Translated by Atsushi Ito
(掲載日 2017/09/26)
『イクサラン』は新しいデッキを作ってみたい人にとっての楽園だ、何せうまく使ってやりたいと思わせるカードがいくつもあるからな。
たとえば、いずれも奇妙な両面のエンチャントたちもそうだ。
とはいえ環境初期で言うなら、どれくらい守備的なデッキをプレイできるかを後に知るためにも、より直線的な戦略のデッキを作るのを優先させるべきだと思うし、それこそ俺がやったことでもある。
本題に入る前に、これから話すデッキはどちらもHareruya Hopesのルイス・サミュエル・デルトゥールと一緒に作ったものだということだけは伝えておきたい。次のプロツアーでは、彼と一緒に調整するつもりだ。
デッキ1: 赤黒海賊
直線的なデッキを組みたいと考えるなら、このセットで一番わかりやすい部分はテーマの一つにもなっている部族シナジーだろう。
俺の場合、とりわけ「海賊」に興味がある。というのも、かなり軽いマナカーブの不格好な「海賊」デッキがいくつも試されている状態だからだ。
「海賊」は青黒赤の3色に散らばっているので (「マーフォーク」や「吸血鬼」が2色でまとまっているのと対照的だ)、選択肢はいくらでもある。どの2色で組んでもいいし、なんなら3色全部 (グリクシス) で組んだって構わないのだ!
とはいえ、『戦乱のゼンディカー』ブロックと『イニストラードを覆う影』ブロックがローテーション落ちしたことで、2色のマナが出せる土地の種類は減ってしまった。ここ数年で俺はマナカーブ通りに毎ターン呪文をプレイできることが幸せだと感じるようになってしまったので、ひとまずは2色に絞って始めることをお勧めしておこう。
「海賊」に関してはとある一枚の、既にこのフォーマットで実力を証明済みの重要なカードを混ぜ込むために、まず赤黒で組んでみるべきだと俺の直感が告げた。「実力を証明済みの重要なカード」だって?そうさ。ほら、スタンダードで使える「海賊」はほとんどが『イクサラン』出身だが、『カラデシュ』の時点で既に有名になっていたやつもいたんだぜ。もちろん《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》のことさ。
また、赤黒というカラーリングは最も強力な除去スペルたちを使用できる。《致命的な一押し》、《削剥》、それからどれくらいアグロなデッキを組みたいかにもよるが、《稲妻の一撃》、そして《木端+微塵》と揃っている。
さらに俺の場合は、より多くのライフを削れるようにするために、欲張って《無許可の分解》までも突っ込んでみた。
8 《山》 6 《沼》 4 《泥濘の峡谷》 4 《竜髑髏の山頂》 2 《燃え殻の痩せ地》 -土地 (24)- 4 《深海艦隊の船長》 4 《凶兆艦隊の船長》 4 《金属ミミック》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《遺跡の略奪者》 2 《風雲船長ラネリー》 2 《荒くれ船員》 -クリーチャー (23)- |
2 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《木端+微塵》 3 《不吉な旗艦》 -呪文 (13)- |
4 《帆凧の掠め盗り》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《致命的な一押し》 2 《焦熱の連続砲撃》 2 《カーリ・ゼヴの巧技》 -サイドボード (15)- |
これだけ軽いと土地24枚は少し多めに感じるかもしれないが、《深海艦隊の船長》や《遺跡の略奪者》、《木端+微塵》などマナの使い道はいくらでもある。最悪、《泥濘の峡谷》をサイクリングしてしまえばいいしな!《燃え殻の痩せ地》の採用はちょっとばかり確率分布の安全側に寄せすぎているかもしれないので、十分事故らないと思うなら《イフニルの死界》や《ラムナプの遺跡》に入れ替えてもいいだろう。
その他の部分については自明だろう。アグレッシブな赤黒のデッキで健全にアドバンテージもとれるし、強力な除去もひととおり揃っている (《風雲船長ラネリー》がいれば《無許可の分解》はほとんど追加で3点当てられるし、《致命的な一押し》の「紛争」も容易だ)。
もし相手がこちらのシナジーを断ち切ろうとしてくるなら、今では有効性が証明されているサイドボードプランである《反逆の先導者、チャンドラ》と《栄光をもたらすもの》が役立つだろう。
《熱烈の神ハゾレト》をデッキに入れないのは間違っているかもしれない、なんといってもこのカードは非常に強力だからだ。だがその場合はそれ用にデッキを適応させる必要が出てくる。おそらく1マナ域をもっと増やして (《ボーマットの急使》は依然として強力だ、それも《スレイベンの検査官》がいなくなった今の世界では以前よりも間違いなくね) 、《遺跡の略奪者》とは別れを告げることになる。そこまでするほどではないと思っていたのだが、正直自信はない。
サイドボードの残りについては、《カーリ・ゼヴの巧技》はまず間違いなく「恐竜」戦略に対して役立つことだろう。《帆凧の掠め盗り》は《強迫》を押しのけて採用するに値するだろう、わかりやすい「海賊」シナジーもあるしな。ただ少し散らした方が良いかもしれない。
《致命的な一押し》と《焦熱の連続砲撃》は旧環境から健在の赤単 (ローテーションで失ったのは実質《ファルケンラスの過食者》くらいで、《稲妻の一撃》のような新戦力をいくつか獲得しているくらいだからな) との対戦で活躍する。対赤単に限れば相性が良いだろう、なぜならこちらは速度を調整してよりディフェンシブに振る舞うのに長けており、それこそが相性を向上する要因になるからだ……ただしさっきも話題に出した《熱烈の神ハゾレト》を、相手が引かなければの話だが。
こうした守備的な戦略をとるべきかどうかという点についての最大の懸念がそれで、というのも基本的に、俺が作るアグロデッキはどれも《熱烈の神ハゾレト》を使っていないせいで負けてしまうように思えるからだ。とはいえ、これについては今は触れないでおこう。
デッキ2: 白黒”とにかく”ライフゲイン
俺は新環境のデッキを作るとき、新しいシナジーについて限界まで尖らせるようにしてから、そのあとで段々と丸くしていく手法をとる。コンセプトを押し出した方が、その戦略の強さも弱さも見えてきやすくなるのだ。多くの試作品たちはゴミ箱行きとなってしまうだろうが、たった一つの偉大なデッキを生み出すためには最良の方法なのだ!
さて同時に、俺は昨シーズンにはあまり活躍しなかったけれども成功するには十分なポテンシャルがあると思われるカードたちも見ていった。そんなわけでたどり着いたのが……《冠毛の陽馬》ってわけだ!
もちろんこのカードについては以前から何度も試し続けてはいた。というのも、このカードなら赤単キラーのデッキを構成できるように思われたからだ。ところが主な問題は、《冠毛の陽馬》を引かないときには《領事の権限》のようにただ何もしないライフゲイン専用カードたちが手元に残るだけという点にある。
また、《冠毛の陽馬》をプレイしたターンに即座に能力を誘発させたいのは山々なんだが、そうなると絆魂持ちのクリーチャーと組み合わせる必要があるよな。そこで幸運なことに、『イクサラン』で何枚か実用的な絆魂持ちクリーチャーが加入してくれたんだ (まあ厳密にはクリーチャーではないんだが、幸運なことに変わりはない) 。《軍団の上陸》と《饗宴への召集》さ。
これさえあれば《冠毛の陽馬》を安定して誘発させるために他に何もする必要はないし、1ターン目《軍団の上陸》→2マナクリーチャー→3マナクリーチャーという展開なら4ターン目に《冠毛の陽馬》+5/5馬トークンという展開も可能となる。《軍団の上陸》を変身させれば疑似的な《不屈の自然》のようにも使いまわせるからだ。
《発明の天使》は5~6枚目の《冠毛の陽馬》に相当する。どちらにせよ戦場にたくさんのクリーチャーを並べるのだし、巨大な絆魂持ちクリーチャーたちの群れを打ち倒すのはどんな相手でも困難だろう。もちろんそれに加え、これ自体も《冠毛の陽馬》を誘発させることができるしな。
8 《平地》 5 《沼》 4 《秘密の中庭》 4 《シェフェトの砂丘》 4 《イフニルの死界》 -土地 (25)- 4 《栄光半ばの修練者》 4 《才気ある霊基体》 2 《屑鉄場のたかり屋》 4 《空中対応員》 2 《薄暮の使徒、マーブレン・フェイン》 4 《冠毛の陽馬》 2 《発明の天使》 1 《マガーンの鏖殺者、ヴォーナ》 -クリーチャー (23)- |
4 《致命的な一押し》 4 《饗宴への召集》 4 《軍団の上陸》 -呪文 (12)- |
一見奇妙なことに、このデッキはアグロデッキとして機能する。ライフゲインデッキなのに?とおかしな風に思うかもしれないが、そのおかげで対戦相手が何を目論んでいようがある程度は無視することができるし、シンプルに押し切れないときもダメージレースを挑めば問題ない。
土地の枚数はこちらのデッキもかなり多いが、できるだけ早く5マナに到達したいのと、《シェフェトの砂丘》が《一番砦、アダント》と同様にマナフラッドを緩和してくれる。
それじゃあこのデッキは無敵かって?もちろんそんなはずはないが、ともあれ「《冠毛の陽馬》を引かないときには~」という問題の解決に向けて価値ある前進になったと思っているし、メタゲームの進展によってはこのデッキが本当に狙い目になるかもしれない。
単純に考えれば、フィールドの半数が赤単でもう半分がそれ用に単体除去をちょっとばかし多めに入れているだけという状況なら、馬と吸血鬼の組み合わせは、あまり見ないにせよひとたびタッグを組めば
世界選手権を目前に控え、『イクサラン』後のスタンダード環境の姿はもうすぐ明らかになるはずだ。今回に限り、プロツアーが新セット発売後に最初に開かれる公式の大型大会ではないわけだが、そのプロツアーもたった数週間後には開催される。
来週以降、マジックコミュニティが『イクサラン』のカードを使った画期的な挑戦を見せてくれることに期待したいし、俺の調整用テーブルの上に転がるここまでのたくさんの試作品たちを見る限り、これらのイベントが終わった後にも革新の余地はきっとまだまだ残されていることだろうと確信している。なぁ、すごい話じゃないか!
ところで、《選定された行進》が宝物・トークンの数も倍にするって知ってたか?まあ、言ってみただけだがね……
じゃあ、またな。
Pierre.
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