インタビュー: 津村 健志 -世界チャンピオンが賞賛する青黒海賊-

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 11ラウンド、2ndドラフト最終戦。会場内を歩き回りながらTwitterを見ていると、こんなつぶやきを見つけた。

 初日を5-3という成績で終えた津村 健志だ。

 世界チャンピオン、ウィリアム・ジェンセンに褒められるほどのデッキとは、一体どのようなデッキなのだろう?

 対戦を終えた津村に声を掛けると、

津村「デッキはかなり良かったので、3-0したかったんですけどね……」

 と反省の言葉を漏らしながらも、笑顔でインタビューを快諾してくれた。早速、話を伺ってみよう。

■ 津村「使っていて楽しかった」

――「惜しくも全勝とはならなかったようですが、かなり良いデッキだったみたいですね」

津村「そうですね。使っていて楽しかったです。本当に強くて、最終戦はあっという間に勝ててしまうくらいでしたから」

――「なるほど。たしかにまだ席を立っているプレイヤーは少ないですね。ではリストを拝見します」


津村 健志「青黒海賊」
プロツアー『イクサラン』 2ndドラフト(2-1)

10 《沼》
7 《島》

-土地 (17)-

2 《帆凧の掠め盗り》
2 《難破船あさり》
1 《凶兆艦隊の貯め込み屋》
1 《指名手配の獄道者》
1 《深海艦隊の船長》
1 《無情な無頼漢》
1 《巧射艦隊の拷問者》
2 《深海艦隊の殺し屋》
1 《凶兆艦隊の侵入者》
1 《大気の精霊》
1 《巧射艦隊の略取者》

-クリーチャー (14)-
1 《潜水》
1 《卑怯な行為》
1 《見張りによる消散》
1 《板歩きの刑》
1 《欲望の深み》
2 《風と共に》
1 《吸血鬼の印》
1 《海賊のカットラス》

-呪文 (9)-
hareruya


――「これはたしかに強そう……理想的な青黒海賊、という感じがします。初手は何をピックしたのですか?」

鉄面提督ベケット

津村「まずは《鉄面提督ベケット》でした。3色のカードですが非常に強力な1枚なので。パックの中に白が4枚あったので、下家は白を使うだろうな、と読んだのですが、これは正解だったみたいです。白を基軸にした吸血鬼を使っていたので」

――「なるほど。流れてくる色はどうでしたか?」

津村「右隣がHareruya Latinのカルロス・ロマオだったのですが、彼は緑を中心にピックしていたようですね。青と黒がしっかりと流れてきたので、上手く住み分けできている、という印象でした。ただ、卓全体のカードが強かったんですよ。2戦目で負けてしまった赤緑恐竜は、《オテペクの猟匠》が2枚、《大物群れの操り手》も入っていましたから」

オテペクの猟匠大物群れの操り手

――「な、なんと……それも強力な仕上がりですね」

津村「強かったです。ただ、こちらのデッキも完成度では負けていなかったと思います。プレイングがしっかりしていたら勝てていたと思うので、悔しいですね」

――「もう少しデッキの話を伺いたいのですが、《鉄面提督ベケット》もありますし、赤をタッチするという選択肢もあったわけですよね?」

津村「赤をタッチするかは本当に悩みました。《蠱惑的な船員》もピックできていたので、悩むだけの価値はあったと思います。最終的には青黒の2色で落ち着きました。2マナ域をしっかりと確保できて、《深海艦隊の船長》もありますし、《帆凧の掠め盗り》を2枚取れたことでデッキが引き締まりました。呪文の枚数も少し多いかな? とは思ったのですが、これで良かったかな、と」

――「たしかに9枚は少し多いような印象がありますね」

海賊のカットラス風と共に帆凧の掠め盗り

津村「そうですね。『クリーチャー多め、呪文少なめ』というのが一つのセオリーなので。ただ、除去が弱めなので、《海賊のカットラス》《風と共に》などでクリーチャーを強化することも有効な戦略なんです。相手のクリーチャーをしっかりと受け止められますからね。《帆凧の掠め盗り》で安全を確認することもできるので、それから強化すれば十分に間に合います。オーラ呪文は環境初期よりも重要度が変化しているので、ドラフトの際は気をつけると良いかもしれません」

■ 世界選手権が、津村に与えた影響

――「なるほど。環境初期からこれまでを振り返ると、色々な変化があるのですね」

津村「個人的に、世界選手権2017の影響が大きかったです《女王湾の兵士》のようなバニラクリーチャーが積極的に採用されていて、かなり驚きました」

女王湾の兵士

――「たしかに『こんなスペックでも採用されるんだな』と思った覚えがあります」

津村「それを見て、『なるほど、こういうカードを活かさなければ勝てないんだな』と自分の感覚を変化させました。それ以降は『探検』というアーキタイプの発見はありましたが、大きな変化はなかったと思います。この1ヶ月はスタンダードを含めて練習を重ねてきたのでその成果を、残りの5ラウンドで出し切りたいですね


 インタビューを終えて周囲を見渡すと、対戦を終えたプレイヤーが続々と席を立ち始めている。プレイスペースの片隅に日本人プレイヤーが集まり、ドラフトについて、そしてこれから始まるスタンダードについて時に笑顔で、時に真剣な表情で意見を交換し始めた。

 津村もその輪に加わり、自身の経験や思考を共有しているようだ。

 プロツアーは、これまでの結果を出す場であると共に、これからの戦いのために貴重な経験を積める場所でもある。プロプレイヤーたちは目の前の、そして次の戦いの勝利を目指して、思考を重ね、感覚を研ぎ澄ましている。

 その一端をインタビューという形でお届けできたのなら幸いだ。

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