決勝戦:伊藤 諒(エスパーコントロール)vs山村 裕馬(スゥルタイミッドレンジ)
晴れる屋メディアチーム
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By Ken’ichiro Omori
大阪より遠く離れたクリーブランドの地では現在、第1回目となるミシックチャンピオンシップが行われている。今まさにスタンダードの世界一が決まろうとしているのだ。そんな中、ここ大阪では関西のスタンダードNo.1である「帝王」を決める戦いが行われている。
参加者86名、満員御礼となった『第5期関西帝王戦スタンダード』も、ここまで世界最高峰の大会に負けず劣らず、熱い戦いが繰り広げられてきた。そして今、「帝王」の座を賭けて戦う権利を有するのは2名のみとなった。
両者とも今回と同じくラヴニカの献身参入後のスタンダードで行われた『ラヴニカウィークエンド』で優勝経験を持つ、まさに現在の関西スタンダード界の強豪と言えるだろう。ラヴニカらしく、ギルドランドの恩恵を受けた3色デッキ同士の対決。果たして「帝王」の座に就くのはどちらか。
先手の伊藤は、《湿った墓》タップインでスタートすると2ターン目に《孤立した礼拝堂》から《アズカンタの探索》。対する山村は、《草むした墓》をアンタップインして《ラノワールのエルフ》から口火を切ると、2ターン目には《ラノワールのエルフ》で攻撃後に《内陸の湾港》を置き、《成長室の守護者》。両者とも自身の3色を揃えながらの順調な立ち上がり。
伊藤は3ターン目《アズカンタの探索》で見えた2枚目の《アズカンタの探索》を墓地へ送ると、「順応」能力を使われないよう、自身のメインフェイズに《成長室の守護者》を《屈辱》で破壊する。
《ラノワールのエルフ》でアタックして《繁殖池》をタップインするのみで3ターン目を終えた山村に対し、伊藤は2点のライフを支払い《神聖なる泉》をアンタップインすると《思考消去》。公開されたのは《殺戮の暴君》《ビビアン・リード》《人質取り》《水没した地下墓地》×2。
伊藤は対処法の限られる呪禁クリーチャーとプレインズウォーカーを比べ少考するが、ここは《殺戮の暴君》を墓地へ送る。さらに《ラノワールのエルフ》も《渇望の時》で墓地送りへ。山村はエスパーコントロール相手にはその能力を活かしきれないと踏んでか、能力の対象がいない《人質取り》をアタッカーとして戦場へ送り出す。
伊藤は《アズカンタの探索》を、その能力で見えた《ケイヤの怒り》を墓地へ送り《水没遺跡、アズカンタ》へと変身させると、このターンも《神聖なる泉》をアンタップインしてターンを返す。カウンター呪文の気配も漂うこの場面、しかし山村は少考するもフルタップで《ビビアン・リード》を送り出す。
伊藤からはカウンターはなし。だが、《ビビアン・リード》は+1能力の起動に対応して《ヴラスカの侮辱》で退場となる。この起動で《成長室の守護者》を手札へ加えた山村は、《人質取り》で攻撃しターンを終える。
まだ盤面に余裕のあると見た伊藤は、自身のメインフェイズで《予知覚》を唱え、手札を充実させにかかる。この《予知覚》、さらには既に戦場にある《水没遺跡、アズカンタ》でアドバンテージ面では伊藤優勢。こうなると山村が目指すのはいち早い決着だ。まずは《ハダーナの登臨》をプレイすると《人質取り》を強化して攻撃。さらに《翡翠光のレインジャー》を追加し、探検能力で2枚の土地を手札へ加える。
《氷河の城砦》を置くのみでターンを終えた伊藤に対し山村は攻撃を継続。これで《人質取り》に置かれた+1/+1カウンターは2つとなり、次のターンには《ハダーナの登臨》を《オラーズカの翼神殿》へと変身させる準備が整う。
伊藤は山村のターン終了時に《水没遺跡、アズカンタ》で《ケイヤの怒り》を手に入れると、さらに《薬術師の眼識》と続ける。そして自身のターンでその《ケイヤの怒り》を唱えた後にはついに、《ドミナリアの英雄、テフェリー》までもが姿を現す!
圧倒的なアドバンテージ差をつけにかかる伊藤。それでも山村は次なる攻め手として《成長室の守護者》を召喚。戦闘フェイズへ入ると、攻撃こそできないものの《ハダーナの登臨》で+1/+1カウンターが置かれたことによりさらなる《成長室の守護者》が呼び出される。
伊藤はメインフェイズで《水没遺跡、アズカンタ》を起動し《渇望の時》を手に入れると、続けて《思考消去》。山村の手札に残された最後の呪文である《ハイドロイド混成体》を叩き落とす!これには辛そうな表情を見せる山村。だが、まだ攻撃の手が止まった訳ではない。
《ハダーナの登臨》が《成長室の守護者》を強化し、さらなる《成長室の守護者》を導くと、伊藤本体へ攻撃をしかける。この攻撃でライフが3にまで落ち込んでしまった伊藤。しかし《屈辱》と《ドミナリアの英雄、テフェリー》の-3能力により戦場のクリーチャーを一掃、さらに山村が後続として唱えた《成長室の守護者》も《吸収》でカウンター。次々と山村の攻め手を断ち切っていく。だがついに、山村の戦場に《殺戮の暴君》が降臨してしまう。
現状、対処のできない伊藤はひとまず《水没遺跡、アズカンタ》の能力を起動。《ウルザの後継、カーン》が手札へ。さらに自身のターンを迎えドロー、《ドミナリアの英雄、テフェリー》でドローを重ねるが回答には辿り着かず。伊藤は《ウルザの後継、カーン》プレイし-2能力でトークンを生成、さらに2枚目の《ウルザの後継、カーン》をプレイして2体のトークンをブロッカーとして用意する。
伊藤のライフは6。2/2のクリーチャー2体を前にしてはこのターン《ハダーナの登臨》で9/8・トランプルとなる《殺戮の暴君》の攻撃でもこのライフを削りきることはできないが、山村のこのターンのドローは《人質取り》!これで伊藤のコントロールするトークンの片方を追放してしまえば、伊藤が残ったトークンでブロックしたとしても伊藤はライフを守り切ることはできない。しかしこの算段は伊藤の《吸収》に阻まれる。逆に伊藤のライフを増やす形となってしまった山村だが、《殺戮の暴君》は未だ健在、予定通り《ハダーナの登臨》で強化し攻撃へ繰り出そうとするのだが、ここで山村の手が止まる。
果たして狙うべきは伊藤本体か、《ドミナリアの英雄、テフェリー》か。このターンに伊藤のライフを削りきることは不可能。ならば伊藤が《殺戮の暴君》への回答に辿り着くことを阻止するために、ドローソースである《ドミナリアの英雄、テフェリー》を倒しておくのも一つの選択肢だ。順調にいけば次のターンには、《ハダーナの登臨》は《オラーズカの翼神殿》へと変身し、《殺戮の暴君》は伊藤のライフを優に上回る一撃を繰り出すことも可能となる。
悩んだ末、《ドミナリアの英雄、テフェリー》へと攻撃することを決めた山村。全力のブロックでも守りきれないため伊藤はこれをスルー、《ドミナリアの英雄、テフェリー》は墓地へと送られる。だが次のターン、伊藤がプレイしたのは2枚目の《ドミナリアの英雄、テフェリー》。-3能力により《ハダーナの登臨》が戦場から排除され、さらに《ウルザの後継、カーン》の-2能力でトークン生成。これで3/3トークン3体となった伊藤の布陣、ついに《殺戮の暴君》を迎え撃つ戦力が整った。
1ターン前の攻撃が裏目となった格好の山村、ここで《殺戮の暴君》を失うわけにもいかないため攻撃には行かずに《成長室の守護者》を戦場に追加してターンを終える。だが、攻撃を止めてしまえばここからは伊藤の独壇場。《ドミナリアの英雄、テフェリー》が、《ウルザの後継、カーン》が次々に伊藤にカードをもたらし、《水没遺跡、アズカンタ》の起動で、ついに《ケイヤの怒り》に辿り着く!
伊藤がトークンで攻撃の後これを唱えると、一転して圧倒的不利となってしまった戦場を前に、山村は投了するほかなかった。
山村 0-1 伊藤
先手となった山村だが、1ターン目は《内陸の湾港》をタップイン。《ラノワールのエルフ》は2ターン目の登場となるが、3ターン目には《正気泥棒》で、しっかりと伊藤へプレッシャーをかけてゆく。対する伊藤は、2ターン目に《アズカンタの探索》を設置する立ち上がり。
4ターン目の山村は、ひとまず《正気泥棒》で攻撃。これが通り伊藤のライブラリーから1枚が山村の下へ、《孤立した礼拝堂》と《渇望の時》が墓地へ送られる。戦力の追加はせず、マナを立たせてターンを返す。伊藤は、アップキープに《アズカンタの探索》で見えた《ケイヤの怒り》を墓地へ置く。
特に悩む素振りもなく《ケイヤの怒り》を墓地へ送ったことは少し意外だったが、その理由はすぐに明らかとなった。そう、伊藤は4枚目の土地を持っていないのだ。仕方なくとった様子で、山村の《正気泥棒》に対するブロッカーとして、伊藤も《正気泥棒》をプレイしてターンを返す。だがこれは無情にも、山村の《正気泥棒》に奪われていた伊藤自身の《喪心》により倒される。
山村は攻撃を継続し、《正気泥棒》の能力でさらに伊藤のライブラリーからカードを奪う。これにより伊藤の墓地の枚数は7枚となり、《アズカンタの探索》が《水没遺跡、アズカンタ》へと変身する条件が整う。マナ不足さえ解消してしまえば活路が見いだせそうな伊藤だったが、山村が戦闘後にプレイしたのは《ゴルガリの女王、ヴラスカ》。伊藤の希望たる《アズカンタの探索》は-3能力により破壊されてしまう。
まだ土地を引けない伊藤。《漂流自我》で山村の《殺戮の暴君》を抜き去るが、これにより山村の手に《否認》があることが明らかになる。 伊藤が勝利するためには越えなければいけない障害があまりにも多い。《漂流自我》解決の際に見えた山村のライブラリーをしっかりと確認した後伊藤は投了となった。
山村 1-1 伊藤
お互い土地を置くだけの立ち上がり。最初のアクションは伊藤の3ターン目の《思考消去》となった。公開された山村の手札は、《森》《繁殖池》《翡翠光のレインジャー》《ヴラスカの侮辱》《殺戮の暴君》《ハイドロイド混成体》×2と少し重いながらも強力なもの。
伊藤は少し悩むが、山村の次のターンの行動を封じるため《翡翠光のレインジャー》を墓地へ。「諜報」で見えた《薬術師の眼識》も自身の墓地へ送る。3ターン目の行動を奪われた山村だったが、このターンドローしたのは《ハダーナの登臨》。クリーチャーでこそないものの、後の布石としてこれを設置しておく。4ターン目を迎えた伊藤は《漂流自我》。手札に2枚あることが明らかとなっている《ハイドロイド混成体》を指定する。
《思考消去》、《漂流自我》により手札からクリーチャーを抜き取られてしまった山村は、4ターン目もノーアクションでターンを返すほかない。そして残った脅威をも抜き去ろうと、5ターン目の伊藤はさらなる《漂流自我》を唱える!だが、山村はこれを前ターン《漂流自我》のドローで手に入れていた《否認》でカウンター。手札に残された最後のクリーチャーである《殺戮の暴君》は守り通す。
そして今度は《強迫》で山村が伊藤の手を覗く。《薬術師の眼識》が墓地へ送られると、伊藤の手札は《渇望の時》《正気泥棒》の2枚となる。そして伊藤がドローした《孤立した礼拝堂》を置いてターンを返すと、ついにこのゲーム最初のクリーチャーとなる《殺戮の暴君》が山村の場に現れる!
《ハダーナの登臨》により8/7となった《殺戮の暴君》を前に、《渇望の時》を捨て《薬術師の眼識》を「再活」する伊藤、だが《殺戮の暴君》を倒すカードは無く、土地を置き《正気泥棒》をプレイするのみ。山村は《ハダーナの登臨》で再度《殺戮の暴君》を強化して攻撃。9点という重い一撃が伊藤に加えられ、ギルドランドをアンタップするために払った2点のライフ損失と併せて伊藤のライフは9となる。
伊藤は暴君への対処手段を求めて2枚目の《薬術師の眼識》も「再活」する。山村はこれに対応して、《ヴラスカの侮辱》を《正気泥棒》へ。伊藤は最後の望みを、《ドミナリアの英雄、テフェリー》へと託す。
次のターンには《ハダーナの登臨》が《オラーズカの翼神殿》へと変身し、《殺戮の暴君》は20/19・呪禁・飛行・トランプルという、とてつもない怪物へと変貌する。生半可な方法ではこの攻撃を凌ぎ切ることはできない。
《ドミナリアの英雄、テフェリー》の+1能力を使いドロー……。そして、少し考えた後に手札を明らかにする伊藤。その手札は《吸収》、《屈辱》、《渇望の時》。そのどれもが、《殺戮の暴君》を打ち倒すことはできなかった。
山村 2-1 伊藤
『第5期関西帝王戦スタンダード』、優勝は山村 裕馬!おめでとう!