プロツアーで勝つために -ドラフトとスタンダードの練習、振り返り-

Petr Sochurek

Translated by Takuma Kusuzawa

原文はこちら
(掲載日 2017/11/08)

こんにちは!

今日はプロツアー『イクサラン』とその準備についてお話します。

旅の準備

このプロツアーは、僕がこれまで参加した以前のものとはまったく異なっていました。なぜなら、準備する期間がとても長くなっていて、ドラフトもスタンダードもメタゲームがかなり固まっていたからです。これは僕にとって非常に良い変化だったと信じています。僕はマジックになると頑張ることができる人間なのですが、数週間で準備して全部を身に着けないといけない、ということには向いてないのです。

僕はいつもプロツアーで苦労して、代わりにグランプリでうまくやってきました。グランプリでは何が来そうか分かっていますし、時間を投じられるのであれば、準備する余裕が十分にあります。なので、僕はこのチャンスに向けて、本気で頑張ろうと自分に誓いました。

『イクサラン』のカードリストが発表された直後は彼女とパリへ短い旅行に行っていたので少し遅れましたが、戻ってきたその日から四六時中マジックをしていました。

ドラフト

まず着手したのはドラフトでした。いつものリミテッドのアプローチ手順としては、最初にすべてのカードに精通して、何が良いかを把握し、主要な戦略がどうなっているかを調べます。今回、僕はかなりうまくできて、Magic Onlineのリーグで27個トロフィーを獲得することができました。しかしながら、実際のところ、自分のアプローチは悪かったと思っています。気持ちよくてただ勝ちたくなってしまったために、既に成功を収めていたアーキタイプを何度もドラフトしてしまっていたのです。

問題は、どのセットでも他のアーキタイプより一際優れたアーキタイプが存在することです。どういうことかと言うと、卓の全員が色やアーキタイプの偏りを持っていないと仮定すると、いずれかのデッキが最善のものになります。たとえば、卓の中で赤白恐竜をドラフトしているのが一人であれば、彼のデッキはえげつないものになるはずです。同じことが吸血鬼、マーフォークなどにも言えるわけですね。

帝国のエアロサウルス選定された助祭深根の戦士

こういった強いアーキタイプに精通していることは非常に重要です。空いていれば素直にドラフトしたいのですが、プロツアーのような最高の大会では頻繁に起こることではありません。

僕がしなければならないことは、隣り合う戦略すべてに精通することです。本当に良いデッキを見つけ出して『誰もそれをドラフトしていないようだ』と気付くばかりではなく、そういったときに皆のデッキがどのようになりそうで、どのカードを優先すべきかが分かることも重要なのです。プロツアーのドラフトでは、5回中少なくとも1回は、このようなデッキをドラフトする位置にいると思います。そういった状況に慣れていないと厳しいトーナメントになる可能性が高いのです。

間に合わせの砲弾

僕は環境に存在し得るデッキをすべて把握していたと思いますが、確信できていないことも多くありました。青赤《間に合わせの砲弾》コントロールをドラフトするときには、《海賊の獲物》を取るのか、それとも優れたクリーチャーやコンバットトリックを取るべきか、はっきりと結論が出せていません。ただ、すでに分かっているデッキを延々とドラフトするのは時間の無駄だと覚えておきましょう。

僕は必ずしもこういったアーキタイプを選択すべきだと言っているわけではありませんが、近い選択肢があるときには、まだ知らない、使いこなせないデッキを試すべきです。得意なエリアから飛び出すというのは間違いなく難しいことですが、この経験が今後の大会で大きな助けとなるでしょう。

溢れ出る洞察

プロツアーの2ndドラフトでは、まさしくこれが原因で失敗してしまいました。5手目で《溢れ出る洞察》を取ることができ、これは青いトレジャーコントロールをドラフトすべきだという明らかなサインでした。こんな手番で取れたということは、がら空きなはずで、僕が『イクサラン』リミテッドで特に好きなものではないとしても、必要なカードが全部手に入れば確かに良いデッキになるはずです。問題は僕が十分に練習できていなくて、僕のピックする順番などが的はずれな所が少しありました。これはこれから僕が取り組まなければならないことでもあるのです!

スタンダード

一週間、無限にドラフトを行ったあと、僕はスタンダードを始めることにしました。客観的にティムール・エネルギーよりも優れているものがあるとは思えなかったので、Magic Onlineでカードを購入し、可能な限りマスターしようとしました。それまでそんなに使っていなかったので、最初は誰に当たっても負けると思っていたのですが、実際には僕は連勝していました。

ならず者の精製屋反逆の先導者、チャンドラ秘宝探究者、ヴラスカ

その理由は、ほとんどの人が新しいデッキを試したがっていたことにあります。そういった人はティムールとの対戦を運任せにしていたのでしょう。デッキに入っているカードがとても強力なので、サイドボードから少しだけシフトするだけで彼らのデッキは本当に何もできません。《ならず者の精製屋》《反逆の先導者、チャンドラ》《秘宝探究者、ヴラスカ》の組み合わせは圧倒するにも十二分なのです。

僕は自分のチャンスについて非常に充実した気持ちでアメリカに着き、グランプリ・フェニックス2017前の木曜日にチームメイトの大半と会いました。グランプリでは大きな結果は残せませんでしたが、プレリリース以外でシールドは練習しておらず、ドラフトとまったく異なるものなので、うまくいくと期待もしていませんでした。

シールドは他のフォーマットよりもドラフトに近いのは確かです。部族デッキを組めるのに十分なカードを引く人もいるので、それを念頭に置いてデッキを作らなければならず、適当なクリーチャーにコンバットトリックのバックアップを受けただけで死んでしまうことがないようにしなければなりません。様々なシールド環境がありますが、大抵の場合に目指さなければならないのは、長期戦に合わせて大きなクリーチャーを確保し、相手の大きなクリーチャーに対する回答を用意することなのですが、今回は少し異なったのです。

グランプリではイマイチでしたが、まだ翌週のチャンスが残っていて、前向きでした。僕はMagci Onlineで多くの勝利を収めてもいましたし、自分のデッキを知り尽くせていました。

僕のチームのほとんどは日曜日にアルバカーキへ出発しましたが、僕とルーカス・ブローンは月曜日の夜に出発しました。僕は一日中ホテルのロビーでルーカスと対戦することができたので、少しも気にしていませんでした。ルーカスとプレイするのが本当に大好きです。旧知の仲ですし、お互いに何を使っていても全力でお互いを負かすことに尽くしていました。簡単に勝てるゲームというのはありえないのです。

運悪く僕たちのフライトが遅れて、日付が変わった頃に宿に到着しましたが、幸いにもほとんどの人はまだ起きていました。一つはっきりと言っておきたいのは、今シーズンはチームGenesis + Revelationに参加していて、『楽しくなるだろう』と期待していたのですが、実際には予想を遥かに上回っていました。皆とても素晴らしく、楽しかっただけでなく、すごく紳士的で、勤勉でした。

栄光をもたらすもの

僕たちが到着してすぐに、ブラッド・ネルソンがテスト中に見出したデッキを持ってきました。彼らは、本当にスゥルタイ・エネルギーを気に入っていました。「《栄光をもたらすもの》を採用した通常どおりのティムールとの相性は悪いけれど、多くのプレイヤーはミラーマッチを制するために《栄光をもたらすもの》を削って《スカラベの神》《秘宝探究者、ヴラスカ》を使うはずだ」という彼らの理論は非常に理にかなっていたと思います。

このデッキが持つもう一つの良い点は、誰もがティムールと何十ゲームもプレイしていますが、スゥルタイはまた違った脅威なので、相手にしたときにミスする可能性が高いです。僕は理論上はこのデッキが好きでしたが、数回回してみて、ただ好きになれなかっただけです。このデッキは僕があまり得意でない戦略を持つ一つであり、上手く回せずに大変なことになるのではないかと恐れていました。僕はエネルギーデッキを手放さないことに決めました。僕とトーマス・ヘンドリクス、そしてルーカス・ブローンが最終的に持ち込んだリストが、こちらです。


ペトル・ソフーレク「4Cエネルギー」
プロツアー『イクサラン』

3 《森》
1 《島》
1 《山》
1 《沼》
2 《隠れた茂み》
4 《霊気拠点》
4 《植物の聖域》
3 《尖塔断の運河》
3 《根縛りの岩山》
1 《花盛りの湿地》

-土地 (23)-

4 《導路の召使い》
4 《ならず者の精製屋》
4 《つむじ風の巨匠》
3 《逆毛ハイドラ》
2 《スカラベの神》

-クリーチャー (17)-
4 《霊気との調和》
2 《マグマのしぶき》
4 《蓄霊稲妻》
2 《削剥》
1 《本質の散乱》
1 《至高の意志》
1 《慮外な押収》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
2 《秘宝探究者、ヴラスカ》

-呪文 (20)-
3 《否認》
2 《チャンドラの敗北》
2 《マグマのしぶき》
2 《人工物への興味》
2 《自然に仕える者、ニッサ》
1 《多面相の侍臣》
1 《削剥》
1 《本質の散乱》
1 《慮外な押収》

-サイドボード (15)-
hareruya


牙長獣の仔

あなたが最初に気付くのは、僕たちが《牙長獣の仔》を採用しなかったということですが……これはおそらく間違いだったと思います。採用しなかった理由は、できるだけミラーで有利に立ちたいと思っていたことで、《牙長獣の仔》はミラーマッチ(特に後手)で弱いカードの一枚なのですが、それを抜くのは良くなかったようです。《牙長獣の仔》を採用しないことでミラーは有利になりますが、他のマッチアップで失ってしまうものを正当化できるほどではありませんでした。

相手の動きに合わせて使うカードは、あなたがメタゲームを読み間違えたり、あなたのカードが役に立たない対戦がありえたりするので、そういったカードをたくさん使うのは素晴らしい戦略ではありません。それが、プロツアーのようなレベルの大会であればなおさらです。

基本的に、そういったカードを採用することで簡単に勝利できるようになることは少なく、より多くの場合「運が悪かった」ということになるのです。ほとんどのマッチアップで有用なカードを積極的に使用し、サイドボード後のゲームでそういったカードのいくつかを選択肢にあげることができます。1ゲーム目で相手のデッキが分り、2ゲーム目で明確な方針を持ってデッキを調整できるからです。今回のプロツアーは、とんでもない量のエネルギーデッキが使われているのは明らかで分かりやすかったのですが、それでもなおです。

反逆の先導者、チャンドラ

期待以上に良かったカードは《反逆の先導者、チャンドラ》でした。多くの対戦でめちゃくちゃして、唱えたら無敵となる場面もありました。場合によってはコストの高い除去カードにしかならないのですが、生き残った場合の利点の方が大きく感じます。もし明日大会に出るのあれば、3枚目をメインに移動する可能性も高いです。

構築の記録は6-4でしたが、これは恐れることではなく、多くの試合でうまくプレイできなかったので、ミスを反省する必要があります。以前はオンラインではなく実際にプレイするために地元のゲームショップに頻繁に行っていましたが、最近では行っていないというのが大きいと思っています。

あまりそう見えないかもしれませんが、オンラインで遊ぶことは実際にカードを持つのと大きく異なります。カードの扱いに気を付ける必要もありますし、実際にカードを動かすというのは、エネルギーと集中力を多く消費し、慣れていなければ気が散ってしまいます。もう一つの違いは、Magic Onlineでは難しいターンで時間をたっぷり取ることができますが、現実のマジックではできないということです。

他にも、純粋に僕がそこまで頑張らなかったというのが正直なところです。すべての可能性と結果を考えることは重要ではなくて、そんなに気にしないでもいいものもある、と怠けてしまうことがあります。起こる可能性が低いからといって、「運が悪かった」と言うのは簡単ですが、それはやはり心構えとして間違っていました。

次からは全力を尽くして、こんなことがないようにしようと誓います。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

ペトル

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