1日目のレポートは【こちら】
プロツアー『霊気紛争』、2日目。
今回のプロツアーに集った425名の強豪プレイヤーがさらに篩(ふるい)に掛けられ、この日集うのはその半数――初日4-4以上の好成績を収めたプレイヤーたちが、栄冠をその手に掴み取らんと鎬を削ることとなる。
晴れる屋メディアでは、本日も特派員・渡辺 和樹によるプロツアー現地レポートを、本記事内で随時更新していきます!
Day 2
Hareruya Pros/Hopesの初日成績まとめ
開幕~2ndドラフトの様子
マイケル・ボンデの語る『霊気紛争』ドラフトの全て
リミテッドの達人・中村修平にインタビュー!
プレイヤーインタビュー: 大木 樹彦
DeckTech: ピエール・ダジョンの「エーテルマーヴェル・ウラモグ・コピーキャット」
Hareruya Pros/Hopesの初日成績まとめ
By Hareruya Media team
さて、まずは「Hareruya Pros」および「Hareurya Hopes」の初日の成績を見てみよう。
プレイヤー | 所属チーム | ドラフト | スタンダード | 初日成績 |
Lukas Blohon | Genesis | 3-0 | 4-1 | 7-1 |
Jeremy dezani | Hareruya | 3-0 | 3-2 | 6-2 |
中村 修平 | Hareruya | 1-2 | 5-0 | 6-2 |
Michael Bonde | MTG Bent Card | 3-0 | 2-3 | 5-3 |
齋藤 友晴 | Hareruya | 3-0 | 2-3 | 5-3 |
高橋 優太 | Hareruya | 1-2 | 4-1 | 5-3 |
Petr Sochurek | Hareruya | 2-1 | 2-3 | 4-4 |
八十岡 翔太 | Musashi | 2-1 | 3-2 | 5-3 |
Pierre Dagen | Opportunity | 2-1 | 2-3 | 4-4 |
Martin Muller | Genesis | 1-2 | 3-2 | 4-4 |
原根 健太 | (所属チーム無し) | 1-2 | 3-2 | 4-4 |
木原 惇希 | (所属チーム無し) | 1-2 | 3-2 | 4-4 |
津村 健志 | Last Samurai | 1-2 | 2-3 | 初日敗退 |
Oliver Polak-Rottmann | Hareruya | 1-2 | 1-4 | 初日敗退 |
平見 友徳 | (所属チーム無し) | 1-2 | 1-4 | 初日敗退 |
ルーカス・ブローン
Lukas Blohon(チェコ共和国)
ジェレミー・デザーニ
Jeremy Dezani(フランス)
中村 修平
Shuhei Nakamura(日本)
2日目開始時点ではルーカス・ブローン/Lukas Blohonが初日7-1と抜きんでており、ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniと中村 修平の2名がその後を追う好成績を残している。
また、上図の2日目進出プレイヤーの中で唯一プロレベルを持っていない原根 健太と木原 惇希の2名はこの2日目を1敗で切り抜ければ次回のプロツアー『アモンケット』への出場権利を獲得できる。厳しい道のりではあるが応援していきたい。
開幕~2ndドラフトの様子
By Kazuki Watanabe
おはようございます。プロツアー2日目の朝です。今日も記事を更新して行きますので、よろしくお願いします。 pic.twitter.com/DkeMGoBaH6
— Kazuki Watanabe (@Kazuki_ing) 2017年2月4日
プロツアー『霊気紛争』、2日目が始まった。
さっそく、会場の様子をお届けしよう。
2日目に進めるのは、初日を4-4以上の成績で終えたもののみ。プレイヤーの数が少なくなるため、プレイエリアが縮小される。
続々と集まるプレイヤーたち。八十岡 翔太と、Dig.Cardsの行弘 賢、そしてTeam Cygamesの山本 賢太郎が言葉を交わす。
Hareruya Hopesの木原 惇希も、2日目進出を果たした。Team Cygames所属の市川 ユウキ、Big Magicの瀧村 和幸と初日を振り返りつつ、展望を語り合っているようだ。
ポッドが発表され、それぞれの座席へ。ジェレミー・デザーニの隣はブラッド・ネルソン。
マイケル・ボンデにカメラを向けると、笑顔で視線を送ってくれた。1stドラフトを3-0で終えた彼の活躍に期待しよう。
遠景のためわかりづらいかもしれないが、市川 ユウキ、清水 直樹、松本 友樹、そして藤田 剛史と、4名の日本人が同じポッドに。
ピック中のピエール・ダジョン。真剣な表情で、カードを選ぶ。
デッキを構築するペトル・ソフーレク。
少しだけ、こぼれ話。ドラフトが始まる直前、会場がスポットライトと見紛うような光に包まれた。2階の窓から、朝日が差し込んだのである。
窓から差し込む朝日が眩しすぎて、しばし中断。 pic.twitter.com/0XFVIrCCLe
— Kazuki Watanabe (@Kazuki_ing) 2017年2月4日
これではピックに支障を来す、ということで少々開始が遅らせられることになった。
会場スタッフが窓を板で塞ぐと、会場全体から拍手。プロツアーで起きた”ちょっと珍しいエピソード”として、ここに記しておこう。
マイケル・ボンデの語る『霊気紛争』ドラフトの全て
By Kazuki Watanabe
1stドラフトを3-0で終えたプレイヤーの一人、マイケル・ボンデに『霊気紛争』のドラフトについて話を伺った。
--「まず、この環境で最もベストな色の組み合わせは何だと考えてる?」
Michael「僕が好きなのは、青白の飛行、そして青緑のエネルギー、だね。この組み合わせがベストだと思うよ。どちらかを選ぶのが難しいくらい、好きな組み合わせなんだ」
--「昨日見事に3-0したデッキは、一番好きな青白飛行だったわけだね」
This was my draft deck – sry i didnt post it before 🙂 #ptAeR @KevGrove pic.twitter.com/178GQOKQCw
— Michael Bonde (@Lampalot) 2017年2月3日
8 《平地》 8 《島》 -土地 (16)- 2 《格納庫の整備士》 1 《神盾自動機械》 1 《霊気急襲者》 1 《修復専門家》 1 《航空船の略取者》 1 《歩行バリスタ》 1 《博覧会場の警備員》 1 《ギラプールのミサゴ》 1 《警戒自動機械》 1 《夜市の護衛》 2 《尖塔の巡回員》 1 《先見的な増強者》 1 《急降下飛空士》 1 《砦のマストドン》 1 《霊気海嘯の鯨》 -クリーチャー (17)- |
1 《置き去り》 1 《凍り付け》 1 《特権剥奪》 2 《光に目が眩む》 1 《飛行機械による拘束》 1 《改革派の貨物車》 -呪文 (7)- |
Michael「そうだね。好きなアーキタイプだから、使っていて楽しかったよ。ただ一つ反省点があって、土地は17にするべきだったと思う。今回のデッキでは、どうしてもマナが足りなくなってしまう場面が多かった。何とか3-0できたから、ホッとしているよ」
--「ちなみに、青白、青緑がベストな組み合わせ、ということは、青が君の考えるベストカラーかな?」
Michael「うーん、実はそう簡単な問題でもないんだ。青はベスト・”サポート”・カラーなんだよ」
--「サポート……つまり、組み合わせるための色、ということ?」
Michael「そういうことだね。青のカードは、単体での力がそこまで強くない。組み合わせることで、強力になるんだ。色単体で言えば、黒が一番良くなくて、次が白、という認識なんだ。だけど、青黒、青白なら十分に戦える。不思議に思うかもしれないけど、ドラフトの魅力だね」
--「なるほど。なかなか面白いね」
Michael「この環境は、シナジーを活かすことが重要だ。苦手な色でも、組み合わせて活かすことができれば戦えるよ。2ndドラフトでは、赤黒『即席』をやっているんだけど、これもなかなか感触が良いんだ」
8 《山》 8 《沼》 -土地 (16)- 2 《増強自動機械》 1 《夜市の見張り》 1 《霊気追跡者》 1 《霊気毒殺者》 1 《ドゥーンドの調査員》 1 《溶接自動機械》 1 《鋳造所のコウモリ》 1 《ラスヌーのヘリオン》 1 《尖塔横の潜入者》 1 《搾取工区の喧嘩屋》 1 《鋳造所の組立工》 1 《ラスヌーの帆背びれ》 1 《バリケード破り》 1 《湿原の運び屋》 -クリーチャー (17)- |
1 《正確な一撃》 1 《智恵ある帰還》 2 《隠然たる襲撃》 1 《無許可の分解》 1 《チャンドラの革命》 1 《放射篭手》 1 《霊気圏の収集艇》 1 《無謀者の競走車》 -呪文 (7)- |
Michael「《搾取工区の喧嘩屋》は言うまでもなく強力だし、《湿原の運び屋》と《バリケード破り》はほぼ5マナ以下という感覚で使うことができるよ」
--「『即席』を有効活用するわけだね。『このカードに注目!』というものはある?」
Michael「《放射篭手》かな? 『霊気紛争』ドラフトでは、クリーチャーのサイズが一回り小さくなった。だから、パワーを+2するだけで、あっという間に強力なクリーチャーができあがる。さらに『即席』の助けにもなるから、このアーキタイプにぴったりの1枚だね」
--「なるほど、ありがとう! では最後に、この環境のドラフトで勝利を掴むコツを教えてもらえるかな?」
Michael「なかなか難しい質問だね。僕が教えてほしいくらいだよ(笑) ただ、一つ言えることは、カラデシュという次元は、アーティファクトが中心だ。だから、ドラフトでもアーティファクト、つまり無色をしっかりと活かせると良いと思うよ」
Michael「例えば、《起伏鱗の大牙獣》と《暴走急行》は、どちらも強力なアンコモンだよね? 緑と決めているならば前者を取れば良いけど、《暴走急行》は無色だからどんなデッキにでも入る。無色である、というだけで評価が高いんだ。それに、カードパワーが全体的に弱いから、ふらふらと迷うとデッキが弱くなってしまうからね」
--「なるほど、ありがとう! そうだ、最後に一つだけ。君の所属しているチーム(MTG Bent Card)はリミテッドの成績が良かったんだって?」
Michael「3-0が3人、2-1が2人、1-2が1人だったね。2日目にも5人が進出しているんだ。みんな強豪だからね、期待しててよ!」
--「楽しみにしているよ、この後も頑張って!」
ところで、このインタビューを取るために、彼の対戦が終わるのを待っていたときのことだ。
ゲームが終了した後、彼は対戦相手と感想戦を行いながら、アドバイスを送っていた。
「あの場面なら、こっちの方が良かったかもしれないね」「これは良いプレイだったよ。本当に困った。次はこうして……」
その様子を見つめている私に気づくと、彼は一言こういった。
「彼は初めてのプロツアーらしいんだ。もう少し話していても良いかい?」
もちろん、と私が告げると、彼は再びカードを広げ、プロとしてアドバイスを送る。
少しだけ、作業の予定を遅らせよう。プロプレイヤーのあるべき姿を、そして未来のプロプレイヤーが生まれるきっかけを、私は今まさに見ているのかもしれないのだ。
リミテッドの達人・中村修平にインタビュー!
By Kazuki Watanabe
晴れるーむ合宿で最高成績を叩き出した、殿堂プレイヤー・中村 修平。同じ殿堂である津村 健志に「Hareruya Prosで一番ドラフトが上手い」と言わしめる実力者だ。
ラウンドの合間。時間は限られているが、彼に一つ聞いてみたいことがあったため、声を掛けてみた。
--「合宿からしばらく時間が経ち、プロツアー本番を迎えましたが、『霊気紛争』ドラフトの感覚に変化はありましたか?」
中村「特に大きな変化はないですね。環境全体の“シナジーが重要”というイメージは変わってないです。ただ、カードの評価には変化がありましたね」
--「なるほど。具体的にはどのカードですか?」
中村「一番大きな変化は、《鉄装破壊車》です。これは合宿のときの評価よりも明確に高くなりました」
--「4マナ、6/6、『搭乗3』の機体ですか」
中村「そうです。好きではなかったのですが、環境の理解が進むに連れて好きになりました。『霊気紛争』ドラフトでは、4/4というサイズが環境限界値なんです。『カラデシュ』では4/5が限界値だったんですよ」
--「タフネス1の差ですが、そんなに大きな変化なのですか?」
中村「かなり大きいですよ。例えば、この環境では『4/4, 3/2, 3/2』なんていう感じでクリーチャーが並びますよね? この状況ならば、《鉄装破壊車》で1対2交換を取ることができます。ですが、この『4/4』が『4/5』だった らどうでしょう?」
--「なるほど! 1対1交換しかできないですね」
中村「そういうことです。環境を理解する上では、“環境限界値がどれくらいか”を把握することも重要です。タフネス1つ違うだけで、ピックの点数が変わるわけですからね」
--「わかりました。では、現在の中村さんが考える“この環境の鍵”は何だと思いますか?」
中村「やはり重要なのは、強い2マナをしっかり確保することです。強さにもいろいろありますが、意識してほしいのは3マナ域と相打ちが取れる強さです」
--「相打ちが取れる……相手の戦力を削ぐ、ということですか?」
中村「そういう意味でもありますね。単純に削ぐのではなく、相打ちも視野にきっちりと使いこなす、という感覚です。そういう意味でも2マナの工匠、《霊気追跡者》、《霊気急襲者》、《霊気毒殺者》の評価は高めです」
--「その3枚がトップコモン、という認識ですか?」
中村「いや、この環境では、トップコモンという考え方を止めた方が良いです」
--「トップコモンという考え方?」
中村「簡単に言うと、1パック目の初手、そして2手目でコモンを取って勝てる環境じゃないんです。レア、アンコモンを取ることを優先した方が良いですよ。2マナの工匠をピックするのは、3手目、4手目です」
--「なるほど……それだと、初手、2手目の色と工匠が上手く合わない可能性もありますよね?」
中村「ありますね。なので、1-1, 1-2は捨てるつもりでバラ打ちでも問題ないと思っています。その後に、いわゆる”トップコモン”が重なってきたら、色が空いていると判断するわけです」
--「少し特殊な感覚ですね」
中村「そうですね。もちろん、2マナの工匠は抜群に評価が高いんですよ? ただ、私の場合、《霊気急襲者》の評価が周囲よりも少し高い気がします。結果、流れて来やすいので、青を”やらされている”感がありますけど」
--「周囲、特に海外プレイヤーの評価が高いのはどれなのでしょうか?」
中村「《霊気追跡者》でしょうね。赤はほとんど空いてないイメージです」
--「なるほど。ありがとうございます。その他にこの環境で気を付けるべきことはありますか?」
中村「何かありますかね……そうだ、流したカードが重要というのもアドバイスになるかもしれません」
--「流したカードは覚えておこう、というやつですか?」
中村「それよりも少し踏み込んだ感覚です。カードが軒並み弱いので、『これは残らないだろうな』というのがかなり高い確率で分かるんです。1パック目で流したものを把握して、2パック目で流れてくるものと比較すれば、綺麗にドラフトできるはずです。少し慣れない言葉ですが、『うまく2パック目を切り盛りする』という感じで」
ここで、残念ながら時間となった。一言お礼を述べると、中村さんは手を軽く振って応えてくれる。
“世界を渡り歩くプレインズウォーカー”中村 修平。その中村が語った、『霊気紛争』ドラフトの感覚。読者諸賢のリミテッドに活かしていただければ幸いである。
プレイヤーインタビュー: 大木 樹彦
By Kazuki Watanabe
2 《平地》 4 《霊気拠点》 4 《秘密の中庭》 4 《感動的な眺望所》 4 《産業の塔》 4 《尖塔断の運河》 -土地 (22)- 4 《発明者の見習い》 4 《スレイベンの検査官》 4 《模範的な造り手》 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《経験豊富な操縦者》 2 《模範操縦士、デパラ》 -クリーチャー (22)- |
3 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 3 《耕作者の荷馬車》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文 (16)- |
3 《金属の叱責》 2 《払拭》 2 《邪悪な囁き》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《致命的な一押し》 1 《断片化》 1 《苦渋の破棄》 1 《グレムリン解放》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード (15)- |
(かねこ)スイス最終ラウンドを5敗で迎えた覚前輝也選手・オオキタツヒコ選手、ともに勝利し次回のプロツアー『アモンケット』の権利を獲得しました! https://t.co/J27ttzZe6T #mtgjp #PTAER pic.twitter.com/57qvTa3RQf
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) 2017年2月4日
DeckTech: ピエール・ダジョンの「エーテルマーヴェル・ウラモグ・コピーキャット」
By Kazuki Watanabe
数々の魅力的な記事を我々に届けてくれる、ピエール・ダジョン。
- 2016/12/16
- パズるべきかパズらざるべきか、それが問題だ
- Pierre Dagen
マジックの環境に、そしてマジックの枠を超えた思考そのものに対する深い考察。その文章を、1人の読者として私も楽しみにしている。
このプロツアー『霊気紛争』で、ようやく彼と直接話すことができた。ここでは、今回彼が使用したデッキリストを紹介すると共に、彼の言葉をお届けしよう。
--「初めまして! お会いできて嬉しいよ!」
Pierre「こちらこそ! じゃあ、早速始めようか?」
--「ありがとう。今回のデッキ名を教えてもらえる?」
Pierre「そうだな……エーテルマーヴェル・ウラモグ・コピーキャットだ」
--「!? ……すごいデッキだね。強い要素が詰め込まれているみたいだ」
Pierre「そのとおりだよ。これがデッキリストだ」
5 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《平地》 1 《燃えがらの林間地》 1 《進化する未開地》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 2 《感動的な眺望所》 1 《尖塔断の運河》 -土地 (21)- 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《守護フェリダー》 3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー (15)- |
4 《霊気との調和》 4 《蓄霊稲妻》 2 《苦しめる声》 2 《ニッサの誓い》 1 《ジェイスの誓い》 2 《織木師の組細工》 1 《ガラス吹き工の組細工》 4 《霊気池の驚異》 4 《サヒーリ・ライ》 -呪文 (24)- |
4 《不屈の追跡者》 2 《否認》 2 《燻蒸》 2 《領事の権限》 2 《チャンドラの誓い》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《歩行バリスタ》 -サイドボード (15)- |
--「《霊気池の驚異》に《サヒーリ・ライ》と《守護フェリダー》のコンボが入っている、という感じかな?」
Pierre「そうだね。《約束された終末、エムラクール》が禁止されて《霊気池の驚異》は使われなくなった、と思っている人もいるみたいだが、それは甘い。むしろ、強くなってるくらいの認識を持たないとダメだ。これまでは《絶え間ない飢餓、ウラモグ》と《約束された終末、エムラクール》しかなかった”大当たり”が、3種類に増えているわけだからね」
--「なるほど。どうしてこのデッキを使おうと思ったの?」
Pierre「まず、いわゆる”コピーキャット”を試していた。誰だってこのコンボには挑戦しただろう。その上で、一つのことに気づいたんだ。『なんだ? ものすごくエネルギーが余るじゃないか』と」
--「《霊気との調和》を始めとして、エネルギーを得るカードはたしかに多いね」
Pierre「《ならず者の精製屋》は、このデッキで最も強力な1枚だが、生み出したエネルギーを有効活用する手段が限られていた。それが気になってね。『じゃあ何かエネルギーを使えるものはないか?』と考えれば、《霊気池の驚異》に辿り着いたのは、ある意味当然と言えるだろう」
--「なるほど。結果、《サヒーリ・ライ》&《守護フェリダー》のコンボと同時に使用することにしたわけだ」
Pierre「そういうことになるかな。もちろん、ただプラスしただけじゃない。《霊気池の驚異》は《サヒーリ・ライ》でも《守護フェリダー》でも唱えることができる。揃ってしまえばほとんど勝ち、というコンボのパーツを探しつつ、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》ならそれでも良いんだ。とてもおもしろいデッキだよ」
--「たしかにおもしろそうだ。これは使ってみたくなるよ」
「コピーキャットを使う上で気を付けることはある?」
Pierre「重要なのは、《守護フェリダー》なんだ。タップ状態の《霊気池の驚異》をアンタップすることもできるし、《ニッサの誓い》《ジェイスの誓い》を再利用することもできる。《サヒーリ・ライ》を対象にできれば勝利は目前だが、その勝利に至る道を作ってくれるカードだからね」
--「なるほど。他に、『このデッキを使ってみたい』と思ったときの注意点があったら教えてもらえるかな?」
Pierre「そうだな。マリガンの基準について触れておこうか? 単純明快なんだが、緑マナが出なかったらマリガンだ。《サヒーリ・ライ》の青赤でも、《守護フェリダー》の白でもない。序盤を安定させる緑が重要なんだ。このデッキは、見てのとおり、マナベースがかなりタイトだ」
--「そうだね。かなり難しそうだ」
Pierre「正直、まだ改良の余地があるとは思っているんだが、それにしても《霊気との調和》に依存するところが大きい。あくまでも基本はエネルギーを貯蓄して、盤面を整えていくことだから、覚えておいて欲しい」
--「ありがとう。少しこの環境全体のことについて教えて欲しいんだ。黒緑、そしてジェスカイサヒーリがこのプロツアーでも流行っているけれど、これらに対してはどう立ち回れば良い?」
Pierre「その2つに対して、このデッキは明確な方針がある。黒緑のようなアグロに対しては《絶え間ない飢餓、ウラモグ》で勝つ、そしてジェスカイのようなコンボに対しては《サヒーリ・ライ》と《守護フェリダー》で勝つんだ。これが基本だ。そして、その逆を意識すると安定して勝てるようになる。つまり、黒緑に対して《サヒーリ・ライ》と《守護フェリダー》は使わないようにするんだ」
--「分かりやすい方針だね」
Pierre「アグロ相手に《サヒーリ・ライ》を守ることは困難だ。素直に《絶え間ない飢餓、ウラモグ》で戦った方が安定する。サイドボード後は《サヒーリ・ライ》を2枚減らして、《ニッサの誓い》を2枚とも抜く。そして《チャンドラの誓い》と《燻蒸》をサイドインすれば準備は万端だ。《霊気池の驚異》からインスタント・タイミングで《燻蒸》を唱えれば、相手は呆然とするだろうね」
--「コントロールならば、《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を抜くわけだね」
Pierre「そういうことだ。相手も”コピーキャット”を目指してくるだろうから、相手に付き合って余計なことをしている暇はない。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》は3枚とも抜いて、《霊気池の驚異》も2枚は抜いてしまって良いだろうね。そして、《チャンドラの誓い》と《燻蒸》以外のカードを適宜入れれば問題ないだろう」
--「具体的なプランまでありがとう。これまでの対戦を振り返って、このデッキの改良点は見つかった?」
Pierre「《ニッサの誓い》が想像以上に使いづらかったのは改良すべきだろうな。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を見つけてしまったときの寂しさと言ったらない。代わりに土地を1枚増やして……そうだな、もう1枚はこれから考えてみるよ」
彼のデッキガイドに耳を傾けている内に、大切なことを忘れそうになっていた。読者を代表して、彼に伝えねばならないことがある。
--「あなたの記事はどれも素晴らしくて、そこで紹介されているデッキはどれもおもしろそうだよね。いつも楽しみにしているよ」
Pierre「そうかい? ありがとう。俺はエキサイティングじゃないデッキは使いたくないんだ。使っていてつまらないデッキで勝ってもおもしろくないし、それで負けてしまったら悔しさが増して、長いラウンドを戦うことなんて難しいだろうからね。それに……」
少し間をおいて、笑顔を向けながら彼は続けた。その言葉は、このプロツアーで最も印象的な言葉だった。そしてそれは、私が常にプロプレイヤーに対して持つ、ある種の願望と憧憬が詰まったような、胸を熱くする言葉だった。
Pierre「マジックは最高に楽しいんだ。『楽しんで、勝つ』。その姿を見せるのもプロプレイヤーの仕事だ。そうだろ?」
そう、いつだって彼らは、大切なことを思い出させてくれる。そして、そうあって欲しいと、プロプレイヤーに憧れる1人の人間として、私は思うのだ。