By Yuya Hosokawa
今年、プロツアーシーンで最も活躍した日本人プレイヤーと言えば、Hareruya Prosに所属する原根 健太だろう。
グランプリ・ラスベガス2017で見事にシルバーレベルを確定させ、その勢いのままプロツアー『破滅の刻』では12位に入賞し、ゴールドレベル・プロプレイヤーとして2017-18シーズンを迎えた原根。だが活躍はそれだけにとどまらない。日本選手権2017で最後はTeam Cygames所属の八十岡 翔太を倒して日本王者となると、Team Cygames所属渡辺 雄也、八十岡 翔太と共に日本代表としてワールド・マジック・カップ2017を見事に制し、その後のグランプリ・シンガポール2017もトップ8入賞と、今原根はプロツアーシーンにおいて最も勢いに乗っているプロプレイヤーだ。
そして。原根が世界で注目されている2017年、時を同じくして。そんな原根に憧れてマジックの競技シーンに足を踏み入れた一人の青年が、東京でブレイクを果たしていた。
岡井 俊樹である。
今年の岡井の活躍は、目覚ましいものだった。PWCCでの優勝を皮切りに、プロツアー地域予選を突破してプロツアー『破滅の刻』の権利を手に入れ、第9期スタンダード神挑戦者決定戦で優勝。そして第9期神決定戦では見事に和田 寛也を打ち倒してスタンダード神へと就任すると、それだけでなくグランプリ・上海2017のサイドイベントのプロツアー予選を突破し、プロツアー『イクサランの相克』の権利も獲得している。
草の根大会で勝ち続けるだけでなく、プロツアーの権利を2度も獲得と、プロツアーシーンでのブレイクの機会も虎視眈々と狙っている岡井。彼にとって2017年はどんな年だったのだろうか?
2017年を終えて
――こんにちは。今年一年、大活躍でしたね。
岡井「ありがとうございます。ほんとですね、ちょっと出来すぎなぐらいでした。目標も達成できて、言うことなしです」
――目標と言いますと?
岡井「それはもちろんプロツアー出場です!『マジック・オリジン』のころにプロツアーに憧れて、3年越しに夢が叶ったんです。でも一つだけ残念なことがあって」
――プロツアーの結果、ですか?
岡井「いえ!プロツアーは確かに残念な結果でしたけど、実力不足を実感しました。もう当たる人全員が上手いのなんのって。スタンダードには少し自信があったんですけど、もうそんなの吹聴できなくなりました(笑)」
――なるほど。ではいったい残念だった、というのは?
岡井「国内のプロツアーだったからです!どうせなら海外に行きたかったんですよ。だから、プロツアー『イクサランの相克』の権利が取れたのは本当に嬉しかったです」
2017年の好調
――それにしても岡井さん、今年は本当に好調でしたが、何か要因などはあったのでしょうか?
岡井「そうですね。一番大きいのは、自分とプレイスタイルがあっているデッキ――ミッドレンジ――がスタンダード環境で常に強かった、ということですね。バントカンパニー、青白フラッシュ、そして今はティムールエネルギーと、どれも自分が比較的得意なデッキなんです」
――ミッドレンジが強い環境では、強いぞと。
岡井「まあ、そんなところです。ミッドレンジのコツをつかんでいると思うんです。だから勝てて、勝つとさらに研究して行って、それでまた勝って、モチベーションが上がっていって。スタンダード好調の要因は間違いなくそこにあります」
――強くなった要因には、プロツアー出場もありますか?
岡井「それは間違いなくありました。プロツアーに出たことで強くなったかどうかはわからないですけど、少なくともレベルキャップは開放されたな、という感覚がありました。強い人を見て感化されたんでしょうかね。プロツアーの後はプレイしていても新しいことに気付くことが多くて、成長しているのを日々実感します」
――プロツアーという舞台は本当に良いことづくめですね。
岡井「いや本当に!だからまたあそこで戦えるっていうのが嬉しいんです。フォーマットは……モダンですが」
課題
――モダンは苦手ですか?
岡井「というより、スタンダード以外はあんまり得意じゃないんですよね。モダンの練習はできていませんし。今日のラストサンだってレガシーは不安で仕方ないですよ!グランプリ・千葉2016で練習しただけですからね」
――やりこんだフォーマット以外は少し自信がないと。
岡井「ええ。それは自分の中での課題でもあります。僕、ドラフトもすごく苦手なんですよね。シールドはそれなりに自信があるんですけど、ドラフトは全然ダメで。プロツアー『破滅の刻』の前週のグランプリ・京都2017でも負けてしまいました。ピックが下手なんですよ、僕」
――とはいっても、上海のプロツアー予選を突破されたのではないのですか?
岡井「うーん、まあそりゃ運が良ければ勝つことはあります。でも、明らかに練習不足でした」
――ドラフトはスタンダードほど練習がしやすいわけではないですよね。
岡井「そうですね。克服するためにドラフトをやろうと思うんですけど、どうしても人数が必要だから、いつでも練習できるわけじゃないんです。それが痛い」
――Magic Onlineはやられないんですか?
岡井「たまにMagic Onlineでもドラフトやるんですけど、僕はとにかく紙が好きなんです!紙に触りたくて(笑) だから気づいたらスタンダードをやっちゃうんです」
――紙が好きって、最近だと珍しい気がします!
岡井「そうなんですか?」
――Magic Onlineを練習場としている人は多いですからね。
岡井「僕は断然紙が好きですね。逆にフォーマットの好き嫌いとかないんですよ、僕。紙でできるならどんなフォーマットも大好きです。だからドラフトが紙で無限にできるなら、それこそずっとやってしまいますね。そしたらきっと上手くなるんだろうけど……なかなかそう上手くはいきませんよね」
――では今後の課題としては、ひとまずはドラフトと。
岡井「そうですね。頑張らないとなぁ……」
2018年の目標
――さて、今年大成功を収めた岡井さん、ずばり来年の目標は?
岡井「そうですね~……ブロンズレベルになる、でしょうか!」
――まさに一歩ずつ、ステップアップですね。
岡井「夢は大きくプロツアー優勝!と言えたらいいんですけど、今の実力では難しいのはわかっていますから。でも今みたいに頑張っていけば、ブロンズレベルは、決して超えられない目標ではないと思ったんです」
――ひとまずはプロツアーが確定していますから、3点ですね。
岡井「はい。プロツアーで少し上乗せできれば、海外グランプリなどを回ってなんとか10点……と考えています。スタンダードのグランプリがたくさんあればいいんですけどね……」
――ブロンズレベルのためには、海外グランプリへの参加も考えているんですね。
岡井「来年は今年と同じぐらいにはマジックにフルパワーで挑めそうなので、海外グランプリも視野に入れています!ブロンズになりたいのはもちろんですけど、単純にもっと紙に触れたいんですよね。マジックが楽しくて仕方がないんです」
――ブロンズという目標はありつつも、基本は楽しむため、と。
岡井「はい!やっぱり楽しむのが一番です。練習が楽しければ効率も上がって結果も出ますしね。マジックの全フォーマット、どれもすごく楽しいんです。楽しんで上手くなって、結果としてブロンズレベルに到達できたら嬉しいですね」
――ブロンズレベル到達、応援しています!来年も頑張ってください!
岡井「ありがとうございます!」
3年越しの目標を達成し、草の根大会でも勝ち続けた、絶好調の2017年を終えようとする岡井。そのさなかで、岡井は冷静に今年の成功と共に、今後の課題についても分析していた。
そんな岡井が目指す先は、『ブロンズレベル』。プロポイントを稼ぐのは簡単なことではない。プロツアーやグランプリで、岡井は勝たなければならない。
だが岡井には気負いはないだろう。なぜなら「マジックを楽しむ」という気持ちをいつも胸に抱いているのだから。
「マジックは楽しみ得」。
原根 健太が、その言葉を信条としているように。