By Kazuki Watanabe
世界選手権2017に出場できるのは、昨シーズンに輝かしい成績を収めた者のみ。振り返ってみれば、昨シーズンは南米地域のプレイヤーが活躍した一年であった。
昨シーズンの南米プレイヤーの活躍は目覚ましく、2人のプロツアーチャンプを輩出した。プロツアー『霊気紛争』のルーカス・エスペル・ベルサウドと、プロツアー『破滅の刻』のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサである。
”世界最強”と言っても過言ではない南米。その強さの秘密はいったいどこにあるのだろう？
今回はHareruya Latinの一員であるルーカス・エスペル・ベルサウドに話を伺ってみた。
この世界選手権2017に、Hareruya Latinからはルーカス、セバスティアン・ポッツォ、そしてマルシオ・カルバリョが出場を果たしている。世界最強の南米が生んだHareruya Latin。その強さの秘密を、直接彼に伺ってみよう！
プロツアー王者が語る、「なぜ南米は強いのか」
――「お会いできて光栄です。早速ですが、南米のマジック・コミュニティがなぜ強いのか、教えていただけますか？」
ルーカス「こちらこそ。強さの秘密は、南米のコミュニティが非常にフレンドリーであること、特にベテランプレイヤーと初心者の仲が良いことが特徴だと思います。私もどちらかと言えばベテランの側だと思いますが、カジュアルにマジックを楽しむ友人も居れば、一緒にプロツアーに参加する競技志向の友人も居ます。1000人のグランプリが開催されたとすれば、800人以上は友達ですね」
――「マジックプレイヤー全員が友達といっても良いですね」
ルーカス「ええ、ただ仲が良いだけでなく、大会の前は意見交換や練習を活発に行いますし、誰かが『初めてのプロツアーに出るんだ』という話になったら、協力を惜しむ人はいません。Hareruya Latinの一人であるカルロス・ロマオはまさにベテランプレイヤーの代表格ですが、初心者が来れば『一緒にやろう！』と声を掛けて、すぐに仲間になります。ただ、これは彼だけの特徴ではなく、コミュニティの特徴でしょうね」
――「なるほど。その絆の強さが、コミュニティ全体のマジックの強さでもあるわけですね」
ルーカス「そうですね。所属している一人として、非常に誇らしく、強力なコミュニティだと思います」
2人のプロツアー王者を排出した地、南米
――「その強力なコミュニティの活躍こそが、昨シーズンを象徴していると思います。あなたとパウロのプロツアー優勝は、その一つの成果ですよね」
ルーカス「パウロはプレイヤー・オブ・ザ・イヤーも獲得しましたからね。たしかに、昨シーズンの飛躍は目覚ましかったと思います」
――「その飛躍の要因は何だったのでしょうか？」
ルーカス「仲の良さは昔から変わっていません。飛躍に繋がる特別な出来事があった、というよりは、育ててきたものが実を結んだと言うべきでしょう。私もコミュニティの中で育った一人ですから、それがよく分かります。世界で戦うトッププロが、自身の経験をコミュニティで共有し、また別の誰かが活躍する。そしてそれが共有され……というサイクルを繰り返してきたことが、ここにきて結果に繋がったのだと思います。私の優勝は、その一部に過ぎません」
――「なるほど。実を結んだ、という表現がぴったりですね」
ルーカス「これまでも実力が十分なプレイヤーは多かったと思いますが、明確な結果が残せていませんでした。プロツアーチャンピオンの輩出によって、目に見えた結果を残せたわけです。世界で戦えるプレイヤーは一部でしたが、数々の経験が共有されることで徐々にコミュニティの強さが増してきたように思いますね。その一つがHareruya Latinです。プロツアー優勝、プロツアー準優勝、ヨーロッパ最多プロポイント、スタンダードマスターなど、豪華なメンバーが集結したわけですから」
――「改めて見ると、豪華なメンバーですね。その中の一人、マルシオ・カルバリョとはプロツアー『霊気紛争』の決勝で対戦していますよね」
ルーカス「ええ、あの日の出来事は間違いなく一生の宝物です。忘れられるはずがありません。何よりも、対戦相手であったマルシオが、一番最初に私を祝福してくれました。彼に祝福された瞬間の感動は、トロフィーを掲げたとき以上のものでした」
――「そのシーンは、現地で見ていた私も覚えています。昨シーズンを代表する感動的な場面でした」
ルーカス「彼のみならず、今回世界選手権2017に出場しているセバスティアン・ポッツォも含め、この仲間たちと戦えることは私の誇りです。今シーズンは、ぜひチームシリーズの決勝に進出できるようにしたいですね」
プロツアー王者の、次なる目標
――「では、個人としての今シーズンの目標について教えていただけますか？」
ルーカス「まずはゴールド・レベルです。簡単に、『今回もプラチナに』とは言えないんですよ。そのためには、もっと実力を磨かなければなりません。なので、まずはゴールド・レベルを確定させて、そこからさらに飛躍を狙う、と考えるべきでしょうね」
――「なるほど。堅実に、結果を残していく、と」
ルーカス「そうですね。ただ、今シーズンはHareruya Latinとして、尊敬する仲間たちと一緒に戦うことができます。これまで以上に、力を合わせることができるでしょう。そして、地元を始め、世界にいる友人たちと共に、マジックを楽しみながら、さらに上を目指したいと思います」
コミュニティの中で強くなり、コミュニティに誇りを持つルーカス。彼のようなプレイヤーが初心者を育てていくのならば、さらに南米は強くなるだろう。そして、彼も活躍を続けるに違いない。世界にいる友人たちが、彼を支えているのだ。
そして、光栄なことに私もその内の一人になれたようだ。席を立つルーカスに「このあとも頑張ってください」と伝えると、彼は日本語で返答してくれたのである。
ルーカス「ありがとう、かずきさん！」
遠く離れた日本の地から、プロツアー王者のさらなる活躍に期待しよう。
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