みなさんこんにちは。
先週発売された『灯争大戦』は「プレインズウォーカーの戦争」をテーマにしており、37種類ものプレインズウォーカーが収録されました。Magic Online(以下:MO)では、Legacy Challengeがすでに2度行われており、新カードを採用したデッキが成績を残しています。
今回の連載では、『灯争大戦』発売直前に開催されたグランプリ・ナイアガラフォール2019と、『灯争大戦』発売後に行われたふたつのLegacy Challengeの結果を見ていきたいと思います。
グランプリ・ナイアガラフォール2019
MOの強豪がリアルの大会を制する
2019年4月20-21日
- 1位 Stoneblade
- 2位 Death and Taxes
- 3位 Miracles
- 4位 Grixis Control
- 5位 4C Leovold
- 6位 Death and Taxes
- 7位 Grixis Delver
- 8位 Sneak and Show
Daniel Goetschel
トップ8のデッキリストはこちら
今大会では、Show and Tell系、Miracles、Stoneblade、Grixis、Death and Taxesと多種多様なアーキタイプが入賞していました。
優勝を果たしたのは、MOで強豪プレイヤーとして知られているDaniel Goetschel選手でした。最終ラウンドのトスを除いて、今大会で一度もマッチを落とさずに優勝するパフォーマンスを見せています。
グランプリ・ナイアガラフォール2019 デッキ紹介
「Stoneblade」
Stoneblade
最近コンスタントに結果を残しているStoneblade。《石鍛冶の神秘家》+装備品や《真の名の宿敵》、《精神を刻む者、ジェイス》、各種カウンター、除去、ドロースペルを搭載した青白のグッドスタッフデッキでレガシーのJundと形容されることもあります。1マナのドロースペルに頼らずともある程度デッキが回る構成なので、Delver系やMiraclesなど他の青いデッキと比べると《虚空の杯》デッキに耐性があります。《死儀礼のシャーマン》が禁止カードになったことで、《コラガンの命令》を使ったデッキが減少傾向にあるのが主な復権の理由です。
《血染めの月》や《基本に帰れ》、《不毛の大地》といったアンチ特殊地形に耐性があり、12 Postなど一部を除いて絶望的なマッチアップが少ないところも、このデッキが長丁場の大会で選択される理由のひとつです。
☆注目ポイント
《真の名の宿敵》は除去耐性の高さから装備品と相性が良く、クリーチャーデッキに対して《梅澤の十手》を装備した《真の名の宿敵》の攻撃が通り始めればほぼ勝ちです。多くのリストは2~3枚の採用でしたが、Daniel Goetschel 選手はフェアデッキとのマッチアップが多くなると想定していたようで、メインからフルに採用されています。
最近では《宮殿の看守》がサイドに採用されるようになりました。Death and Taxesのように《護衛募集員》でサーチしたり、《ちらつき鬼火》で再利用するといったことはできませんが、《剣を鍬に》を始めとした軽い除去や《真の名の宿敵》をフル搭載したこのデッキから統治者を奪うのは難しいでしょう。《精神を刻む者、ジェイス》と異なり、《稲妻》や《紅蓮破》で対策されないのが強みです。クリーチャーが少ないLandsやDark Depths系のデッキにとっては統治者を奪うのはほぼ不可能で、それらのマッチアップでは《精神を刻む者、ジェイス》よりも信頼性の高いアドバンテージ源となります。
墓地対策の枠には《トーモッドの墓所》が《外科的摘出》よりも優先して採用されています。RB Reanimatorなどの墓地デッキは、《外科的摘出》をケアするために《暴露》や《陰謀団式療法》といったハンデスからコンボをスタートさせることが多いので、あらかじめ置いておける《トーモッドの墓所》の方が展開を損ねることなくコンボの抑止力として機能します。
Legacy Challenge #11857167
『灯争大戦』が環境に与えた影響
2019年4月29日
- 1位 12 Post
- 2位 Miracles
- 3位 Miracles
- 4位 Painter
- 5位 ANT
- 6位 Temur Delver
- 7位 Death and Taxes
- 8位 UW Stoneblade
トップ8のデッキリストはこちら
MOでは『灯争大戦』が先行導入されており、今大会はプレリリースの真っ最中でしたが、すでに新カードを採用したデッキが結果を残していました。
Legacy Challenge #11857167 デッキ紹介
「12 Post」「Miracles」「Painter」「Death and Taxes」
12 Post
1 《カラカス》
4 《古えの墳墓》
4 《雲上の座》
4 《エルドラージの寺院》
4 《微光地》
3 《ヴェズーヴァ》
3 《ウギンの目》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
-土地 (26)- 4 《歩行バリスタ》
3 《作り変えるもの》
4 《難題の予見者》
4 《現実を砕くもの》
4 《終末を招くもの》
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《大いなる歪み、コジレック》
-クリーチャー (22)-
『灯争大戦』が現環境に与えた影響は大きく、今大会で入賞した半数以上のデッキが新カードを採用していました。
優勝した12 Postには《人知を超えるもの、ウギン》が採用されており、デッキの爆発力の向上に一役買っています。
☆注目ポイント
Holy New Ugin…Newgin? pic.twitter.com/hOXWYUXYEF
— Maxtortion (@MXGonline) 2019年4月30日
無色スペルのコスト軽減を常在型能力として持つ《人知を超えるもの、ウギン》は、エルドラージスペルを中心としたこのデッキと非常に相性が良く、上記ツイート内の動画ではその力を遺憾なく発揮しています。
マナアーティファクトの連打から、超重量級のエルドラージや《歩行バリスタ》に繋げるだけでも十分な強さですが、クロックを展開できる[+1]能力と、除去の[-3]能力も使いやすく、今後もエルドラージのフィニッシャー兼カードアドバンテージ源としてよく見かけることになりそうです。
Miracles
Twitchでレガシーの対戦試合を定期的に配信しているAnziDは、Miraclesを得意とし今大会でも『灯争大戦』のカードを搭載したリストで入賞していました。
グランプリ・ナイアガラフォール2019の結果から、StonebladeやMiraclesといった青いデッキとのマッチアップが多くなることを想定し、《紅蓮破》のために赤をタッチしています。
☆注目ポイント
発売前から話題となっていた《覆いを割く者、ナーセット》と《時を解す者、テフェリー》が早速採用されています。《覆いを割く者、ナーセット》の常在型能力は、《渦まく知識》や《思案》といったドロースペルをシャットアウトするので青いコンボやコントロールに強く、それに加えて[-2]能力でアドバンテージを稼ぐことができます。《宮殿の看守》や《ヴェンディリオン三人衆》などの追加ドローを防げるのも見逃せないポイントです。
《時を解す者、テフェリー》の常在型能力は、カウンターを封じることができるため、青いデッキ同士のマッチアップで特に強さを発揮します。[-3]能力も常在型能力と合わせてテンポアドバンテージを取りやすく、有利な状況に持ち込みやすくなります。[+1]能力で《思案》などから相手のターンにカウンター不能の《終末》や《天使への願い》をキャストするといったプレイングも可能になります。
《覆いを割く者、ナーセット》や《時を解す者、テフェリー》といったプレインズウォーカーが登場したことにより、それらを対処できる《紅蓮破》の価値が増したため、今後は赤をタッチしたバージョンが主流となりそうです。
Painter
3 《Plateau》
3 《血染めのぬかるみ》
2 《樹木茂る山麓》
4 《古えの墳墓》
3 《裏切り者の都》
2 《大焼炉》
-土地 (20)- 1 《歩行バリスタ》
3 《ゴブリンの溶接工》
4 《絵描きの召使い》
2 《エーテル宣誓会の法学者》
4 《帝国の徴募兵》
1 《猿人の指導霊》
-クリーチャー (15)-
3 《悟りの教示者》
2 《赤霊破》
1 《血染めの月》
4 《水蓮の花びら》
1 《ライオンの瞳のダイアモンド》
3 《丸砥石》
3 《密輸人の回転翼機》
1 《罠の橋》
3 《大いなる創造者、カーン》
-呪文 (25)-
2 《外科的摘出》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《月の大魔術師》
1 《ワームとぐろエンジン》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《トーモッドの墓所》
1 《真髄の針》
1 《大祖始の遺産》
1 《丸砥石》
1 《罠の橋》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (15)-
《絵描きの召使い》+《丸砥石》のコンボによって相手のライブラリーを空にするPainterは、《大いなる創造者、カーン》という新戦力を獲得しました。
《絵描きの召使い》を使うデッキの性質上、今後増えるであろう《覆いを割く者、ナーセット》や《時を解す者、テフェリー》を処理できる《紅蓮破》や《赤霊破》をメインから無理なく採用できるのが強みです。
☆注目ポイント
《反逆の先導者、チャンドラ》の代わりに、《大いなる創造者、カーン》が採用されています。《大いなる創造者、カーン》は《無のロッド》のような常在型能力を持つので、ANTの《ライオンの瞳のダイアモンド》や《水蓮の花びら》、Death and Taxesの《霊気の薬瓶》、装備品などをシャットアウトでき、多くのマッチで活躍します。このプレインズウォーカーの真価は、[-2]能力でサイドに忍ばせてある《マイコシンスの格子》をサーチすることです。マナはかかりますが、場に出せれば相手をロックすることができます。
[-2]能力を活かすために《罠の橋》、《丸砥石》、《仕組まれた爆薬》、《トーモッドの墓所》など多数のアーティファクトがサイドに1枚ずつ採用されており、これらを状況に応じてサーチしてくるシルバーバレット戦略も採られています。
Death and Taxes
3 《カラカス》
4 《リシャーダの港》
4 《不毛の大地》
-土地 (23)- 4 《ルーンの母》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
3 《ファイレクシアの破棄者》
4 《ちらつき鬼火》
2 《護衛募集員》
1 《ミラディンの十字軍》
1 《宮殿の看守》
-クリーチャー (23)-
2 《封じ込める僧侶》
2 《エーテル宣誓会の法学者》
2 《議会の採決》
2 《安らかなる眠り》
1 《レオニンの遺物囲い》
1 《聖域の僧院長》
1 《宮殿の看守》
1 《解呪》
1 《大変動》
-サイドボード (15)-
グランプリ・ナイアガラフォール2019でも準優勝していたDeath and Taxes。《黒き剣のギデオン》によって装備品に頼らずとも高い打点が期待できるようになり、LandsやDark Depths系とのマッチアップで活躍する《高名な弁護士、トミク》も嬉しい追加です。
☆注目ポイント
《黒き剣のギデオン》は、《毒の濁流》や《至高の評決》といったソーサリー除去に耐性があり、3マナパワー4と装備品に頼らずとも高いスペックなので今後も使われそうです。
《高名な弁護士、トミク》はプレビュー段階でも話題になっていた新たなヘイトベアーです。《演劇の舞台》や《壌土からの生命》、《ラムナプの採掘者》、《世界のるつぼ》などの対策になり、2マナ2/3飛行と自身も中々の性能です。決して受けが広い能力ではないためサイドの採用となっていますが、《不毛の大地》を使ったデッキが多い環境ではメインからの採用も考えられます。
Legacy Challenge #11861759
新環境のレガシーを支配するエルドラージ
2019年5月5日
- 1位 Eldrazi Post
- 2位 Eldrazi Post
- 3位 Maverick
- 4位 Eldrazi Post
- 5位 Jeskai Stoneblade
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Maverick
- 8位 Death and Taxes
トップ8のデッキリストはこちら
前回のLegacy Challengeと同様に『灯争大戦』のカードを採用したデッキが多数上位に見られました。
特に《大いなる創造者、カーン》と《人知を超えるもの、ウギン》を得たエルドラージデッキのパフォーマンスが凄まじく、今大会でワンツーフィニッシュを果たしています。
Legacy Challenge #11861759 デッキ紹介
「Eldrazi Post」
Eldrazi Post
1 《カラカス》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》
4 《雲上の座》
4 《微光地》
3 《ヴェズーヴァ》
2 《水晶鉱脈》
2 《ウギンの目》
-土地 (25)- 1 《歩行バリスタ》
4 《難題の予見者》
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
1 《大いなる歪み、コジレック》
-クリーチャー (8)-
4 《厳かなモノリス》
3 《通電式キー》
3 《スランの発電機》
3 《三なる宝球》
1 《面晶体の記録庫》
3 《大いなる創造者、カーン》
3 《人知を超えるもの、ウギン》
1 《解放された者、カーン》
2 《精霊龍、ウギン》
-呪文 (27)-
4 《罠の橋》
1 《歩行バリスタ》
1 《ワームとぐろエンジン》
1 《トーモッドの墓所》
1 《漸増爆弾》
1 《三なる宝球》
1 《強制の門》
1 《マイコシンスの格子》
-サイドボード (15)-
2週連続でLegacy Challengeを制したEldrazi Post。今大会で優勝を収めたリストはクリーチャーが少なめで、プレインズウォーカーを多数搭載したコントロール寄りの構成になっています。
一般的なクリーチャー多めの構成よりも遅めですが、《面晶体の記録庫》や《スランの発電機》といったマナ加速が追加され、それらをアンタップする《通電式キー》を採用することで速度を補っています。また、マナアーティファクトを増量することによって《基本に帰れ》などにも耐性が付きます。
☆注目ポイント
《面晶体の記録庫》はマナ加速として機能すると同時に息切れ防止にもなります。多めに採用されたアーティファクトは、中盤以降《大いなる創造者、カーン》によってクリーチャー化させることができるので、攻め手が途切れにくくなっています。
《大いなる創造者、カーン》は相手の《厳かなモノリス》などをシャットアウトするので同型戦にも強く、マナが大量に捻出できるこのデッキでは《マイコシンスの格子》をサーチして相手をロックするコンボも決めやすくなっています。サイドのアーティファクトを状況に応じてサーチしてくことが可能で、《トーモッドの墓所》や《漸増爆弾》などにメインからアクセスできるようになり対応力が向上しています。
総括
Legacy Challengeの結果から、『灯争大戦』が環境に与えた影響は予想以上に大きかったことが分かります。今回ご紹介したデッキ以外では、《リリアナの勝利》や《夢を引き裂く者、アショク》を採用したMono Blackも見られました。
新カードの中でも特に《大いなる創造者、カーン》と《人知を超えるもの、ウギン》を搭載したエルドラージは、攻めの幅がかなり広がりました。以前からMiraclesなどフェアデッキに強いデッキとして上位に多かったデッキですが、今後さらに見かけることでしょう。
USA Legacy Express vol.153は以上です。
それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!