By Kazuki Watanabe
11ラウンド、2ndドラフト最終戦。会場内を歩き回りながらTwitterを見ていると、こんなつぶやきを見つけた。
6-3 ジェンセン先生にもデッキ強すぎとお褒めの言葉をいただきました(^_^) #PTIxalan
— 津村 健志 (@KenjiTsumura) 2017年11月4日
初日を5-3という成績で終えた津村 健志だ。
世界チャンピオン、ウィリアム・ジェンセンに褒められるほどのデッキとは、一体どのようなデッキなのだろう?
対戦を終えた津村に声を掛けると、
津村「デッキはかなり良かったので、3-0したかったんですけどね……」
と反省の言葉を漏らしながらも、笑顔でインタビューを快諾してくれた。早速、話を伺ってみよう。
■ 津村「使っていて楽しかった」
――「惜しくも全勝とはならなかったようですが、かなり良いデッキだったみたいですね」
津村「そうですね。使っていて楽しかったです。本当に強くて、最終戦はあっという間に勝ててしまうくらいでしたから」
――「なるほど。たしかにまだ席を立っているプレイヤーは少ないですね。ではリストを拝見します」
10 《沼》 7 《島》 -土地 (17)- 2 《帆凧の掠め盗り》 2 《難破船あさり》 1 《凶兆艦隊の貯め込み屋》 1 《指名手配の獄道者》 1 《深海艦隊の船長》 1 《無情な無頼漢》 1 《巧射艦隊の拷問者》 2 《深海艦隊の殺し屋》 1 《凶兆艦隊の侵入者》 1 《大気の精霊》 1 《巧射艦隊の略取者》 -クリーチャー (14)- |
1 《潜水》 1 《卑怯な行為》 1 《見張りによる消散》 1 《板歩きの刑》 1 《欲望の深み》 2 《風と共に》 1 《吸血鬼の印》 1 《海賊のカットラス》 -呪文 (9)- |
――「これはたしかに強そう……理想的な青黒海賊、という感じがします。初手は何をピックしたのですか?」
津村「まずは《鉄面提督ベケット》でした。3色のカードですが非常に強力な1枚なので。パックの中に白が4枚あったので、下家は白を使うだろうな、と読んだのですが、これは正解だったみたいです。白を基軸にした吸血鬼を使っていたので」
――「なるほど。流れてくる色はどうでしたか?」
津村「右隣がHareruya Latinのカルロス・ロマオだったのですが、彼は緑を中心にピックしていたようですね。青と黒がしっかりと流れてきたので、上手く住み分けできている、という印象でした。ただ、卓全体のカードが強かったんですよ。2戦目で負けてしまった赤緑恐竜は、《オテペクの猟匠》が2枚、《大物群れの操り手》も入っていましたから」
――「な、なんと……それも強力な仕上がりですね」
津村「強かったです。ただ、こちらのデッキも完成度では負けていなかったと思います。プレイングがしっかりしていたら勝てていたと思うので、悔しいですね」
――「もう少しデッキの話を伺いたいのですが、《鉄面提督ベケット》もありますし、赤をタッチするという選択肢もあったわけですよね?」
津村「赤をタッチするかは本当に悩みました。《蠱惑的な船員》もピックできていたので、悩むだけの価値はあったと思います。最終的には青黒の2色で落ち着きました。2マナ域をしっかりと確保できて、《深海艦隊の船長》もありますし、《帆凧の掠め盗り》を2枚取れたことでデッキが引き締まりました。呪文の枚数も少し多いかな? とは思ったのですが、これで良かったかな、と」
――「たしかに9枚は少し多いような印象がありますね」
津村「そうですね。『クリーチャー多め、呪文少なめ』というのが一つのセオリーなので。ただ、除去が弱めなので、《海賊のカットラス》や《風と共に》などでクリーチャーを強化することも有効な戦略なんです。相手のクリーチャーをしっかりと受け止められますからね。《帆凧の掠め盗り》で安全を確認することもできるので、それから強化すれば十分に間に合います。オーラ呪文は環境初期よりも重要度が変化しているので、ドラフトの際は気をつけると良いかもしれません」
■ 世界選手権が、津村に与えた影響
――「なるほど。環境初期からこれまでを振り返ると、色々な変化があるのですね」
津村「個人的に、世界選手権2017の影響が大きかったです。《女王湾の兵士》のようなバニラクリーチャーが積極的に採用されていて、かなり驚きました」
――「たしかに『こんなスペックでも採用されるんだな』と思った覚えがあります」
津村「それを見て、『なるほど、こういうカードを活かさなければ勝てないんだな』と自分の感覚を変化させました。それ以降は『探検』というアーキタイプの発見はありましたが、大きな変化はなかったと思います。この1ヶ月はスタンダードを含めて練習を重ねてきたのでその成果を、残りの5ラウンドで出し切りたいですね」
インタビューを終えて周囲を見渡すと、対戦を終えたプレイヤーが続々と席を立ち始めている。プレイスペースの片隅に日本人プレイヤーが集まり、ドラフトについて、そしてこれから始まるスタンダードについて時に笑顔で、時に真剣な表情で意見を交換し始めた。
津村もその輪に加わり、自身の経験や思考を共有しているようだ。
プロツアーは、これまでの結果を出す場であると共に、これからの戦いのために貴重な経験を積める場所でもある。プロプレイヤーたちは目の前の、そして次の戦いの勝利を目指して、思考を重ね、感覚を研ぎ澄ましている。
その一端をインタビューという形でお届けできたのなら幸いだ。
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