れることが、このデッキにも大きな痛手となることです。
《オケチラの碑》を引けるかどうかはこのデッキにとって途方もない差です。ほとんどの対戦相手が《キーカード》への対抗手段を持っているということは、このデッキにとって明確な損害です。それを踏まえ、《オケチラの碑》がなくとも機能するようにすることこそがこのデッキの進むべき道だと確信していますが、それはほとんど不可能であり、なぜ誰もこのデッキを使わないのかという理由でもあります。《オケチラの碑》がなくともデッキが機能するようにベストを尽くしてはいますが、今のところこれが私の使用しているリストです。
問題となりえるパーマネントへの解答として、また、対戦相手に関与する追加の手段として《排斥》はとても好みです。《王神の贈り物》、《領事の旗艦、スカイソブリン》、《反逆の先導者、チャンドラ》など、これらの問題に対して《排斥》は大きな助けとなります。このデッキには軽いカードがそう多くはないため、序盤のターンの「サイクリング」はタダのようなものですしね。
このデッキで好きになれないカードが《ハンウィアーの民兵隊長》です。このカードは《オケチラの碑》があると素晴らしいですが、そうでないときは本当にひどいもので、キャストするのを恥ずかしいと感じてしまうほどです。《オケチラの碑》がない状態で4体のクリーチャーを揃えることは困難であり、単体除去呪文が溢れかえる現状ではなおさらそれが顕著です。
《ハンウィアーの民兵隊長》の代わりにいくつかのカードを試してみたものの、これまでのところこれよりも良いカードは見つかっていません。私が試してみたカードの中では《歩行バリスタ》と《栄光半ばの修練者》が最良でしたが、これらはいくつかの問題を抱えています。
《栄光半ばの修練者》は2ターン目のアクションとして上質ですし、《オケチラの碑》があればわずか1マナでキャストすることができます。ただしパワーが3のクリーチャーは《黄昏+払暁》と上手く噛み合いませんし、それゆえにこのカードをデッキに入れていいのかどうか確信が持てません。
《歩行バリスタ》は終盤戦に強く、《黄昏+払暁》とも上手く噛み合います。しかしながら、このデッキが必要としている序盤のアクションという面であまり仕事をしないのです。《ハンウィアーの民兵隊長》は全体除去呪文やアーティファクト破壊が飛び交うサイドボード後によりひどいカードに成り下がってしまい、ほとんどの場合ただの2マナ2/2でしかありません。私は喜んでこのカードを抜きたいと思っていますが、現状では最適な代わりが見つかっていません。
まとめ
もうひとつ言及しておかなければいけないデッキがラムナプ・レッドです。このデッキはとてもパワフルなので、使用する人たちを非難することはできません。
これが私から見た現在のスタンダードで、上記いずれかのデッキをグランプリ・トリノ2017で使用するつもりです。この記事がデッキ選択や各デッキの強み、弱みを理解する助けになれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ルーカス・ブローン
(編注:ルーカス・ブローン選手は昨シーズンをもってHareruya Prosを卒業する運びとなりました。今後ともルーカス選手、Hareruya Prosへの変わらぬご声援を何卒よろしくお願いいたします。)
【お知らせ】ルーカス・ブローン選手は昨シーズンを最後に、#HareruyaPros としての活動を終了することになりました。プロツアー『異界月』優勝という輝かしい戦績と共に加入し、その後も良質な攻略記事の執筆やGP優勝など、活躍を続けました。今後もブローン選手に応援お願いします! https://t.co/EqU8F2H9Hf
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) 2017年8月30日
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