Deck Tech: 篠原 厳(東京)の「自分のことを4Cレオヴォルドだと思い込んでいるグッドスタッフ」

晴れる屋

By Hiroshi Okubo

 第10期モダン神挑戦者決定戦の第6回戦が終わるころ、上位卓の片隅から異常な発言が聞こえてきた。楽し気に会話している2人はデッキビルダーとして週刊デッキウォッチの常連である篠原 厳(東京)と、日本モダン選手権2016 Winterの覇者・吉井 巧(東京)だ。彼らの会話に耳を傾けてみると……

「4Cレオヴォルドが板!」「《トーラックへの賛歌》が強すぎww」「《渦まく知識》もマジでヤバい」

トレストの使者、レオヴォルドトーラックへの賛歌渦まく知識

 ……??

 話題に上がるそれらのラインナップは言わずと知れたレガシーの強カードの数々。当然、モダン環境で使用できるわけがない。聞けば彼らは今日のために現在レガシーのTier1デッキである「4Cレオヴォルド」を組み、デッキリストをシェアしてこの大会に持ち込んだとのことだった。しかも、篠原は第6ラウンド終了時点で6-0しているらしい。

 全勝は結構なことだが、残念ながらモダンフォーマットのイベントにレガシーのデッキを持ち込んだならば普通にジャッジ案件である。私が右手を上げかけたところ、篠原がその重い口を開いてくれた。

篠原「ご覧にいれましょう。これがモダン環境の4Cレオヴォルドですよ……」

 自信に満ちた篠原の笑み。デッキケースから取り出された75枚。そこにあったのは――

篠原 厳(左)と吉井 巧(右)

篠原 厳(左)と吉井 巧(右)

《トレストの使者、レオヴォルド》であり《渦まく知識》でもある=優勝

篠原「まず、これが《トレストの使者、レオヴォルド》です」

不屈の追跡者

--「(《トレストの使者、レオヴォルド》じゃ)ないです

吉井《不屈の追跡者》《トレストの使者、レオヴォルド》であり《渦まく知識》でもあります」

--「いや、吉井さんもしれっとぶっこんできましたけど、これは《トレストの使者、レオヴォルド》でも《渦まく知識》でもないですからね。《不屈の追跡者》です」

篠原「いやいや、考えてみてほしいんですけど《不屈の追跡者》《トレストの使者、レオヴォルド》のようにカードアドバンテージを得ることができるのはもちろん、手札に余った土地をリソースに変換できるんですよ。レガシーの《渦まく知識》も同様の使い方をすることが多いじゃないですか?」

吉井「つまり実質《渦まく知識》なんですよね」

--「じゃあもうそれでいいです」

篠原「で、これが《思案》でこれが《トーラックへの賛歌》ですね」

血清の幻視隆盛+下落

--「違うんだよなあ……

吉井「あとは《黄金牙、タシグル》も0.5レオ(《トレストの使者、レオヴォルド》/2のこと)くらいありますね」

--「新しい単位出ましたね。話の流れ的に意味は聞かなくても大体分かりますが」

4Cレオヴォルド(?)の理想的な動き

--「このデッキの理想的な動きはどんなものなのでしょうか?」

篠原「手札破壊やドロースペルから動き始めて、《隆盛+下落》でリソースを交換しながら《タルモゴイフ》《グルマグのアンコウ》といったコンバット要員で素早くゲームを決めるというのがこのデッキの理想的な動きですね。特に《隆盛+下落》は序盤から終盤まで有効なカードなので4枚積みです」

タルモゴイフグルマグのアンコウ

--「《隆盛+下落》4枚というのはかなり気合の入ったリストですね。たしかに《下降》はもちろん、このデッキでは《隆盛》も非常に強そうです」

篠原「それに《ゴブリンの熟練扇動者》が強いですね。調整段階ではなかなかこのカードに辿り着けず、グダらせることはできるけど勝ちきれないことが多かったんですが、《ゴブリンの熟練扇動者》はすごいスピードでライフを削っていってくれるのでこのデッキにピッタリの1枚です」

ゴブリンの熟練扇動者

吉井「今回僕は《ゴブリンの熟練扇動者》を使用しなかったんですが、これは絶対に採用しておくべきでした。篠原さんも言っている通りクロックが速いですし、単純にトークンを出し続けてくれるアドバンテージカードでもあるので……」

--「なるほど。吉井さんは2-3でドロップされているとのことでしたが、そのカード選択が明暗を分けたと言えそうですね」

1フォーマット上の動き

--「そもそもなぜモダンで4Cレオヴォルドを再現しようと思ったのでしょうか?」

篠原「僕はデッキを組むとき、1フォーマット上の動きをするということを心がけています。たとえばスタンダードでモダンの動きをするとか、モダンでレガシーの動きをするとか……そこで、今回は『レガシーで現在トップメタに君臨している4Cレオヴォルドをモダンで組めないかな?』と思ったんです」

思考囲い隆盛+下落ヴェールのリリアナ

--「なるほど、1フォーマット上の動きですか……たしかにそう考えるとドロースペルや手札破壊から動き出しながら《隆盛+下落》でアドバンテージを取り、《ヴェールのリリアナ》で蓋をしたり《タルモゴイフ》でクロックを刻むというのはレガシーっぽい動きですね」

篠原「ええ、そのあたりの基本理念は4Cレオヴォルドと同じになっていると思います。レガシーでもおなじみの《コラガンの命令》《瞬唱の魔道士》といった1:2交換が狙えるカードも多数入っていますしね」

コラガンの命令瞬唱の魔道士

--「たしかに《瞬唱の魔道士》《コラガンの命令》はレガシーでも通用する強力なラインナップですね。《稲妻》《終止》《突然の衰微》などの1枚挿しが目立ちますが、これはなぜですか?」

篠原「これはですね……レガシーの4Cレオヴォルドもカードを散らしてあってリストが汚いことが多いので、真似してリストを汚してみました

--「そこは形から入ったのか……」

吉井《瞬唱の魔道士》もあるので、まぁ散らしてもいいかなと思って」

--「その理屈はおかしい」


 はたしてこれが4Cレオヴォルドなのかどうかは分からない。というかさすがに4Cレオヴォルドではない。しかし、篠原の好成績はデッキリストの強さをこの上なく裏付ける根拠と言えるだろう。

隆盛+下落

 何より、《隆盛+下落》が嵌ったときにもたらされる強烈なアドバンテージと分泌される脳内麻薬ドーパミンの量は他の追随を許さない。代わり映えのしないグッドスタッフのデッキリストに辟易しているという方は、ぜひ篠原のリストを参考にしてみてはいかがだろうか?

※この後篠原さんはトップ8に進出しました。

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