挑戦者インタビュー: 松田 幸雄 ~僕が関わった『神決定戦』の集大成~

晴れる屋

By Yuuya Hosokawa

 今回で第9期を迎える『神決定戦』。その第2期では、スタンダード・モダン・レガシーの3神と3人の挑戦者が熱戦を繰り広げた。

 さらに第6期神決定戦からはヴィンテージ神が登場し、現神である森田 侑は、神に相応しい圧倒的なプレイを見せつけてくれた。

 そして今回より、5つ目の神と挑戦者の戦いが、始まる。

 そう、「フロンティア」だ。

 神と挑戦者。1対1。目の前の相手のみを倒す戦い。デッキチューンや読み合いで数々のドラマが生まれ、数多の挑戦者が神の前に散り、或いは新たな神が誕生した。

 歴史ある『神決定戦』の戦いに新たに加わった『フロンティア神決定戦』。この戦いに挑戦者として挑むのは、『神決定戦』を語る上で外すことができないこの男だ。

 現モダン神、松田 幸雄である。

松田 幸雄

 第6期神決定戦で見事市川 ユウキを破り、その後すべての挑戦者を退けてきたこの神。彼が、フロンティア神に挑むたった一つの椅子を手に入れたのだ。

 現神が、挑戦者として他のフォーマットの神に挑む。前代未聞の出来事だ。

 『神決定戦』史上初となる現神の挑戦者、そして前人未踏の三度目の神への挑戦。

 歴史に名を刻み、そして新たな一ページにもその名を残さんとする男、松田 幸雄に、『神決定戦』について、とことん語ってもらった。

フロンティア神挑戦者決定戦優勝

--「まずは松田さん、第9期フロンティア神挑戦者決定戦優勝、おめでとうございます」

松田「いやぁ、ええ、それはもうありがとうございます」

--「現神が、他のフォーマットの神に挑戦するって、初めてのことですよ。トップ8だけならばありましたけども」

松田「ですよねぇ(笑) 自分でも驚いてます」

--「フロンティア神挑戦者決定戦で優勝できたことが、ですか?」

松田「一つはそうですね。デッキはまあ自信なくはなかったんですけど、優勝できるとは思っていませんでした」

--「ではもう一つは?」

松田日程ですよ! 日程! なんですかこれは! モダンやってフロンティアやってじゃないですか! 休憩取らせてください! 1時間ぐらい!」

--「(笑) そうですね…一応相談してみます」 (※無理でした)

松田「普通にマジックするだけなら疲れないけど、神はやっぱり違いますからねぇ。しかも挑戦者って、特別緊張するんですよ。何度経験しても慣れません」

--「そういえば松田さん、挑戦者として戦うのは3度目でしたね」

3つのフォーマットでの挑戦者

--「最初に挑戦したときは、スタンダードでしたよね」

松田「そうです。いやぁ、あのときは緊張しましたよ。あんな静かなところでマジックすることってそんなないですし」

--「独特の雰囲気がありますよね」

松田「空気に呑まれてしまって………だから2度目の挑戦、モダンのときは、緊張しないようにしました。まあ結局めちゃくちゃ緊張したんですけどね(笑)

--「それにしても、3つのフォーマットでの挑戦者になるって、すごいことですよね。いろいろなフォーマットで成果を上げるコツはなんですか?」

松田「コツ……というほどではないんですけど、僕はメタデッキに対してのアンチカードやアンチデッキを探すのが好きなんです。多くのデッキに突き刺さるカードを探して、それを主軸にデッキを組むんですよ。だからメタデッキがはっきりとしている環境が得意なんですよね。スタンとか、環境初期は僕本当に勝てないんですよ」

--「これまでの挑戦者決定戦などでもそういったデッキ選択をされたのですか?」

松田「僕がスタン神挑戦者決定戦で優勝したときはシディシウィップだったんですけど、《エレボスの鞭》がとにかくアブザンに強かったんです。で、第6期モダン神挑戦者決定戦では『ゲートウォッチの誓い』後のモダン……つまりエルドラージ全盛期で、親和を使いました」

--「なるほど、納得です。でもそれで言うと、今回優勝した第9期フロンティア神挑戦者決定戦は苦手なフィールドだったのではないでしょうか?」

松田「それがそうでもないんです。今回は《漂う死、シルムガル》が強いと確信していました。環境で使用されている除去には呪禁を対処できるものはなく、またフロンティアのメタデッキの一つであるアタルカレッドへの強烈なアンチカードなのです。そして《時を越えた探索》が使える青いデッキはフロンティアでは頭一つ抜けています。だから、青黒を今回選択したんですよ」

--「未開拓の『フロンティア』でもしっかりと環境を見極めた結果だった、というわけですね」

最も好きなフォーマット

--「ところで、松田さんの好きなフォーマットはなんでしょうか? 大体のプレイヤーは得意なフォーマットが好きなフォーマットになると思いますが、松田さんの場合は得意なフォーマットが複数ありますから」

松田EDH(Elder Dragon Highlander) ですね」

--「統率者戦ですか。好きな方、本当にたくさんいらっしゃいますよね! 週に何回ぐらいプレイされるんですか?」

松田「えぇ~と、そうですね。0回ですね

--「え! 最後にプレイされたのはいつですか?」

松田4年前です!」

--「ちょっと! 本当に好きなんですか?」

松田「いやそりゃあもう好きですよ、本当に。確かにデッキは70枚ぐらいしかないしパーツはスタンやらモダンやらに取られてるけど好きなんですよ。昔本を出していたぐらいですからね」

--「中野のコミュニティですよね。その本、僕も読んだことがあります」

松田「ありがとうございます。そうそう、この僕が着ているシャツ、中野のコミュニティで作ったシャツなんですよ!」

--「あ、言われてみれば」

松田「そんなわけでEDHが一番好きです」

--「わかりました。ところで今週末、晴れる屋で『King of Commander』という大会が開かれるんですけども(※開催日は8/26(土)でした)、参加されませんか? 参加者が星を奪い合うスリリングな統率者戦の大会です」

松田「え! そんな楽しそうなイベントがあるんですか! 絶対に行きますよ! 今からデッキ組まなくちゃなぁ。何がいいかなぁ。《永遠衆、ネヘブ》使いたいなぁ。《永遠衆、ネヘブ》で出したマナで《地震》打ちたいんですよねぇ」

--「本当にEDH、お好きなんですね」

フロンティア神、松本 友樹への挑戦

--「『神決定戦』で欠かすことのできない要素といえば対戦相手。今回挑むフロンティア神、松本さんについてどんな印象ですか?」

松田「そうですね。やっぱり地のマジック力がすごいですよね。強いデッキを使えば当然のように勝つ人、という印象です。やっぱりプロはすごいですよ」

--「その上、松本さんは独創的なデッキも作りますよね」

松田「そのせいで本当に読みづらいんですよね。ただでさえフロンティアって色んなデッキがあるのに、その上松本さんともなると、どんなデッキが飛び出してくるかわかりません。まあそれがワクワクしますよね」

--「松本さんのデッキは全く読めそうにありませんか?」

松田「そうですね。正直、見当もつきません。データもありませんからね。フロンティア神決定戦は『霊気紛争』の前で、あれから《致命的な一押し》《守護フェリダー》で環境は全く変わりましたからね。そういう意味でも、どんなデッキなのか、という緊張もありますね」

--「神挑戦者決定戦という舞台は松田さんの方が多く経験していると思いますから、その点についてはアドバンテージではないですか?」

松田「いや、挑戦者の方が緊張しますよ。何せ挑戦者って、負けたら何もないんですよ? 神はほら、負けてもとりあえずもらえるじゃないですか、現金(笑)」

--「突然お金の話に(笑)」

松田「すいません、いやらしい話でね。でもとりあえずお金もらえる神と違って挑戦者は負けたら何もないわけですから、絶対負けられないって気持ちが強くなっちゃうんですよ。悪い意味でハングリー精神が出てしまうんです。それでデッキ選択をミスしてしまうことすらあるんですから」

--「読みすぎた結果デッキ選択を誤る、というのはこれまでの『神決定戦』の歴史で何度もありましたよね」

神決定戦の歴史

松田「歴史と言えば、この今回の『第9期神決定戦』、すごいんですよ」

--「と言いますと?」

松田「今回僕が挑戦する松本さんは、シルバーレベルプロじゃないですか。僕が前に挑戦した市川さんもプロプレイヤーで、連続してプロに挑むというところが共通しています」

--「確かにそうですね。レベルプロで神だった方ってあまり多くないんですよね。高橋 優太さんと市川さん、現神だと和田 寛也さんと、そして今回相対する松本さんの4人のみですから」

松田「で、さらに今回僕がモダン神として迎え撃つ人がなんと、僕が負けた当時のスタンダード神、瀬尾 健太さんなんですよ」

--「それはすごい偶然ですね。違うフォーマットで、立場が逆転して、一度敗れた瀬尾さんと戦うなんて」

松田「ええ。なんだか僕が関わった『神決定戦』の集大成という気がして。今回はストーリー性というか歴史を感じてしまうんです」

--「『レベルプロの神への挑戦』に『因縁の対決』と、ダブルヘッダー以外にも見どころたっぷり、というわけですね」

松田「そうですね。そしてやっぱり……勝ちたいです。モダン神として『神決定戦』で勝ち続けたからこそ、瀬尾さんとこういう形で戦えるし、松本さんに勝ってフロンティア神になれば、また新しいストーリーが生まれると思うんです」

--「期待しています。本日はありがとうございました。『フロンティア神』挑戦、そして『モダン神』防衛、どちらも頑張ってください!」

松田「頑張りますよ!」


 人に歴史あり。まさにこの言葉を体現する、松田の今回の『神決定戦』。

 レベルプロの市川ユウキを倒し、そこから守り続けてきた神の座を脅かすのが、かつて挑戦者として戦い、一度は敗れた瀬尾 健太。そして3度目の神への挑戦で戦うは、シルバーレベルプロの松本 友樹。

 これを『神決定戦』の集大成と言わずして、なんと言うのだろうか。

 新たな『神決定戦』の歴史を創るため、松田 幸雄は戦いに挑む。

 神として、挑戦者として。

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