エピローグ

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 プロツアー『イクサラン』の閉幕は、熱い友情と共に訪れた。

 5ゲーム目までもつれ込んだ決勝戦。

 その様子を見ていた者は皆、決勝戦の終わり……つまり、プロツアーの閉幕を確信していた。会場に居る者はもちろん、生放送を観戦している誰もが。

パスカル・メイナード/Pascal Maynard

パスカル・メイナード/Pascal Maynard

 そして、対戦相手であるパスカル・メイナードも。

セス・マンフィールド/Seth Manfield

セス・マンフィールド/Seth Manfield

 ただ一人、セス・マンフィールドだけは、何度も何度も盤面を確認し「何か見逃しているものはないか」と思考を巡らせていた。初のプロツアー優勝に向けて。3日間の戦いを締めくくる、最後の思考に全力を注いでいた

 震える手を抑えながら、この戦いを締めくくるカードを公開する。

 すると、パスカルはヘッドセットを外し、手を伸ばした。

 その手は、プロツアー王者の肩を叩いた

 立ち上がり、抱きしめ合う。

 フルセットに及ぶ熱戦を戦い抜いた2人は、言葉を交わして互いの健闘を称え合う。

 そこに居るのは、勝者と敗者ではない。同じ高みへ挑み、熱い友情で結ばれた2人だ

 彼らが紡ぎ出した言葉は、温かい拍手によって包まれた。

セス・マンフィールド/Seth Manfield

セス・マンフィールド/Seth Manfield

 プロツアー決勝という世界最高の舞台で、2人のトッププレイヤーが見せた熱い友情。世界中に、その感動が届けられたことだろう。

 この感動を胸にして、皆、日常へと戻っていく。

プロツアー終了後、会場の様子

 夢のような時間は終わりを告げた。

 しかし、これは新たな始まりだ。

 世界中でマジックがプレイされる限り、素晴らしい週末は、必ずやってくるのだから。

 プロツアーには、世界各地からプレイヤーが集う。経歴やマジックとの付き合い方も千差万別だ。

 念願の初参加を果たした者もいれば、参加し続けている者もいる。

セス・マンフィールド/Seth Manfield

 栄光を勝ち取ったセス・マンフィールド。それを讃えるパスカル・メイナード。駆け寄るGenesisの面々。彼らを祝福する人々。

 勝者も敗者も。会場には、様々なプレイヤーの思いや願いが集い、色彩豊かに輝いていた。

アルバカーキの気球博物館より

 その思い一つ一つが、アルバカーキから飛び立つ。

 空に浮かぶ、熱気球のように。

 風に乗り、青空の向こうへ。

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