晴れる屋とBIG MAGICによる新フォーマット、フロンティアは単なる懐古フォーマットではない。
スタンダードやモダンと同じように、新しいセットが出るたびにデッキビルダーたちの手によってダイナミックにその姿を変える環境なのだ。
それを証するかのように、今日のこのフロンティア神決定戦、236名の参加者たちから勝ち残ったトップ8の中には、しっかりとこの男の姿があった。
松本 友樹。BIG MAGIC所属のシルバー・レベル・プロであり、デッキビルダーとしても知られている松本は、この新フォーマットのお披露目に合わせ、しっかりとオリジナルの【スゥルタイ昂揚】を持ち込んでいた。
デッキの軸となっているのは「探査」と「昂揚」という、時代を超えた2つのキーワードの共演。墓地を追放する「探査」と墓地のカードタイプを参照する「昂揚」は相性が悪いようにも思われるが、そこは《サテュロスの道探し》や《最後の望み、リリアナ》が尋常でないスピードで墓地を肥やしてくれるため、食い合うことはないという判断なのだろう。
そんな松本の対戦相手は秋本 大基。これまで目立った戦績はないが、持ち込んだデッキ、「アタルカレッド」からは確かな構築センスが感じられる。
通常の「アタルカレッド」ではあまり見られない《通電の喧嘩屋》、そしてそれに続くのは《ラスヌーのヘリオン》。『カラデシュ』出身のラインをいち早く取り入れており、こちらも最前線の開拓に余念がない。
はたして、一歩先を行くのはどちらの構築か。
Game 1
先手の秋本が《樹木茂る山麓》から《山》をサーチすると、それを見た松本が「先手かー」と悲嘆に満ちたため息を漏らす。
松本の嫌な予感は的中し、秋本が繰り出したのは《鐘突きのズルゴ》。秋本のデッキが「アタルカレッド」であることをこれ以上なく示す1マナクリーチャーだ。
松本は返す《強迫》で《かき立てる炎》を落とすが、秋本は《僧院の速槍》2枚を追加し、早くも2ターン目に4点クロックを形成すると、続くターンには《軍族童の突発》で「果敢」を誘発させながら6点アタック、場には5体のクリーチャーという一方的な盤面を作り上げる。
松本は《最後の望み、リリアナ》に文字通り最後の望みを託すしかない。
だが、秋本が戦闘フェイズに5体のクリーチャーをタップし、ダメージ解決前に2枚の土地をタップ
秋本が公開したのはもちろん、「アタルカレッド」を象徴する《アタルカの命令》!
松本 0-1 秋本
圧倒的なまでの先手4キル。これがフロンティア環境の【トップメタデッキ】の力だ。
しかしもちろん松本とて何の準備もしていないということはない。そしてそれ以上に、「赤単に負けたくないので赤単だけは使って欲しくない」とのちに語っていたことからもわかるように、松本の瞳にはいつもの柔和な笑顔からは想像しづらい赤単への憎悪が浮かんでいた。
抵抗できずに蹂躙される理不尽を許したくない松本は、また一段と深く赤への憎しみを募らせつつ、サイドボードへと手を伸ばす。
Game 2
《僧院の速槍》スタートを切る秋本に松本は《サテュロスの道探し》で応える。「探査」があるフロンティア環境では、肥えた墓地も後々貴重なリソースとなる。
さらに松本は《通電の喧嘩屋》を《ラスヌーのヘリオン》と立て続けに《闇の掌握》で捌き、「昂揚」済の《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を着地させる。
松本 友樹 |
アタッカーを失った上に巨大すぎるブロッカーを目の前にした秋本は仕方なく4枚の土地を立ててターンを終了、本体火力で削り切る構えを見せる。
これを見て松本は《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を蜘蛛・トークンごと全軍突撃させてライフを詰めにいくが、秋本もエンド前《稲妻の一撃》×2、さらにメインで《ラスヌーのヘリオン》をブロッカーに立て、決着のターンを延ばして火力呪文を唱える暇を稼ごうとする。
だが、《本質の摘出》が松本のライフを安全圏まで引き上げつつ、《最後の望み、リリアナ》の「+1」との合わせ技で《ラスヌーのヘリオン》が葬られてしまうと、秋本は3ゲーム目へと移ることを選択した。
松本 1-1 秋本
松本「先手はいいんですけどね、後手がね……」
秋本「紙一重ですよね。間に合うか間に合わないか」
Game 3
お互いマリガンで幕を開けた3ゲーム目は、《僧院の速槍》に《死の重み》が合わさる立ち上がり。
それでも秋本は《鐘突きのズルゴ》を続けて送り出し、さらに3ターン目には《僧院の速槍》をプレイ、即座にレッドゾーンに送り出しての《アタルカの命令》で松本のマナが十分でない隙に打点の加算を目論むのだが、これにはスタックでフェッチ2枚と《死の重み》を追放しての《残忍な切断》が飛び、残り12点で踏みとどまられてしまう。
そして松本の戦場に降臨する《最後の望み、リリアナ》。さすがに放置できず《かき立てる炎》で落とすものの、秋本の手札はこれでゼロ枚。
続けて送り出された「昂揚」なしの《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を、越えることができない。
秋本 大基 |
現状松本にも攻め手はないものの、長期戦になれば不利は明らかな秋本は《密輸人の回転翼機》をチャンプアタックさせてまで《墓後家蜘蛛、イシュカナ》への対抗手段を求めるのだが、引き入れたのは《通電の喧嘩屋》とかみ合わない。
しかも返すターンにこれを即座に《死の重み》で対処されてしまうと、「昂揚」を達成した松本が《墓後家蜘蛛、イシュカナ》2号機を送り出し、防御をますます盤石なものへとしていく。
それでも、度重なるフェッチランドの起動で松本のライフは残り10点。「アタルカレッド」ならば火力だけで削り切ることも決して不可能とは言えない、ギリギリ射程圏内というところ。引け、という祈りを込めたドローが続く。
だがその10点を削ることができなかった秋本は、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》の能力起動でゆっくり4点ずつライフが失われていくのを、ただ見ているほかなかった。
松本 2-1 秋本
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする